鳳源寺（ほうげんじ） 三次市三次町
比熊山と号す臨済宗妙心寺派の寺。本尊は薬師如来であるが、大正12年編纂『広島県史第2編社寺志』には釈迦と記されている。寛永10年(1633)、初代三次藩主・浅野長治が菩提寺として建立した。浅野長治の娘・阿久利姫が赤穂藩主・浅野内匠頭長矩に嫁いだところから、この寺の歴史が始まったのかも知れない。
浅野内匠頭と阿久利姫との婚礼に先立って、赤穂藩から三次まで阿久利姫をお迎えにやってきたのは大石内蔵助良雄だった。この時、大石良雄は鳳源寺の境内に一本の枝垂れ桜を植えたという。その桜は「春ともなれば今なお当寺の境内に咲き誇っています。」と案内書に紹介されている。
二人の婚礼が行われたのは天和3年正月（1683)である。それから14年後の元禄14年3月14日（1701)、事件は起こった。浅野内匠頭は江戸城松の廊下で吉良上野介に斬りかかり即日切腹し果てた。阿久利は江戸の三次浅野家下屋敷へ引き取られ、落飾して瑤泉院と称し夫の菩提を弔った。この刃傷事件によって赤穂藩は改易となり、お家再興もならず大石良雄ら47士は吉良邸討ち入りを決心するのである。
討ち入りは元禄15年12月14日（1703)に決行された。吉良上野介は打ち取られ、首級は浅野内匠頭が眠る高輪泉岳寺の墓前に供えられた。討ち入りの結果として赤穂浪士には死罪が命じられ、元禄16年2月4日一斉に切腹。遺骸は泉岳寺に埋葬された。阿久利はどんな気持ちでこの一連の騒動を見ていたのであろうか。夫と共に眠る赤穂浪士の菩提をただひたすら弔いながら正徳4年（1714）、江戸の三次浅野家下屋敷でこの世を去った。墓所はやはり泉岳寺である。遺髪だけが生まれ故郷三次に帰り、鳳源寺に五輪塔の遺髪塚が建てられた。
大石良雄の切腹により大石家もお取り潰しとなった。大石良雄と妻りくとの間に生まれた三男大三郎は正徳3年（1713）、浅野宗家である広島藩に取り立てられ、母りくとともに広島に移り大石家再興を果たす。りくも阿久利同様落飾し香林院と称し、夫や夫と行動を共にし切腹して果てた長男大石良金の菩提を弔い、元文元年（1736）に68才で死去。広島の国泰寺に葬られた。大三郎は明和7年（1770）2月14日に69才で死去。母りくと同じ国泰寺に葬された。大石家はその後も広島藩士大石家として生き抜いたのである。
http://
さて、鳳源寺であるが尾関山公園の北側に位置する。さらに北側の山は比熊山といい、当寺の山号となっている。毛利時代は三吉氏の居城比熊山城が築かれていたが、関ヶ原の合戦後廃城となった。鳳源寺が建立された寛永10年(1633)にはすでに無かったことになる。「稲生物怪録」(http://
境内には瑤泉院阿久利姫の遺髪塚、大石良雄手植の桜、赤穂浪士47人の出立の姿を模した木像を安置する義士堂などが建立されている。『西備名区』上里（あがり）村の項に飛熊山城（比熊山）「三吉氏」、尾関山城「同 石見守正勝 福島政則臣」、積山城「今、此山を尾関山と云」とある。
現在の本堂について、寛政9年(1797)に再建されたとき、それまで屋根に上がっていた鬼瓦が下ろされて境内に保存されている。さらに昭和62年に再建されている。桁行七間、梁間七間、入母屋造で屋根は桟瓦葺。浅野氏の家紋がよく目立つ。鐘楼は袴腰付きで立派であるが、梵鐘が見当たらなかった。
尾関山は元は小丸積山と称し、上里越後守の居城であった。関ヶ原後の慶長6年、福島正則が広島に入封すると、この山に家臣尾関石見守正勝を置いた。尾関石見守はこの山を尾関山と改称したのである。また、『西備名区』原村の項に「三次城」として浅野長治の名を記している。三次城は原村のどこにあったのだろうか。そして鳳源寺の記載がないのである。
『芸藩通志』によると、原村は現在の三次町、十日市一帯をいい、後に尾関山や鳳源寺あたりが上里村として別けられたという。元々三吉氏は畠敷村比叡尾山城を本拠としていたが、天正19年(1591)三吉広高の時代に、鳳源寺背後の比熊山に拠点を移した。それにより三次の中心も移動した。なお比熊山には「稲生物怪録」に登場する「たたり石」が現存しているらしい。
写真
左：山門
中：本堂
右：違い鷹の羽は浅野氏の家紋
地図
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比熊山と号す臨済宗妙心寺派の寺。本尊は薬師如来であるが、大正12年編纂『広島県史第2編社寺志』には釈迦と記されている。寛永10年(1633)、初代三次藩主・浅野長治が菩提寺として建立した。浅野長治の娘・阿久利姫が赤穂藩主・浅野内匠頭長矩に嫁いだところから、この寺の歴史が始まったのかも知れない。
浅野内匠頭と阿久利姫との婚礼に先立って、赤穂藩から三次まで阿久利姫をお迎えにやってきたのは大石内蔵助良雄だった。この時、大石良雄は鳳源寺の境内に一本の枝垂れ桜を植えたという。その桜は「春ともなれば今なお当寺の境内に咲き誇っています。」と案内書に紹介されている。
二人の婚礼が行われたのは天和3年正月（1683)である。それから14年後の元禄14年3月14日（1701)、事件は起こった。浅野内匠頭は江戸城松の廊下で吉良上野介に斬りかかり即日切腹し果てた。阿久利は江戸の三次浅野家下屋敷へ引き取られ、落飾して瑤泉院と称し夫の菩提を弔った。この刃傷事件によって赤穂藩は改易となり、お家再興もならず大石良雄ら47士は吉良邸討ち入りを決心するのである。
討ち入りは元禄15年12月14日（1703)に決行された。吉良上野介は打ち取られ、首級は浅野内匠頭が眠る高輪泉岳寺の墓前に供えられた。討ち入りの結果として赤穂浪士には死罪が命じられ、元禄16年2月4日一斉に切腹。遺骸は泉岳寺に埋葬された。阿久利はどんな気持ちでこの一連の騒動を見ていたのであろうか。夫と共に眠る赤穂浪士の菩提をただひたすら弔いながら正徳4年（1714）、江戸の三次浅野家下屋敷でこの世を去った。墓所はやはり泉岳寺である。遺髪だけが生まれ故郷三次に帰り、鳳源寺に五輪塔の遺髪塚が建てられた。
大石良雄の切腹により大石家もお取り潰しとなった。大石良雄と妻りくとの間に生まれた三男大三郎は正徳3年（1713）、浅野宗家である広島藩に取り立てられ、母りくとともに広島に移り大石家再興を果たす。りくも阿久利同様落飾し香林院と称し、夫や夫と行動を共にし切腹して果てた長男大石良金の菩提を弔い、元文元年（1736）に68才で死去。広島の国泰寺に葬られた。大三郎は明和7年（1770）2月14日に69才で死去。母りくと同じ国泰寺に葬された。大石家はその後も広島藩士大石家として生き抜いたのである。
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さて、鳳源寺であるが尾関山公園の北側に位置する。さらに北側の山は比熊山といい、当寺の山号となっている。毛利時代は三吉氏の居城比熊山城が築かれていたが、関ヶ原の合戦後廃城となった。鳳源寺が建立された寛永10年(1633)にはすでに無かったことになる。「稲生物怪録」(http://
境内には瑤泉院阿久利姫の遺髪塚、大石良雄手植の桜、赤穂浪士47人の出立の姿を模した木像を安置する義士堂などが建立されている。『西備名区』上里（あがり）村の項に飛熊山城（比熊山）「三吉氏」、尾関山城「同 石見守正勝 福島政則臣」、積山城「今、此山を尾関山と云」とある。
現在の本堂について、寛政9年(1797)に再建されたとき、それまで屋根に上がっていた鬼瓦が下ろされて境内に保存されている。さらに昭和62年に再建されている。桁行七間、梁間七間、入母屋造で屋根は桟瓦葺。浅野氏の家紋がよく目立つ。鐘楼は袴腰付きで立派であるが、梵鐘が見当たらなかった。
尾関山は元は小丸積山と称し、上里越後守の居城であった。関ヶ原後の慶長6年、福島正則が広島に入封すると、この山に家臣尾関石見守正勝を置いた。尾関石見守はこの山を尾関山と改称したのである。また、『西備名区』原村の項に「三次城」として浅野長治の名を記している。三次城は原村のどこにあったのだろうか。そして鳳源寺の記載がないのである。
『芸藩通志』によると、原村は現在の三次町、十日市一帯をいい、後に尾関山や鳳源寺あたりが上里村として別けられたという。元々三吉氏は畠敷村比叡尾山城を本拠としていたが、天正19年(1591)三吉広高の時代に、鳳源寺背後の比熊山に拠点を移した。それにより三次の中心も移動した。なお比熊山には「稲生物怪録」に登場する「たたり石」が現存しているらしい。
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左：山門
中：本堂
右：違い鷹の羽は浅野氏の家紋
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