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裏装荒コミュのひつまぶし

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小説を創作して、最後に次のヒトにテーマを回して行きましょう。

コメント(5)

テーマ『酒』

 洋杯に水滴が付いておりましたの。私はそれを手馴れた仕草で布巾で拭いつつ、氷を足して焼酎と水を注ぎました。薄暗いホールには顔の見えないスーツの男たちの影と、女たちの真っ赤に塗られた口だけが浮かび上がって見えましたわ。頭をすり抜けて行く会話。無意味な相槌。笑い声。私も笑っておりました。目の前の男は私の作ったお酒を舐めながら目をトロンとさせて甘い言葉とお仕事の愚痴を交互に吐き出します。嗚呼、なんだか駄目な気が致します。そんなことをこんな若い小娘に仰るこの男も、そんなことに慣れてしまいそうな私も。あら、大変、煙草を銜えたわ。ライターを。
 更衣室で化粧を直し、着替えをする女たちの中で、私は茶封筒を渡され、外に出ました。明け方はまだ息が白く、お酒と空気に酔った頭を鮮明にしてくださいます。履きなれないヒールのせいで痛くなった足が軽くなった気が致しました。私は茶封筒の中に入った現金を財布に押し込みながら、嗚呼、これで何でもできると思いましたわ。何でもできるのです。ですから、今夜も大丈夫。大丈夫なのです。



次のテーマは毛『毛布』で。
 彼女は甘いお菓子の香りが致しました。漆黒の柔らかい毛と、優しい声。金色のペンダントが私を撫でる度に揺れました。私は彼女を抱き締めたいと切望いたしましたが、それは同時に恐怖を感じさせましたの。ですから、私はソファーで眠る彼女の鼻の頭にそっと接吻をしたのですわ。嗚呼、なんと愛しいのでしょう。
 彼女の愛する人。それは茶色い毛のスマートな隣の家の男。それはいつも明るい声で挨拶をする角のパン屋の男。それはいつも居間でテレビを見ている眼鏡の男。彼女は優しくされるとすぐに尻尾を振って私のことなど忘れてしまいますのよ。私はいつも彼女のことを見守り、こんなに愛しておりますといいますのに。彼女は浮気性で尻軽で、見境のないとんだ最低女。地上最悪のどうしようもない、私の気持ちになどちっとも気付かない、そんな奴なのです。
 彼女の鼻はひんやりとした感触が致しました。嗚呼、この桜色の大理石のような可愛らしいお鼻に私以外の誰かもこうして接吻をすることがあるのかしら。そんなことを思いますと、私はどうしようもない気持ちになったのです。そうなのです。この手にあとほんの少しでも力を加えたら、彼女の首はきゅっと締り、ころんと落ちてしまうでしょう。そうすればこのお鼻に接吻をできるのは私だけなのですわ。それは簡単なことでした。そう、今度こそ、私は彼女を私のだけのものにするのです。
 汗で指に彼女の毛が絡み付きました。彼女の寝息が静かに伝わって参りました。嗚呼、嗚呼、嗚呼。
 その刹那でしたわ。彼女はぼんやりと目を開き、その硝子玉のような瞳に私の顔を映して鳴いたのです。
「ニャーゴ」
 本当、可笑しいでしょう。彼女は私が何をしようとしていたのかすら気付かず、いいえ、寧ろ感心がなかったといってもよかったのですから。ねえ、本当に可笑しいのですわ。



テーマ『犬』

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