ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

カナダの歴史と政治コミュのトルドー内閣発足

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 ジャスティン・トルドー氏は11月4日、総督公邸リドー・ホールで総理大臣として宣誓し、トルドー内閣の閣僚を発表した。
 彼は公約通り、自身を除く閣僚を男女同数に15人ずつ任命した。記者会見で、閣僚を男女同数にすることがなぜそれほど重要なのかについて尋ねられると、彼は「2015年だから」と笑顔で答えた。
 トルドー首相は、新政権にとって開放性と透明度が重要であり、政策決定は証拠と情報に基づくと述べた。また今年終わりまでに2万5000人のシリア難民をカナダに受け容れるという公約については、目標達成のためのチームを編成し「大きなステップ」を踏み出すと語った。
 10年前まで政権に就いていた自由党は、閣僚経験者も少なくないが、新政権に入閣した閣僚経験者は6人だけとなった。それはグッデイル元財務大臣、マッコーレイ元労働大臣・元法務長官、ディオン元政府間関係大臣・元環境大臣(元党首)、ブライソン元公共事業大臣、ベネット元厚生大臣、マッコーラム元国防大臣・復員軍人大臣である。いったんトルドー首相に何かあった場合、臨時代理首相はグッデイル氏、マッコーレイ氏、ディオン氏の順に継承される。

●トルドー内閣閣僚名簿(括弧内は選挙区)
総理大臣 兼 政府間関係大臣 兼 青年担当大臣:ジャスティン・トルドー(ケベック)
公安・非常時対応準備大臣:ラルフ・グッデイル(サスカチュワン)
農務・農産食品大臣:ローレンス・マッコーレイ(プリンスエドワード島)
外務大臣:ステファン・ディオン(ケベック)
移民・難民・市民権大臣:ジョン・マッコーラム(オンタリオ)
先住民および北方問題担当大臣:キャロリン・ベネット(オンタリオ)
予算庁長官:スコット・ブライソン(ノバスコシア)
下院院内総務:ドミニク・ルブラン(ニューブランズウィック)
技術革新・科学・経済発展大臣:ナブディープ・ベインズ(オンタリオ)
財務大臣:ビル・モルノー(オンタリオ)
法務大臣 兼 司法長官:ジョディ・ウィルソン=レイブルド(ブリティッシュコロンビア)
公共事業・政府業務大臣:ジュディ・フート(ニューファンドランド&ラブラドル)
国際貿易大臣:クリスティア・フリーランド(オンタリオ)
厚生大臣:ジェーン・フィルポット(オンタリオ)
家庭・児童および社会開発大臣:ジャン=イブ・デュクロ(ケベック)
運輸大臣:マルク・ガルノー(ケベック)
国際開発 兼 フランコフォニー担当大臣:マリー=クロード・ビボー(ケベック)
天然資源大臣:ジム・カー(マニトバ)
文化遺産大臣:メラニー・ジョリー(ケベック)
歳入大臣:ディアンヌ・ルブティリエ(ケベック)
復員軍人大臣 兼 国防副大臣:ケント・ヘーア(アルバータ)
環境および気候変動担当大臣:キャサリン・マッケナ(オンタリオ)
国防大臣:ハルジット・サジャン(ブリティッシュコロンビア)
雇用・労働力開発・労働大臣:メリーアン・ミハイチャック(マニトバ)
インフラおよびコミュニティ担当大臣:アマルジート・ソーヒ(アルバータ)
民主機関担当大臣:メリヤム・モンセフ(オンタリオ)
スポーツおよび障害者担当大臣:カーラ・クワルトロー(ブリティッシュコロンビア)
漁業・海洋・沿岸警備隊担当大臣:ハンター・トゥートゥー(ヌナブート)
科学大臣:カースティ・ダンカン(オンタリオ)
女性の地位担当大臣:パティー・ハイドゥ(オンタリオ)
中小企業・観光担当大臣:バーディシュ・チャッガー(オンタリオ)

コメント(47)

ステファン・ディオン前外務大臣は、EUおよびドイツ大使の任務を受諾した。
 トルドー首相は4月6日、ジュディ・フット公共サービス・調達大臣が家庭内の事情により休養すると発表した。彼女の職務は当分の間、ジム・カー天然資源大臣が代行する。
 彼女には乳がんの病歴があるが、彼女をよく知る人々は、今回の決定は健康とは無関係だと語った。
 フット大臣はニューファンドランド・メモリアル大学を卒業後、クライド・ウェルズ首相(ニューファンドランド&ラブラドル州)のスタッフを務め、1996年ニューファンドランド&ラブラドル州議に当選して政界入りし、2008年には連邦議会議員に転身した。州議時代の2000年に乳がんを患っていることを公表し、2014年には再度乳がんに罹ったことを公表した。
 トルドー首相は、声明で次のように述べた。
「議員として、家族は常に我々のプライオリティでなければならない。そして私は、彼女が愛するもののために時間をとることを賞賛する。」
「彼女がオタワに復帰するのを、楽しみにしている。」
 休養中のジュディ・フット公共サービス・調達大臣は8月24日、大臣を即時辞任し、議員も9月に辞職し引退すると発表した。
 乳癌を2度克服した彼女は、現在は癌に罹っていないものの、発癌性のBRCA2遺伝子のキャリアであり、検査の結果2人の子と4人の孫にそれを引き継いだことを明らかにした。そして彼女は、仕事以上に家族が第一であり、家族のそばにいてあげたいと語った。
「BRCA2遺伝子が意味することは、あらゆる種類の癌に罹りやすいということである。」
「仕事よりも命よりも、私は家族を愛している。私の決定は、家族とともに過ごすことだ。それは私がそうしたいと望んでいることであり、そして家族がそうしてほしいと望んでいることである。」
 連邦議会は9月18日に召集される。彼女は毎週木曜日か金曜日にニューファンドランド&ラブラドル州の家に戻り、日曜日にオタワに行く生活を考えていたが、それでは家族が第一にならないという結論に達したという。
 彼女の休養中はジム・カー天然資源大臣が臨時代理を務めていたが、トルドー首相は後任をすぐに任命しないつもりだ。フェニックス・ペイ制度は、公務員への給与支払いが過多だったり過少だったり、全く支払われていないケースさえあり、このポストは経験豊富な人物でないと勤まらないと言われている。
 いっぽう、フット大臣辞任によってニューファンドランド&ラブラドル州は大臣がいなくなるため、首相は同州選出のシーマス・オリーガン議員を大臣にすることを考えているが、閣僚の男女が同数でなくなるため、新たに1人女性を大臣に任命する必要が生じる。首相は結局、9月に小規模な内閣改造に踏み切るものとみられる。
 ドミニク・ルブラン漁業海洋大臣・カナダ沿岸警備隊大臣(49歳)は12月6日、慢性リンパ性白血病を患っており、来週から治療を開始すると発表した。病気を知ったのは、今年4月だという。
彼は「慢性の病気を抱えている何万人ものカナダ人と同様、私は働き続ける」と語り、大臣の職務を続けることを明らかにした。
 ルブラン大臣は、下院議員として当選7回。ピエール・トルドー内閣で漁業海洋大臣などを歴任したロメオ・ルブラン氏の息子であり、ジャスティン・トルドー首相とは幼馴染で側近。ジャスティン・トルドー内閣では当初下院院内総務の重職に就いたが、安楽死幇助法案の質疑を一方的に打ち切ろうとして野党の非難を浴び、昨年8月に漁業海洋大臣・カナダ沿岸警備隊大臣に移動していた。
 トルドー首相は7月18日、内閣を改造した。これはケント・ヘア前スポーツ・障害者大臣が、セクハラ疑惑で1月に辞任し、カースティ・ダンカン科学大臣が一時的に兼務していた状態を受けたものである。
 閣外に去った大臣はなく、新入閣の大臣が5人いる。閣僚数は30人から35人に拡大し、トルドー首相を別にすれば男女とも17人の同数のままである。クリスティア・フリーランド外務大臣、ビル・モルノー財務大臣、ハルジット・シン・サジャン国防大臣ら、重要閣僚には変動がなかった。だが今回の改造では、注目すべき3人がいる。

 (1) 注目の人事
 次の総選挙まで、長くても1年あまりの期間しか残されていないが、与党自由党の支持率は保守党と拮抗している。トルドー首相がマリファナを合法化したことや、トランプ大統領に対抗し「難民を歓迎する」と発言したことは、少なからずカナダ国民を動揺させた。保守党は治安悪化を訴え、支持を拡大している。自由党が総選挙に勝利するには、都市部でできるだけ多くの議席を獲ること、特に自由党が強く議席の多いオンタリオとケベックは鍵となる。
 オンタリオでは6月、自由党政権が倒れ、保守党のダグ・フォード政権に替わった。また、2月に発足した保守系サスカチュワン党のスコット・モウ政権も、トルドー首相が推進する炭素税に、フォード首相とともに反対することを表明している。そこでトルドー首相は、親子2代に渡るつきあいで幼馴染の腹心ドミニク・ルブラン漁業海洋大臣を、政府間関係大臣(連邦政府と州政府を調整する)に任命した。彼はさらに、北方問題大臣と国内貿易大臣も兼務する。
 なおケベックでは今年秋、アルバータでは来年春までには州議会総選挙がある。前者は自由党政権、後者は新民主党政権で、トルドー政権との関係は良好だが、いずれも保守系政党に大きなリードを許している。
 ルブラン氏は、次のように抱負を述べた。
「我々は、フォード首相や他の州首相らとともに建設的に働くことを楽しみにしている。カナダ国民は最終的には、それぞれの政府が協力するものと考えていると思う。」
 次に注目すべきは、ジム・カー国際貿易多様化大臣である。トランプ大統領がNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉を主張し、関税報復合戦に発展している事態の収拾、さらにはカナダ・EU自由貿易協定の促進や、中国との貿易協定、ラテンアメリカ諸国との経済統合に努めることになるだろう。
 もう一人注目すべきは、ビル・ブレア国境警備及び組織犯罪低減担当大臣である。これは本来なら公安大臣の職務であるように思われるが、トルドー首相はブレア大臣の任務について「保守党の筋書きと戦うことになる」と説明した。首相によると、保守党は国民の間に恐れを生じさせ、分断させようとしているのだという。
 フォード首相の弟ロブ・フォード氏は、コカイン使用を暴露されトロント市長を辞任した。ブレア氏はこのときトロント警察署長で、フォード兄弟について調査していたという。このことから、トルドー首相はフォード首相と交渉するにあたり、ブレア氏の持つ情報を利用しようとしているのではないかという憶測もある。

 (2) 初入閣の顔ぶれ
 次に、初入閣の顔ぶれを見る。ビル・ブレア大臣については前述した。パブロ・ロドリゲス文化遺産及び多文化大臣は、当選5回のベテランで、下院幹事長を務めた。
 フィロメナ・タッシ高齢者大臣は、企業の顧問弁護士、高校のチャプレン、オンタリオ州議を務め、2015年総選挙で初当選した新人議員で、下院副幹事長を務めた。トルドー政権は、新たに「高齢者省」を設置することになっている。
 メアリー・ン中小企業・輸出促進担当大臣は、オンタリオ州文部省やライアソン大学に勤め、2017年3月の補選で初当選した新人議員である。
 ジョナサン・ウィルキンソン漁業海洋大臣兼カナダ沿岸警備隊大臣は、環境政務次官から昇進した。2015年総選挙で初当選した新人議員で、かつてサスカチュワン州のロマノウ首相のブレーンを務めた。
 (3) その他の変動
 アマルジート・ソーヒ天然資源大臣は、インフラ・地域社会大臣からの横滑りである。自由党では珍しいアルバータ州選出議員で、2015年総選挙で初当選した新人議員だがいきなり閣僚ポストを与えられた。彼の最も重要な任務は、トランスマウンテン・パイプラインを巡る交渉である。
 バーディッシュ・チャッガー下院院内総務は留任し、中小企業・観光大臣の任務から離れた。
 キャロリン・ベネット政府=先住民関係大臣は留任し、北方問題大臣の任務から離れた。
 カースティ・ダンカン科学大臣兼スポーツ大臣は留任し、障害者大臣の任務から離れた。
 マリー=クロード・ビボー国際開発大臣は留任し、フランコフォニー担当大臣の任務から離れた。
 スコット・ブライソン予算庁長官は留任し、デジタル政府担当大臣を兼務する。
 メラニー・ジョリー観光・公用語・フランコフォニー担当大臣は、文化遺産大臣からの横滑りである。
 フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ インフラ・地域社会大臣は、国際貿易大臣からの横滑りである。
 カーラ・クワルトロー公共サービス・調達・アクセシビリティ担当大臣は、アクセシビリティ担当を新たに加えた。

 新民主党のダニエル・ブレイキー議員は、多数の無任所大臣任命を皮肉った。
「彼らが特にいい仕事をしていない問題について、解決するつもりがあるよう見せかけるため、新たな閣僚ポストを設置しただけだ。」
 保守党のリサ・レイト副党首も、今回の内閣改造を酷評した。
「この政権が言っていることは、州と戦う用意ができているということだと思う。」


 【トルドー内閣閣僚】
総理大臣:ジャスティン・トルドー
公安・非常時対応準備大臣:ラルフ・グッデイル
農務・農産食品大臣:ローレンス・マッコーレー
政府=先住民関係大臣:キャロリン・ベネット
予算庁長官兼デジタル政府担当大臣:スコット・ブライソン
政府間関係大臣兼北方問題大臣兼国内貿易大臣:ドミニク・ルブラン
イノベーション・科学・経済開発大臣:ナブディープ・シン・ベインズ
財務大臣:ビル・モルノー
法務大臣兼司法長官:ジョディー・ウィルソン=レイボールド
外務大臣:クリスティア・フリーランド
先住民サービス大臣:ジェーン・フィルポット
家庭・子供・社会開発大臣:ジャン=イブ・デュクロ
運輸大臣:マルク・ガルノー
国際開発大臣:マリー=クロード・ビボー
国際貿易多様化大臣:ジム・カー
観光・公用語・フランコフォニー担当大臣:メラニー・ジョリー
歳入大臣:ディアーヌ・ルブティリエ
環境・気候変動大臣:キャサリン・マッケナ
国防大臣:ハルジット・シン・サージャン
天然資源大臣:アマルジート・ソーヒ
女性の地位担当大臣:マリアム・モンセフ
公共サービス・調達・アクセシビリティ担当大臣:カーラ・クワルトロー
科学大臣兼スポーツ大臣:カースティ・ダンカン大臣
雇用・労働力開発・労働大臣:パトリシア・ハイデュ
与党下院院内総務:バーディッシュ・チャッガー
インフラ・地域社会大臣:フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ
民主機構大臣:カリナ・グールド
移民・難民・市民権大臣:アハメド・フッセン
厚生大臣:ジネット・プチパ・テイラー
退役軍人大臣兼国防副大臣:シームス・オリーガン
文化遺産及び多文化大臣:パブロ・ロドリゲス
国境警備及び組織犯罪低減担当大臣:ビル・ブレア
中小企業・輸出促進担当大臣:メアリー・ン
高齢者大臣:フィロメナ・タッシ
漁業海洋大臣兼カナダ沿岸警備隊大臣:ジョナサン・ウィルキンソン
 スコット・ブライソン予算庁長官兼デジタル政府大臣は1月10日、次の総選挙に出馬せず引退し、また閣僚を即時辞任すると発表した。これを受けてトルドー首相は、14日に内閣改造を行うと語った。内閣改造は大規模なものか小規模なものかを問われると、首相は回答を拒否した。
 ブライソン氏はノバスコシア州ウィンザーに生まれ、1997年進歩保守党から出馬して初当選。次代を担うニューリーダー「青年トルコ党」の一人として注目された。2003年党首選に立候補して敗れ、同年カナダ同盟による進歩保守党の吸収合併が決まると、自由党に移籍し、マーチン内閣の公共サービス大臣に任命され、カナダ初の公表されたゲイの大臣となった。2006年には自由党党首選に出馬して落選、2015年から予算庁長官とデジタル政府大臣を務めている。
 私生活では2007年、マクシム・サン=ピエール氏と下院議員初の同性婚を行った。2014年には、代理母によって双子の娘を授かった。政界引退は、家族とともに過ごす時間を大切にしたいからであり、閣僚辞任は、今年秋の総選挙を控え、閣僚は再選を目指すメンバーだけで構成されるべきだという考えに基づいているという。

 だが彼はまだ51歳であり、その説明を真に受ける人は少ない。海軍がケベック州レビのデイビー造船所と6億6800万ドルのリース契約を結ぼうとした際、ブライソン氏が圧力をかけ、ノバスコシア州ハリファックスのアービング造船所との契約に差し替えようとした疑惑を持たれている。この事件は、マーク・ノーマン中将が内閣の機密情報をデイビー造船所に漏洩するという結果を招き、ノーマン氏の裁判が8月に始まる。ブライソン氏の証言・尋問は不可避と見られ、総選挙が10月に実施されることから、与党へのダメージを軽減する狙いがあると見られている。
 スコット・ブライソン予算庁長官兼デジタル政府大臣の辞任を受け、トルドー首相は1月14日、小規模な内閣改造を行った。
 新入閣は、デビッド・ラメッティ法務大臣兼司法長官とバーナデット・ジョーダン地方経済開発担当大臣の2名である。ラメッティ大臣はイノベーション政務次官からの昇格で、かつてマギル大学で法学を教えていた。ジョーダン大臣は、民主機構政務次官からの昇格である。
 異動は3名で、ジェーン・フィルポット予算庁長官兼デジタル政府大臣は、先住民サービス大臣から昇格し、辞任したブライソン前予算庁長官の後を継いだ。シーマス・オリーガン先住民サービス大臣は、復員軍人大臣からの異動で、フィルポット大臣が異動した後任となった。ジョディ・ウィルソン=レイボールド復員軍人大臣兼国防副大臣は、法務大臣からの異動で、シーマス・オリーガン大臣が異動した後任となった。

 法務大臣から復員軍人大臣への異動は、通常降格と見なされる。だがトルドー首相はこれを否定し、復員軍人に奉仕することは重大な任務以外の何物でもないと説明した。ウィルソン=レイボールド大臣もホームページで、法務大臣としての業績を2000語以上にも及ぶ文書で自讃した。
「我々の働きの結果、この政府が発足したころより、カナダの司法制度はより強化されたと私は信じている。」
「最も重要なのは、カナダ人の基本的人権と自由を保護する作業が促進されたことだ。」
 そして彼女は、法務大臣のポストから外された理由については一切触れず「我々の制度では、閣僚の指名に関する決定は総理の専権事項である」とだけ述べた。
 だが何名かの閣僚やスタッフは、彼女が妥協点を探ることなくすぐ対決的になる性格を挙げ、ともに仕事をするのが困難だとメディアに語った。ブライソン長官の辞任は、内閣を改造し彼女を法務大臣のポストから外す絶好の口実となった。先週始めには早くも彼女の更迭が噂され、先住民サービス大臣のポストを提示されたが断ったという情報が流れた。
 オタワ大学で法学を教えるアミル・アッタラン教授は、ウィルソン=レイボールド前法相は自殺幇助の法制化において致命的なミスを犯したと指摘する。裁判所が定めた期限までに法案成立させられず、自殺幇助が合法でも非合法でもないグレーゾーン期間が生じてしまい、法案審議に十分な時間をかけられなかった。そしてオードリー・パーカーさんが2018年11月、まだ余命が残っているにもかかわらず医師の幇助による早期の自殺を余儀なくされたのは、法律が明確な意思表示を必要とするため、鎮痛剤によって意識不明に陥る前に決行しなければならなかったからであり、法律の不備を指摘する声が挙がった。
 だがトロント大学で法学を教えるトルド・レメンス教授は、ウィルソン=レイボールド前法相を評価した。
「国民の間の批判や、自由党内からですら批判の声が上がるなか、彼女は安楽死幇助、大麻合法化、刑法改正などの難しい局面において、個人の権利と公共の利益のバランスを巧妙に保ったと思う。」

 ジョーダン地方経済開発担当大臣には所轄の省庁がなく、無任所大臣である。自由党は今年実施される総選挙で、東部の議席を相当に失うことが予想されているが、彼女の無任所大臣就任は選挙のための箔付けではないかという疑いを、彼女は否定した。
「私の役割は、地方の経済開発を支援し、地方が発展することを確かなものにすることである。」
 だが保守党のピエール・ポワリーブル議員は、トルドー首相が炭素税を課すことで地方経済の発展を阻害しておきながら、自ら担当大臣を任命してその解決に当たらせていると皮肉った。またエリン・オツール議員は、フィルポット大臣とラメッティ大臣は手堅い仕事をするが、その他の閣僚は頭痛の種だと評した。


写真:左からジョディ・ウィルソン=レイボールド復員軍人大臣兼国防副大臣、ジェーン・フィルポット予算庁長官兼デジタル政府大臣、シーマス・オリーガン先住民サービス大臣、デビッド・ラメッティ法務大臣兼司法長官、バーナデット・ジョーダン地方経済開発担当大臣。
 ジョディ・ウィルソン=レイボールド復員軍人大臣は2月12日、大臣と国防副大臣を辞任した。復員軍人大臣のポストは当面、ハルジット・サジャン国防大臣が代理を務める。
 グローブ&メイル紙は8日、彼女にまつわる疑惑を報道した。記事によると、ケベックのエンジニアリング企業SNC-ラバラン社が贈収賄と詐欺の容疑で刑事告発されそうになっているとき、ジャスティン・トルドー首相が当時司法長官だったウィルソン=レイボールド氏に、これを阻止するよう要請したという。さらに1月の内閣改造で彼女が法務大臣兼司法長官から外されたのは、首相の要請を拒否したからではないかという噂も流れている。同社は告発された場合、公共事業を10年間請け負えなくなる可能性がある。

 トルドー首相は11日に、ウィルソン=レイボールド大臣の内閣での継続した存在ははっきりしていると語った。だが「彼女が司法長官として行った任務の全ては、彼女一人の判断であり彼女の責任である」と述べてから1日も経たないうちに、彼女は辞任した。彼女は声明で、スタッフと国民と復員軍人とその家族に感謝の意を表明しているが、奇妙なことに首相に関する言及はなかった。
 彼女が法務大臣のポストから外されると、彼女はチームプレーヤーでなかった、ともに仕事をするのは困難で、政界に友だちもいなかったなどの噂が流れた。だがメリーアン・ミハイチャック前雇用・労働力開発・労働大臣は、それを否定する。
「私は彼女を友人で、卓越したリーダーだと思っています。彼女が健康でいてくれたらいいと願っています。」
 彼女はウィルソン=レイボールド氏が、安楽死幇助法案などでジェーン・フィルポット厚生大臣と協力して働いた事実を指摘した。

 ウィルソン=レイボールド氏は、クワキュートル族インディアンとして生まれた。父ビル・ウィルソンはインディアンの活動家で、ピエール・トルドー首相に娘を首相にしたいと語ったという。彼女はビクトリア大学とブリティッシュコロンビア大学で学び、弁護士、先住民団体代表を経て下院議員となり、先住民初の法務大臣となった。彼女は総理の座を目指していたとも言われているが、今回のスキャンダルで平議員となり、失脚した。
図左:「カナダでは行政は司法に介入しない」と建前を述べつつ、中国に譲歩し、法務大臣の口を封じるカナダ首相。
図中:司法長官としての守秘義務を押し付け、口を封じて圧勝するカナダ首相。
図右:首相の「全面的に信頼する」「内閣に存在し続けるのがその証拠だ」発言の直後に辞任するウィルソン=レイボールド大臣。
 SNC-ラバラン社に関する疑惑と、ジョディ・ウィルソン=レイボールド前復員軍人大臣の辞任について、多くの漫画家が女性への暴力を描写した諷刺漫画を描いたことへの批判が高まっている。

 マイケル・デ=アダー氏は、ザ・クロニクル・ヘラルド紙に漫画を描いた。それは、リングの上で口にテープを貼られ両手を縛られたウィルソン=レイボールド氏に対し、ユニフォームを着て準備万端のトルドー首相に側近のジェラルド・バッツ氏が「殴り続けろ、彼女は検察官の特権に縛られている」と囁いているものである。
 ジョアン・バーナード元州議は、漫画の取り下げを要求した。
「ジョディの背景を考えたら、彼女は先住民の女性である。この国で行方不明になり、また殺される先住民の女性については繊細な感情があり、いかなる方法・いかなる形状においてもこのような冗談は許されない。」
 2017年の政府統計によると、先住民の女性はそうでない女性に比べ、肉体的または性的暴行に3倍、殺人事件に7倍遭っている。なおカナダでは、非実在の漫画に描かれた人物に対してであっても、暴行は刑事罰の対象たりえる。トルドー首相をボクサーにたとえるのは、彼がパトリック・ブラゾー上院議員(この人も先住民)とボクシングをやって勝ったからだろう。
 ネット上では、彼の漫画を「女性に対する暴力を軽視している」「賢明でない」「おもしろくない」「ただぞっとするだけ」と評する声が挙がり、デ=アダー氏は謝罪した。
「漫画の意図は、自由党を攻撃することであり、ウィルソン=レイボールド氏を攻撃することではなかった。それは女性を怒らせたり、家庭内暴力や先住民の問題を矮小化したりするのが目的ではなかった。私は人間であり、間違いも犯す。今後は改善するよう努める。」
 彼は、ウィルソン=レイボールド氏とSNC-ラバラン社に関する漫画は描き続けるが、今後の作品は「意図しない第二の意味」を持つことはないと述べた。

 いっぽうグレアム・マッケイ氏は、ハミルトン・スペクテイター紙に漫画を描いた。それは「SNC-ラバラン問題」のリングの上で、両手を縛られ「検察官の特権」という足枷をつけられ猿轡で口封じされたウィルソン=レイボールド氏に、トルドー首相が圧勝するものである。こちらの漫画は試合終了後のように見え、口と手足を封じられたウィルソン=レイボールド氏は勝負にならず、暴行された形跡は見当たらないが、マッケイ氏もまた「これがおもしろいと思うなら漫画家を辞めろ」「新聞社にマッケイ氏の謝罪を要求するメールを送った」「このような漫画家たちは、暴力と憎悪を促進しているので逮捕されるべき」という批判を浴びた。だが彼は「諷刺漫画は常に笑えるものとは限らない」と反論し、批判者たちは諷刺を理解していないと語った。

 アンディ・ドネイト氏は、トロント・サン紙に漫画を描いた。それは、トルドー首相が手拭いでウィルソン=レイボールド氏の口を封じながら「ジョディ、何が言いたいんだい、話してくれよ」と迫るものである。統一保守党のジェイソン・ケニー党首はツイッターに「漫画は時に1000語の文章より雄弁に語る。今日のサン紙のアンディ・ドネイトがそうだ」と書いたが、そのあと彼を諷刺した漫画を多数貼られた。


図左:マイケル・デ=アダー氏がザ・クロニクル・ヘラルド紙に掲載した漫画。
図中:アンディ・ドネイト氏がトロント・サン紙に掲載した漫画。
図右:グレアム・マッケイ氏がハミルトン・スペクテイター紙に掲載した漫画。「私は指示していない」と言うトルドー首相が、周囲をSNC-ラバランを含む取り巻きで固め、ウィルソン=レイボールド氏は蚊帳の外。
 レジェ・マーケティング社が2月15日から19日まで、1529人のカナダ人有権者を対象に実施したオンライン世論調査は、SNC-ラバラン疑惑がトルドー首相に深刻なダメージを与えていることを示した。なお調査のほとんどは、18日にジェラルド・バッツ首席秘書官が辞任する前に実施されている。
 調査はまず「トルドー首相が、SNC-ラバラン社立件を断念するようウィルソン=レイボールド氏に圧力をかけた」という報道について知っているかを尋ねた。「よく知っている」は20%、「少し知っている」は46%、「知らない」は24%、「わからない」は9%、「無回答」は1%だった。
 「もし今総選挙が実施されたら、どの党に投票するか」という設問では、保守党36%、自由党34%、新民主党12%、緑の党8%、ケベック連合5%、人民党4%、その他1%という結果となった。同社の世論調査では、保守党が自由党を上回ったのは2015年総選挙以来初めてだった。
 「2019年総選挙で政権交代を望むか」という設問では、政権交代57%、政権継続27%、わからない&無回答16%だった。
 「SNC-ラバラン疑惑に関し、首相は何か間違ったことをしたと思うか」という設問では、「そう思う」41%、「そう思わない」12%、「どちらとも言えない」41%、「わからない」6%だった。自由党支持者では「そう思う」10%、「そう思わない」27%、「どちらとも言えない」55%、「わからない」7%、保守党支持者では、「そう思う」66%「そう思わない」4%、「どちらとも言えない」28%、「わからない」3%となった。


図左:ウィルソン=レイボールド氏に全責任を押し付け、切り捨てようとして奈落の底に落ちるトルドー首相。
 自由党は2月20日の朝、幹部会を召集した。その席でトルドー首相は、ジョディ・ウィルソン=レイボールド前復員軍人大臣への中傷に対し、すぐに非難しなかったことを謝罪した。
「ジョディ・ウィルソン=レイボールド氏に関し先週作られたコメント・解説・漫画について、私は明確な言葉ですぐに非難しなかったことを、今朝謝罪した。それらは全く容認しがたいもので、私はすぐにそうすべきだった。」

 トルドー首相はフェミニストを自称し、内閣閣僚も男女同数に割り振っている。また主に寄宿学校での待遇など、先住民との和解もトルドー政権の重要な課題である。しかるに、先住民の女性であるウィルソン=レイボールド氏が検察官の守秘義務に縛られ真実を公表できないのをいいことに、首相が疑惑の全責任を彼女に押し付け、内閣から追い出し、悪口すら広めているという疑いがあり、世論調査でも首相や自由党の支持率が目に見えて低下している。
 彼女が法務大臣から外されたのは、SNC-ラバラン社立件を断念するよう要請したのを拒否したからだと、広く信じられている。その後彼女について「ともに仕事をするのが困難な性格」「他の閣僚を平気で叱りつける」「内閣の悩みの種」と中傷する記事がメディアに流れた。
 BCインディアン連合(UBCIC)のボブ・チェンバリン副代表は、これを「卓越した先住民の女性を攻撃し、信用を貶めることによって面目を保ち、自らの不正に対するダメージコントロールを開始しようとする試み」であり「心底ぞっとする」と評した。
「10月に来たるべき総選挙で、ジャスティン・トルドー首相は大きな代償を払うことになるだろう。」
 以前から「私の真実を話したい」と主張してきたジョディ・ウィルソン=レイボールド前法務大臣兼前司法長官は、2月27日下院法務委員会に招致され、首相側近や総理府スタッフらからSNC-ラバラン社を不起訴にするよう圧力をかけられたと証言した。トルドー首相は、就任以来最大の窮地に陥った。

 (1) 衝撃のウィルソン=レイボールド証言
 キャサリン・ルーセル検事総長が2018年9月、司法取引はせず裁判を続行すると決断したあと、ウィルソン=レイボールド司法長官もこれを踏襲したが、首相側近のマテュー・ブシャール秘書官やエルダー・マーケス秘書官らに、有罪になれば公共事業を10年間受注できなくなり、大量解雇をひき起しかねないため、考え直すよう説得されたと証言した。さらにその後、首相の側近中の側近ジェリー・バッツ首席秘書官や、ビル・モルノー財務大臣スタッフのベン・チン氏にも説得されたと語った。
「カナダ司法長官としての任務にまつわる私の司法判断に対し、政府内の人々による一貫した継続的な政治的干渉を受けた。」
「これらの会話の中に、SNC-ラバラン問題への干渉の要請と、DPA(Deferred Prosecution Agreement:起訴猶予取引)適用に応じない場合に起こりうる結果についての暗黙の脅迫があった。」
 なおバッツ首席秘書官は、2月18日に「倫理的に行動した」と述べて辞任している。
 度重なる圧力に困った彼女は、9月にトルドー首相に訴えたが、その答えは意外なものだった。
「会話の最中総理は、ケベックで(州議会)選挙があり、『私はケベックの下院議員だ』と強調した。」
「私は本当に驚いた。今でも鮮明に覚えているが、私は総理の目を見ながら直截に尋ねた。『総理は、司法長官としての私の任務と判断に、政治干渉なさるのですか?』すると総理は『ノー・ノー・ノー、僕らはただ、解決する必要があるんだ』と言った。」
 彼女は、首相は近く実施されるケベック州議会総選挙で、与党ケベック自由党が苦戦しており、ケベック未来連合に政権奪取されそうなことを懸念していたようだと指摘した。
 彼女は12月18日、バッツ首席秘書官から「解決を探す」ための会談を持ちかけられ、彼とそのスタッフのケイティ・テルフォード氏が、ウィルソン=レイボールド氏スタッフのジェシカ・プリンス氏と会談したが、その席で「干渉なしには解決しないよ」と言われたという。プリンス氏は「彼らは最後には、あなたへの要求に正直になった。まるで、検察の独立など問題ではない、もはや合法性を論じている場合ではないと言わんばかりだった」と報告したとウィルソン=レイボールド氏は述べた。
 翌19日には、枢密院職員マイケル・ワーニック氏から電話で、総理はこの問題について「極めて強い決意」があり、「なぜDPAが適用されないのか」「何とかしてそれを使う方法を見つけるつもりだ」と告げられた。ワーニック氏はさらに「総理は合法性の外側で何かするよう頼んではいない」とわざわざ言及した。
 彼女は「政府が危険地帯に足を踏み入れている」と感じ、警告した。
「私は司法長官として、政治的動機から党派的な行動をとるわけにはいかない。」
 すると彼は、決断はあなた一人の責任であり、そしてあなたは総理がこの問題について何を望んでいるかを察するべきだと言ったので、彼女はウォーターゲート事件を思い出し「これは土曜の夜の大虐殺だ」と思ったという。

 新民主党のシン党首は、公聴会の開催を要求した。保守党のシーア党首は、総理の辞任と連邦警察(RCMP)の捜査を要請したが、彼女は違法性は否定した。
「私の見解では、それらは違法ではない。発言の文脈、圧力の性質に鑑み、それらは非常に不適切と言える。」
 1月14日の内閣改造1週間前に、彼女は総理から電話で法務大臣からの異動を聞かされた。
「私は、この電話または内閣改造については詳述しない。しかし理由は、SNC-ラバラン問題だと考えている。」
 自由党のランディ・ボワソノール議員が、総理をまだ信頼しているかと質問したとき、彼女は長い沈黙の後、こう答弁した。
「私は辞任した理由について、これ以外に言及するつもりはない。内閣のテーブルに座るための信頼がなかったので、私は閣僚を辞任した。」
 彼女はトルドー首相の信頼性について二度問われ、二度とも答えなかった。


図左:かつてトルドー首相がウィルソン=レイボールド氏を叩きのめした漫画を描いたマッケイ氏は、今やトルドー首相がウィルソン=レイボールド氏に叩きのめされ、孟晩舟氏とのダブルスタンダードを中国に指摘される漫画を描いている。
図右:仏語紙に掲載された、トルドー首相がウィルソン=レイボールド氏に叩きのめされる漫画。彼女の服装が差別的だと批判された。
 (2) 自由党内の反応
 トルドー首相は27日、自分と総理府スタッフは「適切にかつ専門的に」行動すると述べ、ウィルソン=レイボールド氏の証言を「完全に否定する」と語った。そして「スコット・ブライソン(予算庁長官)が辞任しなかったら、ジョディ・ウィルソン=レイボールドはまだ法務大臣とカナダ司法長官だった」と説明した。彼女が自由党幹部会に残れるかどうかについては、「多少の考えがある」と回答した。
 ビル・モルノー財務大臣は28日、自分はSNC-ラバラン問題についてウィルソン=レイボールド氏に話を持ちかけたことはないが、「彼女の決断により失業保険が危うくなる」と、自分のスタッフが彼女のスタッフに「適切に」接触したと弁明した。
 クリスティア・フリーランド外務大臣は28日、トルドー首相とウィルソン=レイボールド氏のどちらを信じるかを問われ、次のように述べた。
「彼女が『私の真実を話したい』と言っていたように、彼女は『彼女の真実』を話したのだろう。」
 ウィルソン=レイボールド氏の性格を「ともに働くのが困難」とした風評については「私は彼女を、思慮深い同僚以外の何者だとも考えたことはない」と退けた。彼女は幹部会に残るべきかと問われると、フリーランド外相は「幹部会は多様な見解を持つ幅広い教会」だと述べた。
「内閣と幹部会は、密室で討論することができるが、出て来るときは団結していなければならない。」
 マリヤム・モンセフ国際開発大臣は、ウィルソン=レイボールド氏の自由党内での処遇は「最終的には首相の決定事項」と述べ、「私はその判断を信じる」と語った。

 ウィルソン=レイボールド氏は証言を終えて、自由党幹部会に残れるかどうかを問われると、次のように回答した。
「私は、バンクーバー・グランビル(選挙区)の議員であることを誇りに思う。私は自由党下院議員として当選した。それは変わらない。」
 もし幹部会を追放されたら、それは何を意味するのかと問われると、彼女はそのような事態は想定していないと答えた。


図左:「カナダ国民は近いうち、誰にこの国の首相になって欲しいかという明確な選択をすることになる。」気が早い人は、ウィルソン=レイボールド氏に期待しているようだ。
図右:父のピエール・トルドー首相が、雪の中を歩き総理辞任を決断したエピソードは有名。「息子のジャスティンも早く辞めろ」ということ。
 トルドー首相は3月1日、小規模な内閣改造を行った。
 マリー=クロード・ビボー農務・農産食品大臣は、国際発展大臣からの異動である。ローレンス・マッコーレー復員軍人大臣は、農務・農産食品大臣からの異動である。マリヤム・モンセフ国際発展大臣は、女性の地位・ジェンダー平等大臣との兼任となる。
 内閣改造は、ジョディ・ウィルソン=レイボールド前復員軍人大臣の辞任に伴うものである。彼女の突然の辞任と証言が世間を騒がせている間のことで、新任の大臣たちは彼女への思いや首相の決断について問われた。
 マッコーレー大臣は、ウィルソン=レイボールド氏を賞賛した。
「私は、総理によって成されるいかなる決定にも耐えられる。ただ私は、ジョディが尊敬された女性だと知っている。」
 ビボー大臣も、閣内の一致を強調した。
「総理がいかなる決断をしようとも、私はそれに耐える。私はチームプレーヤーだ。」
 ジェーン・フィルポット予算庁長官は3月4日、閣僚を辞任した。後任は、カーラ・クワルトロー公共サービス・調達・アクセシビリティ担当大臣が代理を務める。トルドー内閣は1日に改造したばかりだが、再び異動がありそうだ。
 フィルポット前長官は、声明を発表した。
「私は中核となる価値基準、倫理責任と憲法義務に従う必要がある。」
「信条に従って行動することにはリスクもあるが、それを棄てるのはより大きなリスクがある。」
 そして彼女は、大臣は公的に全ての閣僚と閣議決定を擁護することを憲法が規定していると指摘した。
「この規定と現在の状況からすると、閣僚を続けることは私には耐えられない。」

 彼女はトルドー内閣発足以来、厚生大臣と先住民サービス大臣を歴任し、閣内で最も有能な人物の一人とみなされてきた。前長官はウィルソン=レイボールド氏と親しく、彼女が閣外に去ったときは「政界に友だちもいない」という噂を流されたが、プライベートでいっしょに舟に乗っている写真をツイッターに公開し、彼女を激励した。
「我々がともに取り組んだ法律―C14号(安楽死幇助)、C37号(ハーム・リダクション)、C45号(大麻に関する公衆衛生アプローチ)、そして多くのこと―を、私は誇りに思う。」
「あなたはきっと、カナダ人のために仕え続けてくれる。」
 ウィルソン=レイボールド氏もまた、フィルポット前長官を称えた。
「あなたは、ビジョンと強さを兼ね備えたリーダーだ。私は、あなたと寄り添って働く道を模索し続ける。」
 自由党のセリーナ・シーザー=シャバンヌ議員も、フィルポット氏に謝意を述べた。
「政治に携わる女性は、正しく判断し、正しいことのために立ち上がり、そしてそれが曲げられたときは立ち去ることが求められる。ジェーン・フィルポット、それを明確に示してくれてありがとう。」
 彼女は3月2日、次の総選挙に出馬しないと表明したが、SNC-ラバラン問題とは関係ないと強調した。
 いっぽうパティー・ハイドゥ雇用・労働力開発・労働大臣は、首相に対する変わらぬ信頼を語った。
「首相に対する私の信頼は、変わっていない。私は彼を支持し、政府を率いる彼の能力を信じる。」
「閣僚の一人が辞めるのは残念だ。彼女の最善を祈る。」
 トルドー首相は4日の集会で、次のようにコメントした。
「我が国のような民主社会において、そして我々が多様性を高く評価する地において、我々は議論も見解の相違も認められている。我々は、それを奨励すらする。」
 トルドー首相は3月18日、3月では2度目となる内閣改造を行った。これは、4日にジェーン・フィルポット予算庁長官兼デジタル政府大臣が辞任したことに伴うもので、ジョイス・マレー予算庁政務次官が、新しい予算庁長官兼デジタル政府大臣に任命された。
 マレー新長官は、現在のスキャンダルから前進して、貧困を減らし、地球温暖化と雇用創出に取り組みたいと抱負を語った。そして、首相を批判して閣僚を辞任したウィルソン=レイボールド議員とフィルポット議員が幹部会にとどまっていることを「すばらしい」と賞賛した。また彼女はSNC-ラバラン問題について、トルドー首相が「コミュニケーションの失敗があった」と明確に認めたことを挙げ、これ以上ウィルソン=レイボールド氏から聞くことはないと断言した。

 マレー長官は南アフリカのシュバイツァー=レネケに生まれ、7歳でバンクーバーに移住した。母シャーロットは婦人参政権運動のリーダーで、ブリティッシュコロンビア大学初の女性准教授になっている。マレー長官は、サイモン・フレーザー大学で考古学・言語学・経営学を学び、1977年夫とともに植林会社を設立した。この会社は2012年に10億本目の木を植え、CBCの番組で紹介された。彼女は1996年から1999年まで、ブリティッシュコロンビア森林資源勧告委員会に勤めている。
 このような活動が目に止まり、彼女はブリティッシュコロンビア自由党の候補として擁立される。彼女の持論である、持続可能なコミュニティを構築するための「緑の党から自由党まで」のスローガンを掲げて当選し、キャンベル内閣の水陸空保護大臣・経営大臣を務めた。
 だが2005年の州議会選挙で落選すると、2006年には連邦議会選挙(ニューウェストミンスター-コキットラム選挙区)に自由党から出馬するが、再び落選。選挙区を自分の住むバンクーバー・クワドラに変えた2008年からは、順当に連続4回当選し、自由党がわずか34議席にまで減少した2011年総選挙でも生き残っている。2012年には自由党党首選に出馬し、トルドー現党首に次ぐ2位となった。
 環境保護活動に長年取り組んできたマレー長官は、トランスマウンテン・パイプライン計画に反対していたが、「閣僚としては国益を考慮すべきだが、議員としては地元有権者の意向を代弁すべきだ」と説明した。


写真:左からトルドー首相、ジョイス・マレー長官、ジュリー・パイェット総督。
 自由党は4月2日の幹部会で、ジョディ・ウィルソン=レイボールド議員(前復員軍人大臣)とジェーン・フィルポット議員(前予算庁長官)を除名したと発表した。両議員は無所属となり、次回総選挙の公認も取り消される。これにより下院勢力は、自由党177、保守党97、新民主党41、ケベック連合10、緑の党1、人民党1、CCF1、無所属7、欠員3(定数338議席)となった。

 この日召集された幹部会で、トルドー首相は語った。
「これら2名と我々との間にかつてあった信頼は、すでに破壊された。」
「ウィルソン=レイボールド氏とフィルポット氏が、もはや我々自由党の一員ではありえないことが明白になった。」
 両名が2月と3月、相次いで大臣を辞任して以来、自由党内では両名を除名すべきかどうかという論争が続いていた。特にウィルソン=レイボールド氏は、SNC-ラバラン問題に関する情報を長期間かけて小出しにし、この話題を引っ張り続けることで自由党の信用に打撃を与え、議員全員の再選を危険にさらしたことで、強く非難された。
 トルドー首相自身は当初「考慮中である」と語り、両名が幹部会にとどまる道を模索していたふしがあった。ウィルソン=レイボールド氏を追い詰めれば、事件の全容を暴露されかねない。
 だが彼女は無断で、枢密院職員マイケル・ワーニック氏との12月19日の電話を録音し、電子メールを記した文書とともに下院法務委員会に提出し、3月29日に公表した。これで自由党内の大勢は、両名除名に一気に傾いた。

 トルドー首相は名指しは避けたものの、電話を密かに録音したウィルソン=レイボールド氏を明確に非難した。
「我々は両名の懸念に対処するため、あらゆる努力を払ってきた。そして最終的に、両名がこのチームを信頼すると真摯に言うことができないなら、このチームの一員であるはずがない。」
「誰とのものであれ、政治家が会話を密かに録音するのは間違っている。その政治家が、公務員との会話を密かに録音している大臣であるなら、それは間違っている。その大臣が、枢密院職員との会話を密かに録音している司法長官であるなら、それは非良心的である。」
 閣僚たちからも、トルドー首相に同調する声が相次いだ。メラニー・ジョリー観光大臣は、会話の録音を「根本的に間違っている」と批判した。
 パティ・ハイドゥ労働大臣は、これまで密かに同僚議員の電話を録音したことはなく、これからも絶対にしないと断言した。
「私は、それは非倫理的であると思う。それは詐術だ。」
「もし会話を録音するなら、そしてそれが同僚との間のものなら、電話の相手に予告する責務があり、それが倫理的行動だと私は思う。」
 彼女は、両名が幹部会に残るかどうかについては首相と同僚議員たちに従うと語ったが、会話を密かに録音したかもしれない人と幹部会に同席する不快感を隠さなかった。
 フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ基幹大臣は、(ウィルソン=レイボールド氏も弁護士だが)自分が弁護士として働いていたとき、会話を録音したことは一切なかったと述べた。
 マルク・ガルノー運輸大臣は、重要な問題に関する大臣と政府高官の会話を密かに録音するのは「完全に不適切で」「不名誉な行為」だと批判した。
 キャロリン・ベネット政府=先住民関係大臣は、首相の下での一致を控えめに述べた。
「私は、チームは首相を支えていなければならない、それがここ数週の間に失われた要素だと思う。」


図:「もしもしジェーン、ジョディです。あなたも聞いた?・・・」
 自由党議員たちも、批判の声をあらわにした。ロブ・オライファント議員は、大臣が政府高官との会話を密かに録音するのは「不穏当」であり、ウィルソン=レイボールド氏の言葉は「筋書き通り」で「芝居がかった」、「職員を罠にかけた」ようなものだと吐き捨てた。
「私の望みは、政府を信頼しない人々は幹部会には要らないという気持ちで我々が一つにまとまり、幹部会が迅速に動くことだ。」
 そして、ウィルソン=レイボールド氏はトルドー首相に対する信頼を直截に示さないかぎり、幹部会から出て行くのが当然だと付け加えた。
 ウェイン・イースター議員は、ウィルソン=レイボールド氏は幹部会から出て行くべきであり、また彼女とワーニック氏との会話を「まるで台本を読んでいるようだ」と評した。
「このようなゲームを仕掛け、枢密院職員をほとんど陥れるような人に、私は敬意を払わない。」
 ニック・ホエーレン議員は、大臣が、枢密院職員から不当な圧力を受けたことを首相と共有するのではなく、それを録音し密かに保管していたことに衝撃を受けたと語った。
「それは本当に、不適切でいかがわしい。」
 彼は、トルドー首相と2人の女性たちが演じるドラマに、国民が必要以上に夢中になっていることを懸念した。
 ウェイン・ロング議員は、電話の録音を「驚いた」と語ったが、それがウィルソン=レイボールド氏への圧力を示していると語り、彼女を擁護した。そのうえで、毎日のニュースのネタになるのを止めるには透明性がなければならない、それでこそ自由党は団結し、次の総選挙に勝つことに集中できると語った。

 ウィルソン=レイボールド氏自身も、会話記録とともに提出した書類に、電話を録音する行為は「尋常ならぬ、さもなくば不適切」と記し、認めている。ただし彼女は、そのとき「不適切な話題」が予想され、話された正確な記録が必要だと感じたが、記録する秘書が不在だったと弁明した。
「私がした会話だが・・・彼は自由党幹部会のメンバーではなく・・・私の依頼人でもない。私は、それが尋常ならぬ状況だったということを知っている。私は信頼できるアドバイザーに尋ねてみた。そして彼らの答えは、不適切で不合理な状況における適切で合理的な行動だというものだった。」

 トルドー首相は、問題を「コミュニケーションの失敗」と語っていた。政府が一企業を贔屓して起訴されないよう司法に圧力をかけたり、罰金だけで済むよう法改正をするなど、国民にとってはその程度の問題ではないが、メインキャストの二人にとっては実際そうなのかもしれない。要請を拒否したウィルソン=レイボールド氏を、首相が司法長官のポストから外したうえで閑職に追いやったのは、徹底的に追い詰める意図はなかったことを示している。
 だが首相は、先住民だが弁護士資格を持つ彼女に、法務大臣から先住民サービス大臣への異動を提示して感情を逆撫でした。さらに「年輩の議員を平気で叱りつける」「政界に友だちもいない」などの出所不明な噂が流れ、首相はこれをすぐ非難せず、非難したのは1か月もあとだった。さらに「彼女が司法長官として行った任務の全ては、彼女一人の判断であり彼女の責任である」と述べて、彼女を決定的に怒らせた。守秘義務があるのをいいことに、責任を押しつけようとしたのだ。彼女は翌日大臣を辞任、さらに新聞がSNC-ラバラン疑惑を暴露し、野党もこれに乗じ議会で証言させたため、関係は一気に悪化する。この時点でもまだ首相は「幹部会から除名するかは考慮中」、彼女も「不適切だが違法な行為はなかった」と手加減しており、両者歩み寄る余地は残っていた。
 だがこの問題は、あまりにも長くメディアの注目を浴びすぎた。先住民との和解とフェミニズムはトルドー政権の車の両輪だったにもかかわらず、彼女は首相のイメージを深く傷つけた。自由党の支持率は保守党を下回り、議員たちは選挙の心配をしなければならなくなったのだ。
 ウィルソン=レイボールド氏には無所属で出馬する道が残されてはいるが、組織も運動員もなく、容易ではない。トルドー首相が非常に若いことを考えると、自由党への復帰はほぼ不可能だろう。引き際を誤ったため、議員たちをも怒らせてしまった。政治を続けたければ、別の党に移籍するしか方法はなさそうだ。
 「平等の声」が主催する「ドーターズ・オブ・ザ・ボート」の年次大会がオタワで開催され、338選挙区を代表する338人の若い女性有権者が、下院議場でそれぞれの選挙区選出議員の席に着き、各党党首が演説した。それは、ジョディ・ウィルソン=レイボールド議員とジェーン・フィルポット議員が自由党幹部会を除名された4月2日の、数時間後だった。

 トルドー首相は女性たちを前に、両議員除名について弁明した。
「ジョディ・ウィルソン=レイボールド(※前復員軍人大臣)とクリスティア・フリーランド(※外務大臣)のうち、どちらを信じるか決めなければならないと考えたい人は、この中にはいないということを私は知っている。ジェーン・フィルポット(※前予算庁長官)とマリヤム・モンセフ(※女性の地位・ジェンダー平等大臣)のうち、一人が正しく、もう一人が間違っていなければならないなどということを知りたい人はいない。」
「聞くべき展望は常にあるだろうが、最終的には多様性、ここにあるような多様性は、信頼があるときのみ機能する。そしてチームの中で、その信頼が壊れたとき、我々はどのように前進して行くかについて考えければならない。」
 彼はさらに、女性をターゲットにした開発援助、女性に割かれた予算、男女平等賃金、婦人団体への資金提供、男女同数の内閣を列挙し、フェミニズムに基づく政策を自負した。
「やるべきことはもっとあると、私は認める。だが、政党党首の中で誰がよりフェミニストであるかというコンテストにおいて、名を挙げられていることを誇りに思う。」
 だが女性たちのうち数十人がその場で起立し、演説する首相に背を向けた。それは、二人の女性前大臣を冷遇したことへの抗議だった。
 保守党のシーア党首の演説時には、十数人が退席した。
 緑の党のメイ党首の演説は、喝采をもって受け入れられた。

(青い服の女性は、女性初の首相キム・キャンベル氏)
 傍聴席には、除名されたウィルソン=レイボールド議員、フィルポット議員のほか、彼女たちに同調するツイートをして幹部会を離脱したセリーナ・シーザー=シャバンヌ議員(3人とも女性)がいた。

 ハミルトン・マウンテン選挙区のディアナ・アランさんは、ツイッターで首相に露骨な批判を浴びせた。
「我々は、会議に参加する若い女性としてここオタワにいる。そして我々は、ジョディ・ウィルソン=レイボールドとジェーン・フィルポットを幹部会から追放したあなたを、心から非難する。」
 新民主党のジェニー・クワン議員は、この日議会で演説した。
「カナダ初の先住民の司法長官を、彼女が法を守るからという理由で幹部会から追放することによって、首相は自分に逆らう女性は自由党で冷遇されるということを明らかにした。これが、自称フェミニストが2019年に見せる行為だろうか?」


図左:〈左〉「2015年だから。」〈右〉「2019年だから?」
図右:女性2議員を追放するが、火だるまになりそうな自由党。シーア党首・シン党首・メイ党首が燃料を注ごうとしている。
 ジョディ・ウィルソン=レイボールド議員(前法務大臣)の事務所と路上に4月8日、彼女を支持する落書きをした37歳の男性が逮捕された。
 落書きはスプレー缶を用いて、バンクーバーの事務所の窓と付近の路上に“Let Jody speak”(ジョディに証言させろ)“For Trudeau treason”(トルドーを反逆罪に)“Flush the Turd”(糞を流せ)などと書かれたもので、通報から数時間で消された。
 事件を受けてウィルソン=レイボールド議員は、ツイッターでコメントを発表した。
「皆さんが私への支持と熱意を示したい気持ちも尊重しますが、個人のあるいは公共の資産に損害を与えることなく、また自身を危険に晒すことなくそうするよう、推奨します。」
 ジェーン・フィルポット議員の選挙区である自由党マーカム-スタフビル支部(オンタリオ州)の役員の半数以上が、4月8日に辞意を表明した。
 役員の一人であるリーア・ナットソンさんによると、8日に召集された会議において、役員16人のうち10人が辞意を表明、残る6人のうち5人は留任する意向で、最後の一人については不明だという。
 ナットソンさんは、インタビューに答えて語った。
「私にはもう、別の候補のために働く情熱がない。ジェーンは私たちにとって、スターだった。」
 彼女は、辞任は全くフィルポット議員との問題であり、トルドー首相への抗議ではないと強調した。
 同選挙区の有権者であるジョージ・スレッド氏は、たとえフィルポット議員が無所属で立候補しても投票すると語った。
「彼女はこの町に良くしてくれた。彼女はきっと、自分が正しいと信じたことのために立ち上がったのだと思う。彼女がここでもう一度立候補するなら、我々はきっとまた彼女に投票するだろう。」

 いっぽうウィルソン=レイボールド議員の選挙区バンクーバー・グランビル支部(ブリティッシュコロンビア州)は、役員全員が今年実施される総選挙に向けて邁進すると述べた。
「我々はバンクーバー・グランビル支部の役員として留まり、近日中に党本部と会談し、我々の進むべき道について話し合う。」
 ドミニク・ルブラン政府間関係大臣兼北方問題大臣は4月26日、治療のため内閣を一時去ると発表した。
 数週前に体調を崩した彼は、テストの結果非ホジキンリンパ腫と診断され、すでに治療を開始したという。数週で治療を終えて内閣に復帰し、次の総選挙にも出馬するという。
 彼の不在の間、臨時でビル・モルノー財務大臣が政府間関係大臣を、キャロリン・ベネット政府=先住民関係大臣が北方問題大臣を務める。
4月28日放送のアニメ「ザ・シンプソンズ」にトルドー首相(のアニメ)が登場しました。
SNC-ラバラン疑惑について問われると逃げ出します。
https://twitter.com/itsallstyletome/status/1122850701334470656

ケベコワとニューフィーズを激しくおちょくっています。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=191&v=AIyYeB0Zm3U

こちらもカナダをおちょくっています。
https://www.youtube.com/watch?v=6khA6IFifac
 緑の党のメイ党首は5月8日、自由党を除名された無所属のジョディ・ウィルソン=レイボールド議員とジェーン・フィルポット議員が、入党を検討していると語った。
 6日に実施されたブリティッシュコロンビア州ナナイモ-レディスミス選挙区の補選では、緑の党の候補が初めて補選に当選した。
 次の総選挙は10月までに実施されるが、どの党も過半数に達しない見込みが強い。緑の党は、いまだかつてない8%以上の高支持率を維持しており、総選挙後には複数議席を獲得した同党がキャスティングボートを握ることになりそうだ。大臣経験もあり、知名度の高い両議員は咽から手が出るほど欲しいだろう。
 ブリティッシュコロンビア州・ニューブランズウィック州・プリンスエドワード島州議会でも、全ての政党が過半数に達しなかったため、緑の党が重要な役割を果たしている。
 ジョディ・ウィルソン=レイボールド議員(前復員軍人大臣)とジェーン・フィルポット議員(前予算庁長官)は5月27日、それぞれの選挙区で記者会見を行い、次の総選挙に無所属で出馬する意向を明らかにした。緑の党は両議員を取り込むため熱心に交渉したが、入党は幻に終わった。

 ウィルソン=レイボールド議員は、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー・グランビル選挙区で語った。
「私は自分がどういう人間かわかっている。私は党の人ではない。」
「四角い釘を取って丸い穴にはめ込むのは、私の性分ではない。」
 フィルポット議員も、オンタリオ州マーカム-スタフビル選挙区で語った。
「私は、政党政治を越えて活動したい。」
「人々は、限度を超えた党利党略にうんざりしていると言っている。」
「自分の心の中の心に問うてみると、自分は100%緑の党だとは言えなかった。」
「何を言うべきかを助言する党も、採決でどちらに投票するかを助言するスタッフも、もういない。私がどの方向に行くべきか導くロビイストも、もういない。私を導いてくれるのは、あなたたちだけである。」

 緑の党のメイ党首は、両議員が党首選出馬を望むなら辞任してもいいとさえ約束したにもかかわらず、入党を拒否された。
「率直に言って、彼女たちは間違った判断をしたと思う。」
 彼女は、今後も両議員と緩やかに連携していきたいと語ったが、党則では全選挙区に候補を擁立することになっており、両議員の選挙区にダミー候補を擁立するかどうかを検討すると語った。
 自由党を離党した無所属のセリーナ・シーザー=シャバンヌ議員は、次の総選挙に出馬しないと表明していたが、同日無所属で出馬すると発表した。

 カナダの歴史上、政党から立候補して当選しながら、その後無所属で立候補した下院議員は74人いた。そのうち再選されたのは24人で32%、1945年以降では26%となっている。1974年以降では、再選された議員は4人だけである。
 ジル・ベルニエ議員(マクシム・ベルニエ党首の父)は進歩保守党議員だったが、詐欺容疑を持たれたため党公認を得られず、1993年無所属で当選した。
 ジョン・ヌンツィアータ議員は自由党議員だったが、自由党政権の予算案に反対投票したため除名され、1997年無所属で当選した。
 チャック・キャドマン議員はカナダ同盟から出馬して当選したが、党が合併してカナダ保守党になると、予備選に敗れ公認を得られなくなり、2004年に無所属で当選した。その後保守党から復党の誘いがあったが断り、2005年の予算案では賛成投票して、可否同数となりマーチン内閣を窮地から救った。
 ビル・ケーシー議員は保守党議員だったが、保守党政権が大西洋協定に違反したとして、予算案に反対投票して除名され、2008年無所属で当選した。2015年には自由党から出馬して当選した。
 マーカム-スタフビル選挙区は、自由党と保守党が何度も奪い合っている接戦選挙区である。前回総選挙では、両党が92%の票を獲得し、フィルポット氏は6ポイント差で競り勝った。
 もしも彼女が前回の3分の2の票を獲得するとしたら、得票率は33%で、保守党の支持率が上がっているのに、両党候補がその数字を下回るとは考えにくく、苦戦は必至となる。
 それに比べバンクーバー・グランビル選挙区は、自由党・保守党・新民主党の3党鼎立となっている。前回総選挙で44%の票を獲得したウィルソン=レイボールド氏は、次回に3分の2の票を獲得すると仮定すると得票率30%となり、前回の新民主党27%・保守党26%をともに上回る。
 連邦警察(RCMP)のブレンダ・ラッキー長官の夫が、ビル・モルノー財務大臣のいとこであるという噂がネットで広まった。連邦警察は、これを否定する声明を発表した。
 CBCの調査によると、噂は8月26日ころ、ツイッターに書かれたものが最初だという。噂の出所は、連邦警察のトップがトルドー政権重鎮の身内だから、SNC-ラバラン問題の調査が進まないのだと主張する。これらは退職した連邦警察官からの情報だというが、根拠は提示されていない。
 ところが解散・総選挙が現実化した9月10日、噂は急速に広まった。きっかけはグローブ&メイル紙の記事で、そこにはトルドー政権が、閣僚の守秘義務の解除を拒否して連邦警察の調査を妨害していると報じられている。実際に連邦警察は、総選挙が公示されたため調査を中断していると認めた。
 いくつかの個人サイトの中には、ラッキー長官自身がモルノー大臣のいとこと断言するものもあった。そしてこれらの情報は、保守党元スタッフがフェイスブック上で運営する保守サイト「アルバータ・カナダ・キャンペーン」に16日に取り上げられることによって、既成事実化した。

 ブランドン大学でソーシャルメディアとセキュリティを研究するクリストファー・シュナイダー準教授は、この種の噂はある人々の信念に合致するので、初めから拡散する運命にあると説明した。
「事実であるか否かにかかわらず、この種の噂がすんなり収まることができる物語の筋書きは、すでに存在する。」
「彼らはそこに、ある種の不正や腐敗があると信じたいのだ。」
 彼は、噂の詳細は信じるに困難ではないが、証明するには困難だという性質を持つため、いっそう共有されやすいという。
「大手メディアがそれを調査し、その誤りを暴露しているときでさえ、必ずしもその流布と拡散を阻止できるわけではない。なぜなら人々は『特定の状況』において、それを信じていたいのだから。」


写真:フェイスブックのページから。右からブレンダ・ラッキー長官、ビル・モルノー財務大臣、ジャスティン・トルドー首相。
 マリヤム・モンセフ国際開発大臣兼女性の地位・ジェンダー平等大臣(35歳)は、自身の誕生日である11月7日に、マット・デコーシー前下院議員(36歳)と婚約したと発表した。
 自由党はこの日、議員たちと落選した元議員たちによる幹部会を、オタワで召集した。デコーシー氏は家族とともにオンタリオに来て、彼女の地元オンタリオ州ピータボローで彼女の姉妹が経営するレストランでの祝宴に出席した。アフガン料理がふるまわれ、アフガニスタン出身のモンセフ大臣は、アフガンのドレスを着て踊った。
 二人はともに、2015年総選挙で初当選した。モンセフ氏は当選1回で民主機構大臣に任命され、デコーシー氏は下院選挙改革特別委員会委員となった。2019年総選挙ではモンセフ氏は当選、デコーシー氏は緑の党のジェニカ・アトウィン候補に敗れた。
 なおトルドー首相は、11月20日に内閣改造を行う。


写真左:モンセフ大臣の手にキスするデコーシー氏。
写真右:右からマリヤム・モンセフ国際開発大臣兼女性の地位・ジェンダー平等大臣、キャサリン・マッケナ環境・気候変動大臣、マット・デコーシー前下院議員、メラニー・ジョリー観光大臣兼公用語・フランコフォニー大臣(2016年撮影、肩書きは現在)。
 2期目を迎えたトルドー首相は11月20日、大規模な内閣改造を行った。首相を除く閣僚は、34人から36人に拡大し、男女は同数である。

総理大臣 ジャスティン・トルドー
副総理大臣兼政府間関係大臣 クリスティア・フリーランド
公共サービス・調達大臣 アニータ・アナンド
イノベーション・科学・産業大臣 ナブディープ・シン・ベインズ
政府=先住民関係大臣 キャロリン・ベネット
農務・農産食品大臣 マリー=クロード・ビボー
公安・非常時対応準備大臣 ビル・ブレア
多様性・包含・青年担当 バーディシュ・チャッガー
外務大臣 フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ
予算庁長官 ジャン=イブ・デュクロ
中流階級繁栄大臣兼財務副大臣 モナ・フォルティエ
運輸大臣 マルク・ガルノー
国際開発大臣 カリナ・グールド
民族遺産大臣 スティーブン・ジルボー
厚生大臣 パティ・ハイデュ
家庭・児童・社会開発大臣 アーメド・ハッセン
経済発展大臣兼公用語担当大臣 メラニー・ジョリー
漁業海洋・カナダ沿岸警備隊大臣 バーナデット・ジョーダン
法務大臣兼司法長官 デビッド・ラメッティ
枢密院議長 ドミニク・ルブラン
歳入大臣 ディアーヌ・ルブティリエ
復員軍人大臣兼国防副大臣 ローレンス・マコーレー
インフラ・地域社会大臣 キャサリン・マッケナ
移民・難民・市民権大臣 マーコ・メンディチーノ
先住民サービス大臣 マーク・ミラー
女性の地位・男女平等大臣兼地方経済開発大臣 マリヤム・モンセフ
財務大臣 ビル・モルノー
デジタル政府大臣 ジョイス・マレイ
中小企業・輸出振興・国際貿易大臣 メアリー・ン
天然資源大臣 シーマス・オリーガン
雇用・労働力開発・障害包含大臣 カーラ・クワルトロー
下院院内総務 パブロ・ロドリゲス
国防大臣 ハルジット・サジャーン
シニア大臣 デブ・シュルツ
労働大臣 フィロメナ・タッシ
北方問題大臣 ダン・バンダル
環境・気候変動大臣 ジョナサン・ウィルキンソン
 重量級閣僚では、ビル・モルノー財務大臣とハルジット・サジャン国防大臣が留任したが、今回の改造では5つの注目すべき異動がある。

 (1) フリーランド氏、副首相に
 クリスティア・フリーランド外務大臣は、副首相兼政府間関係大臣に任命された。外務大臣から政府間関係大臣への異動は、副首相の肩書きなしには降格のように映るだろう。彼女はトルドー政権において、まず国際貿易大臣としてCETA(カナダ・EU自由貿易協定)をまとめあげ、首相の最も信頼する閣僚の一人となり、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉を叫ぶトランプ大統領が就任すると、外務大臣に昇格した。政府間関係大臣は連邦政府と州政府の外交を担っており、アルバータ州のジェイソン・ケニー首相、サスカチュワン州のスコット・モウ首相、オンタリオ州のダグ・フォード首相など地方で続々と誕生する反トルドー政権との交渉を担うことになる。
 彼女の選挙区はトロントだが、アルバータ州ピースリバーで生まれ、少女期をエドモントンで過ごしている。彼女は1日「私のオリジナルは、誇り高いアルバータ人だ」と語っているが、アルバータとサスカチュワンから締め出され、それらの州から閣僚を任命できなくなったトルドー首相の苦肉の策でもある。

 (2) 注目の4人
 フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ インフラ・地域社会大臣は、外務大臣に昇格した。中国で拘束されているマイケル・コブリグ氏マイケル・スパバー氏の解放が、彼の当面の課題である。
 当選6回のベテラン、パブロ・ロドリゲス民族遺産・多文化大臣は、下院院内総務に昇格した。安定政権から少数政権に転落したトルドー政権は、何を可決させるにも他党の協力が必要となる。下院院内総務の役割は、これまで以上に重要なものになるだろう。またケベック選出の彼は、ケベック副官も務める。
 キャサリン・マッケナ環境・気候変動大臣は、インフラ・地域社会大臣に異動する。アルバータ州のケニー首相は、マッケナ大臣を反パイプラインと決めつけ、彼女には別の任務が必要だと公然と主張した。この異動は、トルドー首相によるケニー首相への譲歩と見られる。
 シーマス・オリーガン先住民サービス大臣は、天然資源大臣に異動する。産油州のアルバータとサスカチュワンには自由党議員がいないが、彼は産油州ニューファンドランド&ラブラドル選出である。彼はまた、トルドー首相の親友として知られる。

 (3) 新入閣は7人
 スティーブン・ジルボー議員は、民族遺産大臣に任命された。グリーンピースなどの環境保護団体で活動してきた彼は、自由党の目玉候補として今年初めて立候補し、当選1回で大臣となった。彼は当選環境大臣に任命されると思われたが、それではアルバータとサスカチュワンの反発を招くため、回避したものと見られる。
 マーク・ミラー政府=先住民関係政務次官は、先住民サービス大臣に昇格した。彼は地道にモホーク語を学び、2017年に史上初めて連邦議会でモホーク語で演説した。
 マーコ・メンディチーノ政務次官は、移民・難民・市民権大臣に昇格した。
 デブ・シュルト議員は、シニア大臣に任命された。
 ダン・バンダル議員は、北方問題大臣に任命された。
 モナ・フォルティエ議員は、中流階級繁栄大臣兼財務副大臣に任命された。
 アニータ・アナンド議員は、公共サービス・調達大臣に任命された。彼女は、トロント大学で法学を教える教授である。

 (4) 閣外へ
 カースティ・ダンカン科学・スポーツ大臣は下院院内副総務に、ジネット・プティパ=テイラー厚生大臣は下院副幹事長に任じられ、閣外に去った。
 マニトバ選出のジム・カー国際貿易多様化大臣は、癌の治療に専念するため内閣から外れた。トルドー首相は、彼にいずれ中西部担当の任務を与えるつもりのようだ。
 ラルフ・グッデイル公安・非常時対応準備大臣とアマルジート・ソーヒ天然資源大臣は、落選したため閣僚ポストを失った。
 (5) 他党の反応
 保守党のシーア党首は、自由党がアルバータとサスカチュワンから締め出され、安定政権から過半数割れに転落した選挙から首相は何も学ばなかったと評した。その証拠に、彼は著名な反パイプライン活動家を入閣させたと非難した。
 ケベック連合のブランシェ党首は、ジルボー氏の処遇に不満を述べた。
「トルドー首相はアルバータと向き合う勇気がなく、アルバータと彼の政府の間でこれ以上の憎悪をひき起こしたくなかったので、ジルボー氏が環境大臣に任じられなかったと、私は信じている。」
 対照的にアルバータ州のケニー首相は、ツイッターで歓迎の意を表明した。それはあたかも、連邦政府への勝利宣言のようだった。
「連邦内閣閣僚として今日宣誓した方々全員に、おめでとう。アルバータ州政府は、確実な資源開発を通して、雇用と成長を創出し、カナダの連合において公正さを確実にするための、共通基盤をと連邦政府とともに見出せるよう望んでいる。」
「私は特に、中西部特命大臣と、政府間関係大臣と、天然資源大臣とともに働くことを楽しみにしている。」
 副首相は、現首相の父ピエール・トルドー首相によって1977年初めて任命された。ハーパー首相とトルドー首相は副首相を置かなかったので、副首相は14年ぶりに任命される。
 副首相には法律上の規定がなく、決まった任務もない。副首相の任務は一般に、首相が公務や外遊で不在のとき、閣議の議長を務め、議会の質問に答弁することだと考えられている。シーラ・コップス副首相は、引退後「副首相の職務は往々にして、議会での質疑応答から首相を保護することだった」と綴っている。
 アメリカで大統領が辞任もしくは死去した場合、副大統領が継承する規定があるが、カナダの副首相は首相が辞任もしくは死去した場合、その地位を自動的に継承する規定はない。不測の事態における首相職の継承については、閣僚の優先順位を定めておくことになっている。伝統的には、副首相か下院院内総務が継承順位1位になっていたが、トルドー政権では副党首のラルフ・グッデイル公安・非常時対応準備大臣が継承順位1位に規定されていた。しかしメディアは、首相の幼馴染で側近のドミニク・ルブラン氏を政権ナンバー2とみなしてきた。
 カナダの首相が、総選挙の敗北によらず突然辞任した前例は、戦後ではない。ジョン・マクドナルド首相が1873年パシフィック・スキャンダルで辞任したとき、与党保守党は下野したので自由党に政権が移ったが、自由党は党首が落選していたため、後継総理を3人の候補に断られ、4人目のアレクサンダー・マッケンジーが受諾するという難産だったが、前首相死去の2日後に総理就任している。ジョン・アボット首相が1892年病気で辞任したときは、ジョン・トンプソンが11日後に総理就任している。マッケンジー・ボーウェル首相が1896年突然政権を投げ出したときは、チャールズ・タッパーが4日後に総理就任している。
 カナダの首相が現職で死去した例は、1891年のマクドナルドと1894年のトンプソンの2度ある。前者は10日後にアボットが、後者は9日後にボーウェルが後継総理に就任しているが、辞任と死去のいずれの例においても、全党員による党首選のない時代なので、後継総理は選挙で選ばれてなく、またいずれの例においても臨時首相は指名されていない。
 現代では、現職首相が突然辞任もしくは死去した場合、党首選で次の党首が選ばれるが、それには時間がかかることから、継承順位に従い臨時首相が総督によって指名されるだろう。ただし州レベルにおいては、臨時首相を置くことなく、与党幹部会で党首選が速やかに実施され、副総督によってただちに次の首相が指名されている。
 これまで、アラン・マキーチェン(ピエール・トルドー内閣)、ジャン・クレチエン(ターナー内閣)、エリック・ニールセン(マルローニ内閣)、ドン・マザンコウスキー(マルローニ内閣)、ジャン・シャレー(キャンベル内閣)、シーラ・コップス(クレチエン内閣)、ハーブ・グレイ(クレチエン内閣)、ジョン・マンリー(クレチエン内閣)、アン・マクレラン(マーチン内閣)の9人の副首相がいた。アメリカの副大統領には決まった任務がなく、しばしば実力者を祭り上げる目的に使われることがあるが、ハーブ・グレイ以外の副首相全員は、副首相以外の閣僚ポストを兼任していた。
 9人の副首相のうち4人が党首選に立候補し、コップスとマンリーは落選した。党首になれたのはシャレーとクレチエンの2人で、首相になれたのはクレチエンだけである。チャールズ・タッパー、リチャード・ベネット、ジョン・ターナー、ジャン・クレチエン、ポール・マーチンの5人の財務大臣が首相になったこととは対照的で、このことから副首相は、しばしば政権内ライバルを牽制する目的で設置されていることがわかる。
 ビル・モルノー財務大臣は8月17日トルドー首相と会談し、大臣と議員を辞職する意向を告げた。モルノー財務相とトルドー首相はともに、WEチャリティを巡る汚職疑惑で調査の対象となっており、野党から辞任を要求されていた。
 モルノー財務相は、首相から辞任を求められていないと弁明した。
「私には、連邦議会選挙に二度より多く立候補する予定がなかった。」
「私が二度と立候補しない以上、そして我々が長く険しい回復をしていく以上、首相のそばにはより長く務める財務大臣がいるべきだと考える。」
「それが今、私が退くことが適切であると結論づけた理由である。」
 彼は、後任の財務相が決まりしだい辞任し、経済協力開発機構(OECD)の事務総長に立候補する意向を示した。

 カナダ学生サービス助成金制度は、新型コロナウイルス流行下において連邦政府が学生に9億1200万ドルの奨学金を支給するものである。トロントの非営利団体「WEチャリティ」が、連邦政府から4353万ドルの契約を受注した。
 利益相反法の精神に則れば、政府高官は公共事業に関与すべきではないが、トルドー首相一家はWEチャリティに大きく関与していた。首相夫人のソフィ・グレゴワール=トルドーさんは、一回の講演で謝礼1400ドルを得ていた。首相の母マーガレット・トルドーさんは28回の出演でギャラを25万ドル、首相の弟アレクサンドル・トルドー氏はギャラを3万2000ドル受け取っていた。トルドー首相はこれについて、妻も母もタレントなので驚かなかったと語った。
 モルノー財務相も、家族ぐるみでWEチャリティに関与していた。モルノー一家は同団体の経費でケニヤとエクアドルを旅行していたが、彼の娘グレイスさんは同団体の旅行部門職員で、娘クレアさんもボランティアだった。モルノー財務相は、調査されるまで旅費4万1366ドルを返還しなかった。
 首相と財務相は倫理委員会の調査対象となっているが、トルドー首相が倫理規定違反で調査対象となるのはこれで3度目となる。一度目は2017年、友人が所有する島でクリスマス休暇を過ごした件、二度目は2019年のSNC-ラバラン事件をめぐる司法介入疑惑である。

 新型コロナ対策の財政支出について、モルノー財務相とトルドー首相らの間には意見の相違があった。カナダ銀行のマーク・カーニー元総裁が財政顧問となったことで、近いうちに行われる内閣改造で彼が財務相に就くという噂が流れ、モルノー財務相は追いつめられていたという。最近では、財務相と首相の間の情報が出所不明のリーク合戦となり、誰かがモルノー氏を排除しようと画策した形跡がある。トルドー首相はごく最近「モルノー財務相に全幅の信頼を置いている」と、異例の声明を発表していた。
 匿名の政府高官は、財務相と首相の間の噂はヒートアップしすぎで、二人はしばしば一致できないこともあったが、モルノー氏は常に首相に忠実で、二人の間に「確執」などなかったと語った。

 保守党のシーア党首はツイッターで、モルノー氏の「辞任」は首相を守るためのトカゲの尻尾切りだと皮肉った。
「カナダ人が自分たちの健康とお金について心配しているとき、トルドー首相は血眼になって、自分を救うために自分の右腕を切り捨てている。」
 新民主党のシン党首もツイッターで、問題は財務相の交代では済まないと厳しく批判した。
「これはモルノー財務相の倫理的過ちではなく、首相が国民のためでなく自分自身のために働いたという過ちである。」
「この首相が倫理規定違反で調査されるのは3回目ということを、忘れてはならない。過去の2回は違反と認定された。大臣は任命したり辞めさせたりできるが、首相が規定を破り続けるなら、この政権のプライオリティは変わらないだろう。」

 後任の財務大臣については、カーニー元総裁が就任すると噂されていたが、ハフィントンポスト紙は「総理府はこれを否定した」と報じた。後任にはクリスティア・フリーランド副首相が有力視されている。
 ビル・モルノー財務大臣の辞意表明を受け、トルドー首相は8月18日、小規模な内閣改造を行った。クリスティア・フリーランド副首相兼政府間関係大臣が副首相兼財務大臣に、ドミニク・ルブラン枢密院議長が政府間関係大臣兼枢密院議長となる。モルノー氏は同日、財務大臣と下院議員を辞職し、引退した。
 女性で初めて財務大臣となったフリーランド氏は、次のように述べた。
「この国で、ガラスの天井に挑み続けている全ての女性に言いたい。頑張って下さい。私たちは、あなたたちとともにいます。」
「コロナウイルスによる経済的損失は、女性に打撃を与えています。特に母親たちには、大きな打撃となっています。」
「私たちは、女性の労働人口が鋭く落ちているのを見ています。そして我が国が取り組んでいるこの難問に、私は女性として、母としての経験を活かせる機会を得られることをうれしく思います。」
 保守党の財務担当ピエール・ポワリーブル議員は、閣僚ポストをたらい回しする「椅子取りゲーム」は、政権の失敗を糊塗することにはならないと批判した。
「誰もが、スキャンダルがモルノー氏を倒したと知っている。」
 モルノー財務大臣とトルドー首相の間に意見の対立があったという噂を、彼はフィクションだと一蹴した。
 トルドー首相は内閣改造について、カナダと世界は新型コロナ渦で経済を立て直そうとする岐路にあり、現在直面している難問の担当としてフリーランド氏が適任だと説明した。

 なお首相と新任の大臣は、認証式のため総督公邸リドー・ホールを訪問したが、首相はこのときパイェット総督に議会の停会を上奏し、許可された。第43回連邦議会の第一セッションは18日で終了し、第2セッションは9月23日に召集される。この日までに成立しなかった法案は全て廃案となるが、新しいセッションで再提出可能である。なお連邦議会の委員会も全て終了し、新しいセッションで再編成される。
 首相は停会について、次のように説明した。
「8か月前に行ったスローン・スピーチには、新型コロナに関する言及がなかった。」
「我々は、よりよい回復のため政府の政策をリセットする必要がある。それは、大きく重要な決定である。そして我々はそれを議会に提出し、この野心的な計画について前進するために議会の信任を得る必要がある。」
 だが、首相の言い分を真に受ける人はいない。首相らは下院財務委員会と倫理委員会で調査の対象になっていることから、議会停会により調査が中断され、委員会もいったん解散され再編成されるのが真の狙いではないかと疑惑を持たれている。
 トルドー氏は2015年に、こう述べていた。
「未来の首相は、問題を回避するため停会に頼るべきではない。」
 その年の自由党の政見公約も、こう述べている。
「スティーブン・ハーパー首相は、困難な政治状況を避けるため、停会を使った。我々は、そうはしない。」
 ハーパー首相は連邦議会を、3度停会している。一度目は2008年10月、過半数を占める野党3党が連立協定に調印し内閣不信任しようとしたとき。二度目は2009年12月、バンクーバー・オリンピックの期間中に停会したが、アフガニスタン捕虜虐待問題の追及を免れるためだと批判された。三度目は2013年8月、議会出費スキャンダルの追及を免れるためだと批判された。
 イノベーション・科学・産業大臣ナブディープ・ベインズ氏の総選挙不出馬表明を受け、トルドー首相は1月12日、内閣改造を行った。
 フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ外務大臣がイノベーション・科学・産業大臣となり、マルク・ガルノー運輸大臣が外務大臣となり、オマル・アルガブラ政務次官が運輸大臣に昇格した。また病状が回復したジム・カー元国際貿易多様化大臣は、「無任所大臣」(minister without portfolio)として閣僚に復帰した。無任所大臣は、ピエール・トルドー首相が1978年に任命して以来で、カー大臣は中西部担当特務となった。なお新任大臣の宣誓は、カナダ史上初めてオンラインで行われた。

 与党自由党は過半数割れの状態で、春の予算審議を迎えようとしている。野党が団結して予算案を否決させれば、解散・総選挙になる。総選挙は2019年10月に行われたばかりで、任期切れまでかなりの期間があるが、ベインズ氏が早くも不出馬表明したのは、総選挙はいつひき起こされるかわからないからだ。
 再選を目指さない閣僚が内閣から外されるのは普通のことだが、任期切れはかなり先なので、この時期の内閣改造は総選挙の準備ではないかという憶測を呼んだ。だがトルドー首相は「全てのカナダ人が新型コロナワクチンを手に入れるまで解散するつもりはない」と語った。

 大臣を辞任したベインズ氏はオンタリオ州ミシサウガ-モルトン選挙区選出だったが、新任のアルガブラ大臣もミシサウガ・センター選挙区なので、新任のカー大臣を別にすると、州の閣僚ポスト配分は変わらない。閣僚の男女比も、首相を除き依然として同数である。
 2019年総選挙で自由党は、トロント周辺のミシサウガ・ブランプトン・オークビル・バーリントンで15議席を獲得した。これは、同党が西部で獲得した議席数に匹敵する。それゆえトルドー首相はこの地域を重視し、この地域だけで大臣を3人も任命している。ベインズ氏のほか、カリナ・グールド国際開発大臣(バーリントン)、アニータ・アナンド公共サービス・調達大臣(オークビル)である。
 いっぽう保守党は2019年総選挙で、この地域において2015年から平均5.1ポイントの支持を失い、1議席を除き全敗した。2011年と比較すると平均14.7ポイントも失っており、同党がこれほど支持を失った地域はほかにない。

 新たに外務大臣に就いたガルノー氏は、カナダ初の宇宙飛行士となった英雄である。彼の昇格はもちろん、間もなく発足するバイデン新政権への対策である。
「私はアメリカで人生の9年間を過ごし、強い関係を築いてきた。私の子供たち2人は、そこで生まれている。カナダとアメリカほど重要な関係はほかになく、今後もそうであり続けると強く確信している。」

 カー氏は多発性骨髄腫の治療のため、2019年に国際貿易多様化大臣を辞任したが、病状の回復により閣僚に復帰した。
 自由党は、サスカチュワン州とアルバータ州に議席がない。オンタリオ州サンダーベイからブリティッシュコロンビア州バンクーバーまでの間で、閣僚はダン・バンダル氏(マニトバ州サン・ボニファス-サン・ビタル選挙区)とカー氏(マニトバ州ウィニペグ・サウス・センター選挙区)の2人しかいない。カー氏の大臣就任は、次の総選挙を睨み、自由党の弱点である中西部を補強したものだろう。

 閣外に去るベインズ氏は、家庭の事情を理由に挙げた。
「私は、カナディアン・ドリームを生きて来た。家具職人(cabinet maker)の父から生まれ、大臣(cabinet minister)として働く機会に恵まれた。そして今こそ、人生で最も重要な任務に集中するときだと思う。それは父であることだ。」
 ジョディ・ウィルソン=レイボールド議員(無所属)は7月8日、次の総選挙に出馬せず引退すると発表した。
「それ(連邦議会)はますます有毒で効力がなくなり、同時に特定のバックグラウンドを持つ個人を軽視している。連邦政治は、私見では、有害な党利党略の実質的な行動に対する不名誉な勝利である。」
「他の人たちとともに、私は25年以上にわたり連邦政治の外からの変化を求めて戦い、ここ6年間は連邦政治の中で変化を求め戦ってきた。政府の内外を問わず、戦いは続いていく。」

 彼女はインディアンで、2015年に初当選し、当選1回で法務大臣兼司法長官となった。だがSNC-ラバラン事件で、同社を不起訴にするようトルドー首相に要請され、拒否したため更迭された。先住民サービス大臣への異動を持ちかけられたが、これを侮辱と受け取り拒否し、復員軍人大臣になったが、ほどなく辞任した。その後は首相批判を繰り返したため、自由党幹部会を除名された。2019年総選挙では、無所属で出馬し当選していた。
元大臣のジム・カー下院議員が12月12日、多発性骨髄腫のため死去した。享年71歳。

ログインすると、残り9件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

カナダの歴史と政治 更新情報

カナダの歴史と政治のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。