佐藤金兵衛【中国武術・大和道】コミュの佐藤金兵衛翁の伝承武術について

　最近、道場の柔術の稽古で力を入れているもののひとつに九鬼神流半棒術があります。佐藤金兵衛翁は、昭和27年（1952）、高松師範より高木楊心流柔術・九鬼神流棒術の免許皆伝を得ていますが、その中に半棒術があり、これが極めて実用性に富む技として今に伝えらています。

　半棒ですので、わずか３尺(1ｍ弱）の棒での攻防ですので、傘や杖での代用も聞き、女性、中高年、子供でも修得可能な武術だそうです。

　その歴史は古く、伝書によれば、起源は今から400年以上前の天正三年の信長、家康両軍対武田勝頼との長篠の戦の時のことだそうです。この時の戦いの中で、武田猛将鞍八流の達人、鈴木丹後守勝久に対し、九鬼神流、鞍馬流棒術の達人、稲葉冠者義為が戦いを棒で挑んだのですが、真っ二つに切られ３尺になってしまったといいます。しかし、その後、その３尺の半棒で義為は立ち向かい、丹後守の頭上を打込み、丹後守が落馬と共に血を吐いて打ち死にしたといいます。これが起源として九鬼神流棒術の中に半棒術が加えられ、今日に伝えられたということです。

　佐藤金兵衛翁に伝えられた半棒術の技の起源が歴史の教科書に登場する長篠の戦にあったというのですから、驚きです。また、翁は医者であったことから、半棒術を修得する際、薬を包む紙に技の動作ひとつひとつを絵に書きとめノートに整理しており、いまから50年も前のことですが、その苦労が偲ばれます。