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恋しい小説コミュのワタユメ…13

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13 プロポーズは「ナマモノ」


夏が来た。
ひとりの夏。
踏ん切りをつけたはずなのに、まだ忘れられない。
はじめて貰った、桜のペンダント。
今も、揺れている。
躊躇いもなく、つけてる。
電話をしなかったのは、どうして?
会いに行かなかったのは、どうして?
待ってばっかりの私には、「どうして」ばかり。
夏が過ぎれば、秋。
出会うことができた季節。
もう、会えないの?
……。
会いたいよ。
会わずに我慢してきた月日よりもずっと。
ずっと。
会いたい。

秋が来た。
カレンダーには、赤マル。
そう、あの日。
出会えた日。
再会した日。
偶然にも「同じ日」だった。
もしかしたら、偶然じゃなかったのかもしれない。
もうすぐその日が来る。
もうすぐ…。

3日前。
手紙が届いた。
帰宅した目に飛び込んだ、薄いピンク色。
机の上に置いてあった手紙。
宛先の筆跡だけで、心が跳ねた。
『麻生ハル様』
私の名前。
ずっと待ってたもの。
そして、
ずっと見たくなかったもの。
相反する気持ちが、コレにはあった。
だって…。
『もう一度やり直そう』。
『ちゃんと別れよう』。
このふたつが、頭を過ぎる。
…開けよう。
反して後者の方だったとしても。私が悪いんだから。


 拝啓 麻生ハル様 

 お元気ですか?
 荷物をひとつ送りました
 僕の気持ちです
 どうか、開けてください
 
 僕はずっと、信じてるから
 
 敬具 西藤安史

 追伸 もしもの時は、送り返してください。着払用紙を同封してます


「ただいま」
「おかえり。宅急便、届いてるわよぉ」
届いた!
なんだか懐かしいドキドキがわいて出る。
昨日のお手紙。
『開けてください』って書いてた。
だったら私は。
「もう一度やり直そう」にかけたい!
スゥゥゥーーーっっ。
ゆっくりと深呼吸して。
ちゃんと見た。
『麻生ハル様』
うん。私の名前。
『西藤安史』
うん。安史さんの名前。
『ナマモノ』
…えっ?
品名の欄に、『ナマモノ』?
どういうこと?
これは、「仲直り」の贈り物じゃないの?
私の勘違い?
嬉しかった気持ちが、消えそうになる。
どうしよう…。
開けようか、迷いがムクムク出始めた。
『僕はずっと、信じてるから』。
よしッッ。
開けよう。
私も…。
信じてる、から。
リセットされたドキドキ。
不安と緊張がミックスされた、新しいドキドキ。
…ビリッ。
ガムテープの封印をとる。
ドキドキドキドキ。
静まることの知らないドキドキは。
まるで、グラスから次々と溢れる水のよう。
そのドキドキが。
右手、左手、と軽く震わす。
カタカタ。
ドキドキ。
ワクワク。
その両手で、最後の封印を解いた。
!!!
中から私を、見つめる目。
ピンク色の可愛いクマさん。
テディベア!!
私の大スキなぬいぐるみ。
どうして…?
お誕生日でも、
クリスマスでも、
ないのに。
それに今は…。
でも、今日は…。
安史さん…。
私は思わず、ギューって。
抱きしめてた。
流れ出さず、瞳いっぱいの涙をそのままに。

どれぐらい経っただろうか。
ようやく落ち着き、そっとベアを離した。
改めて見たベアは。
クリクリっとした目。
優しい笑顔。
私好みの、ベア。
しかも、ピンク色。
すごくカワイイ。
しかも今日のは、洋服を着てる。
黒いタキシード。
手には、何かが握られていた。
キラキラ、光ってる。
あっ。
カードとチェーン。
ゆっくりと、
ゆっくりと開いてみる。
!!!
『ハルと僕が出会った日です。僕と、結婚しよう』
テディベアが運んでくれたものは。
世界で一番甘い言葉。
『プロポーズ』
何度も何度も、読み返した。
だんだん滲んで、何が書いてるかわからなくなる。
ベアを、より一層強く抱きしめた。
「安史さん…」
優しい、暖かい涙が、
じわじわと、ベアの頭にうっすら光る。
「…ゴメンね、クマさん。あれ?」
涙の奥の瞳が。
ベアに託された、もうひとつ大事なモノを。
見つけた。
チェーンの先に、小さく輝く指輪。
笑顔が咲く。
涙と一緒になって。
私を見ているカードから。安史さんの声が聞こえるようだった。
『ハルと僕が出会った日です。僕と、結婚しよう』。
そんな幸せに浸ってるとき。
トュルリラリ〜。
電話が、呼んでる。
ドキッッ。
ベアを抱きしめたまま。
更にドキドキ。
もしかしたら…。
トュルリラリ〜。ガチャ
「はい」
『もしもし。麻生さんのお宅でしょうか?西藤です』
!!!
やっぱり!
「安史さんッッ」
『…ハル?』
「はい」
『…』
「…」
『…ヤスって言うクマが、迎えに行ったんだけど、着いた?』
「…」
声を聞いたら、言葉が出なくなった。
胸がいっぱいで、
電話のフックと、ベアを抱くことで精一杯で。
『…ここに、オレの好きなコの名前がついたクマがいるんだけど、ヤスの帰りを待ってるんだ』
「……安史さん」
『ハルって言うんだ』
「…」
『ハル。よく聞いてて』
「はい」
『ハルと僕が出会った日です。僕と、結婚しよう』
「はい」
『…』
「私と安史さんが出会った日です。私を、お嫁さんにしてください」
『迎えに行くよ、ハル』
「はい!」



      →ワタユメ…14へ続く
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