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恋しい小説コミュのワタユメ…11

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11 遠距離恋愛は、片思い


「ハル。実は…」
安史さんの前で。
初めて私の笑顔が曇った。
「移動が、決まったんだ。本社に」
言いにくそうに、すごく途切れてる。
4月に入ってすぐの日曜日。
この間会ったのが、先週の日曜日だったから、続けて会えることがホントに嬉しかった。
でも、こんな落とし穴があったなんて…。
「それで、ね…」
こんな時って、何て言えばいいの?
一番いい言葉って、何だろう。
「本社」ってことは、出世だよね?
じゃあ、「おめでとう」?
でも、遠距離になる…。
おめでたくない。
「おめでたくない」のに、「おめでとう」?
今は、たった一駅。
安史さんの会社の本社は、東京。
ここからじゃぁ、新幹線に乗っても3時間はかかる。
電車があるだけましかもしれない。
でも…。
離れるツラさは、もうイヤ。
あの時はまだ、片思いだった。
それでも、すごくツラかったのに。
恋人同士が離れるって、どうなるの?
想像すら、できないよ。
「まさかこんなにも早く決まるなんて、ね。ハルは、待っててくれるよね?」
待つ?
安史さんを?
どうやって?
「多分すぐに戻ってこれると思うんだ。離れてても大丈夫だよ。ずっと会えなかったけど会えたんだから、オレたちは、ね」
大丈夫って?
何が?
わかんないよ。
ずっと会えなくて、やっと会えたのに、ちょっとしか一緒じゃなかったんだよ?
「電話もするし。長期の時は帰ってくるから」
今でもお休みなんてほとんどないのに。
そばにいるから、ちょっとでも会えるんだよ?
「ハルも大丈夫だよね?」
大丈夫…?
大丈夫じゃない!
そう、言いたかった。
でも、言えるわけない。
お仕事だもん。
言っちゃいけない。
安史さんに会いたくてたまらなかった時の、
会社での言葉が浮かぶ。
『欲張ってもいいのよ。オンナのコなんだから』。
今も、なのかな?
…違うよね、今は。
「はい。お気をつけくださいね。安史さんこそ、大丈夫ですか?ひとり暮らし」
心とは裏腹な言葉を告げる。
得意の笑顔で。
「…ちょっと心配かな。ハル、来てくれる?」
「えっ?」
本社に移動。
ひとり暮らし。
その後の…その言葉って。
目が見開く。
「安…」
…ピピッピピッピピッ。
「…ゴメン!時間きちゃった。最近こうでもしないと、時間作れなくて…。」
私の声を遮ったのは、お仕事開始の無情の合図。
「ホントに、気をつけてくださいね」
「うん。ハルもね。じゃぁ…ゴメンね」
時間ギリギリにセットしてたのか、あっという間に姿が消える。
『…ゴメンね』。
どうしていつも、言うんだろう。
すごく悲しくなる。
安史さんは何も悪くないのに。
この言葉、嫌い。
大嫌い…。

『じゃぁ、いってきます』
「…あまり無理しないでくださいね」
最後は、声だけだった。
会社帰りの移動になったから。
しかも、最終の新幹線。
安史さんの会社って、
労働基準法に違反してない?
『ハル』
「はい」
『…行きたくない、オレ』
「今日は甘えないでください。いってらっしゃい」
『……ゴメン。じゃぁね』
まただ…。
ねぇ、安史さん。
もしも私が、『行かないで』って言ったら、『ゴメン』って言わない?
聞きたくても聞けない言葉。
両思いも難しいって、知った。
知りたくなかったことを、また知った。

気持ちはふたり。
でも、ひとり。
私の心配が勝っちゃった。
本社移動になった安史さんは、今まで以上に忙しくなり、電話の時間まで限られるようになった。
一度知った幸せの後にきた別れ。
両思いなのに、片思い。
いつまで続くの?
私は、いいコじゃないよ。

叫びたくなる。
『会いたい』って。
会いたい・会いたい・会いたい…。
これって、ワガママですか?



      →ワタユメ…12へ続く
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=365845640&owner_id=9630301

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