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三国志を作ろう!コミュの第三章・未定

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コメント(65)

この戦。丁原を語らないわけにはいかない。

エン紹は疎か将兵、民百姓までが彼の動向に目を向けている。それもそのはずだ。彼は北漢の重鎮である。だが敵対の意志を見せた董承とは悪友ながら無二の親友であることは周知のごとく。さらには縁切りしたとはいえ養子の呂布が向かっているのだ。

ある者はこれに呼応するに違いないと警戒し、ある者は呂布ほどの男と縁切りしてまで残る決意を信じた。

この噂は混乱を招くモノであり、これを快く思わなかった者がいた。


即ち、丁原その人本人である。


「まったく…噂とは怖いものだ」

丁原は縁側で庭を見つめてため息を吐いた。

彼の心はもう決まっている。五漢常侍と分不相応な御位を頂き、この歳まで生きたこの身に何の心残りがあろうか。

平原には二万五千の兵が常駐しているが、呂布、張遼のいない今、率いるだけの才覚を持つのは丁原自身だけ。

つまり、戦うならば自身が逃げるわけにはいかないのだ。

「丁原様。ご用意が出来ました」

一つ覚悟を決めたのと同時に掛かる声は韓玄のもの。彼は張遼や呂布にも劣らぬ武勇があると思い込んでいる可哀相な男だ。

弟の韓浩も相当の自信家だが、いざ戦になると役には立たない。

「二万五千の兵を持って北漢に盾突く者を排する。…これほどの戦は楽しみでなりません」

「…そうか」

やる気漲る韓玄にやや疲れたように答えて丁原も立ち上がる。そして奥の間へと行き、丁原が唯一持つ使い古した鎧を着込んだ。

何十年と使った鎧でありながら綻び一つない。それは毎日丁原自ら綻びを繕い直してきた。

傷は多いモノのその磨き抜かれた艶やかさはどんな派手な鎧よりも威圧感を放つ。それは毎日丁原自ら磨いてきた。

常に手入れを怠ることのなかった剣は刃が短いが曇りなく煌めく。それは丁原自らが研ぎつづけてきた。

飾り気のない弓は手垢がこべり付くが弦の張りは美しく、矢の一本一本も矢羽が整っている。それは丁原自ら矢を拾い集め、弓の弦も張り直してきた。

質実剛健。人を愛し、道具を愛した彼だからこそ、身を包む衣装は古臭く見えるが、それ以上に映える。

昔、董承が言った。「おまえは古臭さが似合いすぎる」と。皮肉だったが、それは丁原にとって比類ない褒め言葉だった。

丁原は鎧を身にまとい表に出る。精悍な顔つきの兵士たちは皆輝かんばかりの新しい鎧に身を包んでいた。

だが誰ひとりとして、丁原の古臭い鎧が持つ華やかさに敵う者はいなかった。

「我らは北漢を護りし勇士である!」

腹の底から出した声は整然と並び立っていた兵士たちの背筋をさらにまっすぐ伸ばさせる。

「敵を討つに迷いある者はこの場を去るがよい。わしは咎めはせぬ。…だがこの老爺と意志を共にするならば、剣を取れぃッ!!」

『ウオオォォォォッ!!!!』

割れんばかりの気勢が挙がり二万五千の兵が槍を掲げた。

平原の相・丁原。董承と対峙するために白馬へと出陣した。

―――もう止められない乱世


―――長安の董卓もこの機に便乗し、背後にいる憂いの種、親友の馬騰に向けて出陣



――――決戦の時



それを、泰山の山頂から眺める3人の老人達がいた


見えないはずなのに、確かに下界の様子を眺めている


リーダー格と思われる老人が喋る




いよいよじゃ…


これほどの規模の戦なら、大きく"運命が動く"



何度歴史を作り上げようと、いつも後漢を基点に変わってしまう…



運命を切り開く力を持つ英雄が多すぎるのじゃ…


繰り返される誤った歴史…いつまでも続かせるわけにはいかん





不死の体を得ても

粉になれば、体ではないただの細胞となり朽ちる

不老を得れば


傷は一つも"治らず"、仙術で"直す"しかなくなる



何千兆年も仙術を使えば、さすがの我らでも、持っていた膨大な仙気が底をつく


仙気が底をつけば

傷一つで死ぬ



我らの同志も、皆、逝ってしまったように、恐らくは、ワシらも…これが最後のチャンスじゃろうて…



――――それから老人たちは、笛を取り出して三者三様に美しい旋律を奏でた



ぴゅ〜ぴゅらら〜







そして、笛が鳴り終わる




ただ


ただそれだけだった



「やはり、ほとんどの力を無くしている……今の我らなら三人でも劉備に劣るやもしれん…。もう、我らには見届けることしか出来んのだろうな…水鏡よ…」


リーダーの老人が話し掛けた先には、三賢者の師、水鏡が立っていた


水鏡は柔らかい表情で答える


「太古、中世、新時代…ワシが最後の力を振り絞り各時代より召喚した弟子たちに任せよう。本意ではなくとも、歴史を弄んできたワシらには目を逸らしてはいけない義務がある。ワシらはもう…数年、いや、数ヵ月で死ぬかも知れないが…」



……今日も、泰山は晴れているようだ


董承が出陣し、劉備も動いた。曹操も二万に満たない兵力を持って東亜へと向かう。

馬に揺られながら曹操は手元の地図を見る。

「北漢と他勢力の対峙を今一度確認しましょうか?」

駒を寄せてきたのは睡虎と呼ばれた男・郭嘉。

どう馬を操っているのかわからないが、馬のたてがみを背に寝ながら声を掛けて来る。

「劉備は戦力を五軍に分けて進軍。その偉容に対してエン紹は子のエンキ、エンタンが対抗しているようです」

「それで劉備を押さえられると見ているのか?」

「エン紹の息子は優秀ですよ。仲睦まじいですし、勝てるまでいかずとも二、三ヶ月以上は堪えるでしょう」

郭嘉は懐から巻物を取り出して見つめる。郭嘉自身が書いたものだが、その精密さは鳳雛の描いたそれを上回る。

ひょいと曹操も気になって覗きこむが、驚くほどの達筆と精妙なる図解だった。

「あ、いります?まだありますけど」

懐からもう一つ巻物を出した郭嘉は曹操の眼前に差し出す。それを受け取って曹操も巻物に目を落とす。

「…董承は官渡に兵を構えるか」

「ギョウ目指すなら当然の進路です。ま、間違いなく丁原が白馬か延津で邪魔するでしょうが…」

「丁原公はこちらに付かぬか?」

「………無理でしょう。あの方は柔軟な思考と礼節を知り、虚飾を嫌って清廉忠義を尽くす人。窮地にあって恐怖に降ることもなければ、友誼に懐いて旗を翻すような利己人ではありません」

「…勇者故に、散るか…」

曹操は丁原の人柄と才覚を惜しんだ。ただ、それだけだ。

「とりあえず、我々の敵は朝丘に陣取る韓キョ子率いる八千です」

「凡夫よな」

「貴方から見れば、ね」

笑いながら欠伸をするという器用な真似をして見せた郭嘉は、完全に馬に身体を預けて目を閉じた。

「おまえが真に覚醒するのはまだ先…ということか?」

「エン紹の相手は王佐と天輪で十分ですよ。俺はむしろ邪魔なぐらいです」

言いながらスッと指を一本空に掲げた郭嘉はとろん、とまどろんだ瞳をその指先に向け。

「俺が目覚める時は…劉備との決戦で、ですよ」

「……何?」

郭嘉の予言めいた最後の言葉に目を開いた曹操。しかしその問い掛けに答える前に、郭嘉は夢の中へと意識を落としていった。

「ふむ……劉備との…決戦、か。…まさかな」

まさかとは思いつつも、彼らが北漢を倒した場合、争うことになる可能性は十分にある


北漢が劉備か曹操だけを滅ぼし、残った軍に滅ぼされる場合もあるというのに


決戦なら董承とはどうだろうか?

帝を擁し、今では十分な戦力を持つ董承は将来的に曹操に靡くとは思えないし、六勇将や経験豊富な老将を従えているので劉備よりも強く感じる…


(なぜ、劉備との決戦、なのだ?)


郭嘉の寝顔を眺める曹操…ほんと、どうして馬が真っ直ぐ歩いてるんだ?コイツは気違いか?

すると、郭嘉がお気楽に寝言を吐いた



「歴史を戻す……誰でもい…から…天下……………三分………」


この寝言で、曹操の細い目が一層細くなる


(天下…を…三分に……?)


この時、曹操はなぜか、体の奥底からえもいわれぬ熱いものが込み上げていた

「何故、こうも気付けなかったのか…」

袁紹は自問自答するかのように呟いた。

色々な者に話を聞いたが、その理由は解らなかった。

しかし、袁紹はこれをチャンスとも捉えていた。

全てに勝ち、そのままの勢いで洛陽までいき、天子を奉戴する。

北漢の兵力は約20万

出来ないことはないと思っていた。

だが、それが甘い考えだと後々知ることになる。

北漢に蔓延している毒

それが、すでに手遅れな状態なのを袁紹は知らなかった。
董承と丁原は黄河を挟んでついに対峙した。

官渡より白馬を望む董承は対岸に翻る旗印を見て満足そうな笑みを浮かべる。

「元亀陣とはまた古臭い陣だな。地味だし、使い古された陣。…今さらあんなの知る人間など、あいつぐらいなもんだろ?」

「しかし義父…いえ、丁原殿が得意とする陣であることは確かです」

董承の言葉に呂布も懐かしむように目を細めて白馬を望む。兵力は同数かそれより少ないくらいと見えた。

「さて、問題は渡河だが…。六勇将に渡河進軍を得意とするのは?」

「残念ながら、誰ひとりとも。…しかし張遼ならば出来ぬではないかと」

なるほど、攻めの張遼の異名を持つ彼ならば。と董承は頷く。ひとまず軍議を開き攻略を練らねばと踵を返そうとしたその時、遠目にもわかる威風を目端に捉えた。

「!……丁原…」

董承の言葉に呂布も視線を向ける。その対岸には顔も見えるか見えないかという距離に一人異彩を放つ人影が見えた。

その傍から見てもわかる古くも勇壮なる衣装が誰のモノか、董承、呂布にわからないはずがなかった。

「…元気そうだな」

「…えぇ」

二人とも目尻を下げた。嬉しかったからではなく、戦うと決めた決意が揺るぎかけて。

対岸の人影はこちらに気づいたのかどうかわからないが、敵陣に引いていく背中を見つめて董承は深くため息を吐いた。

「……さて。行こうか」

「はい」

董承は一抹の躊躇いを振り切るように軍議の場に向かっていった。

友誼を超えた決戦が、今始まろうとしていた。
軍議の最中、暫く保っていた呂不の集中力が遂に切れてしまった…

「……怖い…」

「…………、は?」


思わず董承が疑問符を放つ

「怖いよぉ…もう戦いたくないよぉ…!!」


流石は守りの呂不

攻めるとなるとすぐに怯え出す


例の発作が始まったのだ。………いや、発作ではないか。これが呂不の本来の姿。

ギリギリの状態で守りに回った時にだけしかその力を発揮できない


あまりの呂不の情けなさにぶちギレる張遼


「逃げるばかりのアホめが!赤兎馬はもう貴様には貸さん!」と怒鳴り、ひらりと赤兎馬に跨がる。


そして、「張来々!張来々ーっ!」と叫びながら巧みな馬術で黄河の水面の上を走り抜け、遂には水一つ濡れることはなく、丁原の陣に単騎で突入した!
戦いの時、相手に対して、優位に立つにはどうすればいいか。

簡単なのは、兵の数で上回る事や、質で上回るというとこだろう。

それらが遜色ないのなら?

将の質だろう。

だが、それも遜色ないとしたら。

相手の思考にない、「まさか」をする事であろう。

そして、これは、兵が少ない時も有効であろう。

今回の単騎駆けは、意図したにせよしなかったにせよ、その「まさか」であった。

丁原は、どこかで川を渡った伏兵がいるのではて深読みし、直ぐ様兵を下げた。

勿論、そんなものはなく、後々丁原は大笑いしたと言う。

そして、董承軍は楽々渡川をする事が出来た。

だが、それは必ずしも好ましい形ではなかった。

川を背にしての背水の陣となったのだから。

もし、少しでも押される事があっても後ろは川である。

少しの敗けも許されない。

その重圧が董承に遅いかかるのであった。
だが張遼が止まらない。

「背水がなんだ!窮地がなんだ!我の攻めは前にあり!!我の道は前にあり!!我の背に残るのは我が足跡のみッ!!つっづけぇえぇぇぇぃっ!!!!」

赤兎馬に乗った張遼の進撃は、後に"神撃"と異名を変えて畏れられることとなる。

そしてこの突撃はその戦歴の一ページとなる。

丁原とて張遼の突撃を知らぬではなし。兵を盾にして防げるとは思わない。

ゆえにあえて騎乗者なしの馬を二百ほど張遼に向けて突撃させる。

張遼は倒すべき将兵なき馬の一団を、巧みな手綱捌きでその合間を上手く縫って切り抜けたが、後続に続いていた張遼騎兵隊の兵士たちは次々に馬とぶつかり落馬。突撃の勢いは一瞬にして無に帰した。

「韓玄!一気に張遼を捕らえよ!」

丁原の命令に韓玄が二千の兵を率いて張遼に襲い掛かる。

「ぬぅ!?…さすがは丁原殿!しかし、韓玄ごとき匹夫に我を止められると思うなかれッ!!」

ハァッ!!と赤兎馬の腹を一蹴り入れると真っすぐ敵陣に切りこんでいく張遼。優勢と驕っていた韓玄隊は一気に貫かれた。

「……韓玄程度では、当然の結果よな」

ため息を吐いた丁原は第二の合図を送る。その合図に反応したのはベン喜隊三千。しかし…。

「温い!」

張遼は止まらない。左右に槍を振り回しながら駆け抜ける様はまさに無双の武。

「我は止まらぬっ!止められぬっ!!てやあぁぁぁっ!!」

突き抜け、貫いていく張遼。その突撃はついに丁原の陣をまっすぐ貫き抜いて。





…………戦場を去っていった。



「…………相変わらずの突撃馬鹿じゃの!」

遠ざかる背中を見つめて丁原は頭を抱えた。
「敵は、敵はどごだあああああああ!!」

赤兎馬の本来の力を1200倍ほどまで発揮させた天才ジョッキー張遼。ジェット機と化した赤兎馬はあっという間に北平に到着。


今まさに後詰めとして出立しようと演説していた劉備の目の前で止まった



劉備
「・・・・・・・・」


張遼
「・・・・・・・・」



「劉備殿」

そう言った張遼 の手には劉備への密書があった。
イソイソと密書を開く劉備…

「こ、これはあああ!!」
渡された書状を手にした劉備はフッと一つ鼻で笑う。董承からの共同戦線の依頼状であったからに他ならない。

「なるほど、な」

書状を手に収めると一つの蒼い炎が書状を包み、灰へと化した。その意味するところを受け取って張遼が睨むと、劉備は片手で制した。

「断る、とは言っていない。…もはや我が軍は進発しているからこれは必要ないというだけだ」

劉備の言葉に張遼も敵意を収めて拝手を掲げた。

「劉備殿の意、しかと。しからば、御免!!」

「まぁ、待て」

戦中であることもあり、すぐにも白馬に戻ろうと赤兎馬を見事に操り回れ右した張遼が走り去ろうとしたその瞬間。いつの間にか赤兎馬の眼前に立ちその眉間を人差し指で押さえる劉備。気性の荒い赤兎馬が怯えるようにして劉備を見つめるのを見て、張遼は警戒した。

「畏れるな。…伝者よ。貴様、張文遠と見たが?」

「いかにも。張文遠は我である」

目の前に現れた劉備に張遼は警戒している。警戒してはいるがその受け答えには一切の迷いもなく即座に答える。劉備もこの胆力の大きさには少しばかり驚きを見せていた。

「では張文遠。共同戦線を結ぶにあたり一つ頼みがある」

「いかような?」

「そいつを董承の下に持っていってくれ。…何かの役に立つだろう」

そいつ、と言いながら張遼の背後に指を差した劉備。一瞬視線を放すことに躊躇いを見せた張遼だったが、一度肩越しに振り向き劉備の指差す方を向くと、そこには背に戟を携えた男がそっぽを向いて立っていた。

「名を魏延という。影の呪術の抵抗力をようやく身につけた。貴様らの役に立つだろう」

「魏延…?帝殺しの…」

「話せば長くなるので訂正はしないが、否定はしておこう」

くっくっくっ、と笑った劉備の深い笑みに張遼は少し戸惑ったが、戦力になることは確かに認める。

「来るがいい」

「…だとよ」

張遼の言葉に追従するように劉備が挑発的に魏延に笑いかけると、魏延も「はいはい」とヘラヘラと笑いながら手を振る。

「文遠さんね。俺の字は文長って言うんだ。同じ"文"同士仲良くしようや」

「ふっ…の割にはお互い"武"の方が得意と見えるがな」

「おぉぅ、そいつの方が大好きだぁね。…赤兎さんもよろしくぅ」

言いながら張遼の背中に相乗りした魏延。赤兎馬は不快感をあらわにしたが、目の前の劉備の睨みに一瞬で落ち着いた。

「劉備さんよぉ。助けていただいた借りは返したいが、魏延って男は頼りにはならないから、戦略の計算にはいれないようにな?」

「当然いれるわけがないだろう。…貴様のようなずる賢さと気まぐれさを持ち合わせた"鴉"のような男など、な」

「鴉…。良いねぇ、悪くない呼称だ」

カラカラと笑った魏延は劉備に指を鳴らして親指を立てた。

「さて。長々と失礼した。よろしく頼むぞ、張文遠」

赤兎馬の眉間から指を離した劉備はゆっくりと自身の部隊の中に戻っていく。

まるで陽炎のようなその背中を見送った張遼だったが、またいずれ会うだろうと思い視線を切り、魏延を乗せて来た道を戻る。



共同戦線を結んだとはいえ、そのいずれまた会う時が味方だとは限らないと思いながらも…。
張遼が帰路に着く頃、丁原配下の将である張櫓という男が幕舎で一息着く丁原に話し掛けた


この張櫓という男は髭がモジャモージャ。麻原しょ○こうみたいな顔をして赤地に白いラインが2本入ったジャージを着ている


「ひひ、丁原様、一体何をお悩みであせられる?」


丁原の心を見透かしたかのような張櫓の台詞


丁原は椅子に座ったまま何食わぬ顔をして言った


「モジャモジャ君か…何用だ?」


「丁原様のお悩み…戦力差でございましょう?ひーひひ」


「戦力なら五分と五分だ」

「ふひひ、人の数では人の質は埋まりませんぞ〜?」

「・・・・・呂布や六勇将らの話しか?それならワシの知略でも十分に…」と丁原が言いかけると、張櫓がそれを遮る


「いえいえいえ。将だけでは戦は決まりませぬのでその程度の差は…」


丁原が苦虫を潰した顔をする。張櫓の戦術眼は本物だが…あざとい奴だと。

「うぬに奴らを何とか出来るのか?」


丁原が言う奴らとは、屈強な朱儁親衛隊のことだ。確かに、呂布や六勇将は化け物染みて強いがそれで勝てるなら乱世はすぐに平定される


戦いの流れを作るのは将だが、決着を着けるのは兵なのだ


中でも、朱儁親衛隊は漢全土の中でも最強と言える兵たちが集まっている

これはどうにか弱体化などさせなければ丁原軍は勝ち目が薄いというわけだ

そこで、張櫓は懐から水が入った竹筒を出して言った


「この超神水を兵たちに配り飲ませれば、たちまち我が軍は奴らよりも精強になりましょう!」



張櫓の目はラリっていた
「考えておこう」

もちろん、丁原にはその水を使うつもりなどなかった。

「ひひひ。わかりましたよ。けど、これだけは言っておきますよ。あなたは必ず使いたくなるとね。」

そう言うと、張櫓は竹筒を懐に戻し、幕舎を出て行った。

「そろそろ頃合いか」

辺りは闇夜に包まれている。

丁原は自身手足とも言える兵二千を連れ、夜襲を仕掛けるため動き出した。

渡河を簡単に許した理由。

一つは伏兵を気をつけた為であったが、一つは一気に決めるため。

罠を仕掛けておき、そこに相手をおびき寄せたのであった。

董承軍が気がついている雰囲気はなく、成功すると丁原は確信を持っていた。

そして、彼の予想通りに夜襲は成功した。成功したはずだった。董承軍は本当に誰一人として気付いていなかったのだから…

本来ならここで丁原は董承軍を散々に追い回し、黄河に追い詰め、完全勝利を収めていた


彼の夜襲のタイミングや配備は完璧だったからだ


まさに、一人の知略で董承を圧倒した丁原…と、勇名が轟くはずだったのに…


夜襲のために密かに進軍していた丁原の前に、たまたま奴が現れたのだ!
「すまんが、そこの方、退いてくださらんかな。」

月明かりもほとんどなく、姿形をしっかりと見る事は出来ないが、羽扇子で顔を隠している人間がいることがわかった。

「このタイミングで夜襲とは、なかなかやりますね。」

丁原は低く暗い声が、まるで暗闇全体から聞こえる感じがしたと言う。

「どかんと言うなら、切るぞ。」

騒がれて気づかれたくないと思っていたが、これは仕方ないと思った。

「いえいえ、そんな事はしませんよ。」

その男は素直に道を譲り、丁原は道を進んだが、それは自身の陣へ向かう道であった。

しかし、丁原は勿論、彼の配下全てがそれに気づかず、自軍に夜襲をかけることになった。

「悪いですが、貴殿方には負けてもらわないといけないのですよ。」

羽扇子の男は、彼らをみてそう呟いたと言う。
丁原軍は味方同士で殺し合い、朝になってやっとその事に気付くと、誰もが手にしていた獲物を落とした


衝撃を隠せない…


敵に夜襲を受けるのとは訳が違うのだ



そんな事とは露知らず、董承は第一陣として成廉に兵5000を率いさせ、進撃させる


全く士気が上がらず、尚且つ消耗しきっていた丁原軍はとても脆く、ほうほうの体で潰走



丁原軍が原因不明の敗北を遂げた事実は、北漢全土に行き渡った



「何故だ…」

色々思い出しても、間違えてる所が解らない。

「あの男…」

何度も何度も考えた末に、1つの疑問点にぶつかった。

羽扇子の男である。

そこまでは正しい道を進んでいたが、その後から間違えている。

「一体、何者なのだ…」

勿論、考えて解るものではない。


「私も老いたと言うことか…」

何かを悟ったかのように呟くと、少し笑った。

そして、配下の者を集め、兵のほとんどを解散させた。

北漢に合流するもよし。

董承軍に降るもよし。

全ては、兵達の意思に任せる事にした。

そして、自身は共に死んでも構わないと言う兵4千程と共に、董承軍と対峙するため進軍を開始した。

「ここが、我が死に場か。」

策などない。

羽扇子の男が敵か見方か解らないが、どんな策も無意味な気がしたのである。

ただ、正面からぶつかり、消えるだけである。

前方に董承軍が見えた

「全軍突撃」

丁原の号令と共に、その決死の軍は進軍速度を早めた。
董承軍は兵力を頼みに潰せば良かった。それだけでこの一戦の勝利を我が手にすることが出来た。

………だからこそ、彼は丁原隊4000を見据えた上で命を発した。

「全軍散開ッ!!我が前を開けよッ!!」

この命令に驚いたのは董承軍の将兵全員。参謀の許靖がそれを諌めようとしたが、同時に軍師である盧植がそれを制した。

董承は旧朱シュン親衛隊を編成し直した"新"衛隊5000だけを率いてまっすぐ丁原にぶつかっていく。

兵士の質、士気の差、将の気概…いずれも丁原に勝るところはなかった。だが董承はただ一つの油断も容赦もなく、丁原隊に切り込んだ。

初撃の突撃。董承新衛隊隊は一切の乱れなくぶつかったが、丁原隊は前線が弾けるとともに兵の足並みが乱れた。

数分もしないうちに乱戦になる。だが明らかに董承新衛隊の方が動きが良く、乱戦で味方と相打ちにならないように五十からなる合言葉を掛け合いながら戦う。

対して丁原隊は腹の底から捻り出すような強い覇気を叫び声に変えて、威声猛々しく戦うも、もはや武力ではなく暴力に近い戦い様では董承新衛隊の足元にも及ばなかった。

おびただしい血潮が飛び散る。そのほとんどが丁原隊のモノだ。

董承は乱戦の中七人ほど敵を斬り伏せながら左右を見渡す。言わずもがな丁原を探していた。

「誰を探しているんじゃ?」

後ろから掛かった聞き慣れた懐かしい声。董承は一瞬足を止め、その声を楽しむように心の中にまで送り込んでから振り返る。

視線の先には血塗られた古い鎧と肩で息する老人の姿。それは間違いなく董承の友であり敵である…丁原だ。

「てめぇの白髪首を探してたんだよ」

「はっはっはっ…そうか」

周囲の兵も丁原と董承の対峙に気付いて足が止まる。そして誰ともなく剣を下ろして二人を見つめる。

「なんじゃ…祭りは終わりかのぅ?」

「メインイベント、ってことだよ…」

とんとん、と剣の背で自分の首筋を叩いた董承はスッと剣先を丁原に向ける。

「………丁原…、俺の…最期の未練だ。…降ってくれ…」

「董承…これは、わしの最期の意地じゃ。…ゆえに…断る」

「丁原ッ!!」

拒絶の意志に董承は悲哀にも似た感情が込み上がる。

それを掻き消すがごとく、強く一つ叫んで董承は斬り掛かる。

丁原も刃の短い剣を構え董承の一撃を受ける。ギリィンッ!!と金属音が静寂に躍る。

「温いわ、董承!!」

手首を返して剣を弧に描き、董承の首筋を狙い薙ぎ払う。しかし体勢を流した董承はその剣閃をかわす。

董承は一歩踏み込み下からかち上げるように剣を振り上げる。丁原も半身かわしてやり過ごすと、剣の握りを逆手に変えて掻くように董承に斬り掛かる。

それを一歩跳んでかわした董承。着地と同時に深く腰を落とした彼は剣を水平に構え、また間合いを詰める。

横薙ぎの一撃と見た丁原は剣を立ててそれを受けようとする。だが董承は握り手を返して真っすぐ突きを繰り出した。

これには目を剥いて驚いた丁原。慌てて半身でかわすが、鎧を掠める。

「はぁッ!!」

董承は突き出した剣を無理矢理肩から捻ることで横に薙いで追撃する。元々反応に遅れを取った丁原はこれをかわせない。

「ぐふっ!?」

腹部を切り裂いた一撃。鎧が無ければ胴半分を切り裂き、臓物が飛び出ていただろうが、出たのは鮮血だけだった。

だが傷が深いことに変わりはない。丁原が数歩よろめいたのを見て、董承はさらに一歩間合いを詰める。



(この一撃で決まる!)



それは間違いなく確定された事象。ゆえに董承の頭を掠める迷い。



(…本当に殺して良いのか?…)



奥歯を噛み締める董承。弓を引き絞るように肩を引いて、剣をまっすぐ突き出す。それで丁原の命は絶える。



(俺は…友を…殺すのかっ!?)



迷いが…止まらない。

「董承ッ!!」

迷いが顔に現れたのを見てか、丁原が口から血を吐きながら叫ぶ。

そして、微笑んだ。

「っ…ゥアァァァアァァァァッ!!!!」

語りかけてきた瞳が彼の意志を伝える。彼の強い意志と決意を。

丁原の生き様を汚さぬために。彼の死に様を愚かしなさめぬために。



俺は、剣を振った。



真っすぐ突き抜けた剣は丁原の胸元に差し込まれた。董承の目の前には丁原の顔があった。

丁原は微笑みを絶やさず、ゆっくりと手を董承の頬に当てた。

そして薄れゆく意識の中、震える唇で言葉を紡ぐ。

「……わしの…意地……に…付きおうて……くれて……感謝……す……」

ゆっくりと、最期まで語り切る前に丁原の腕が力無く落ち、その瞳の生気は失われた。

董承は…泣いていた。涙が…止まらなかった。

「俺の一生の後悔だ…。だから…ぜってぇ忘れねぇ…。てめぇのことだけは…ぜってぇ忘れねぇ…」

勝利の余韻もなく董承はただ…泣いていた。

残った丁原の兵は武器を捨て、帰順の意を示す


自陣に戻った董承に声を掛けるものは誰一人としていない


しかし、董承以上に悲しむ男がここに一人…


義息子の呂布だった
呂布
「・・・・・シクシクシクシク・・おとうちゃん・・・・・」
呂布は悲しみのあまり、寝込んでしまい、そのまま洛陽まで送られる事になった。

また、丁原軍が短期間で負け解散した事に、袁紹は驚きを隠せなかった。

「せめて、2ヶ月…いや、1ヶ月持てば…」

そうすれば、袁紹軍と共に董承軍に挟撃をかける事ができたからだ。

「しかし、丁原の兵がかなり降ったとなるとやっかいだな…」

報告では、4万近くまで膨れあがっているという。

「失礼します。」
「失礼します。」

袁紹の元へとやってきたのは、袁紹軍1、2の猛者顔文兄弟である。

「田豊と共に、兵5万を率いて、董承軍を蹴散らしてこい。」

「はっ」

2人は一礼をすると、直ぐ様出兵の準備に取り掛かった。

「曹操は、私自ら行かないとダメか…」

北の戦線は一進一退を繰り返していると報告があるが、曹操は快進撃を続けている。

北は息子達になんとか耐えてもらい、自身が南方を平定しその後北に行くのが良いように思えたが、なかなか決められないでいた。
北漢攻めにあたり、曹操軍は一気に名を知らしめた。

朝丘で韓キョ子隊を叩き、陶泉でスイ元進隊を殲滅した。平原も丁原が出陣し、残っていた守兵一千と朱光は戦いもせずに降伏した。

まさに勇躍一如。群雄とも呼ばれるに足りなかった一領主が、いまや雲を得た龍のごとく躍進する。

しかし、その曹操軍は降伏兵や義勇兵を入れてようやく四万に届こうかという兵力になった程度。北漢を攻略するには明らかに戦力不足に見えた。

だがその実、維幕の将軍の質は大国並みであった。

知略には荀イク、荀ユウ、程イク、劉ヨウに郭嘉があり、武勇には夏侯惇、夏侯淵、曹仁、曹洪、許猪がある。

これだけの偉容を持って進軍する曹操軍に北漢は当たる術なくここまでは敗れてきた。

しかし曹操軍の快進撃はここでひと時止められていた。

対峙する場所は魏城。攻める曹操軍四万に対し城内将兵は一万。率いる武将も武安国と小物。

……でありながら曹操軍はここでもう一ヶ月も足止めをされていた。

その理由は敵に属した二人の若者のせい。

二人の名を曹操は知らなかったが、そのうちの一人の名は聞いて、寝てばかりだった郭嘉が身を起こして軍議に参加してきたほどだった。



その名は、陸遜。東漢からいつの間にか姿を消した軍才秀でる怠け者である。

「これでよし・・・と。」

陸遜がドライバーでネジを閉める。ギリギリと、固く、固く。


ネジを閉めた場所、袁紹の秘密兵器であるサイボーグ高覧の胸部。高覧は陸遜に言う。


「俺を改良できるとは…お前の技術力は素晴らしいな。まあ、俺が出なくともお前なら曹軍を撃退できそうだが。」

高覧の見た目は至って普通の屈強そうな中年男性。とてもサイボーグには見えない。陸遜は謙遜しながら答える。


「いえいえ〜。流石に私だけでは無理ですよ。サイボーグ化に耐えられたただ1人の人類、破壊神・高覧…今や人の領域を越えた貴方の武勇があればこその詰め将棋です。」

「ふむ…お前からは悪意を感じぬから、どうやって武安国の参謀に抜擢されたかは知る気はないし、目的が何かも知る気はない。多くは言わん。頼りにしているぞ、陸遜…」


そして、高覧はラボ(研究施設)を出て性能を試しに行った。曹軍に対して高覧が運用されないのは、高覧という兵器を全ての漢に隠しておきたいからだ。

人類を超越した武力を軽々しく使ってはいけない。軽々しく量産されてはいけない。天下万民を愛する袁紹の配慮である…。だが、相手は曹操。もしかしたらがある。そういう意味合いで、高覧はここに配備されていた。

郭嘉が軍議に出て陸遜について話した後、曹操は周りが呆れるような行動に出た。

ある時は狩りを楽しみ

ある時は馬に乗り、辺りを駆け回り

ある時は針はおろか糸すらついてない、釣竿のようなものをもち、ただひたすら石の上に座り1日を過ごし。

配下には、兵を損なわないよう適度に攻めよとだけ命じた他は、曹仁に密命を与えただけ。

そんな様子を聞いた武安国は、落とされる事は無いだろうと安心しきってしまった。

そして、曹操はある報告が来るのを待っていた。
兵士が慌ただしく薄い箱を持ってくる。

「来ました!」

曹操が喉をならす。

「やっと・・・か」


曹操は箱を受け取り、中を覗いた。中にはピサが1枚

「これが美味いんだよな(*^^*)」

むしゃむしゃむしゃ

なんと、曹操はそのピザを1人で平らげてしまった。

そして残されたのは赤い紙一枚。

その紙を見て、曹操はニヤリと笑い、寝てしまった。

その晩、曹操軍はあわただしく動き始めた。
曹操軍が慌ただしく動き出すその少し前、郭嘉は曹操軍は疎か北漢軍にも悟られることなく魏城に潜りこんでいた。

使者としてではない。
間者としてではない。
伝者としてではない。

ただただ、陸遜との旧交を温めに来たのだった。

「やっほぃ伯言。元気?」

「んー?おや、郭嘉さん」

ごろごろと床で寝転ぶ青年を見つけて声を掛けた郭嘉。二年半も会わなかったというのに二人は懐かしむわけでもなく、ただ友人が遊びに来た程度の気軽さで対面した。

「おぉ、良かった」

「んー?良かった?」

郭嘉の反応に、仰向けのまま地べたに全身を預けていた陸遜の顔が少し持ち上がる。

「いやさ。なんでキミがそっちに付いたのかは別にして、急に戦場なんかに現れたもんで、勤勉意欲が湧いたのかと。そんな陸伯言は見たくなかったからね」

「んー、なるほど。その点は大丈夫ですよ。やる気とか熱情とかは無縁仏ですから」

ごろんと寝返りうった陸遜は壁に手を当て、よっこらせと身を起こす。歳は郭嘉より若いはずだが、この辺りはよほど年寄り臭い。

「んー…郭嘉さんはどして曹操軍に?王修さんは?」

「話せば長くなるし、眠たくなるから省くよ」

「んー、確かに長話はやだなぁ」

柔和な笑顔に敵意はない。郭嘉も欠伸を噛み殺して旧友を見遣る。

「で、キミはこの後どうすんの?」

「んー…貴方のところに厄介になっても良いんですけどね。ちょっと人探ししてるもんでー…」

「人探し?」

「んー。孫策って人」

その名前を聞いて郭嘉は眉を上げる。彼の探し人のことを知っているからでもあるが、そういえばそんなヤツがいつの間にかいなくなってたな、と思い出したからでもある。

「……なんでまた孫策探し?」

「んー?空飛ぶ船に乗った孫堅って人に頼まれたから」

「ふぅん…なるほど。キミはその空飛ぶ船のカラクリを知りたくて手伝ってるわけか」

陸遜の口ぶりに郭嘉の理解が追いつく。陸遜は初めて会った時から工学に興味があり、そういう時だけは怠け癖から解き放たれる。…といってもマイペースであるローペースは変わらないが…。

「んー、そうそう。あんなのが空飛ぶなんてすごく興味があるからねー」

「……じゃなんでキミはここで俺達の邪魔をしてたんだ?」

陸遜の真意はわかった。ただ北漢に属してこちらを邪魔した意図はわからない。孫策探しが重要項なら居座る利はないはずだ。

「んー?あぁ、それはここに面白いモノがあってねー。その改良をしてて邪魔して欲しくなかったからだよ。…まぁもう改良は完成したから去るけどねぇ」

「改良が完成?…どういうこと…」

「んー?知りたければそうですね…。回れ右、です」

陸遜が指を差したのは郭嘉の背後。言われて肩越しに振り返った郭嘉は、その背後に佇む一人の男を視界に納めて眉をひそめた。

「んー、彼の名前は高覧さんです」

「よろしく。曹操軍の軍師殿」

「……軍師ではないんだけどなぁ…」

一目見て自分では高覧を押し切って逃げ出せないと感じた郭嘉は、ゆっくりと両手を挙げてため息を吐いた。
「大変です。曹操軍の陣から兵がいなくなっています。」

日が登り、辺りが明るくなると同時に、物見の兵からの報告が入った。

「はっはっはっ。そうかそうか。」

ここしばらくの曹操軍のやる気の無さから、武安国は曹操軍が夜逃げをしたと疑わなかった。

「よし。追撃を行う。」

武安国は全軍に出撃命令を出し、直ぐに準備の出来た部隊を率い、まずは曹操軍の陣へと入った。

そこは、まるでついさっきまで人が居たような感じであった。

そして、曹と書かれた大きな旗の幕舎の前に来たとき、異変は起きた。

地から大量の曹操軍の兵が現れると共に、火が上がり、城への道が閉ざされたのである。
「始まったか・・・」

ラボの巨大なブラウン管から戦局を眺めるのは高覧と郭嘉。二人はこの戦いを見届けることにしていた。

一体、なにがあって二人は共に居るのか?


陸遜の部屋で郭嘉が両手をあげた後の話だ。観念する郭嘉に高覧は快活に笑った。

「演じずとも取って食いはせぬ。」

演技、郭嘉の観念した演技。高覧はそう言った。郭嘉は更に深い溜め息を吐きながら袖からガシャンと何かを出した。

「それなら、これは要らない?」

出したそれは発煙筒のような円筒形の筒、素粒子刃(プラズマブレード)。スイッチ一つで素粒子による刃が発生。短時間しか稼働しないが、人参キャベツ玉ねぎなど、何でも斬れる優れもの。郭嘉のリーサルウェポンである。

高覧は郭嘉の言葉に「当たり前だ」と苦笑すると、「お前に話があって来た」と続けた。

「話しって、なにかな?」

郭嘉は鼻をほじって、出てきた鼻くそをピーンッって飛ばす。


「仙人が連れてきた四人の男についてだ」

高覧は口がガチャンガチャン、ウィーンってなってコールトブレスを吐き、鼻くそを凍らせる。


「・・・・仙人と四人の男、ね〜。」


「気付けば俺は、太古の技術によりサイボーグとなっていた。俺を改造した男の名は・・・」


「諸葛孔明、ね。そんで?」


「話が早いな・・・。諸葛博士は教えてくれた。残りの3人の男の名を。その内の一人、郭嘉・・・貴様は何者だ?」


郭嘉はまた鼻をほじくりまわす。鼻くそを深追いしてしまい、鼻血を出した。

「君らから見れば、未来人にあたるな〜。西暦2450年、人類は惑星間戦争で超核キャノンを乱射。その時代でも不治の病であった死の灰の蔓延により、滅んだ。僕は滅ぶ寸前の、君らより数千年あとの最後の人類ってとこか。」


怠け者の陸遜が、少し驚いたように目を見開く。

「へ〜、人類は滅ぶんですか。知らなかった。ま、生き物が淘汰されるのは当たり前ですけどねえ」

この位の驚き方で済んだのは、陸遜が陸遜だからだろう。対象的に高覧は無表情だ。

「先の話し過ぎて、今一ピンと来ないな・・・。それで、あとの二人は?」


「鳳雛・・・鳳統。2010年を生きた天才ホームレス親父。至高・・・徐庶。中世時代の魔女狩りを免れた紅蓮の魔術師。他には?」


「なぜお前たち四人が選ばれたのだ?」


「ランダム転送じゃない?誰でも良かったんだよ。誰が来ても、諸葛であり鳳であり、徐であり郭であり・・・俺らはこの時代用の名を名乗っているだけさ。」


頷く高覧。郭嘉は眠たそうに聞いた。

「まだ納得出来てない、って顔をしてるな」

「・・・仙人共は?あれは、何だ?」


「・・・・・彼らも俺と同じ時代の"元"人間、かな。惑星間戦争を免れた、宇宙調査団・・・かな?人類の未来を変えるために人を捨て、何千回も宇宙誕生から人類滅亡までをやり直している者たち。」


「・・・・・・。」


「ま、推測だがね。間違ってはないと思うけど。」


そうして、郭嘉の睡眠欲はピークに達して立ったまま寝た。器用だ、器用過ぎる!


成る程、信じられないが、全てが納得いく話だ。ただ、高覧にはあと一つだけ不可解な点があった。諸葛に言われた言葉


「その力で劉備を殺して下さい」


なぜ、劉備なのだ?と・・・。

その後、陸遜は野に下り、郭嘉は高覧に連れられてこのラボに居候をしていた。
「郭嘉よ。どういう事か説明してくれるか?」

曹操は解らない事だらけで一杯だった。

撒き餌の罠に簡単にかかったかと思ったら、陸遜はいないし、場内から郭嘉と高覧が出てきたからである。

「ん〜面倒だからパスで、じゃダメですかね?」

そう言うと、郭嘉は大きく欠伸をした。

「いや、構わん。」

郭嘉がそう言うのであれば、重要な事は無いのだろうと判断し、郭嘉の後ろにいる男に視線を向けた。

「確か、高覧と言ったな。昔、袁紹からサイボーグがいると言う話を聞いていたが、本当だったとはな…」

話を聞いた時は、そんな馬鹿なと思っていたが、実際に目の前に現れると、信じ無いわけにはいかなくなった。

「ほう。俺の事を知っていたか。で、どうする?」

そう言う高覧の言葉に殺気はないと感じた。

「我が軍に危害を加えないのであれば、自由にするがよい。」

「ならば、城の中のラボで[その時]が来るまで、眠らせて貰ってもいいかな?」

高覧はその場で回れ右をした

「その時が来たら、お前はどうする?」

高覧の後ろから声をかけた。

「[その時]次第で、敵にもなるし味方にもなる。だが、今は関わらないと約束しよう。」

「解った。だが、城は使わせて貰うぞ。」

高覧は構わないと返事をすると、城内に向け歩き出した。

「いいんですか〜?」

やり取りが終わると郭嘉が聞いてきた。

「とりあえずは今だ。その時が来たら、考えるさ。」

その返答に郭嘉は浮かない表情をしたが、曹操は気が付かなかった。

「[その時]の意味、解ってないよなぁ…」

郭嘉は誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
さて、劉備軍の動きに目を転じてみよう。

第一部隊を率いた関羽隊は常山にてエンキ、エンタンの二軍と対峙。若干手を焼いているように見えたが、これは劉備の命令通りの戦略だった。

「関羽様、劉備様より通信です」

伝令兵が手渡してきたトランシーバーを渡されて関羽はそれを取る。イマイチまだ使い方がわからないのだが、掛かって来るのを受けることだけは出来るようになっていた。

「こちら関羽です」

『エン紹の息子どもはどう動いている?』

「頻繁に攻めてきていますが、特に問題はないかと。こちらの戦略にも気付いた様子はございません」

『そうか。では第二陣を晋陽へ進発させ、おまえはそのまま抑えとして戦っていろ。しばらくしたら第三陣も到着するだろう』

「その時が攻め時…ですな?」

『うむ。…おっと、電力が尽きはじめたか。所詮自家発電ではこれが限界か…』

「では切ります。劉備様もお気をつけて」

『うむ。またギョウで会おう』

そう言い終わるなりトランシーバーからの声は途絶えた。関羽にはこのカラクリがわからないが、便利だとはわかる。

だがこれが普遍的に使え、もっと数を作ることが叶ったならば、人は怠惰にも己の研鑽を忘れるのだろうと朧げながらに思った。

「……人が人らしくある世…か…」

昔、出逢ったばかりの頃の劉備が自分に言った言葉。カガクという力を持って人類の繁栄をもたらし、安定した生活から調和をして平和となす。…そんな未来を語っていた。

だがそのカガクというモノが本当に人のためになるのか?それを関羽自身は未だに計りかねていた。

「関羽様!前方より砂塵が!」

「また打って出て来たか」

一抹の疑念も敵の出現に一先ず置き、関羽は戦場に立った。

悩み考えるような時間は彼には与えられていなかった…。
「急げ!早く用意しろ!デンリョク供給してバリアーを張るんだ!」

関羽の前に、人よりも巨大な車輪が運ばれる

関羽は車輪の中に入り、走った

車輪が回る

カラカラと

摩擦が生まれる

ビリビリと


すると、兵士たちが歌い出した




♪とおとこ〜走るよ雲長
♪死ぬまで〜走るよ雲長
♪だあーいすきなのはー
♪ひーまわりのたねー


♪ドー

♪ミーー

♪ソーーー


イエーイ!



「・・・・はあはあ、やったか」


関羽の頑張りにより、ついに、全兵にバリアーが張られた

股間部分にだけバリアーが張られた
関羽隊がこのようなバリアを使う理由。

それは、袁煕、袁タン兄弟が問題であったわけではない。

彼らの元で働く張コウ、高順2人の回りにいる美女軍団が問題であった。

この戦場において、袁紹軍の男どもは情けないものであった。

しかし、美女軍団が問題であった。

別に強い訳ではないのだが…
美女軍団の夜襲

それは、深夜に音も無く忍び寄り、兵達が1人また1人と骨抜きにされていくと言うものだった。

しかし、それもバリアのお陰で問題は無くなった。

そして、バリアによって働き場を失った美女軍団は自軍の将兵達を骨抜きにしてゆき、ついに張コウ、高順は軟体動物のようにぐにゃぐにゃになり、自力で立てなくなってしまった。

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