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カナダの歴史と政治コミュの議会セクハラ問題でパチェッティ議員とアンドリューズ議員、自由党を永久追放

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 CBCラジオ・パーソナリティのジアン・ゴメシ氏による性的暴行が発覚したことにより、連邦政界でもセクハラが横行していることが暴露された「議会セクハラ問題」で、渦中のマッシモ・パチェッティ議員は3月18日、スコット・アンドリューズ議員は19日、ともに自由党に復党しないと発表した。パチェッティ議員は次の総選挙に出馬せず引退、アンドリューズ議員は無所属で出馬するかどうか検討中だという。

 事件は2014年、新民主党の2人の女性議員による告発で発覚した。うち一人の匿名議員は2014年3月、友人とみなしていた自由党のパチェッティ議員とともに、あるスポーツイベントに出席した。その後、彼が「オタワの家」と呼んでいたホテルに同行したが、室内で抱き寄せられ、「明確な同意のないセックス」をする羽目になったと訴えた。彼女は事情聴取で、はっきりノーとは言わなかったことと、コンドームを提供したことを認めた。
 さらに後日、もう一人の匿名議員は社交イベントの後、パチェッティ議員とアンドリューズ議員と3人で連邦議会のパチェッティ事務所に行った。3人はそこでワインを飲み、その後パチェッティ議員はその場を去った。
 それからアンドリューズ議員は彼女の家までついて来て、強引に中に入ると、彼女を壁に押しつけ、彼女の体に触り、下腹部を押し付けたと彼女は主張した。彼女が帰るよう要請すると、彼は“cockteaser”と吐き捨てて出て行ったという。

 トルドー党首はこの問題を聞いて、まずジュディ・フット院内幹事長(女性)に、問題の2人の女性議員から事情を聞くよう要請した。そして彼女からの報告を受けて、パチェッティ議員とアンドリューズ議員を2014年11月に幹部会から除名し、無所属とした。だが新民主党は、トルドー党首が問題を公にしたことで「セカンド・レイプ」だと非難した。
 トルドー党首は12月、人権問題が専門のシンシア・ピーターセン弁護士(女性)を雇い、事件を調査させ、先週その報告書を受け取った。彼は18日に党としての正式な対応を発表することになっていたが、両議員には報告書の内容を発表前に伝える約束だったという。だがトルドー党首が両議員を永久に復党させないという結論は、発表前にメディアに漏れていた。アンドリューズ議員は、これに深く失望したと語った。


写真左:マッシモ・パチェッティ議員。
写真右:スコット・アンドリューズ議員。

コメント(10)

 #MeToo運動の先頭に立ち、男性議員をセクハラで告発した新民主党のクリスティン・ムーア議員(34歳・既婚者)が5月8日、自身のセクハラ疑惑により、新民主党幹部会の資格を停止された。

 (1) ムーア議員、ウィア議員のハラスメントを告発
 ムーア議員は1月30日、新民主党のエリン・ウィア議員が党の女性職員などに嫌がらせをしていると告発した。
 彼が幹部会の役職に就きたがっているのは、同僚議員の誰もが知っていた。彼は支援を得るため、議員たちに電子メールを送っていた。だがムーア議員は、あなたの日頃のふるまいについては知っている、私にではなく他の女性たちへの、と返信した。
「あなたは幹部会の中で、その地位を得るにふさわしいと思う最後の人である。あまりに多くの女性たち(ほとんどは職員だが)からの苦情が、私に来ている。そして女性として、私はあなたと、独りでは会いたくないと感じている。政界で今起きていることに鑑みれば、あなたは面倒を避けるため役職に就くべきでないと、私は考えている。」
 報告を受けてシン党首は、問題はセクシャルな嫌がらせではないと判断したが、ウィア議員を2月1日、調査報告が終了するまで幹部会の資格を停止すると決定した。
 シン党首は「これ以上のアプローチは不要だと言われたとき、ウィア議員はそれに従った」と擁護した。だがウィア議員がその後、メディアを通して「私は何が問題なのかわからない。嫌がらせを受けた人などいない」「幹部会役職への意欲を表明したことへの応答として攻撃が始まったことからして、それには政治的動機があるように思える」と発言したことを、シン党首は問題視した。彼は、ウィア議員は反省と後悔を表明せず、メディアを使って告発者を攻撃しようとしたと断じた。
「重要な第一は、常に犠牲者を信じることである。第二に、前に出て告発したいと思う犠牲者に、安全と思われる居場所を確保することを私は約束する。」
 調査報告を受けてウィア議員は、5月3日に幹部会から除名された。彼は院内で、1961年に新民主党に合流し消滅した前身のCCF(The Co-operative Commonwealth Federation※一部で「協同連邦党」と訳されているが、某カナダ学会からこの訳語を使用しないよう強く要請されている)の会派を称している。かつてCCFが新民主党に合流した前例を、再度実現させるのだという。


写真左:クリスティン・ムーア議員。
図中:#MeToo運動のブーメランを食らったクリスティン・ムーア議員。
図右:カナダによくいる捕食者。狐・熊・クーガー・下院議員。下院を英語で“House of Commons”と言うのにかけている。
 (2) もう一人の犠牲者
 ムーア議員がウィア議員のセクハラを断罪するのを、一人の退役軍人は2400キロ離れたマニトバ州ブランドンで見つめていた。
 グレン・カークランド伍長は2008年、アフガニスタンで軍用車を運転していたとき、ロケット弾の攻撃を受けた。彼は膵臓と脊椎と右目と脳を負傷し、視覚と聴覚に障害を負った。PTSDも患った彼は、抗うつ薬・オピオイド鎮痛剤・インシュリン・抗生物質などの毎日の服用を欠かせなくなった。
 彼は、負傷した退役軍人の扱いについて証言するよう下院の国防委員会に依頼され、2013年6月、胸にメダルをつけて議会で証言した。彼は「退役軍人の父が、軍人としての義務を果たせば国が最後まで面倒を見ると言っていたが、それは間違いだった」「私は壊れてしまって、もう役に立つことはできない」と、泣きながら語った。
 委員会が終了すると、ムーア議員にカードを手渡され、聞きたいことがあるのでオフィスに来てほしいと言われた。彼は元軍人で、上官には絶対服従することを教えられていたので、何の疑問も持たず言われたとおりにオフィスに行った。するとムーア議員がジンを出し、飲むよう勧めた。彼は、薬を服用しているからと言って固辞したが、看護士の資格を持つ彼女は「大丈夫よ」と言って、さらにもう2・3杯勧めた。彼は次第に、彼女の関心が自分の健康や福祉ではなく、別のところにあると察した。
 彼はその夜ホテルに戻ったが、彼がメディアに語ったところによれば、彼女はホテルについて来て一夜をともに過ごしたという。これについてCBCは、彼女が「不適切な性的関係を持った」と断定的に報じた。
 彼は、彼女との関係は一度きりのものだと考えた。だが彼女はその後、「露骨なメッセージ」を何度も送り続け、住所を教えていないのにブランドンの自宅まで押しかけて来るようになった。
 カークランド氏は、メディアに次のように語った。
「私は、レイプや何かの被害を訴えているわけではない。」
「だが彼女は、不適切だった。彼女は欲しいものを手に入れるため、地位を利用し権力と権限を行使した。」
「そこには確かに、力の不均衡があった。彼女には地位と権限があった。そして彼女がウィア議員と同じ道徳的立場に置かれているのは、何とも皮肉なことだ。」
 資格停止は一時的な措置であり、ムーア議員は調査報告が出るまで幹部会メンバーのままであるが、委員会と党における全ての役職を解かれている。シン党首は、確かな証拠がなくても「常に犠牲者を信じる」と断言した以上、前例と同じ措置を取らなければならないだろう。

 (3) もう一つの告発
 ムーア議員は、2015年にももう一人の議員のセクハラを告発し、政治生命を奪っている。
 彼女の主張によれば2014年3月、友人とみなしていた自由党のマッシモ・パチェッティ議員が「オタワの家」と呼んでいたホテルに行き、「明確な同意のないセックス」をする羽目になったと訴えた。このとき彼女は、彼にコンドームを渡したという。
 彼は自由党を永久追放され、政界引退に追い込まれた。


写真:グレン・カークランド氏(車椅子の人物)。
興味深いブログです。
http://brianlilley.com/the-curious-case-of-christine-moore/
 新民主党のクリスティン・ムーア議員は5月13日、カナディアン・プレスの独占インタビューに応じ、彼女を告発したグレン・カークランド氏と、それを記事にしたCBCのニール・マクドナルド氏、ナショナルポスト紙のクリスティ・ブラッチフォード氏、トロントスター紙のロージー・ディマンノ氏を相手取り訴訟を起こす意向を明らかにした。
「意見を公表する前に、記事を刊行する前に、矛盾がないかどうか基本的なチェックがあるべきです。」
「私の私生活と性生活は暴露されました。それは、私と家族にとって厳しいことでした。」

 彼女はカークランド氏と、2013年6月から10月まで交際していたと語った。
「私たちは、恋人同士でした。」
「彼はおそらく嘘をついていて、私を愛してはいなかったでしょう。でもそのとき私は、愛し合っていると信じていました。」
 カークランド氏は2013年6月5日、下院の国防委員会で証言している。二人はその日に出会い、彼の主張によれば、彼女はその夜彼のホテルについて行ったという。だがムーア議員は、彼の主張は全く馬鹿げていると一蹴した。なぜなら彼女はジンを飲まないし、下院の記録は彼女がその夜22時40分には議会に出席していることを示している。その夜は採決があり、約1時間後に終了している。彼女は、彼に電子メールで呼ばれてホテルに行ったのは後日のことで、そのとき合意のある性的関係を持ったと説明した。
 彼女の主張によると6月5日、軍人たちをオフィスに招き、飲酒した。夕方には解散したが、カークランド氏に誘われ、彼らと後刻オタワのバーで会った。彼女が「今夜は採決がある」と言うと、彼は彼女をオフィスまで送り、そこで彼女を抱きしめてキスしたという。
「キスしたのは、彼の方でした。私は、彼のキスを受け入れました。でも最初の一歩を踏み出したのは、彼の方でした。」
 彼女は、二人はその後も連絡を取り合い、二度会ったと語った。
 彼は2013年6月21日、彼女の住むケベックへ行くための旅程に関する電子メールを送ったが、この旅行は後に彼がキャンセルした。彼女は二人が交際していた証拠として、電子メールと飛行機のチケットをカナディアン・プレス記者に見せた。
 カークランド氏は、2013年7月、サスカチュワン州ケノシー・レイクに友人たちと滞在しているとき、彼女が呼ばれてもいないのにやって来たと主張する。だが彼女は、カナディアン・プレス記者に「恋人たちの旅行」と称する写真を見せた。どの写真も二人だけで、第三者は写っていなかった。
 カークランド氏は、教えてもいないマニトバの自宅に彼女が押しかけて来たと主張する。だが彼女は、訪問する2日前に予告しており、彼がウィニペグまで迎えに来たと語った。
 彼女は、二人が別れたのは彼の離婚が難しいのと、二人の地理的距離が遠すぎたせいだと説明した。

 カークランド氏はムーア議員の釈明を聞き、自分たちの関係は「交際」などではなく、地位と権限を持つ彼女が、弱い立場の自分につけ込んだだけだと主張した。
「『交際』とは、両者が互いに自発的に関係することだ。」


写真:連邦議会で証言するグレン・カークランド氏。
 新民主党のクリスティン・ムーア議員が、写真を公表した。
「私は、彼を愛していました。」
「彼は私と、とてもロマンチックな関係でした。それは合意のある関係でした。私はそのことを思い出し、ただ泣くばかりでした。一人の人がどれほど嘘をつけるかを見るのは、恐ろしいことです。彼がなぜこんなことをしたのか、わかりません。」
 彼女は最近、支持者からの励ましのメッセージのほか、いくつか匿名で悪意に満ちたメッセージを受け取ったと語った。

 彼女はそれから、2013年6月5日の行動について詳細に説明した。それによると、彼女はその日オフィスに軍人たちを招き、飲酒した。そのとき、ドアは開けたままだったという。
 18時30分に連邦議会でイベントがあったので、彼女はそれに出席し、軍人たちはスパークス・ストリートのパブに移った。その後カークランド氏に誘われ、彼女もパブに行きそこで再び飲酒した。彼女が「今夜は採決がある」と言うと、彼は彼女をオフィスまで送り、そこで合意のキスをした。それから彼は「服を脱ぐ?」ときいて来たが、彼女は今夜は採決があり、時間がないと答え、連邦議会に向かったという。

 だが、グレン・カークランド氏はCBCの番組で、合意のある関係を否定した。
「彼女は、我々が『関係』を持ったと言っているが、完全に嘘である。9か月間に三度会ったと言うが、歯医者の方がよほど会っている。それは『関係』ではない。その話は、正確ではない。」


写真:スパークス・ストリートのパブで撮影された、クリスティン・ムーア議員所有の写真。右からグレン・カークランド氏、ムーア議員、議会スタッフ。カークランド氏の服装、特に胸にメダルが付けられていることから、2013年6月5日のものと考えられる。
新民主党のジャグミート・シン党首は、7月19日に記者会見を開き、クリスティン・ムーア議員のセクハラ疑惑について調査した結果、不正が行われた証拠がなかったとして、停止していた幹部会の資格を復活させると発表した。
 新民主党を除名され無所属となり「CCF」の会派を称しているエリン・ウィア議員は、次の総選挙で新民主党の公認を得られないため出馬しないと、5月21日に発表した。

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