抗がん剤をもっと知りたい。コミュの抗がん剤の副作用【便秘】

●便秘の発生機序、原因
がん患者の多くに見られる便秘の原因として
?器質的なもの（腫瘍による通過障害、腸管麻痺、高カリウム血症・高カルシウム血症など）
?機能的なもの（食事摂取量の低下、水分の不足、運動不足、排便習慣の変化、高齢など）
?薬剤性（ビンカアルカロイド系抗がん剤では神経毒性により腸管運動が抑制され便秘になりやすい
またオピオイド(鎮痛剤)の使用、制吐剤も便秘を引き起こす）
などがある。

●便秘が起こると･･･？
便秘により抗がん剤の排泄が遅れると、悪心・嘔吐などの副作用が遷延するため、便秘の予防が必要。
特に日本人は欧米人に比べ腸管が長いため、便秘予防は重要。

●便秘を起こす薬剤
?抗がん剤　ビンカアルカロイド　：　ビンブラスチン（エグザール®）ビンデシン（フィルデシン®）
ビノレルビン（ナベルビン®）ビンクリスチン（オンコビン®）
　　　　　　タキサン　　　　　　：　ドセタキセル（タキソテール®）パクリタキセル（タキソール®）
　　　　　　オキザリプラチン（エルプラット®）
　　　　などの自律神経系の副作用をもつ抗がん剤

?制吐剤　　５-ＨＴ３拮抗剤　：　アザセトロン(セロトーン(R))、ラモセトロン(ナゼア(R))
　　　　　　　　　　　　　　　　　グラニセトロン（カイトリル(R) ）オンダンセトロン（ゾフラン(R)）

?その他　　オピオイド
　　　　　　抗コリン剤（消化管鎮痙薬、抗パーキンソン薬、三環系抗うつ薬など）
　　　　　　フェノチアジン
　　　　　　利尿薬
　　　　　　カルシウム拮抗薬
　　　　　　制酸薬

●予防、対策
?主な下剤
・酸化マグネシウム　
浸透圧性の下剤。腸内に水分を引き寄せ，便を軟化させて，量を増やす。
副作用が少なく，習慣性を認めにくい。腎障害時には使用を注意する。
効果発現時間：0.5～2時間
常用量：1～3g/日内で増減可。
多めの水分(コップ1杯の水)とともに食後に内服。

・センノシド（プルゼニド®など）
大腸刺激性の下剤。生薬に含まれる物質によって大腸を刺激して腸蠕動を助ける。
効果発現時間：8～10時間
常用量：1～2錠/日
就寝前に内服。
（直接大腸で作用するので，食事の影響を受けないため）

・ピコスルファートナトリウム（ラキソベロン®など）
腸内細菌によって刺激物質に転換されて作用する。
効果発現時間：7～12時間
常用量：10～15滴/回or 2～3錠/回
就寝前に内服が効果あり。
胃や小腸をそのまま通過して，大腸の中で腸内細菌の作用を受けて活性化し，大腸の蠕動運動を刺激したり，
腸管から水分が再吸収されるのを阻止したりする作用によって排便を促す。

・炭酸水素ナトリウム，無水リン酸二水素ナトリウム配合（新レシカルボン®坐剤）
発泡性。直腸に入れると二酸化炭素を発生し，直腸を刺激して排便反射を起こす。
効果発現時間：10～30分
常用量：1個/回
便意を感じているが便が硬く，肛門部位を通過困難な場合や，怒責をかけられないときなどに有効。
白血球、血小板数が低下しているときは肛門粘膜を傷つけ感染の恐れがあるため、使用は控える。

・浣腸剤（グリセリン）
効果発現時間：2～5分
常用量：10～150mL/回
便意を感じているが便が硬く，肛門部位を通過困難な場合や，怒責をかけられないときなどに有効。
白血球、血小板数が低下しているときは肛門粘膜を傷つけ感染の恐れがあるため、使用は控える。

?生活における注意点
●食事について
　・水分補給をする
　　水分制限がない患者では1.5～2Lの水、スープ、ジュースなどを摂る。
　　カフェイン含有の飲料やアルコールは脱水を引き起こすため避ける。
　・食欲低下がある場合はクリームスープ、ホットチョコレート、カロリーメイト(R)、エンシュアリキッド(R)などを利用する。
　・食物繊維を摂る(ゴボウ、海藻、きのこ、こんにゃく)など
　　ただし腸閉塞(イレウス)の既往がある、またはそのリスクが高い場合は避ける。
　・プルーン、パパイヤなど緩下作用のある食品を摂る。

●生活習慣について
　・毎日、朝食後に便意があってもなくてもトイレに行って、規則的な排便の習慣を作る
　・便意があったら我慢しない
　・身体を動かすと、腸管の動きが良くなるので、1日に10～15分くらいの適度な運動をする。
　・腹部のマッサージをする（『の』の字を書くように右回りにマッサージ）
　・半身浴など、腹部を温める