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恋しい小説コミュのワタユメ…3

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3 恋の始まりは一瞬


今日は、文化祭。
実はちょっと、楽しみだった。
だって。
フリフリの可愛いウエイトレスに、大変身。
私のクラスの模擬店は。
教室で、開くことから。
シーアール・カフェ。
皆様のご来店、お待ちしてます。

「キャーッッ。ハル、可愛いッッ」
「うんうん。一番、似合ってるよね」
かぁぁぁ。
「可愛い」の集中攻撃に、すごい真っ赤。
まさか、こんな裏が控えてるとも思わず。
「じゃあ。ひとりでも、オッケーだよね?」
「ハルひとりのほうが、売上倍増」
「じゃあ」
「ハル。周ってきてもいい?カレと」
いつのまにか、右隣にはオトコのコ。
可愛い笑顔で、しっかり腕組み。
なんだ。こういうこと、か。
そうだよね。みんな、この可愛い姿。見せたいよね。
手をつないだり、
腕を組んで、
周りたいよね。
「うん、いいよ。いってらっしゃい」
「じゃあ。よろしく〜」
ひとり残されたウエイトレスは、笑顔でお見送り。
でも。ひとりで、大丈夫かな?
今はガラリと、ひとりぼっちだけど。
もしかしたら。
いっぱい来るかも、知れないし。
ドキドキドキドキ。
やっぱり「いってらっしゃい」は、マズかったかも。
でも、しょうがないよね。
あんな笑顔、見せられちゃあ。
とびきりの笑顔。
よし、がんばろう。
「これで、よしだね。『ハルにも、春作戦』」
「ばっちりでしょ?あんな可愛いコが、ひとりでウエイトレスだよ」
「うんうん。おまけに私たちは、カレと文化祭デート。まさに、一石二鳥って感じ」
「おっ、うまくまとめたねぇ。では。と言うわけで、各自デートを楽しみますか」
「さんせーい。じゃあ、後でね」
友達が、キレイさっぱりいなくなったのは。 こう言うことだったみたいだけど。思いっきり、的外れとなってて。
不安的中の、満員御礼状態になってた。

「いらっしゃいま…」
「あのー、注文お願いー」
「…あっ。少々お待ちください」
「えっと。アイスティーにアイスコーヒーです…」
「コレ、どーすんの?」
「あっ、はい。そちらのゴミ箱にお願いします。…いっいらっしゃいませ。…あの、たっただ今ッッ」
いや…私…どうしよう!
わけわかんない。
みんな、帰ってきてぇ。
頭の中も、
笑顔も、
手も足も。
もう限界…。
誰でもいい、助けて欲しい。
「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?あっ、3人様ですか。大変申し訳ありません。ご覧の通りの満席でして。もしよろしければ、時間を変えて来て頂けますか?」
「えっ?あっ…はい」
右往左往してる時だった。
オンナのコの声が、消えていく。
次々と、ポーっとした声色に変えて。
アレ?
もしかして、誰か戻ってきてくれたとか!
よっよかった…。
あっ、よくない。
注文、途中だった!
私はあわてて、奥へと急いだ。
「ねぇねぇ。今の人、誰?すっごく、カッコよかったよね」
「うん。でもぉ、あんな人…ウチの学校にいた?」
「いるから、あそこにいたんじゃない」
「そうだけどぉ」
「いいじゃない。後でまた、来ようね」

「お待たせしました」
トレイいっぱいにのったドリンク。氷がカチャカチャ、今にも零れそう。
やっぱり、戻って…。
「これは僕が、運ぶね。キミは、えっと…注文聞き、お願いします」
「はい」
何の躊躇いもなく、そっとトレイを渡して、ポケットからメモを出す。
「お待たせしました。ご注文、よろしいですか?」
トレイの重さから開放され、ひとまずホッ。
溢したら、大変だもんね。
ん?そう言えば。
あの人…誰?
てっきりクラスの誰かが戻ってくれたと思ってた。
でも、違った。
下の…コ?
誰かの後輩とか。
たまに遊びに来てたコいたし。
…って感じでもないか。
じゃあ、上?
私、3年生だよ?
あれあれ?私、誰と話してたの?
軽くテンパってると。
「あのう…」
えっ…あっ!
「はいッッ。すみません…。えっと。アイスティー3つですね。少々お待ちください」
かぁぁぁ。
はっ恥ずかしいぃ。
そうよ。今はそんなことよりも、ウエイトレスに専念しなくちゃ。
ご用聞きを済ませ、奥へと急いだ。

2時間もしたら、嵐が去ったかのように。 ガランと、静まり返った。
ふーーーっっ。
疲れた。ひとりで何とか、出来たよぉ。
あっ、違う。あの人…。
奥からソーッと、顔を出してみると。
あの人は、誰もいないテーブルを拭いて周ってくれてた。
「あっあのッッ」
「あっ。お疲れ様でした。キミは休んでていいよ。僕が、やっておくから」
私の声に、振り向き笑顔。
かぁぁぁ。
どういうわけか、ポーっとしちゃって。
まっすぐ仁王立ちで、カチンコチン。
って!そうじゃないでしょ?
お礼でしょ、まずは。
心の中の私が、叫ぶ。
そっそうよ。お礼、言わなきゃ。
「あのう。今日は…」
「あっ、いた。ヤス〜。何やってるんだよ。探し回ったんだぞ」
「あっ、悪い。ここの模擬店、ひとりで切盛りしてたから、つい。…ね。可愛いウエイトレスさん」
かぁぁぁ。
かっ可愛いだなんて!
ドキドキドキドキ。
カチコチの体に、血液が急激に回りだす。
胸と言わず、全身が、すごい速さで脈打ってる。
「それじゃあ、僕はここで。ひとりにしちゃうけど、頑張ってね。あっ、これ。ご褒美」
腕まくりしたままの手が、私に風を送る。
ふわっと一緒に届いたのは。
一粒の甘い、キャンディー。
「あああ、あのッッ」
私…。
ペコッとお辞儀するのが精一杯で。
「ありがとう」の言葉が、出てこなかった。
最敬礼のまま、彼らがいなくなる空気を感じる。
でも。
暖かいあの空気が身をまとい、そんな気が消えうせる
まだ、ドキドキしてる。
軽く握りしめたキャンディーが。
粉々になるぐらいに。

どれぐらいの時間が経ったのだろう。
私は、みんなの声で。
我に返った。
「ハル。ごっめーんッッ。すごく、混んでたんだって?ハル、どうしたの?…ハルッッ」
「えっ…うん。ぅわわわ。…あっ、お帰り」
「ホントに、どうしたの?ハル。忙しすぎて壊れちゃったとか?」
「ひとりにさせといて、何てこと言うのよ」
「アハハ。ゴメンゴメン。ホントにホントに、ゴメンね。ハル」
「ゴメンね」
「ううん」
あの人はもう、いなかった。
あの空気が、みんなの帰りで消えたから。
あれは一体、何だったんだろう。
幻?それとも…。
「そうだ。今からここは、私たちでやるから。ハルも周ってきてごらん。他のクラスのも、結構よかったよ。まっ。ウチが一番、可愛いけどね」
今から、周れる?
あの人にまた会える?
手の中のキャンディーが、私にはついてる。
ドキドキが、また急発進。
「じゃあ、お願いね」
ドキドキをエンジンに変え、すぐに走ってた。
「はっハル〜?あらら。ハル、行っちゃったよ。どうする?私たちだけで、できると思う?」
「思わな〜い。まさかホントに、行くと思ってなかったもん。ハルにしては、珍しいよね。今の」
「なんかイイこと、あったかな。ハルにも、春だったりしてね」

キョロキョロキョロキョロ。
何度も何度も、周った。
友達や先生の声も耳に入らないほど、真剣だった。
でも。
結局、会えなかった。
行き慣れたはずの校内が、まるで迷路に感じる。
さっきのは一体ホントに…何だったの?
すごくツラくて、涙が出そうだった。
わけのわからないドキドキが、爆発しそう…。
「…ルー。ハル…ハルーッッ。よかったぁ」
独りぼっちになりそうだった時、暖かい何かに抱きしめられた。
たくさんの友達に。
「ハル〜。すっごい冷えてるよ〜」
「もうッッ。探しちゃったよ?こんな格好してるの、ハルだけだよ。もう文化祭、終わっちゃったよ」
「ハル。帰ろ」
オワッチャッタヨ。
終わり…?
その言葉が、やけにはっきりと胸に響いて。
他なんて聞こえない。
我慢ギリギリだった涙に、エンジンがかかっちゃった。
「はっハル?どっどうしたのよ、ホントに」
なんて言っていいのかもわからず、
ただただ涙するだけ。
小さな嗚咽が、響き渡る。
いつも笑顔の私が。
初めて涙を見せた。



      →ワタユメ…4へ続く
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