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lll小説『月迷三国志』lll連載中コミュの『月迷三国志』第三章:[激動始まる三国時代]

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小説『月迷三国志』
第一章:[巡り逢い]
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第二章:[周翔副将の妙計]
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劉延は斎慎の命によって全国の情勢を調べる長旅にでていた。長沙を越えて長江(河)を渡った北に位置する襄陽城にまで足を運んでいた。天下を見据えるにはまず現在の実情を知らないことには始まらない。なにせ零陵は支那の南のはずれに位置した田舎の小さな城だし、なかなか激動のこの乱世の情報が伝わってこないのだ。

月迷軍が長沙で盗賊団の撲滅に精を出していた頃、黄巾賊が各地で叛乱を起こしていたのは聞いていた。その数五十万を超えるのだという。長沙近辺ではさほど黄巾賊は影響を及ぼしていなかったが、長沙以北ではすさまじい問題となっていたらしい。なにせ現帝を排し黄巾賊の頭の張角というヤツがそれに取って代わろうとしているらしいのだ。
しかしその後朝廷より黄巾賊討伐の君命があり、各地から様々な勢力が連合し、今では鎮圧にだいぶ成功したらしい。張角もなにやら病死したとも聞いている。月迷軍もその沈静に参軍して功を上げれば任官を狙えただろう。斎慎大将も迷っていたと後に聞いたのだが、周翔副将の反対によって参軍を見合わせたのだという。まずは零陵攻略が何よりも大事だと力説されたと言っていた。周翔副将の意見はもっともだった。単なる義勇軍でしかも長沙からずっと北方にまで行軍し到着した頃には沈静されているやもしれない。そうなっては大金をはたいた上に何も得ずに戻ってくるしかないのだ。故にまずは領土をという方向で斎慎大将は納得したみたいだ。

現在襄陽にまできてこの情勢を調べる程にその選択がいかに重要であったか、よく見えてくる。黄巾賊がこの世を乱したというよりも、世が乱れてきたから黄巾賊のような集団が現れたとみたほうがよさそうだ。乱世は始まったばかりだ。ここで謀報活動をしていると、黄巾賊討伐の為に連合した官軍の各勢力の多くが内心で覇権を狙ってる事が手に取るようにわかる。しかしさすがに五十万と言われた黄巾賊の討伐に参軍した勢力は消耗してるのが見て取れる。体制を立て直すのにもうしばらくかかるだろう。覇権を狙う各勢力が体力を温存してくると本格的に戦国時代へと突入する可能性が高い。いや実際はわからない。わからないのだが、そんな気がする。このまま収まるわけがない。
さらに情報を収集してみると黄巾賊討伐に参軍し功を上げたにも関わらず、形ばかりの任官しか得られなかった軍団も多数いるのだという。やはり宦官は腐敗している。賄賂を積まないとよりよい任官を与えられないみたいだ。もし月迷軍が黄巾賊討伐に参軍していたならば、散々に兵力を消耗してしまいこの乱世の覇権争いに出遅れてしまっただろう。月迷軍は田舎ながら領土を得られた。足場を固めるには十分である。




劉延は李雪を旅に連れてきていた。斎慎が連れて行くように取り計らってくれたからだ。

「雪(セツ)や。なかなか襄陽の鶏はうまいな」
「ホントに。大将にも食べさせてやりたいくらいだな」

二人は襄陽のなかなか評判の酒屋で食事をしていた。
劉延は美味い店を探すのも得意だった。役目を果たしつつ、しかし合間にちゃっかり楽しむことも出来てしまう。せっかく遠くまで来たわけだし、堪能しなくては勿体ない。ふと見るとこれでもかというくらい李雪は鶏を頬張っていた。

「そんな食って大丈夫か李雪」
「こんな美味いもんがあったんだな・・。ただの鶏されど鶏だ」

と李雪は食べながら答えた。負けじと自分もがっつく。思えばこと自分に関しては全てが良い方に変化している。盗賊団所属ではなく、今や大義の為に生きれるんだ。胸を張って生きるとはこういうものなのか。
後ろめたさを感じなくても良い新しい生き方。民を苦しめる集団の一個人という葛藤からの解放感。今までにこれほどの自由を感じた事はなかった。搾取する側から助ける側に今は居る。
李雪のおかげだ。あの時月迷軍と共に生きる道を提示してくれた。勿論最初は反対した。父親や盗賊団の皆を裏切る事だったからだ。投降なんて事考えもしなかった。そもそも、のこのこと投降していっては首を撥ねられるのが落ちだと思っていたのだ。だが斎慎大将は受け入れてくれた。李雪には一目にして相手の中身まで見抜いてしまう力があるのかもしれない。というより常に冷静に物事を判断しようとする自分と違って直感的に感じたままに生きていると言ったほうがいいのか。
斎慎大将は変わり者だと思う。普通は敵だった者の才をここまで買ってはくれないだろう。買ったとしても警戒していきなり重要な役割を与えられたりはしないものだ。自分なら決してしない。だがだからこそ、どこまでもついてゆこうという気になったのだ。後ろ指を差されても仕方ない立場だったのに、何もなかったかのように信じてくれている。投降したからには一兵士として甘んじる覚悟もしていたし、ただ盗賊団の中に居続けるよりはましだとという位の決断だったのだ。

「劉延。何腑抜けた顔してるんだい。さっきから手がとまってるぞ。」

鶏を頬張りながら李雪がこっちを見て言った。苦笑いを浮かべながら手の鶏に噛り付いた。

「美味いな・・・」

もしかしたら鶏が美味いのではなくこの充足感が鶏を美味く感じさせるのかもしれない。劉延は李雪の方を見万遍の笑みを浮かべながら最後の鶏にもがっついた。

「兄貴のそんなうれしそうな笑顔久しく見てなかったな。子供の頃以来だよ」

李雪もうれしそうだ。


帝が崩御との情報が入った。洛陽では二人の皇子の後継が問題だったが何進(カシン)大将軍が弁皇子を擁立したのだそうだ。劉延は今いる襄陽を越えてさらに洛陽にまで足を運ぶべきか決めかねていた。
今あそこは慌しいから行かないほうがいいと知り合った商人が言っていた。そういわれたら尚更行ってみたいと言う衝動にかられる。たださすがに洛陽まで行ってしまうと零凌に戻るのが大幅に遅れてしまうし・・・。差し詰め大将が必要としている情報は手に入っている。だが今非常に情勢が慌ただしく動いているのが問題だ。ある程度の情報はここにいても入手できるのだが、やはり細かい情報は洛陽まで足を運ばないと探りきれない。
もし洛陽まで足を運ぶ事があるなら大商人簡隆(カンリュウ)を探して助けてもらえばいいと零凌を発つ前に斎慎大将に言われていた。だが劉延は簡隆が好きでなかった。長沙で富豪ばかり狙ってた劉延である。生理的に受け付けない部分があるのはしかたないことだ。何せ生まれてからずっと狙ってきたのが簡隆のような大富豪ばかりだからだ。しかも大商人が私福を肥やしているからこそ、
民が苦しむのだとも信じていた。商人てのは役人と同じで裏では汚い事も平気でしているのを劉延はよく知っていた。だからこそ富豪からの略奪を正当化できたのかもしれない。
無論劉延は鼻から簡隆を当てにする気はなかったし、助けてもらう必要もなかった。洛陽まで行ったなら自分の足で情報を集めれる。だがやはり帰ろう。零凌に戻ろう。大将も情報を心待ちにしているだろうし・・。




「来知(ライチ)。久しぶりだね。洛陽はどうなってるよ」
「兄さん大変だ。洛陽では何進大将軍が殺されたばかりか、あの董卓が劉協皇子を擁立してしまった為に劉弁皇帝は廃位されてしまった。しかも十常侍含め宦官もことごとく殺害されたらしい。いよいよ時勢は変わるぞ」
「それじゃ、いよいよ立ち上がる時が来たと言う事だな」

劉延は思わず固まってしまった。宿舎を出ようとした時に玄関先で話を交わす兄弟らしき若い武人二人の話が聞こえてきたのだ。しかも耳そ澄ませば襄陽では名門の来兄弟だとわかった。

「突然のご無礼お許しくだされ。我の名は劉延と申す。只今のお話は真であるか。」
「いかにも。たった今洛陽より早馬にて戻ってきたところさ。間違いない」
「もしよければ、詳しく洛陽の情勢聞かせていただけませぬか」
「もちろん構わぬが、なにぶんにも長い時間は取れぬ故。早速よければこの宿の奥の広間にお越しくだされ。」

思いのほか気さくな武人でよかったと劉延は思った。
劉延は李雪と二人の連れを残してその二人の武人の後についていった。

「改めて。我らは来兄弟と呼ばれているのだが、拙者が来知でこっちが兄貴の来哉(ライヤ)と申す。今は亡くなったが数年前に父がこの襄陽の太守をしていたことも有ってな、今は客将としてこの襄陽で一軍の指揮をしているのだ。正式には兄の来哉が我が軍の大将だが、実質的には同等の立場で軍を指摘しているわけなのさ。
黄巾討伐にも駆けつけて多少手柄もあげた為、金さえ積めば長沙の太守に任官してやると宦官のやつらにあからさまに言われたもんだからさ、金は出す気はないって言ったら、数日後によ、安喜県の県尉(警察所長)に任命するっていわれてな。そんなちっぽけな任官ならいらんとキッパリ断ってやったよ。そしたら好きにしろだってよ。全く宦官は腐ってるぜ」

怒涛のようにしゃべり続ける来知であった。

「劉延殿申し訳ない。弟はしゃべりだすと止まらないのでな。話半分で適当に受け流しておくれ」

苦笑いしながら兄の来哉が口をはさんだ。

「いえその様なことは・・。大変参考になります」

言い終わらないうちにまた来知は続けた。

「それでよ。ちょいと調べさせたらさ、安喜県の県尉には劉備という義勇軍の大将が任命されたらしいんさ。劉備は黄巾討伐でかなり活躍した大将なんだけども、少しその戦いぶりを見る機会があったもんで眺めてたんだが、兵数は数百と相当少なかったものの凄まじい戦いぶりだったよ。何と言っても劉備将軍の部下の武将二人があれはもう人間じゃないな。凄まじく強かった。」

蛇足は多いが意外に重要な情報を話している。劉延は真剣に黙って頷きつつ聞き続けた。

「とにかく言いたいのは、どれだけ活躍しても宦官に金をださなければ、下らない任官しかないってことさ。それに比べて孫堅という武将はそのあたり良く分かってるのだろうね、ついこの間僕等が蹴った直後、長沙の太守に任官されたらしいぞ。活躍は勿論していたんだが、相当金を積んだはずだ。」
「なんですと、それは真か」

劉延は口を挟まずにはいられなかった。長沙の太守の公孫庚将軍はどうなったのだろう。それが気がかりとなった。もし零陵攻略を先延ばしにしていたなら、自領を得る機を逃す所だっただろう。一つの問題点は我々月迷軍にとっての後ろ盾がなくなってしまうことだろう。零陵を発つ前に公孫候は零陵攻略の功績を朝廷に奏上し、正式に零陵の太守として斎慎大将が任官されるよう取り計らうと言っていた。うまく行っていればいいのだが・・。

そうでなければ場合によっては新しく任命の太守孫堅が、月迷軍を逆賊とみなして攻めてくるやもしれない。そうなると厄介だ。だが、曹操なる将軍が董卓軍討伐の挙兵の呼びかけを始めたと来知殿が言っていた。孫堅もそれに乗ってくれば、零陵に目は向けないだろう。何にしても気がかりだ。早く戻らねば。
ともあれ来兄弟のお陰で洛陽まで足を運ばずとも大方の情報は入手できた。非常に貴重な情報ばかりだった。商人の情報と違って、月迷軍と近い立場で収集した情報だからだ。来知将軍としては自慢話のつもりだったのかもしれないが・・。そんな風に捉えては失礼であるな。ともかく来知殿が話し好きでよかった。
かくいう来兄弟も、もっぱら反董卓軍に参軍するつもりで急遽出陣用意をしに戻ってきたのだという。もしや月迷軍も反董卓軍に合流するかもしれない。そうなればまたお会いしようと言って来兄弟と別れてきた。
劉延は急遽零陵に急ぎ帰った。





黄巾討伐においての功が認められて、長沙の太守に任官された。無論そこそこの大金を積んだからに過ぎない。長沙の太守で満足しているということではないが、この乱世を生き抜く為の足場は確実に固められるだろう。ついにと言うべきか、やっとと言うべきか、義勇軍を脱することができたのだ。長沙には黄巾賊とは比べ物にはならないにせよ、ある程度の組織だった賊が蔓延していると聞いていたのだが、どうも今零陵を統治している月迷軍という義勇軍によって討伐されたらしい。しかも月迷軍の大将が、聞くところによるとつい最近零陵攻略の功が認められて正式に太守としての任官が下ったと聞いている。

「孫堅様。只今月迷軍の詳細調査の報告が入ってまいりました。」
「おう。程普(テイフ)か。入ってまいれ」
「失礼いたします」
「それで、どの様な軍なのだ」
「大将は劉義(斎慎)という者で、趙慶、周翔(シュウショウ)の三名が中心で取り仕切ってるようです。長沙の民を苦しめていた賊を討伐し、零陵制圧したことによりこの地域の民に相当慕われていると見てよいでしょう。兵数は五千前後ですが、戦も上手いともっぱらの噂です。しかも零陵の民政にも力を注ぎ、その才も義勇軍上がりとは思えない手腕であります。」

程普はその他調べてきた事の大方を報告した。

「作用か・・。侮れない相手であるな。善政を敷いてこの地域一帯の民に慕われているということが気に入らん。うかつに敵に回せば我らの名声が落ちることになるからな。しかしながら仁と徳を重んじるとなれば、不用意にこの長沙を攻めてくることはないであろう。押さず引かずで妙な火花が散らないよう注意しておこう。
それよりも我々は早急に我が軍の体制を整え、曹操の呼びかけている反董卓軍への参軍を最優先課題としようと考えておる。早速義兵を募り自軍の一万とあわせて一万五千の兵は欲しい所であるな。早急に取り掛かれ」
「はは。お任せください。」

程普はすぐに立ち上がり退出していった。劉義か。一度挨拶に来るよう使者を送っておくべきか。それともあえて余計な接触はさけておくべきか・・。
我々がするべきことをすでにやってしまっていては、更なる功をこの地であげるのは難しいだろう。ならばとにかく洛陽の反董卓軍に挙兵し我が孫家の名を全国に知らしめようではないか。





「殿。只今戻りました。」
「劉延ではないか。長旅は大変であったろう。詳しい報告は明日改めてでもよいぞ。館に帰って今日は休んでこい」
「いえ、現在情勢が非常に大きく変化しております。差し支えなければ早速報告したく存じます」
「構わないが、それほど状況は激変しているのか」

劉延はまず斎慎大将の太守任官の沙汰への祝辞を述べ、
現在の董卓なる将軍が弁帝を廃立し、協皇子を擁した事など
来兄弟の貴重な情報も含めてつぶさに報告した。
隣には周翔も同席し、黙って報告を聞いていた。
斎慎は帝の崩御に続き董卓の卑劣な横暴に怒りを露わにすると同時に
しかしその反董卓軍に参軍するべきか悩み始めた。
しばらく場が静かだった。
斎慎が考え込んでいるからだ。
一言も発しない。こういう時はひたすら待つしかないのだ。
斥候とは情報を収集するのが役目であり、
結論を出す立場でないと劉延は分かっているのだろう。
役目を超えてでしゃばるべきではないし、
そもそも劉延はでしゃばるのは好きではなかった。

「殿。行くべきです。」

ただこの時だけは思わず言葉が出ていた。
すると周翔も口を開いた。

「私もそう思います。天下を見据えるならば、全国からの豪勇が終結する今回の反董卓戦は重要です。千聞は一見に敵わずと私の生まれ故郷では古来から言われております。自ら目の当たりにして見なければ見えてこないことも多々ございます。零陵の統治も重要ではありますが、やはり田舎に過ぎません。いつまでもここにいるようでは天下平定など夢のまた夢に終わりましょう。」

劉義は険しい顔で周翔を睨んだ。

「いや、少し言葉が過ぎました。お許しください。」

周翔はつい言葉が過ぎたとはっとし頭を垂れた。

「いいのだ。これで決心がついた。元々零陵を手にしたのも飛躍の為の足場を固める為であった訳であるし、随分体力は温存できた。新たに任官された長沙の太守の孫堅も参軍すると聞いたからには、遅れをとるわけには行かん。
にしても劉延よ、そちの情報収集能力には感服する。洛陽の情勢で手一杯と思われるのに、すでに孫堅の意向も探ってきていたとはな・・。」

「有難きお言葉にございます。私一人で動いている訳ではないですから、信頼できる部下の存在の働きの賜物でもあります。しかも長沙はかねてより情報網を整えてありましたので、孫堅の動向など筒抜けでございます。仮にも生まれてよりこの地で育って来た我々です・・・。間者として潜ませてる部下の報告をただ伝えたに過ぎません。」

あまり感情を出さず淡々としゃべる劉延だが、この時は劉延もうれしげに答えた。

「いや、勿論承知しておる。そち達の働きに報奨を用意せねばならぬな。今後とも宜しく頼むぞ」
「はは。固(モト)より御恩に報いる所存にございます。」

そう言って劉延は静かに退出していった。



第四章:[打倒董卓いな呂布] 
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