石田隆信
●石田隆信著『スーパーセルフワーキング パート2』（RRMC2025年）
フレンチドロップ 3,850円
https:/
エイト・ミステリー
観客にシャッフルさせたデック中央の1/4を使ってU-Dする。なぜか最後に8のカードが出現し、8枚目より観客のカードが出現する。
大好きカード
5〜8枚を使い、好き・嫌い・大好きの言葉で好きな2枚を取り出す。
もっともっともっと
16枚を差がある2つの山にしてD-Uすると、4つの現象が次々起こる。
Qのお気に入り
4枚のQと8枚の字札をシャッフルし、表裏も混ぜるが、4枚のQだけが表を向く。
仲間はずれ
11の動物から選ばれた仲間外れが予言されており、他の動物はしりとりに。
新デジタルカード
18枚の横長四角形で観客のカードをデジタル表示し、すぐに2枚目も表示される。
Mは邪魔者?
A〜Mの13枚を使い、邪魔者と思われたMが最も重要な存在だと分かる。
ベストな相棒
4枚のKと4枚のQが4組とも同色KKやQQのペアになった直後、同じスートのKQのペアになる。
12の不思議
数理原理の第一の現象の直後に、数学的には解明できない第二の現象で4Aが出現する。
仲良し3人娘
分断された3枚のQが元の状態に戻るが、4枚目のQの登場で意外な結末となる。
動物呼び出しカード
1〜10まで動物名を数ぺリングして、最後には大きなトンボの絵になる。
ピクニックエーセスの謎
初心者向き4Aトリックの話で4Aが出現するが、その後52枚すべてが整列する。
セルフワーキングの考えと、パート2発行に際しての考え
●石田隆信著『スーパーセルフワーキング パート2』（RRMC2025年）
フレンチドロップ 3,850円
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エイト・ミステリー
観客にシャッフルさせたデック中央の1/4を使ってU-Dする。なぜか最後に8のカードが出現し、8枚目より観客のカードが出現する。
大好きカード
5〜8枚を使い、好き・嫌い・大好きの言葉で好きな2枚を取り出す。
もっともっともっと
16枚を差がある2つの山にしてD-Uすると、4つの現象が次々起こる。
Qのお気に入り
4枚のQと8枚の字札をシャッフルし、表裏も混ぜるが、4枚のQだけが表を向く。
仲間はずれ
11の動物から選ばれた仲間外れが予言されており、他の動物はしりとりに。
新デジタルカード
18枚の横長四角形で観客のカードをデジタル表示し、すぐに2枚目も表示される。
Mは邪魔者?
A〜Mの13枚を使い、邪魔者と思われたMが最も重要な存在だと分かる。
ベストな相棒
4枚のKと4枚のQが4組とも同色KKやQQのペアになった直後、同じスートのKQのペアになる。
12の不思議
数理原理の第一の現象の直後に、数学的には解明できない第二の現象で4Aが出現する。
仲良し3人娘
分断された3枚のQが元の状態に戻るが、4枚目のQの登場で意外な結末となる。
動物呼び出しカード
1〜10まで動物名を数ぺリングして、最後には大きなトンボの絵になる。
ピクニックエーセスの謎
初心者向き4Aトリックの話で4Aが出現するが、その後52枚すべてが整列する。
セルフワーキングの考えと、パート2発行に際しての考え
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藪晴夫（1922〜1999）は本業が時計職人、アマチュアマジシャン、研究家。昭和13年16歳で関西を代表する初代一陽斎正一に入門、お椀と玉など多数の奇術を習得。22歳で上京、長谷川智と知り合い日本奇術連盟大阪支部を結成。昭和21年木村マリニに師事。 石田隆信氏は1983年に藪氏のマジックを見た。関西奇術連合会の一泊新年会、毎年一月末の土曜日曜に開催されていた。大広間に500名以上集まり、奇術店も最大級の出店だった。大広間の空き時間に畳に座り、周りを囲まれた状態でいくつかのカードマジックを演じられたいた。特に難しい奇術は演じていないのにほれぼれしたというのは石田氏談。藪氏は奈良に住み、1985年に誕生した奈良の奇術クラブの顧問となった。1988年には大阪のRRMCにも6回ほど参加され、多くの奇術を見せてくれたとのこと。さらには1993年11月の出版記念パーティーに特別ゲストとして出演。特に記憶に残ったのは1993年1月関西奇術連合会新年会。奈良のメンバーと共に参加、石田氏も加わり木村マリニの奇術の話を聞く。
『スーパーセルフワーキング パート2』P52
●ベストな相棒
元になる原理：1964年ニックトロストの12枚使った方法が原案。ロイウォルトンが1999年に8枚だけの方法を発表。
準備：4枚K、4枚Qを用意。順番を同じにする。例：QD、QC、QH、QS、KD、KC、KH、KS。
やり方
１．左右の手に4枚持つ。左Q、右K。裏向きに持つ。
２．右のKをテーブルに置く。左のQを重ね、4枚。
３．4枚のパケットの右に左Qから置き、右Kを乗せる。これを交互にし、右にも4枚パケットにする。
４．右のパケットを左パケットの上に乗せる。トップ1枚をボトム、次のトップ2枚をボトムにまわす。
５．トップ2枚を表にしてペアとして違うことを示し、テーブルに置く。次の2枚も表にし、テーブルの2枚の上に置く、残り2枚を置き、最後の2枚を置く。
６．トップ1枚をボトム、次のトップ2枚をボトム。
７．トップ二枚を表にすると黒のKKのペア（またはQQ）、このペアを左側に横向きで置き、客側に押し手広げる。
８．トップ2枚を表にして客側に横向きに置く。3番目は演者側手前に置き、4番目は右側に置くが、広げる際に手前に広げる。
９．左側2枚を手前側2枚に重ねる。客側2枚を右側2枚に重ねる。
10．右側4枚を手前4枚に重ねる。
11．8枚を取り、右側ジョグの4枚を取り、下にまわす。
12．トップから2枚ずつ開けていくと全部、KQのペアとなる。
歴史的経過
ニックトロストが1964年”3 Pet Secrets"で発表。最初は"Court Conclave"その後"Matched Picture Cards"に変わる。
原案の原理にいくつか気になる点、12枚の絵札を使うと言いながら1枚はトップに残し、残りの11枚を12枚として演じている。この11枚は分かりやすい配列なため表を見せられない。もっと大きな問題点はいったんパケットをデックのトップに乗せなければならない。これが不自然。
原理の最初の改案者が加藤英夫。デックを使わず12枚絵札のみ、また最初に表面を見せることができる。1972年日本マジックアカデミー「やさしいカード奇術」が発行、その中で「不思議なペア―」のタイトルで解説。
海外では1990年Norman Houghtonの改案で、やっと12枚の表を見せることができるセット。加藤氏の発表から18年後。1999年4月号Genii誌に8枚だけの改案がロイウォルトンの”The Apprentice Matchmaker”に発表。見習いの結婚の仲人という意味らしい。
石田氏はウォルトン作品をさらに改案し2000年Toy Box5号で「見習いキューピット」を発表
●ベストな相棒
元になる原理：1964年ニックトロストの12枚使った方法が原案。ロイウォルトンが1999年に8枚だけの方法を発表。
準備：4枚K、4枚Qを用意。順番を同じにする。例：QD、QC、QH、QS、KD、KC、KH、KS。
やり方
１．左右の手に4枚持つ。左Q、右K。裏向きに持つ。
２．右のKをテーブルに置く。左のQを重ね、4枚。
３．4枚のパケットの右に左Qから置き、右Kを乗せる。これを交互にし、右にも4枚パケットにする。
４．右のパケットを左パケットの上に乗せる。トップ1枚をボトム、次のトップ2枚をボトムにまわす。
５．トップ2枚を表にしてペアとして違うことを示し、テーブルに置く。次の2枚も表にし、テーブルの2枚の上に置く、残り2枚を置き、最後の2枚を置く。
６．トップ1枚をボトム、次のトップ2枚をボトム。
７．トップ二枚を表にすると黒のKKのペア（またはQQ）、このペアを左側に横向きで置き、客側に押し手広げる。
８．トップ2枚を表にして客側に横向きに置く。3番目は演者側手前に置き、4番目は右側に置くが、広げる際に手前に広げる。
９．左側2枚を手前側2枚に重ねる。客側2枚を右側2枚に重ねる。
10．右側4枚を手前4枚に重ねる。
11．8枚を取り、右側ジョグの4枚を取り、下にまわす。
12．トップから2枚ずつ開けていくと全部、KQのペアとなる。
歴史的経過
ニックトロストが1964年”3 Pet Secrets"で発表。最初は"Court Conclave"その後"Matched Picture Cards"に変わる。
原案の原理にいくつか気になる点、12枚の絵札を使うと言いながら1枚はトップに残し、残りの11枚を12枚として演じている。この11枚は分かりやすい配列なため表を見せられない。もっと大きな問題点はいったんパケットをデックのトップに乗せなければならない。これが不自然。
原理の最初の改案者が加藤英夫。デックを使わず12枚絵札のみ、また最初に表面を見せることができる。1972年日本マジックアカデミー「やさしいカード奇術」が発行、その中で「不思議なペア―」のタイトルで解説。
海外では1990年Norman Houghtonの改案で、やっと12枚の表を見せることができるセット。加藤氏の発表から18年後。1999年4月号Genii誌に8枚だけの改案がロイウォルトンの”The Apprentice Matchmaker”に発表。見習いの結婚の仲人という意味らしい。
石田氏はウォルトン作品をさらに改案し2000年Toy Box5号で「見習いキューピット」を発表
https://frenchdrop.com/column/?page=ishida/079
主題と位置づけ
スロップシャフルは表裏が混ざったように見せても最終的に同じ向きに揃い、観客のカードだけが逆向きで現れる現象。見た目がトライアンフに似るが、発表年はスロップが先（1937年）でトライアンフは1946年であり、系統的には別物とされる。
名称とクレジットの変遷
初出は1937年の冊子（John Braun & Stewart Judah 共著）で Sid Lorraine の考案として掲載されたが、その後約50年は発表物で作者クレジットが付されないことが多かった。
「Slop(p) Shuffle」という名称は当初使われず、Martin Gardner（1940）がこの名称を採用して以降に一般化した。1988年頃から再びSid Lorraineのクレジット表記が定着し始める（T. A. Watersらの文献が一因）。
系譜と先行例
表裏操作の原理自体は古く、1914年の DeLand「Inverto」、1919年の Jordan「Ultimo」などに先行例があるが、スロップは実用性（速さ・単純さ）と「観客のカードだけが逆向きになる」現象の導入で画期的だった。
「デック半分をひっくり返す」手法の多様性
1937〜1949（第1期）は各作者が異なる「半分反転」の手法を提案し、手順の差異が顕著。主要年表（抜粋）には 1937 Sid Lorraine、1940 Martin Gardner、1940〜48 複数の改案、1949 Gardner の別案、1951 柴田直光、1976 Ruckerbaumer、1997 Nick Trost などが列記されている。
ハーフパスでの反転法が文献に乏しい点は意外。多くの改案は「半分の反転方法」に工夫が集中している。
年代区分（石田の分類）
第1期（1937–1949）発展期：多様な改案と応用が登場。
第2期（1950–1974）休止期：新作発表が減るが異なる発想（左右両手の反転、順次戻すタイプ）が現れる。
第3期（1975–現在）再発展期：Sadowitz、Leclair、Eric Meadらの応用、並びに日本の独創的改案（橋本昌也、ジミー忍、デビッド・ネイバー等）が登場。
注目すべき個別作品（石田が面白いとした3作）
ジミー忍（1976年頃にジョニー広瀬経由で紹介） — 最終の半分反転操作が不要にもかかわらず全て揃う非常にマニア向けの方法（未解説）。
デビッド・ネイバー（1993） — 特殊な差込みとスロップで4枚のAが表向きで揃い、結果としてロイヤルストレートフラッシュ群が整列する発想（詳細は作者が未発見のため独自に再構成予定）。
橋本昌也（2010） — 右手に取る動作が本当に表裏混在しているかのように見える巧妙な手順。2010年例会で発表、2010年11月「奇術探究」第7号で解説あり。
重要文献・出典関係の問題点
1937年初出以来、発案者クレジットの消失や、ヒューガード＆ブラウエ『Expert Card Technique』における出典不明・改変解説（他者の見せ物を推理で記述した問題）など、出典確認が難しい事例が多い。
一部の早期作品（例：ブラウエの赤黒分離案）の真の考案者が不明のまま残る点を指摘。
総括・今後の動向
石田は自身でもマニア向けスロップ作品を執筆し、未発表のままだった素材をToy Box 15号などで発表予定とするなど、再検討と整理の作業が続いている。
日本の改案群は海外にまだ十分知られておらず、発表・紹介の意義を強調している。
主題と位置づけ
スロップシャフルは表裏が混ざったように見せても最終的に同じ向きに揃い、観客のカードだけが逆向きで現れる現象。見た目がトライアンフに似るが、発表年はスロップが先（1937年）でトライアンフは1946年であり、系統的には別物とされる。
名称とクレジットの変遷
初出は1937年の冊子（John Braun & Stewart Judah 共著）で Sid Lorraine の考案として掲載されたが、その後約50年は発表物で作者クレジットが付されないことが多かった。
「Slop(p) Shuffle」という名称は当初使われず、Martin Gardner（1940）がこの名称を採用して以降に一般化した。1988年頃から再びSid Lorraineのクレジット表記が定着し始める（T. A. Watersらの文献が一因）。
系譜と先行例
表裏操作の原理自体は古く、1914年の DeLand「Inverto」、1919年の Jordan「Ultimo」などに先行例があるが、スロップは実用性（速さ・単純さ）と「観客のカードだけが逆向きになる」現象の導入で画期的だった。
「デック半分をひっくり返す」手法の多様性
1937〜1949（第1期）は各作者が異なる「半分反転」の手法を提案し、手順の差異が顕著。主要年表（抜粋）には 1937 Sid Lorraine、1940 Martin Gardner、1940〜48 複数の改案、1949 Gardner の別案、1951 柴田直光、1976 Ruckerbaumer、1997 Nick Trost などが列記されている。
ハーフパスでの反転法が文献に乏しい点は意外。多くの改案は「半分の反転方法」に工夫が集中している。
年代区分（石田の分類）
第1期（1937–1949）発展期：多様な改案と応用が登場。
第2期（1950–1974）休止期：新作発表が減るが異なる発想（左右両手の反転、順次戻すタイプ）が現れる。
第3期（1975–現在）再発展期：Sadowitz、Leclair、Eric Meadらの応用、並びに日本の独創的改案（橋本昌也、ジミー忍、デビッド・ネイバー等）が登場。
注目すべき個別作品（石田が面白いとした3作）
ジミー忍（1976年頃にジョニー広瀬経由で紹介） — 最終の半分反転操作が不要にもかかわらず全て揃う非常にマニア向けの方法（未解説）。
デビッド・ネイバー（1993） — 特殊な差込みとスロップで4枚のAが表向きで揃い、結果としてロイヤルストレートフラッシュ群が整列する発想（詳細は作者が未発見のため独自に再構成予定）。
橋本昌也（2010） — 右手に取る動作が本当に表裏混在しているかのように見える巧妙な手順。2010年例会で発表、2010年11月「奇術探究」第7号で解説あり。
重要文献・出典関係の問題点
1937年初出以来、発案者クレジットの消失や、ヒューガード＆ブラウエ『Expert Card Technique』における出典不明・改変解説（他者の見せ物を推理で記述した問題）など、出典確認が難しい事例が多い。
一部の早期作品（例：ブラウエの赤黒分離案）の真の考案者が不明のまま残る点を指摘。
総括・今後の動向
石田は自身でもマニア向けスロップ作品を執筆し、未発表のままだった素材をToy Box 15号などで発表予定とするなど、再検討と整理の作業が続いている。
日本の改案群は海外にまだ十分知られておらず、発表・紹介の意義を強調している。
パケットトリックの歴史と意外性 要約
概要
対象は「パケットトリック」（フルデック未満の枚数を使うカード・トリック）。石田コラムは前編で定義・系譜・代表作・日本での事情、後編で大ヒット作・主要作家・起源の古さを整理している。
主題は「パケットトリックの意外な古さと多様性」「1970年代〜1980年代の黄金期」「日本の重要な貢献」の三点。
定義と分類上の問題点
明確な枚数基準は流動的。典型的には2〜12枚程度とされるが、20枚近く使う例もあり境界が曖昧。
「デックを使うか否か」「特殊印刷カードを使用するか」「現象の種類」により分類が難しい。
結果として「パケットトリック」と呼ぶか否かは文献や慣例で差が出る。
年代的系譜と黄金期
早期起源：最古は16世紀〜17世紀に遡る記述（1593年・1612年の例）。1905〜1909年にも多数の商品化が存在。
1930年代以降：トリックカードからレギュラーカード＋技術へ移行。1950〜60年代に基本的なフォールスカウント類が整う。
黄金期：1970年代中頃〜1980年代中頃。大量の商品化と改案が集中。エルムズリーカウントやハーマンカウント、各種商用品が普及しジャンルが成熟。
代表作と傾向
国際的な代表作例：Twisting the Aces（Vernon）、Wild Card（Peter Kane/Frank Garcia）、Color Monte（Jim Temple）、B’ Wave 等。
石田の調査でのTop10や読者投票の傾向では、イラスト系は少なく、技術的なインパクト重視の作品が上位に入る傾向。
日本市場ではイラストを用いた商品化が多く、二川滋夫、トン小野坂、荒井晋一、鈴木徹、赤沼敏夫ら多くの独創的作例が存在する。
注目事例と作家
Color Monte（Emerson & West/Jim Temple）：約50万部の大ヒットとされる三カード・ギャンブル物。単純で派手なビジュアルが受けた。
Phil Goldstein：多数のパケット作を残し、B’ Wave や多数の未刊作品で影響力が大きい。
日本の代表的改案：ジミー忍、橋本昌也、柴田直光らが海外未発表の妙案を提示。橋本の「Convincing Slop Shuffle」等、実演的に優れた独自手法が登場。
1937年 Sid Lorraine の「Slop Shuffle」初出とその後のクレジット欠落問題。1940年代に多数の改案が生じ、1975年以降に再発展。
総括的示唆
パケットトリックは想像以上に歴史が古く、形式（トリックカード vs レギュラーカード）、技術（各種カウントやパーム）、商業化（商品化と大量販売）という三軸で進化してきた。
日本は単なる消費地ではなく創作面でも重要な貢献を果たしている。
研究的・資料的な課題として、初出クレジットの追跡と各改案の出典確認（特に1930〜50年代の混乱）が残る。
概要
対象は「パケットトリック」（フルデック未満の枚数を使うカード・トリック）。石田コラムは前編で定義・系譜・代表作・日本での事情、後編で大ヒット作・主要作家・起源の古さを整理している。
主題は「パケットトリックの意外な古さと多様性」「1970年代〜1980年代の黄金期」「日本の重要な貢献」の三点。
定義と分類上の問題点
明確な枚数基準は流動的。典型的には2〜12枚程度とされるが、20枚近く使う例もあり境界が曖昧。
「デックを使うか否か」「特殊印刷カードを使用するか」「現象の種類」により分類が難しい。
結果として「パケットトリック」と呼ぶか否かは文献や慣例で差が出る。
年代的系譜と黄金期
早期起源：最古は16世紀〜17世紀に遡る記述（1593年・1612年の例）。1905〜1909年にも多数の商品化が存在。
1930年代以降：トリックカードからレギュラーカード＋技術へ移行。1950〜60年代に基本的なフォールスカウント類が整う。
黄金期：1970年代中頃〜1980年代中頃。大量の商品化と改案が集中。エルムズリーカウントやハーマンカウント、各種商用品が普及しジャンルが成熟。
代表作と傾向
国際的な代表作例：Twisting the Aces（Vernon）、Wild Card（Peter Kane/Frank Garcia）、Color Monte（Jim Temple）、B’ Wave 等。
石田の調査でのTop10や読者投票の傾向では、イラスト系は少なく、技術的なインパクト重視の作品が上位に入る傾向。
日本市場ではイラストを用いた商品化が多く、二川滋夫、トン小野坂、荒井晋一、鈴木徹、赤沼敏夫ら多くの独創的作例が存在する。
注目事例と作家
Color Monte（Emerson & West/Jim Temple）：約50万部の大ヒットとされる三カード・ギャンブル物。単純で派手なビジュアルが受けた。
Phil Goldstein：多数のパケット作を残し、B’ Wave や多数の未刊作品で影響力が大きい。
日本の代表的改案：ジミー忍、橋本昌也、柴田直光らが海外未発表の妙案を提示。橋本の「Convincing Slop Shuffle」等、実演的に優れた独自手法が登場。
1937年 Sid Lorraine の「Slop Shuffle」初出とその後のクレジット欠落問題。1940年代に多数の改案が生じ、1975年以降に再発展。
総括的示唆
パケットトリックは想像以上に歴史が古く、形式（トリックカード vs レギュラーカード）、技術（各種カウントやパーム）、商業化（商品化と大量販売）という三軸で進化してきた。
日本は単なる消費地ではなく創作面でも重要な貢献を果たしている。
研究的・資料的な課題として、初出クレジットの追跡と各改案の出典確認（特に1930〜50年代の混乱）が残る。
フレンチドロップ Column 第5回「ダブルリフトについて考える」（2002.9.25）
以下、要点を章立てで少し詳しくまとめました。
1. 来日レクチャー体験
2002年7月23日：Joshua Jay氏による特別レクチャー
マルティプル・プッシュオフを実演
デックのトップを親指でスムーズに押し出すと、自然に2枚→3枚→4枚…と繰り返し「複数枚リフト」を可能にする技術
あやしい動作や違和感が一切なく、純粋に“枚数が増える瞬間”の驚きを味わえる
2001年末：Lea Asher氏の講演
ダブル・ターンオーバー・フラリッシュと呼ぶべき、空中高く弾き上げてキャッチする“超アクロバティック”な手順
フラリッシュ（見せモノ的動き）としての魅力と、大胆さが印象的
2. ダブルリフトへの３つの疑問点
理想的なダブルリフトの動作とは何か？
書籍で解説される「Dai Vernon方式」は本当に最良か？
昭和50年頃まで日本で一般的だった「手前端を持ち上げて縦に返す」方式は、本当にあらゆる場面で劣るのか？
3. 歴史的調査の必要項目
1920年代以前に「Double Lift」と呼ばれた手法の記録や文献
1920年代〜30年代における Dai Vernon／Arthur Feilly／Cliff Green らの寄与とその詳細
日本流“縦返し”方式の海外起源と国内普及の経路
4. 著者自身の分類作業の概要
GET READY（予備動作）が必要なもの vs. ダイレクトに2枚持ち上げるもの
完全なナチュラル系 vs. フラリッシュ系（見せ方重視） vs. 派手／特殊系
指の当て方（親指の位置や角度）によるバリエーション分類
5. 初期発祥例と今後の展望
1716年リチャード・ニーブの著作に類似操作の記述あり
1920年代前後、技法名として「Double Lift」が定着し始めた可能性
現存文献をさらに漁り、最初に詳細な手順を明文化した書物を探す必要
Dai Vernonの怪物ぶりを究明する第一歩として、ダブルリフト研究を位置づけ
以下、要点を章立てで少し詳しくまとめました。
1. 来日レクチャー体験
2002年7月23日：Joshua Jay氏による特別レクチャー
マルティプル・プッシュオフを実演
デックのトップを親指でスムーズに押し出すと、自然に2枚→3枚→4枚…と繰り返し「複数枚リフト」を可能にする技術
あやしい動作や違和感が一切なく、純粋に“枚数が増える瞬間”の驚きを味わえる
2001年末：Lea Asher氏の講演
ダブル・ターンオーバー・フラリッシュと呼ぶべき、空中高く弾き上げてキャッチする“超アクロバティック”な手順
フラリッシュ（見せモノ的動き）としての魅力と、大胆さが印象的
2. ダブルリフトへの３つの疑問点
理想的なダブルリフトの動作とは何か？
書籍で解説される「Dai Vernon方式」は本当に最良か？
昭和50年頃まで日本で一般的だった「手前端を持ち上げて縦に返す」方式は、本当にあらゆる場面で劣るのか？
3. 歴史的調査の必要項目
1920年代以前に「Double Lift」と呼ばれた手法の記録や文献
1920年代〜30年代における Dai Vernon／Arthur Feilly／Cliff Green らの寄与とその詳細
日本流“縦返し”方式の海外起源と国内普及の経路
4. 著者自身の分類作業の概要
GET READY（予備動作）が必要なもの vs. ダイレクトに2枚持ち上げるもの
完全なナチュラル系 vs. フラリッシュ系（見せ方重視） vs. 派手／特殊系
指の当て方（親指の位置や角度）によるバリエーション分類
5. 初期発祥例と今後の展望
1716年リチャード・ニーブの著作に類似操作の記述あり
1920年代前後、技法名として「Double Lift」が定着し始めた可能性
現存文献をさらに漁り、最初に詳細な手順を明文化した書物を探す必要
Dai Vernonの怪物ぶりを究明する第一歩として、ダブルリフト研究を位置づけ
リチャード・ニーブ（Richard Neve）による最初の「ダブルリフト的操作」の文献上の登場は、1716年に刊行された“The Merry Companion”とされます。この書物では、２枚のカードを一度に扱うトリックが記述されているものの、その手順や名称、図解など詳細な解説は一切残されていません。また、同書の復刻版も発行されておらず、当時どのように演じられていたかは不明です。
その後、この操作に関する文献は約140年もの間見られず、1853年にフランスのモーリス・ポンザン（Ponsin）が出版した魔術書に初めて再登場します。ただし、ニーブの“The Merry Companion”とは直接の連続性が確認できず、どの程度当該技法を継承していたかは判然としません。さらに1934年にはジャン・ヒューガードの“Card Manipulations No. 2”においてポンザン版の内容が英訳・解説されるかたちで紹介されていますが、こちらも手順のオリジナルはポンザン同様に不明瞭なままです。
その後、この操作に関する文献は約140年もの間見られず、1853年にフランスのモーリス・ポンザン（Ponsin）が出版した魔術書に初めて再登場します。ただし、ニーブの“The Merry Companion”とは直接の連続性が確認できず、どの程度当該技法を継承していたかは判然としません。さらに1934年にはジャン・ヒューガードの“Card Manipulations No. 2”においてポンザン版の内容が英訳・解説されるかたちで紹介されていますが、こちらも手順のオリジナルはポンザン同様に不明瞭なままです。
フレンチドロップ Column 第13回「クロースアップ・マジックという用語について」(2004.1.10)
1. きっかけ：RRMC例会での混乱
2003年12月のRRMC会合で、「クロースアップ・マジック」という用語の発音・表記が話題に
上海大会の中国司会者が「クロースアップ」と発音し、日本語話者には別の語感を連想させると指摘
2. 「クローズアップ」と「クロースアップ」の表記・発音問題
カタカナ化の混乱
英和辞典では “close-up” の発音表記として「クロースアップ」に近い記載
国語辞典では「クローズアップ」にも言及し、「正しくはクロースアップ」と注記
広辞苑では「クローズアップはクロースアップの言化」とユニークに説明
形容詞/副詞 vs. 動詞としての発音区別
close（閉じる）の動詞は /cloʊz/（ズ音）、形容詞は /kloʊs/（ス音）
名詞的用法での /kloʊs/ vs. /cloʊz/ の混在が外来語として定着
3. 日本での用語定着プロセス
1960〜70年代：主に「テーブルマジック」が使用され、「クロースアップ」は稀
1974年：松田道弘著『クロースアップ・マジック』で初のタイトル採用
1978年：第1回世界クロースアップ・マジック大会開催
1982年〜：箱根クロースアップ・マジック祭（マジックランド主催）
1984年〜：日本クロースアップ大賞コンテスト開始
1980年代以降：業界では「クロースアップ・マジック」が常用化し、「クローズアップ」は次第に陰に
4. 英語圏での用語使用例
1920年代：Dai Vernonらがニュー・ヨークで“close-up magic”を実践
1934年：Jean Hugard著 “Close-up Magic” が書名初出と推定
それ以前の雑誌や書籍での用語使用も調査が必要
5. 余談：語呂合わせ説
「クロースアップ」は「cloth-up（テーブルクロス上）」説など諸説あり
外来語誤用の例として「デバート／デパート」「ナプキン／ナフキン」などと比較
1. きっかけ：RRMC例会での混乱
2003年12月のRRMC会合で、「クロースアップ・マジック」という用語の発音・表記が話題に
上海大会の中国司会者が「クロースアップ」と発音し、日本語話者には別の語感を連想させると指摘
2. 「クローズアップ」と「クロースアップ」の表記・発音問題
カタカナ化の混乱
英和辞典では “close-up” の発音表記として「クロースアップ」に近い記載
国語辞典では「クローズアップ」にも言及し、「正しくはクロースアップ」と注記
広辞苑では「クローズアップはクロースアップの言化」とユニークに説明
形容詞/副詞 vs. 動詞としての発音区別
close（閉じる）の動詞は /cloʊz/（ズ音）、形容詞は /kloʊs/（ス音）
名詞的用法での /kloʊs/ vs. /cloʊz/ の混在が外来語として定着
3. 日本での用語定着プロセス
1960〜70年代：主に「テーブルマジック」が使用され、「クロースアップ」は稀
1974年：松田道弘著『クロースアップ・マジック』で初のタイトル採用
1978年：第1回世界クロースアップ・マジック大会開催
1982年〜：箱根クロースアップ・マジック祭（マジックランド主催）
1984年〜：日本クロースアップ大賞コンテスト開始
1980年代以降：業界では「クロースアップ・マジック」が常用化し、「クローズアップ」は次第に陰に
4. 英語圏での用語使用例
1920年代：Dai Vernonらがニュー・ヨークで“close-up magic”を実践
1934年：Jean Hugard著 “Close-up Magic” が書名初出と推定
それ以前の雑誌や書籍での用語使用も調査が必要
5. 余談：語呂合わせ説
「クロースアップ」は「cloth-up（テーブルクロス上）」説など諸説あり
外来語誤用の例として「デバート／デパート」「ナプキン／ナフキン」などと比較
「Red Hot Mama」というタイトルは、いくつかの要素が合わさって名付けられています。
「Hot Mama」というスラング もともと米国の俗語で「Hot Mama」は“魅力的な女性”を指す言い回しです。セクシーさや華やかさを演出する語感があります。
赤裏になるカード トリックでは、青裏デック（または赤裏デック）を使い、観客のカードだけが「赤裏（Red）」に変化します。この「赤くなる（Red）」＋「熱を帯びた（Hot）」というイメージが重なります。
女性観客によるタップ Michael Ammar版では、まさに“ママ”＝女性客にデックの上をタップ（おまじない）してもらうギミックが組み込まれています。こうして「Red Hot（赤く熱く）なカード」を「Mama（特別な女性）が起こす」という演出が完成します。
タイトルの初出 このタイトルが最初に登場したのは1980年、Phil Willmarth編集の『Jim Ryan Close-up Vol. 2』においてJim Ryanが「Red Hot Mama」として発表したのが本格的な初出とされています（同内容は1981年11月のMUM誌「Jim Ryan特集号」でも再録）。
まとめると―― 「Red Hot Mama」という名前は、 ・“Hot Mama”という魅力的な女性を表す米俗語 ・カードが赤く“熱を帯びる”色変化 ・演者が女性客（Mama）に仕掛けを行わせる演出 という３要素が融合して付けられたものです。
「Hot Mama」というスラング もともと米国の俗語で「Hot Mama」は“魅力的な女性”を指す言い回しです。セクシーさや華やかさを演出する語感があります。
赤裏になるカード トリックでは、青裏デック（または赤裏デック）を使い、観客のカードだけが「赤裏（Red）」に変化します。この「赤くなる（Red）」＋「熱を帯びた（Hot）」というイメージが重なります。
女性観客によるタップ Michael Ammar版では、まさに“ママ”＝女性客にデックの上をタップ（おまじない）してもらうギミックが組み込まれています。こうして「Red Hot（赤く熱く）なカード」を「Mama（特別な女性）が起こす」という演出が完成します。
タイトルの初出 このタイトルが最初に登場したのは1980年、Phil Willmarth編集の『Jim Ryan Close-up Vol. 2』においてJim Ryanが「Red Hot Mama」として発表したのが本格的な初出とされています（同内容は1981年11月のMUM誌「Jim Ryan特集号」でも再録）。
まとめると―― 「Red Hot Mama」という名前は、 ・“Hot Mama”という魅力的な女性を表す米俗語 ・カードが赤く“熱を帯びる”色変化 ・演者が女性客（Mama）に仕掛けを行わせる演出 という３要素が融合して付けられたものです。
■ 第18回「シカゴ・オープナーとレッド・ホット・ママ」（2005.2.2up）
はじめに
2005年1月22日、Jeffrey Ratta来日レクチャー会場での発見： ・Daryl’s DVDの「シカゴ・オープナー」とMichael AmmarのDVDの「レッド・ホット・ママ」がほぼ同一内容 ・原案は1960年代のAl Leech作「レッド・ホット・ママ」の可能性
両作品の共通手順
観客にカードを自由に取らせ、ヒンズーシャフルで戻す
おまじないジェスチャー後、リボンスプレッドで１枚だけ裏色が変化
２度目は表色変化せず、最初に取り出した色替わりカードに気づかせ、新たに選んだカードに変化
演出・ハンドリングの違い
おまじないの仕草：Darylは両手ジェスチャー、Ammarは女性客の指タップ
デック裏色：Darylは赤、Ammarは青（カードが赤裏になる演出意図）
第1段・第2段のスプレッド位置やDL／DLバリエーションの差異
最終的な表現のニュアンス（“ワン・カード”の強調、客との掛け合い、ポーズの取り方など）
「シカゴ・オープナー」本来版 vs. 「シカゴ・スタイル」
1972年Frank Garcia『Million Dollar Card Secrets』収録版（オリジナルはFrank Eberhart作） ・第2段：同じカードが２枚になる現象
1973年Garcia『Super-Subtle Card Miracles』（続編）で「シカゴ・スタイル」として解説された結末が、以降「シカゴ・オープナー」の主流に
日本語訳『カード奇術の秘密』（1976年）以降、全て「シカゴ・オープナー」というタイトルで「スタイル版」の手順が広まった
原案者の系譜
Frank Eberhart → Jim Ryan（“Double Surprise,” MUM）→ Al Leech（“Red Hot Mama”）
Frank Garciaが「シカゴ・オープナー」の名称を付与
Dai Vernon版「Hot Card」や Max Katz版「Double Surprise」との関連
各版の特徴とおすすめ
Malini Ram, Dan Freshman らの細かなバリエーション
オリジナルのシンプルさを保つなら、Daryl & Ammar版のDVD演技が最適
はじめに
2005年1月22日、Jeffrey Ratta来日レクチャー会場での発見： ・Daryl’s DVDの「シカゴ・オープナー」とMichael AmmarのDVDの「レッド・ホット・ママ」がほぼ同一内容 ・原案は1960年代のAl Leech作「レッド・ホット・ママ」の可能性
両作品の共通手順
観客にカードを自由に取らせ、ヒンズーシャフルで戻す
おまじないジェスチャー後、リボンスプレッドで１枚だけ裏色が変化
２度目は表色変化せず、最初に取り出した色替わりカードに気づかせ、新たに選んだカードに変化
演出・ハンドリングの違い
おまじないの仕草：Darylは両手ジェスチャー、Ammarは女性客の指タップ
デック裏色：Darylは赤、Ammarは青（カードが赤裏になる演出意図）
第1段・第2段のスプレッド位置やDL／DLバリエーションの差異
最終的な表現のニュアンス（“ワン・カード”の強調、客との掛け合い、ポーズの取り方など）
「シカゴ・オープナー」本来版 vs. 「シカゴ・スタイル」
1972年Frank Garcia『Million Dollar Card Secrets』収録版（オリジナルはFrank Eberhart作） ・第2段：同じカードが２枚になる現象
1973年Garcia『Super-Subtle Card Miracles』（続編）で「シカゴ・スタイル」として解説された結末が、以降「シカゴ・オープナー」の主流に
日本語訳『カード奇術の秘密』（1976年）以降、全て「シカゴ・オープナー」というタイトルで「スタイル版」の手順が広まった
原案者の系譜
Frank Eberhart → Jim Ryan（“Double Surprise,” MUM）→ Al Leech（“Red Hot Mama”）
Frank Garciaが「シカゴ・オープナー」の名称を付与
Dai Vernon版「Hot Card」や Max Katz版「Double Surprise」との関連
各版の特徴とおすすめ
Malini Ram, Dan Freshman らの細かなバリエーション
オリジナルのシンプルさを保つなら、Daryl & Ammar版のDVD演技が最適
第19回 フォーエース・アセンブリー （1960年までのクラシック・フォーエースとコリンズ・フォーエース）(2005.5.29up)
1. はじめに
1960〜70年代、代表的なカードマジックは「フォーエース・アセンブリー」。
90年代以降、スローモーション系や複雑派の流行で演者が減少。
一般客向けには、クラシック版が依然インパクト大。
2. 現象の基本構成
4枚のエースを示し、裏向きにテーブルに並べる
各エースの上に3枚ずつカードを重ねる
観客が1つ選ぶ
他3パケットからエースが消え、選ばれたパケットに4枚集結
3. 先史から19世紀後半まで
1740年：Guyotが「4枚のエースをデック中で集める」初のアセンブリー原理を発表
1853年：Ponsin著でフェイスト・デックによる4エースの方法を紹介
1876年：Hoffmann『Modern Magic』に同手法を転載
4. 20世紀初期の「クラシック・フォーエース」
1902年：Ardnase『Expert at the Card Table』の"Exclusive Coterie"（2パーム+2変化）
1902年：Lang Neil『Modern Conjurer』の“Charles Bertram’s FAE”
1909年：Nelson DownsがDFカード6枚で全表向きのまま演じるバリエーション
1914〜15年：Stanley Collinsが3枚重ね→グライドで消失を見せる原型を発表
1919年：Charles Jordanがジョーカー転換の意外性を加えた“Thirty Card Mysteries”
5. 1930年代〜40年代の進化
1932年：Vernon『Forset Floss』小冊子で“2枚表向き変化”方式
1938年：Leipzigの双変化系“Double Surprise”／Marlo“Hot Card”系を含む多彩な色変化
1940年：Hugard & Braue『Expert Card Technique』に7種のFAEルーチンを収録
1940年：MillerがVernon直伝の“Solo Flight Aces”を発表（後にLeipzig版が文献化）
1941年：Vernonがスローモーション版を初披露
6. シークレット・アディションの登場
1945年：Braueのシークレット・アディション発表
1948年：Marlo『Card College Vol.5』でシンプルかつ実用的な“Simplex Aces”を解説
以降、FAEは演じやすいセルフワーキングから複雑トリックまで幅広い作品を生む
7. Collinsの「フォーエース」
1914年誌上発表：真の“Collins FAE”の初形態（グライドによる消失+3重パケット）
1915年『Original Magical Creations』：封筒使用の不可能性演出
1935年：Vernon『Greater Magic』に“Expert’s Aces”として再録
8. 1950年代の新機軸
1950年：‘Stars of Magic’でスローモーション版全盛に
1953年：Marloの“Hot Card Assembly”が赤裏現象で異色展開
1957年：Elmsley‘1002nd Aces’（マジシャンズチョイス不要）
1958年：Lynn Shields“Ultimate Aces”（4枚赤裏使用）
9. 1960年以降の流れ
Progressive Aces、Reverse Assemblies、Open Assembliesなど多彩化
FAEはマニア向けよりも一般向けに適した作品として再評価の兆し
1. はじめに
1960〜70年代、代表的なカードマジックは「フォーエース・アセンブリー」。
90年代以降、スローモーション系や複雑派の流行で演者が減少。
一般客向けには、クラシック版が依然インパクト大。
2. 現象の基本構成
4枚のエースを示し、裏向きにテーブルに並べる
各エースの上に3枚ずつカードを重ねる
観客が1つ選ぶ
他3パケットからエースが消え、選ばれたパケットに4枚集結
3. 先史から19世紀後半まで
1740年：Guyotが「4枚のエースをデック中で集める」初のアセンブリー原理を発表
1853年：Ponsin著でフェイスト・デックによる4エースの方法を紹介
1876年：Hoffmann『Modern Magic』に同手法を転載
4. 20世紀初期の「クラシック・フォーエース」
1902年：Ardnase『Expert at the Card Table』の"Exclusive Coterie"（2パーム+2変化）
1902年：Lang Neil『Modern Conjurer』の“Charles Bertram’s FAE”
1909年：Nelson DownsがDFカード6枚で全表向きのまま演じるバリエーション
1914〜15年：Stanley Collinsが3枚重ね→グライドで消失を見せる原型を発表
1919年：Charles Jordanがジョーカー転換の意外性を加えた“Thirty Card Mysteries”
5. 1930年代〜40年代の進化
1932年：Vernon『Forset Floss』小冊子で“2枚表向き変化”方式
1938年：Leipzigの双変化系“Double Surprise”／Marlo“Hot Card”系を含む多彩な色変化
1940年：Hugard & Braue『Expert Card Technique』に7種のFAEルーチンを収録
1940年：MillerがVernon直伝の“Solo Flight Aces”を発表（後にLeipzig版が文献化）
1941年：Vernonがスローモーション版を初披露
6. シークレット・アディションの登場
1945年：Braueのシークレット・アディション発表
1948年：Marlo『Card College Vol.5』でシンプルかつ実用的な“Simplex Aces”を解説
以降、FAEは演じやすいセルフワーキングから複雑トリックまで幅広い作品を生む
7. Collinsの「フォーエース」
1914年誌上発表：真の“Collins FAE”の初形態（グライドによる消失+3重パケット）
1915年『Original Magical Creations』：封筒使用の不可能性演出
1935年：Vernon『Greater Magic』に“Expert’s Aces”として再録
8. 1950年代の新機軸
1950年：‘Stars of Magic’でスローモーション版全盛に
1953年：Marloの“Hot Card Assembly”が赤裏現象で異色展開
1957年：Elmsley‘1002nd Aces’（マジシャンズチョイス不要）
1958年：Lynn Shields“Ultimate Aces”（4枚赤裏使用）
9. 1960年以降の流れ
Progressive Aces、Reverse Assemblies、Open Assembliesなど多彩化
FAEはマニア向けよりも一般向けに適した作品として再評価の兆し
FAE（フォーエース・アセンブリー）とは
英語名称 Four Aces Assembly
現象の内容 4枚のエースをそれぞれ別々に裏向きでテーブル上に並べ、観客に１つ選んでもらうと… 他の３つのパケットからエースが消え、選ばれたパケットに４枚のエースが一か所に集まっている、という不思議なトリックです。
マジック史上の位置づけ 19世紀末〜20世紀初頭に考案され、1853年のPonsin、1876年のHoffmannなどで初出。 以降、Ardnase、Vernon、Collins、Marloらが改案を重ね、現在に至るまでカード・マジックの古典的定番となっています。
呼称の略称 マジシャン同士では便宜的に「FAE」と略されることが多く、特にマニアックな文献やレクチャー資料で使われます。
英語名称 Four Aces Assembly
現象の内容 4枚のエースをそれぞれ別々に裏向きでテーブル上に並べ、観客に１つ選んでもらうと… 他の３つのパケットからエースが消え、選ばれたパケットに４枚のエースが一か所に集まっている、という不思議なトリックです。
マジック史上の位置づけ 19世紀末〜20世紀初頭に考案され、1853年のPonsin、1876年のHoffmannなどで初出。 以降、Ardnase、Vernon、Collins、Marloらが改案を重ね、現在に至るまでカード・マジックの古典的定番となっています。
呼称の略称 マジシャン同士では便宜的に「FAE」と略されることが多く、特にマニアックな文献やレクチャー資料で使われます。
Ponsinの「フォーエース・アセンブリー」（『Modern Magic』版）
Hoffmannの『Modern Magic』(1876) に収録されたPonsin流は、フェイスト・デック（デック下半分を表向きにしておく準備）を活用した最古のアセンブリ手順です。
手順概要
デックを裏向きに持ち、下半分だけ表向き（フェイスト・デック）となるように用意する
4枚のエースを抜き出し、観客に示してから表向きに並べる
各エースの上に3枚ずつカードを重ねる
観客に好きなパケットを1つ選ばせる
「残り3つのパケットにはエースはありません」と宣言し、取り除く
最後に残ったパケットをめくるとそこに4枚のエースが集結している
フェイスト・デックの仕組み 下半分を表向きにしておくことで、最初に並べた4つの裏向きエースの下にそれぞれエースが重複して配置される。観客が選ばなかった3パケットを捨てると、必ず選ばれたパケットにだけ4枚のエースが残る仕掛けです。
【引用】 garaman’s Laboratory - Classic Four Aces (Ponsinの初出とフェイスト・デック解説)holy-garaman.ssl-lolipop.jp
Hoffmannの『Modern Magic』(1876) に収録されたPonsin流は、フェイスト・デック（デック下半分を表向きにしておく準備）を活用した最古のアセンブリ手順です。
手順概要
デックを裏向きに持ち、下半分だけ表向き（フェイスト・デック）となるように用意する
4枚のエースを抜き出し、観客に示してから表向きに並べる
各エースの上に3枚ずつカードを重ねる
観客に好きなパケットを1つ選ばせる
「残り3つのパケットにはエースはありません」と宣言し、取り除く
最後に残ったパケットをめくるとそこに4枚のエースが集結している
フェイスト・デックの仕組み 下半分を表向きにしておくことで、最初に並べた4つの裏向きエースの下にそれぞれエースが重複して配置される。観客が選ばなかった3パケットを捨てると、必ず選ばれたパケットにだけ4枚のエースが残る仕掛けです。
【引用】 garaman’s Laboratory - Classic Four Aces (Ponsinの初出とフェイスト・デック解説)holy-garaman.ssl-lolipop.jp
コラム21「Dr. ジェイコブ・デイリーのラスト・トリックの不可解な部分」(2005.9.23up)
『Easy to Master Card Miracles Vol.2』(Michael Ammar) と 『Encyclopedia of Card Sleights Vol.7』(Daryl) の両DVDには、同じタイトルで「Dr. ジェイコブ・デイリーのラスト・トリック」が解説されています。しかし…
タイトルは同じでも、採用しているハンドリングがまったく異なる
しかも両者とも、Dr. デイリーの「本来の方法」ではない別系統の改案になっている
これらの事実から、「Dr. デイリー自身が考案した本来の手順は何か？」「なぜ両DVD版は大きく変えられたのか？」という疑問が生まれます。
要点
同一タイトル・異なるメソッド
Ammar版：オリジナルに近い体裁ながら、細かな手順を省略・統合して解説。
Daryl版：より視覚的／セルフワーキング的に組み直した独自手順を採用。
Dr. デイリー本来版の謎
オリジナル・メソッドの公刊は未確認。
DVDいずれも「原典」とは異なる流派であり、真の発案者は不明。
改案系譜の検証
初出：Dr. デイリー名義の手順がいつどの媒体で発表されたか未判明。
1970–80年代：複数の海外レクチャーや小冊子で「Deily’s Last Trick」が別名義で展開。
1990年代以降：Ammar／Daryl両版に影響を与えた細分化されたバリエーション群が拡大。
歴史的経緯と今後の課題
真の「Dr. デイリー原案」を追跡するため、古書や海外誌のバックナンバー調査が必要。
各改案の技術的メリット・観客リアクションの差異を比較・分析して利点を確認する。
『Easy to Master Card Miracles Vol.2』(Michael Ammar) と 『Encyclopedia of Card Sleights Vol.7』(Daryl) の両DVDには、同じタイトルで「Dr. ジェイコブ・デイリーのラスト・トリック」が解説されています。しかし…
タイトルは同じでも、採用しているハンドリングがまったく異なる
しかも両者とも、Dr. デイリーの「本来の方法」ではない別系統の改案になっている
これらの事実から、「Dr. デイリー自身が考案した本来の手順は何か？」「なぜ両DVD版は大きく変えられたのか？」という疑問が生まれます。
要点
同一タイトル・異なるメソッド
Ammar版：オリジナルに近い体裁ながら、細かな手順を省略・統合して解説。
Daryl版：より視覚的／セルフワーキング的に組み直した独自手順を採用。
Dr. デイリー本来版の謎
オリジナル・メソッドの公刊は未確認。
DVDいずれも「原典」とは異なる流派であり、真の発案者は不明。
改案系譜の検証
初出：Dr. デイリー名義の手順がいつどの媒体で発表されたか未判明。
1970–80年代：複数の海外レクチャーや小冊子で「Deily’s Last Trick」が別名義で展開。
1990年代以降：Ammar／Daryl両版に影響を与えた細分化されたバリエーション群が拡大。
歴史的経緯と今後の課題
真の「Dr. デイリー原案」を追跡するため、古書や海外誌のバックナンバー調査が必要。
各改案の技術的メリット・観客リアクションの差異を比較・分析して利点を確認する。
第21回「Dr.デイリーのラスト・トリック」要点まとめ
現象の概要 ・４枚のエースのうち２枚をテーブルへ配り、残りの２枚と入れ替わる定番パケット・トリック。
原典以前の類似例 ・1948年クリストファー「Red & Black Aces」 ・1952年ビル・サイモン「Rapid Transit」 ・1953年マルロー「No-Glide Aces」 ⇒“手元２枚とテーブル２枚のスイッチ”は既に複数の手法が存在。
Dr.デイリー版の独自改良点
ビドルムーブで最初に４枚を示し、縦にずらして位置を確認させる演出で意外性を増強
グライドや繰り返しダブルリフトを排し、シンプルかつ自然な取り扱い
テーブル上のカードの位置を客に意識させたままクライマックスへ持っていく構成
現代DVD版（Ammar／Daryl 他）の変更 ・Dr.版の“縦スライド→確認”をカットし、代替ハンドリングを採用 ・手元のカードから先に表向ける順序に統一 ・観客の手上で見せるバリエーションを増加
日本 vs 海外の演出差 ・日本：配った２枚を左右に並べ、何度か入れ替え見せ／赤エースを愛情・金銭モチーフに扱う演出 ・海外：２枚を重ねて見せ、入れ替え動作を省略。黒エースでマーク差を際立たせる傾向
タイトル「ラスト・トリック」の由来 ・1956年にVernon著『The Dai Vernon Book of Magic』で、「Dr.デイリーが生前最後に発表した手順」として命名 ・公刊直後に逝去した事実と相まって定着
現象の概要 ・４枚のエースのうち２枚をテーブルへ配り、残りの２枚と入れ替わる定番パケット・トリック。
原典以前の類似例 ・1948年クリストファー「Red & Black Aces」 ・1952年ビル・サイモン「Rapid Transit」 ・1953年マルロー「No-Glide Aces」 ⇒“手元２枚とテーブル２枚のスイッチ”は既に複数の手法が存在。
Dr.デイリー版の独自改良点
ビドルムーブで最初に４枚を示し、縦にずらして位置を確認させる演出で意外性を増強
グライドや繰り返しダブルリフトを排し、シンプルかつ自然な取り扱い
テーブル上のカードの位置を客に意識させたままクライマックスへ持っていく構成
現代DVD版（Ammar／Daryl 他）の変更 ・Dr.版の“縦スライド→確認”をカットし、代替ハンドリングを採用 ・手元のカードから先に表向ける順序に統一 ・観客の手上で見せるバリエーションを増加
日本 vs 海外の演出差 ・日本：配った２枚を左右に並べ、何度か入れ替え見せ／赤エースを愛情・金銭モチーフに扱う演出 ・海外：２枚を重ねて見せ、入れ替え動作を省略。黒エースでマーク差を際立たせる傾向
タイトル「ラスト・トリック」の由来 ・1956年にVernon著『The Dai Vernon Book of Magic』で、「Dr.デイリーが生前最後に発表した手順」として命名 ・公刊直後に逝去した事実と相まって定着
Dai Vernon 版「Dr.デイリーのラスト・トリック」ハンドリング（修正版）
以下はDai Vernonが『The Dai Vernon Book of Magic』で紹介した、Dr.デイリーのオリジナル・ルーティン概要です。すべてビドルムーブを中心に構成され、ダブルリフトやグライドは一切使いません。
手順概要
セットアップ デックのトップに4枚のエース（任意の順序）を重ねておきます。
エースの提示��
左手エンドグリップでデックを保持し、
ビドルムーブで1枚ずつフェイスを示しながら取り出す。
最初の2枚（例：スペードとクラブ）を観客に見せ、裏向きにしてテーブル中央に並べる。
エースの提示��
残る2枚（ハートとダイヤ）も同じくビドルムーブで示し、
それらを手元の2枚目の上へ裏向きに重ねる。
マジカル・チェンジ
「色が入れ替わります」と軽く指先をはじき、
テーブル上の4枚を表向きに広げると、
初めに置いた黒エースが赤に、
手元に残した赤エースが黒に完全チェンジしている。
ビドルムーブ（Biddle Move）とは
デックをエンドグリップで持ち、
左手で上からカードを取る自然な動作中に、
右手のカードを密かに下へすり替えたり／加えたりする技術。
見た目は単に「1枚ずつ抜く」だけに見え、
位置コントロールや余分カードの隠蔽に最適です。
以下はDai Vernonが『The Dai Vernon Book of Magic』で紹介した、Dr.デイリーのオリジナル・ルーティン概要です。すべてビドルムーブを中心に構成され、ダブルリフトやグライドは一切使いません。
手順概要
セットアップ デックのトップに4枚のエース（任意の順序）を重ねておきます。
エースの提示��
左手エンドグリップでデックを保持し、
ビドルムーブで1枚ずつフェイスを示しながら取り出す。
最初の2枚（例：スペードとクラブ）を観客に見せ、裏向きにしてテーブル中央に並べる。
エースの提示��
残る2枚（ハートとダイヤ）も同じくビドルムーブで示し、
それらを手元の2枚目の上へ裏向きに重ねる。
マジカル・チェンジ
「色が入れ替わります」と軽く指先をはじき、
テーブル上の4枚を表向きに広げると、
初めに置いた黒エースが赤に、
手元に残した赤エースが黒に完全チェンジしている。
ビドルムーブ（Biddle Move）とは
デックをエンドグリップで持ち、
左手で上からカードを取る自然な動作中に、
右手のカードを密かに下へすり替えたり／加えたりする技術。
見た目は単に「1枚ずつ抜く」だけに見え、
位置コントロールや余分カードの隠蔽に最適です。
コラム第23回「ダブル・リフトについて パート2」要約
本編の趣旨 2002年発売の“ダブル・プッシュ・オフ”を中心に、手順の細部と歴史的背景を改めて検証する回です。
実践手順
デックを左手エンドグリップで保持し、左親指ではなく左人差し指でトップ・カードを斜め外側へ押し出しながら取り出す
同様の動作で２枚、３枚……と重ねたまま抜き取り、テーブルまたは観客の手に裏向きで置いた上で「ダブル・リフト」を演じる
ブレイク不要の自然なオフと回転動作で、通常のターンオーバーと同じ感覚を維持できる
トレーニングのポイント
はじめは２枚だけで無理なく成功する感触を身につけ、ステップを増やすごとにムラのない押し出し速度と角度を練習
指先のテンション管理とデックの保持角度を一定に保つことで、失敗率を大幅に低減できる
歴史的考察
1716年のリチャード・ニーバー『The Merry Companion』に初出とされる最古例
19世紀中頃のPonsin（1853年）、Hoffmann『Modern Magic』（1876年）と、各時代の英訳版で解説が続く
20世紀前半にはJean Hugard（1934年）、S.H. Sharpe（1937年）、David Devant（1909年）など多数の文献が技法を採録
現代でもMartin Nash、Michael Ammar、Gregory WilsonらのDVD／書籍で異なるバリエーションが紹介されている
今後の課題
1716年以前の関連例の有無、各文献間で技法名称や詳細がどのように変遷したかを、さらに古書や海外誌のバックナンバーで追跡調査する
本編の趣旨 2002年発売の“ダブル・プッシュ・オフ”を中心に、手順の細部と歴史的背景を改めて検証する回です。
実践手順
デックを左手エンドグリップで保持し、左親指ではなく左人差し指でトップ・カードを斜め外側へ押し出しながら取り出す
同様の動作で２枚、３枚……と重ねたまま抜き取り、テーブルまたは観客の手に裏向きで置いた上で「ダブル・リフト」を演じる
ブレイク不要の自然なオフと回転動作で、通常のターンオーバーと同じ感覚を維持できる
トレーニングのポイント
はじめは２枚だけで無理なく成功する感触を身につけ、ステップを増やすごとにムラのない押し出し速度と角度を練習
指先のテンション管理とデックの保持角度を一定に保つことで、失敗率を大幅に低減できる
歴史的考察
1716年のリチャード・ニーバー『The Merry Companion』に初出とされる最古例
19世紀中頃のPonsin（1853年）、Hoffmann『Modern Magic』（1876年）と、各時代の英訳版で解説が続く
20世紀前半にはJean Hugard（1934年）、S.H. Sharpe（1937年）、David Devant（1909年）など多数の文献が技法を採録
現代でもMartin Nash、Michael Ammar、Gregory WilsonらのDVD／書籍で異なるバリエーションが紹介されている
今後の課題
1716年以前の関連例の有無、各文献間で技法名称や詳細がどのように変遷したかを、さらに古書や海外誌のバックナンバーで追跡調査する
要約: 第23回「ダブル・リフトについて パート2」
パーフェクトなダブル・プッシュ・オフ
この記事冒頭では、2002年にジョシュア・ジェイが披露した「ダブル・プッシュ・オフ／マルティプル・プッシュ・オフ」の手法を取り上げています。 その特徴と経緯は以下の通りです。
左親指をトップカードの上に置いたまま、ブレークを作らずに直接カードを押し出す手法
ジェイは2枚から6枚まで自然かつパーフェクトにテーブルへ配布
演技後に“カードに細工があるのでは”と疑念を抱く
RRMC例会で別のメンバーも同手法を純技術で再現し、真実性が確認された
最近のスリム＆すべりやすいカードではテーブル配置時に微ズレが起こりやすいが、デック上でのターンオーバーなら問題なし
著者自身も再挑戦を決意
歴史的考察：ダブル・リフトの発展
続いて、ダブル・リフト（2枚持ち上げて1枚に見せる操作）の文献上の出現と技術名の成立過程を年代順に整理しています。
1716年：リチャード・ニーブ『The Merry Companion』に初出とされるが詳細不明
19世紀中頃：1853年のPonsinが最初とする誤報が広まるが、実物の記載はホフマン『Modern Magic』（1876年）やSharpe（1937年）訳にも見当たらず、Hugard（1934年）の二次紹介が発端
1839年：Poppe著書で類似操作の言及あり（2枚を1枚のように扱う手順）
1887年：ホフマン『Drawing-Room Conjuring』でアンビシャス・カード現象にパス系の技が使われ、ダブル・リフトは未使用
1897年：Roterberg『New Era Card Tricks』で「Excelsior Change」「Mysteria Change（後のPush-In Change）」として二種の2枚操作を初解説
1909年：ネルソン・ダウンズ『The Art of Magic』に“Downs Change”として2枚操作が登場
1910年：Hatton & Plate『Magicians Tricks』に「Single Change」「turn up」スタイルとして変形技法を掲載
1910年代〜20年代：アーサー・フィンレイ、クリフ・グリーン、ダイ・ヴァーノンらが2枚をデック上でひっくり返す“ダブル・ターンオーバー”を創始
1919年：Charles T. Jordan『Thirty Card Mysteries』で“Single Card Reverse”にダブル・ターンオーバーを使用
1930年代前半：
1933年 Ralph Hullが親指の位置など詳細手順を初解説
1934年 Jean Hugard『Card Manipulations No.2』で「double lift」の名称と“プッシュ・オフ”でブレーク不要の理想形を提示
以降：スターズ・オブ・マジックやヴァーノン著作群でヴァーノン流ダブル・リフト／マルティプル・プッシュ・オフが定着
パーフェクトなダブル・プッシュ・オフ
この記事冒頭では、2002年にジョシュア・ジェイが披露した「ダブル・プッシュ・オフ／マルティプル・プッシュ・オフ」の手法を取り上げています。 その特徴と経緯は以下の通りです。
左親指をトップカードの上に置いたまま、ブレークを作らずに直接カードを押し出す手法
ジェイは2枚から6枚まで自然かつパーフェクトにテーブルへ配布
演技後に“カードに細工があるのでは”と疑念を抱く
RRMC例会で別のメンバーも同手法を純技術で再現し、真実性が確認された
最近のスリム＆すべりやすいカードではテーブル配置時に微ズレが起こりやすいが、デック上でのターンオーバーなら問題なし
著者自身も再挑戦を決意
歴史的考察：ダブル・リフトの発展
続いて、ダブル・リフト（2枚持ち上げて1枚に見せる操作）の文献上の出現と技術名の成立過程を年代順に整理しています。
1716年：リチャード・ニーブ『The Merry Companion』に初出とされるが詳細不明
19世紀中頃：1853年のPonsinが最初とする誤報が広まるが、実物の記載はホフマン『Modern Magic』（1876年）やSharpe（1937年）訳にも見当たらず、Hugard（1934年）の二次紹介が発端
1839年：Poppe著書で類似操作の言及あり（2枚を1枚のように扱う手順）
1887年：ホフマン『Drawing-Room Conjuring』でアンビシャス・カード現象にパス系の技が使われ、ダブル・リフトは未使用
1897年：Roterberg『New Era Card Tricks』で「Excelsior Change」「Mysteria Change（後のPush-In Change）」として二種の2枚操作を初解説
1909年：ネルソン・ダウンズ『The Art of Magic』に“Downs Change”として2枚操作が登場
1910年：Hatton & Plate『Magicians Tricks』に「Single Change」「turn up」スタイルとして変形技法を掲載
1910年代〜20年代：アーサー・フィンレイ、クリフ・グリーン、ダイ・ヴァーノンらが2枚をデック上でひっくり返す“ダブル・ターンオーバー”を創始
1919年：Charles T. Jordan『Thirty Card Mysteries』で“Single Card Reverse”にダブル・ターンオーバーを使用
1930年代前半：
1933年 Ralph Hullが親指の位置など詳細手順を初解説
1934年 Jean Hugard『Card Manipulations No.2』で「double lift」の名称と“プッシュ・オフ”でブレーク不要の理想形を提示
以降：スターズ・オブ・マジックやヴァーノン著作群でヴァーノン流ダブル・リフト／マルティプル・プッシュ・オフが定着
石田隆信氏メールより：重要ポイント＆歴史的整理
1. ホフジンサートス（Hofzinser Toss）の変遷
1986年（Dover社版「Hofzinser Card Conjuring」）
トップとボトムの２枚をつかみ取る操作が「The Four Eights／The Married Hearts／The Loving Couple」で使用
技名なしで紹介
1993年（Reinhard Muller “Escorial”）
“Two Card Catch” と命名
Comte（1788–1859）の “Ladies Looking Glass”（約1815年）への使用事例を報告
2004年（Christian著ドイツ語版）→2013年（Stephen Minch他 英訳版）
“Two Card Flourish Toss” として解説
2005年11月（Genii誌 Hoffzinser特集号）
Christianの記事中で “Hofzinser Toss” と表記
Robert-Houdin 著 “Ladies Looking Glass” への先例言及
その後の呼称
Richard Kaufman：”Top and Bottom Production”
2009年（加藤英夫『Card Magic Library 第3巻』）
注釈で “ホフジンサートス” と紹介（日本文献で唯一）
2. スロップシャフル（Slop Shuffle）の足跡
1937年（John Braun & Stewart Judah “Subtle Problems You Will Do”）
Sid Lorraine 発表／命名
1940年
3作品掲載するも考案者名はクレジットなし
1988年以降
T. A. Waters “The Encyclopedia of Magic and Magicians” で Sid Lorraine 考案と記載
以降「Sid Lorraine’s Slop Shuffle」と紹介される傾向に
日本での伝承（石田氏体験）
1973年頃：Johnny広瀬氏主宰のクラブで両手による原型を習得
1970年代末〜80年代：Jimmy忍氏の改案（半分をめくる不要版）を伝授
3. トリプル・カードキャッチ（三枚キャッチ）の系譜
Reinhard Muller：初の“三枚サンドイッチ”理論化（グライドポジション→テーブル落下）
Harvey Rosenthal／Bob Rosengart：サイドからの3枚キャッチを紹介（“Quick as a Wink”）
加藤英夫：ネット記事で歴史を補填、Tom Hubbardらの改案例もあり
4. ３本ロープ・トリックの原点
1955年（Hen Fetsch “Quadropelets”）
４本ロープ作品の第１段階として「３本ロープ長さ統一現象」を発表
1955–56年（Bob Carver）
独立した「３本ロープ同長現象」を改良／単品化
1958年（Gene Gordon “Professor’s Nightmare”）
台本付きで商業販売開始／『Linking Ring』誌9月号に広告掲載
5. 紅白ロープ入れ替わりトリック
日本初出
1974年〜1977年：高木重朗『奇術入門』『パズルゲーム』に２本バージョン
1986年：『トリックの心理学』に同様の解説
氣賀康夫
2006年『ビギナーズ・マジック』で３本バージョンを発表（おそらく改案）
1. ホフジンサートス（Hofzinser Toss）の変遷
1986年（Dover社版「Hofzinser Card Conjuring」）
トップとボトムの２枚をつかみ取る操作が「The Four Eights／The Married Hearts／The Loving Couple」で使用
技名なしで紹介
1993年（Reinhard Muller “Escorial”）
“Two Card Catch” と命名
Comte（1788–1859）の “Ladies Looking Glass”（約1815年）への使用事例を報告
2004年（Christian著ドイツ語版）→2013年（Stephen Minch他 英訳版）
“Two Card Flourish Toss” として解説
2005年11月（Genii誌 Hoffzinser特集号）
Christianの記事中で “Hofzinser Toss” と表記
Robert-Houdin 著 “Ladies Looking Glass” への先例言及
その後の呼称
Richard Kaufman：”Top and Bottom Production”
2009年（加藤英夫『Card Magic Library 第3巻』）
注釈で “ホフジンサートス” と紹介（日本文献で唯一）
2. スロップシャフル（Slop Shuffle）の足跡
1937年（John Braun & Stewart Judah “Subtle Problems You Will Do”）
Sid Lorraine 発表／命名
1940年
3作品掲載するも考案者名はクレジットなし
1988年以降
T. A. Waters “The Encyclopedia of Magic and Magicians” で Sid Lorraine 考案と記載
以降「Sid Lorraine’s Slop Shuffle」と紹介される傾向に
日本での伝承（石田氏体験）
1973年頃：Johnny広瀬氏主宰のクラブで両手による原型を習得
1970年代末〜80年代：Jimmy忍氏の改案（半分をめくる不要版）を伝授
3. トリプル・カードキャッチ（三枚キャッチ）の系譜
Reinhard Muller：初の“三枚サンドイッチ”理論化（グライドポジション→テーブル落下）
Harvey Rosenthal／Bob Rosengart：サイドからの3枚キャッチを紹介（“Quick as a Wink”）
加藤英夫：ネット記事で歴史を補填、Tom Hubbardらの改案例もあり
4. ３本ロープ・トリックの原点
1955年（Hen Fetsch “Quadropelets”）
４本ロープ作品の第１段階として「３本ロープ長さ統一現象」を発表
1955–56年（Bob Carver）
独立した「３本ロープ同長現象」を改良／単品化
1958年（Gene Gordon “Professor’s Nightmare”）
台本付きで商業販売開始／『Linking Ring』誌9月号に広告掲載
5. 紅白ロープ入れ替わりトリック
日本初出
1974年〜1977年：高木重朗『奇術入門』『パズルゲーム』に２本バージョン
1986年：『トリックの心理学』に同様の解説
氣賀康夫
2006年『ビギナーズ・マジック』で３本バージョンを発表（おそらく改案）
Braueの「Secret Addition」は、直接Tenkaiの技法を忠実にコピーしたものではありませんが、その原型・着想を得て発展させたものと考えられています。
1936年、Frederic Braueは石田天海氏がステージで披露していた「ファンを閉じる動作だけでパケット下にカードを秘かに加える」方法（後に“Tenkai Secret Add”と呼ばれる）を目撃し、自身のノートに“Fred Braue Handling of Tenkai Secret Add”として記録しています。
その後Braueは、1939年頃には「ダンバリー・デリュージョン」やCarlyleのフォーエース操作など他の要素も取り入れて独自手順を構築し、1945年のHugard & Braue誌上で「Secret Addition」として発表しました。
つまり、Braueの公開版はTenkaiの秘技を出発点としつつ、追加のスイッチ操作やテーブル上のインサートを加えた「拡張・完成版」と言えます。
まとめると、Braue Additionの源流にはTenkai Additionの意匠があり、そこからBraue自身がさらなる改良を施したものが、1945年の「Secret Addition」という独立した手法として世に出た、という関係です。
1936年、Frederic Braueは石田天海氏がステージで披露していた「ファンを閉じる動作だけでパケット下にカードを秘かに加える」方法（後に“Tenkai Secret Add”と呼ばれる）を目撃し、自身のノートに“Fred Braue Handling of Tenkai Secret Add”として記録しています。
その後Braueは、1939年頃には「ダンバリー・デリュージョン」やCarlyleのフォーエース操作など他の要素も取り入れて独自手順を構築し、1945年のHugard & Braue誌上で「Secret Addition」として発表しました。
つまり、Braueの公開版はTenkaiの秘技を出発点としつつ、追加のスイッチ操作やテーブル上のインサートを加えた「拡張・完成版」と言えます。
まとめると、Braue Additionの源流にはTenkai Additionの意匠があり、そこからBraue自身がさらなる改良を施したものが、1945年の「Secret Addition」という独立した手法として世に出た、という関係です。
テンカイアディションの定義
テンカイアディションとは、石田天海（Ishida Tenkai）が1936年頃に初公開したとされる「パケットへの秘かなカード加工作業」を指す技法です。以下の要素をもって定義できます。
発案者 石田天海氏がステージで実演していた口伝的手法を、のちにFrederic Braueが「Tenkai Secret Add」としてノートに記録【参考】。
基本動作
まず４枚（あるいは任意の数枚）のカードを表向きにファンで示す。
ファンを閉じながら同時に裏向きに戻し、そのままパケットをデックのトップへ置く。
この一連の「見せ→閉じる→置く」動作の中で、デック上の数枚がパケットの下に密かに混入される。
特徴
ファンの開閉のみで実現でき、余計なプレゼンテーションを伴わない
1936年の段階で、欧米の主要書籍には未掲載の革新的ハンドリングだった
後のBraue／Marlo／Carneyらの“Switch”系アディションに影響を与えたと考えられる
テンカイアディションとは、石田天海（Ishida Tenkai）が1936年頃に初公開したとされる「パケットへの秘かなカード加工作業」を指す技法です。以下の要素をもって定義できます。
発案者 石田天海氏がステージで実演していた口伝的手法を、のちにFrederic Braueが「Tenkai Secret Add」としてノートに記録【参考】。
基本動作
まず４枚（あるいは任意の数枚）のカードを表向きにファンで示す。
ファンを閉じながら同時に裏向きに戻し、そのままパケットをデックのトップへ置く。
この一連の「見せ→閉じる→置く」動作の中で、デック上の数枚がパケットの下に密かに混入される。
特徴
ファンの開閉のみで実現でき、余計なプレゼンテーションを伴わない
1936年の段階で、欧米の主要書籍には未掲載の革新的ハンドリングだった
後のBraue／Marlo／Carneyらの“Switch”系アディションに影響を与えたと考えられる
要約：バーノンのストリップアウト・アディションと総括
バーノンのストリップアウト・アディション
最初の解説：1932年刊 Twenty Dollar Manuscript（別名 Ten Card Problems）内「The Vernon Card Puzzle」。
表向きに並べた16枚（絵札＋エース）からアウトジョグした4枚のエースの下へ、ローディングしたい数枚を秘かに加える方式。
1977年 Pallbearers Review 特集号パート4で “The Unpublished Add-on Move” として右手実施バージョンを初披露。
1987年 The Vernon Chronicles Vol.1 にて「Strip-Out Addition」と命名され、複数の改良例や応用手順が詳細に公表された。
おわりに＆技法発展の背景
天海・バーノン・ブラウエの三者はそれぞれ独自のアディションを研究・実演し、20世紀のカードマジックに多大な影響を与えた。
バーノンはBraueのシークレット・アディションにも即興でアレンジを加え、マニア向けに別ハンドリングを披露するほど深い探究心を示した。
「Secret Addition／Add-On」という用語は文献や国によって指す範囲が異なり、Braue技法を狭義に呼ぶ場合と、カードを秘かに加える動作全般の総称として使う場合が混在している。
1940年の『Expert Card Technique』には、デック全体への別系統のSecret Additionが３方法掲載されており、パケットへのAdd-Onとは一線を画す内容だった。
本調査を通じ、日本のマジシャンが海外に先駆けて新手法を採用・発展させていた事実が再確認でき、VernonやMillerらが担った世紀中盤の役割の大きさを改めて実感できる。
バーノンのストリップアウト・アディション
最初の解説：1932年刊 Twenty Dollar Manuscript（別名 Ten Card Problems）内「The Vernon Card Puzzle」。
表向きに並べた16枚（絵札＋エース）からアウトジョグした4枚のエースの下へ、ローディングしたい数枚を秘かに加える方式。
1977年 Pallbearers Review 特集号パート4で “The Unpublished Add-on Move” として右手実施バージョンを初披露。
1987年 The Vernon Chronicles Vol.1 にて「Strip-Out Addition」と命名され、複数の改良例や応用手順が詳細に公表された。
おわりに＆技法発展の背景
天海・バーノン・ブラウエの三者はそれぞれ独自のアディションを研究・実演し、20世紀のカードマジックに多大な影響を与えた。
バーノンはBraueのシークレット・アディションにも即興でアレンジを加え、マニア向けに別ハンドリングを披露するほど深い探究心を示した。
「Secret Addition／Add-On」という用語は文献や国によって指す範囲が異なり、Braue技法を狭義に呼ぶ場合と、カードを秘かに加える動作全般の総称として使う場合が混在している。
1940年の『Expert Card Technique』には、デック全体への別系統のSecret Additionが３方法掲載されており、パケットへのAdd-Onとは一線を画す内容だった。
本調査を通じ、日本のマジシャンが海外に先駆けて新手法を採用・発展させていた事実が再確認でき、VernonやMillerらが担った世紀中盤の役割の大きさを改めて実感できる。
要約：第55回 シークレット・アディションの謎（前半）
はじめに
石田天海氏が1936年に独自の「シークレット・アディション」を用いていた事実を発見。
Aaron Fisher、Paul Comming、Troy Hooserらの近年刊行書にも採用例があるが、クレジット記載はバラバラで、本来の発案者を特定しにくい。
日本で先に解説されていた背景には、天海氏の早期導入が関わっていた。
用語と内容の違い
日本：パケットにカードを秘かに加える全般操作を「シークレット・アディション」と呼称。
米国：「Secret Addition」は1945年にFrederic Braueが命名した特定技法名として使われる。
米国では総称として「Add-On」を用い、最初の例として1932年のDai Vernon手法（無名）を挙げ、後に「Strip-Out Addition」と呼ばれるようになった。
1970年のJ.K. Hartman刊『Secret Subtraction』で「Add-On」の用語が初登場。
米国マジック百科事典の扱い
T.A. Waters編・Bart Whaley編ともに「Add-On」を総称用語とし、Braue法のみを「Secret Addition」と区別。
いずれも1932年のVernon方式を起点とし、Braueの手法もAdd-Onの一種として位置付けている。
日本での早期解説例
1951年 柴田直光『奇術種あかし』
1983年 『カードマジック事典』
これらではBraue法を含む「秘かに数枚加える技法」をまとめて「シークレット・アディション」として解説。
Robert y Giobbi『Card College』英訳版でも、まず秘加法全般を「Secret Addition」とし、続いてBraue式を「Braue Addition」と呼び分け。
Add-On起源の再考
1914年 CollinsのFour Aces解説に「４枚を３枚として置く」記載あるも、具体的操作は未記載。
1915年 Collins改案でオーバーハンド・シャッフル活用の手順が初めて示されるが、Add-Onとは異なる。
1920年 Jordanの特殊手法も原型の一例とされる。
1936年 Francis Carlyle『Aces』でBraue的操作が先行利用された可能性。
現状、1932年のVernon無名手法をAdd-On最初の事例とみなすのが妥当。
はじめに
石田天海氏が1936年に独自の「シークレット・アディション」を用いていた事実を発見。
Aaron Fisher、Paul Comming、Troy Hooserらの近年刊行書にも採用例があるが、クレジット記載はバラバラで、本来の発案者を特定しにくい。
日本で先に解説されていた背景には、天海氏の早期導入が関わっていた。
用語と内容の違い
日本：パケットにカードを秘かに加える全般操作を「シークレット・アディション」と呼称。
米国：「Secret Addition」は1945年にFrederic Braueが命名した特定技法名として使われる。
米国では総称として「Add-On」を用い、最初の例として1932年のDai Vernon手法（無名）を挙げ、後に「Strip-Out Addition」と呼ばれるようになった。
1970年のJ.K. Hartman刊『Secret Subtraction』で「Add-On」の用語が初登場。
米国マジック百科事典の扱い
T.A. Waters編・Bart Whaley編ともに「Add-On」を総称用語とし、Braue法のみを「Secret Addition」と区別。
いずれも1932年のVernon方式を起点とし、Braueの手法もAdd-Onの一種として位置付けている。
日本での早期解説例
1951年 柴田直光『奇術種あかし』
1983年 『カードマジック事典』
これらではBraue法を含む「秘かに数枚加える技法」をまとめて「シークレット・アディション」として解説。
Robert y Giobbi『Card College』英訳版でも、まず秘加法全般を「Secret Addition」とし、続いてBraue式を「Braue Addition」と呼び分け。
Add-On起源の再考
1914年 CollinsのFour Aces解説に「４枚を３枚として置く」記載あるも、具体的操作は未記載。
1915年 Collins改案でオーバーハンド・シャッフル活用の手順が初めて示されるが、Add-Onとは異なる。
1920年 Jordanの特殊手法も原型の一例とされる。
1936年 Francis Carlyle『Aces』でBraue的操作が先行利用された可能性。
現状、1932年のVernon無名手法をAdd-On最初の事例とみなすのが妥当。
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