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生き残れ。〜災害に備えよう〜コミュの【想定01】地震・オフィス

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この物語は、様々な災害に直面し、最悪の結果になって
しまった状況を想定したフィクションです。
登場人物は、災害の危機に対して、何か「正しくない」行動を
取ってしまっています。
どのように準備や行動をすれば災害から生き残れる可能性が
生まれたかを考えてみたいと思います。
何か気付かれましたら、コメントをお願いします。

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【想定01】
20XX年 12月19日 午後6時17分
東京都品川区某所 
8階建てオフィスビル(1979年建造)の7階
新藤賢一 36歳 貿易会社営業課長
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どんよりとした黒い雲が低く垂れ込めた、底冷えのする
日だった。天気予報では、今晩はこの冬一番冷え込みに
なりそうだと告げている。陽が落ちてからは次第に北風が
強くなり始め、とにかく寒い晩になりそうだった。

新藤は外回りから会社に帰ると、休憩コーナーの自販機で
紙コップのブラックコーヒーを買ってから、7階のオフィス
にある自分のデスクに戻った。少しかじかんだ手に、
コーヒーの温かさが染み込んで行くようだ。
「課長、お帰りなさい。」、「お疲れ様です。」
部下から声がかかる。
「外、寒そうですね。」
「ああ、かなり冷えてるぞ。風が出てきた。」
新藤の前のデスクに座った、入力オペレーターの島村美紀に
答える。このフロアには新藤の部下10人がデスクを
並べているが、まだ外回りから戻っていない若手の竹内を
除いて、他の全員が揃っていた。

とりあえず一息入れてから書類の整理を始めるつもりで、
新藤は自分のデスクの椅子に腰を下ろした。
ふた口目のコーヒーを口に含んだその時、窓から見える南東の
空 ―東京湾の方向― で、真っ黒な雲の中に稲妻のような
閃光が走り、ずっと遠くまで連なるビル群の稜線が影絵のように
くっきりと浮かび上がった。その閃光は地上から空へ向かって
走っているように見え、少し間をおいて2回、3回と繰り
返された。
「なんだあれは。雷か?」とつぶやきながら、新藤がコーヒー
の紙コップをデスクに置いたその時、ビル全体がギシッと
軋んだような気がして、新藤は思わず椅子から腰を浮かせた。

次の瞬間、巨大な獣の咆哮のような地鳴りが地底から湧き
上がって来た。ほぼ同時に、ビル全体より数倍も重いハンマーで
真下からぶち上げられたような衝撃が連続して、ドン!ドン!
ドン!と襲いかかって来た。

デスクにうず高く積んだ書類の山が崩れ、パソコンの液晶モニタ
が衝撃にあわせてデスクの上を飛び回った。
新藤は頭の隅で「地震だ、でかい・・・。」と思ったものの、
中腰になったままなす術もなくデスクにしがみつき、口を半開き
にしたまま、デスクの上からコーヒーの紙コップが飛び上がり、
スローモーションのように床に向かって落ちて行くのを眺めていた。

ベージュのリノリウムタイルにコーヒーが撒き散らされた時、
ほんの一秒にも満たない間、静寂が訪れた。
「逃げなければ・・・。」
新藤は机にしがみついたまま周りを見回すと、ほとんどの部下は
椅子に座ったまま恐怖で固まっていた。何人かは机の下にもぐり
込もうとしたが、足元に置いた書類の詰まった段ボール箱が邪魔を
して果たせなかった。しかし、幸運なことにこのフロアの全員が、
ともかく無事のようだった。

新藤が部下に声をかけようとした瞬間、ビル全体がビリビリと
震えたかと思うと、床がゆっくりと少しだけ左右に揺れ、
ほんの半秒後には猛烈な加速度と振幅を伴った横揺れが始まった。
視界全体が突然流動体になったように、妙な形に歪む。
中腰のままだった新藤は、そのまま足元をすくわれて尻餅を
つき、隣のデスクに後頭部を打ちつけた。すぐに立ち上がろうと
するが、床は巨大なミキサーの中で渦を巻くかのように激動し、
四つんばいになることさえ出来ずに転げまわった。

揺れ始めて数秒後には照明がすべて消え、視界が全く失われた。
暗闇の中でロッカーや書棚がデスクの方に倒れ掛かり、ガラスが
砕けて飛び散る音が響く。11台のデスクは島になったまま床の
上を狂ったような速度で左右に動きまわり、何人かはデスクと
壁や書棚の間に挟み込まれて大腿部や骨盤や肋骨を何箇所も
へし折られた。さらにその上にロッカーや段ボール箱が崩れ落ち、
ロッカーの角が側頭部に深く食い込んだ派遣社員の高多恵と、
20kg以上はある段ボール箱が後頭部を直撃した営業係長の
下山信吾が一瞬で絶命した。倒れて来た書棚のガラスに頭を
突っ込んだ新婚の中原達也は、首の右側を割れたガラスで
深く切り裂かれ、血が噴水のように吹き上がった。

新藤は床に這いつくばったまま、窓ガラスが爆発するように
はじけて、粉々になった破片が階下からのわずかな明かりに
きらめきながら落ちていくのを呆けたように見ていた。暗闇と
轟音の中で島村美紀の悲鳴が聞こえたような気がしたが、
自分が転げ回らないようにするのが精一杯だった。

揺れ始めてからどれくらいの時間が経っただろうか。
狂ったような揺れが少しずつ小さくなって来た。
その時になって新藤は、全く身動きできなかった自分の
方には、何も倒れかかって来なかった幸運を自覚した。
後頭部に違和感を覚えて手をやると、かなりひどく出血
しているのがわかったが、骨は大丈夫そうだった。
1分半ほど過ぎて、揺れは完全に収まった。

暗闇の中、新藤は手探りでデスクにつかまって立ち上がる。
舞い上がった大量の埃の臭いが鼻腔を刺激する。
大変なことになった。
「みんな、大丈夫かー?」
「大丈夫です。でも、動けません・・・。」
最初に返事があったのは、島村美紀だった。小柄な美紀は
なんとかデスクの下にもぐり込んだが、その上に書棚が
倒れ掛かってきて、撒き散らされた重いファイル類が
身体にのしかかり、身動きができなくなっていた。

「ほかはどうなんだ、生きてるのか?」
そう言ってから、新藤は自分が当たり前のように恐ろしい
問いかけをしていることに気付いて戦慄した。
返事は無かった。その代わり、苦痛に満ちたうなり声が
いくつも暗闇から聞こえて来た。
搾り出すような「骨が・・・やられた・・・」という声は
一番若手の松阪真一郎のようだ。

「もう大丈夫だぞ!すぐに病院に連れてってやるからな!」
気休めかもしれなかったが、新藤はそう言わずにはいられ
なかった。やがて暗闇に目が慣れてくると、想像も
できなかった光景が浮かび上がってきた。壁際のロッカーや
書棚はひとつ残らず倒れ、デスクの上にあったパソコン類も
全部床に投げ出されていた。自分以外は皆倒れたロッカー
類の下敷きになっていて、だれも自力で這い出せないのだ。
コンクリートの壁面には、深く抉られた無残な亀裂がいくつも
走っている。

自分一人ではどうにもならないと考えた新藤は、とにかく
助けを呼ぶためにビルの裏手にある非常階段に向かおうとして
目の前を塞ぐロッカーを乗り越えようとした。その瞬間、再び
地底から湧き上がるような地鳴りと共に、激しい横揺れが
襲ってきた。
「もうやめてー!」
島村美紀のくぐもった悲鳴が聞こえてきた。
新藤は、今度はどうにかデスクの下に身体を押し込むことに
成功した。なんとかなる・・・。

今度の揺れは最初よりかなり小さく、時間も短かった。
新藤はデスクの下から這い出しながら、部下に声をかけた。
「みんな、ちょっと待ってろ。助けを呼び・・・。」
そこまで言った時、新藤は一瞬身体が浮き上がったような気がした。
そして、暗闇の中で重力がどんどん捻じ曲がって行く様な
感覚に数秒間抗ったが、床に座り込みながら自分が置かれた状況
を正確に悟った。

自分達はビルの7階にいて、そのビルが少しずつ、そして確実に
加速しながら、傾きはじめている!
最初の揺れで、築30年近くなるこの古いビルは、一階の店舗部分
がほとんど潰れ、主要な柱に致命的な挫屈が生じていたのだ。
階下からは不気味な軋みやコンクリートがはじける音が、
ビルの躯体を伝わって、新藤のまわりの真っ暗な空間を
満たし始めた。

床はどんどん加速しながら傾きを増して行く。新藤は数秒後に
自分に訪れることを想像しようとしたが、まるで悪い夢を見て
いるかのように現実感が無かった。
床の傾きはさらに増し、新藤はもう一度立ち上がろうと
して、足を滑らせて転んだ。そのまま尻で床をすべり落ちながら、
はるか遠くから聞こえてくる、男の悲鳴を聞いたような気がした。
それが自分の声だと気付く前に、新藤の身体はなだれ落ちて来た
デスクやロッカーの中に飲み込まれた。

コメント(4)

確かに、この場合の想定しうる生存の可能性はいったい何か?
といえば難しいですよね。

・自社ビルであれば、労働組合が頑張って耐震補強を推進するべきだった。
・テナントであれば管理会社に耐震補強を・・・

というのは、少し違うような気もしますね。ただオフィスであれば防災連絡会議というか地震や災害を想定したマニュアルは作っておくべきですが<管理者>の責任を問われるべき問題で会社員が率先して推進すべき問題ではあるものの、そういった管理体制のまずい会社に入社してしまった。という事がすでに大きな間違いになってしまいます。

個人レベルで対処できたであろう、又は生存できた可能性とは何か?
少なくともデスク・デスク周辺はキレイに整頓しておけば地震発生時にデスクの下に隠れることはできたこと。

ロッカーの上などに重量の重いものはおかない。

窓際から離れる。

女性なら柔らかい素材の少し大きめのバッグを持っていれば頭部を守ることができた。

できれば物が混在するオフィスよりは廊下に出てしゃがみ衝撃に備える位しかできなかったような気がします。

地震発生時は慌ててビルから逃げ出すのも危険だし・・・かといってビル倒壊ともなれば、どうすれば生存できたのか、難しい問題です。

うーん、どうすれば助かったんだろう?
管理人でございます。

このストーリーに関しては、まず皆様にお詫びをしなければなりません。
この場合、最大の問題は1981年の建築耐震基準改正前に建てられた
耐震性の低いビルなわけで、そこが解決しなければ、いかなる個人的な
対策も無意味になってしまいます。

このストーリーは、当コミュを始めるに当たって最初に書いたもので、
コンセプトがちょっとブレていますね。申し訳ありませんでした。

建物のことを除けば、登場人物たちの姿勢、行動には多くの問題があります。
それは大体皆さんのご指摘の通りです。

ロッカーが固定されていないし、上に重量物が置いてある。
窓ガラスに飛散防止フィルムを貼っていない。
机の下に物が詰まっていて、避難するスペースが無い
(これが一番問題ですが、どこのオフィスでも良く見かける光景です)
さらに揺れ始めても、ほとんど誰も身を守る行動を起こせていない。
これでは、書いていないですがヘルメット、非常食糧などの防災備品が
備わっているとは思えませんね。

しかし、私自身の経験からしても、多くのオフィスで現実はこんなもの
でしょう。私は勤め人時代から、半分趣味で防災グッズをいろいろ準備
していましたが、結構「やりすぎじゃない?」的な視線がありましたからね。
もちろん、全然やりすぎていません。むしろ押さえ気味くらいで。
会社という組織で防災意識を高めるのは、とても難しいものだと感じます。

老朽化した建物からは、すぐに逃げ出した方が良いのか、という問題は、
ケースバイケースと言えるでしょう。倒壊の懸念がある場合には、できるだけ
速やかな脱出が必要です。しかし「揺れが収まるまで留まれ」と指導されて
いるケースが多いのです。

「揺れが収まるまで留まれ」と言われる意味は、主に落下物に対する危険を
避けるためです。街中では、揺れている最中に瓦、ガラス、看板、ビル外壁など
の落下、電柱の倒壊、ブロック塀、石塀、灯篭などの倒壊による危害が予想
されます。でも、もし仮にそれらの危険を考えなくても済む状況ならば、
老朽化した建物からは速やかに脱出した方が、生存可能性は高まるはずです。

この判断は非常にシビアです。例えば比較的新しいオフィスビル街と、
繁華街ではかなり判断が違ってきます。これは、その瞬間の個人の判断に
委ねられる部分でしょう。落下物が多そうな街でも、すぐに脱出した人の
すべての人が危険に晒されるのではなく、実際に負傷するのは一部の人だけ
でしょうから、一概に「こうしろ」と言えるものではありません。

普段から自分のあらゆる居場所を観察し、ここで地震が来たらこう行動する、
というシミュレーションをしておくしか無いのかもしれません。

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