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ネトゲ男コミュの第15話

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泣きながらメールを打っていた。

「俺が一人前になった時、もう一度告白してもいいかな」

しつこいしいさぎ悪いしかっこ悪いし情けないし
ストーカーっぽく思われて古傷をえぐるかもしれない。
こんなのは迷惑でしかないことも全て分かった上で
本気でそうしたいと思った。

拒否られてないか心配だったが無事送信できた。

じっと返事を待つ。
知り合ったのがネトゲだから、ここまで入れ込むのを
皆笑うだろう。

周りがどう思おうと関係ない。
俺にとっては本気だった。
本気で好きになった。
彼女を失ったのを本気で後悔した。


返事はまだ来ない。
数時間後、メールが届いた。

『いいよ。メールこれで最後ね。それじゃ。』

それから綾子と交わしたメールを全て削除して
電話番号とアドレスも消した。消さないとクセで
送ってしまいそうだったから。


実家に戻るか。
ほどなくして実家に電話をかける。

「あのさ、そっち戻ろうと思うんだけど、いいかな」

「おっ、いつでも戻って来い」と親父。

引越しの準備に取り掛かる。
一人で荷物まとめるのはかなり時間がかかった。
物少ないのにこれだけ面倒なのか。

10月末、俺は駅へと向かうバスに乗っていた。
色づき始めた山の木々、数年前からテナント募集している
雑居ビル、たまに歩いた川原を窓越しに眺めた。

5年半暮らした街に別れを告げる。
両親は俺が戻ってきた理由を何も聞かず、俺からも言わなかった。
しかししばらくの間、両親との生活が窮屈で仕方なかった。
ただ朝起きて夜に寝るだけの、そんな普通の生活ができない。
今までが自由過ぎた。

実家にはいつの間にかちいさな亀がいた。少し前に道を歩いているのを
母が拾って、そのまま飼いはじめたんだと。昆虫とかを飼う虫かごに水と石を
入れただけの粗末なカメハウス。
俺が近づくとビクッとして首を引っ込める。少しすると恐る恐る首を伸ばし始め
周りをうかがう。餌をあげると狂ったように泳ぎだし、餌に食いついた。

親の喜んだ顔を見て複雑な気分になり、純粋で単純な亀に癒されながら
11月が終わろうとしていた。
久しぶりにハロワへ行こうと思った。
電車で片道1時間かかる。時間はあっても金がない無職には痛い出費。

見慣れた検索画面。
感度の悪いタッチペン。だるいからマウスにしようぜ。

そんなことを考えながら検索を続ける。
あるページに目が止まる。

ゲームショップ正社員募集

ふと遠くにいるであろうあの人を思い出す
「確かゲーム作ってんだよな・・・今でも続けてるんだろうか」

少し考えて印刷する。意を決してカウンターに持っていった。
1週間ほど経った。面接を受けに行く。どうにでもなれ。
内容は緊張しまくっててガチガチで何も覚えていない。
多量の冷や汗を背中に感じ、顔には脂汗が浮かぶ。

2日後、電話が来る。採用。信じられなかった。

12月の半ば頃から働き始めた。
体が重い。
久しぶりの立ち仕事で足はパンパンになった。
朝10時から夜の11時まで立ちっぱなしというのも少なくなかった。
掃除、研磨、接客、ポップ製作、中古処理、発注、会議・・・・・・

研修中とは言え一応は正社員。仕事の覚えが悪い俺を
店の店長がたしなめる。バイトの連中にも頭が上がらない。

辛いのは当たり前。精一杯やろう。
はじめての給料が出た。
久しぶりに服を買った。
その頃既に冬眠にはいっていた亀に大きめの家(衣装ケース)
を買ってやった。

しばらく仕事に没頭した。
家に帰って布団に入ると毎日のように綾子のことが頭に浮かんだ。

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