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ぼくの映画採点表(2006〜2011)コミュの2008年11月度篇

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「12人の怒れる男」「ブラインドネス」「アキレスと亀」


ぼくの採点表<11月度篇>

☆・・・20点
★・・・ 5点


『12人の怒れる男』 ☆☆☆★★

 社会派の巨匠シドニー・ルメットが、自身のテレビドラマを完全映画化したことで有名な『十二人の怒れる男』(1957/米国作)を、ロシア人監督ニキータ・ミハルコフが舞台を現代ロシアに移しリメイク。オリジナルは映画史上に残る不朽の名作だが、ニキータによるロシア版もなかなか大したもので見事な仕上がり!見ごたえ十二分の力作だ!
 チェチェン人の少年がロシア人将校である養父を殺害したことで裁判にかけられ、物的証拠、隣人の目撃証言により、容疑に疑いの余地はなかった。そこへ登場する12人の陪審員。彼らは互いの素性を全く知ることのない今日この日初めて出会った一般市民だ。初めは誰もが有罪と思っていた事件だが、1人の陪審員が少年への同情の気持ちと良心や自分の生活環境などを省みるうち、裁判の進行に疑問を抱き無罪を主張し出す。その後12人の審議は二転三転とし、その結果、思いもよらぬ真相が明らかとなってゆく。
 ストーリーはオリジナルにかなり忠実で異様な緊迫感はそのままだが、現代ロシアが抱える民族的問題をうまく扱い、シドニー・ルメットが唱えた正義感とはまた一味違った、ニキータらしい人間の本質といった捉え方で、現代ロシアの混沌、失望を抉る。また、シドニーのような生真面目路線ではなく、ニキータ版はかなり遊び心いっぱいで半分は喜劇、半分は社会派サスペンス。そう言えば日本版にも『12人の優しい日本人』(1991)というパロディがあった。
 しかしこの映画、上映時間2時間40分でいささか長丁場。途中ダレてしまうのも仕方ない。2時間40分頑張った陪審員の皆さまもご苦労さまだ。


『ブラインドネス』 ☆☆☆★★

 “全世界失明”というインパクトある宣伝文句が話題のパニック・サスペンスがいよいよ登場。車の運転中に突然視力を奪われた男を皮切りに、この原因の分からない失明は、彼と接触を持った人間たちに次々と伝染してゆき、失明の拡大を恐れた政府は失明患者らを隔離病棟(旧精神病院)に強制収容する。初めは互いに協力し合い助け合っていた患者らも、外部から支給される僅かな食料品をめぐり争い、やがては支配層が生まれる。
 原作は、ノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説『白の闇』だ。題材的にはハリウッドがいかにも好みそうなものなのだが、これを日本・ブラジル・カナダ合作で、『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』など独特の世界観で骨太な人間ドラマを築き上げる名匠フェルナンド・メイレレス監督の手によって映画化されるのだから、これはこれは曰く付きの作品になるに違いないとワクワクして拝見させてもらったが、案の定の出来栄え。単なるパニック映画に終わらず、極限状況下における人間のエゴや欲望をときに残酷に、厳しく描写する。
 出演者も国際的だ。ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、アリス・ブラガ、伊勢谷友介、木村佳乃、ダニー・グローヴァー、ガエル・ガルシア・ベルナルら。恐怖のどん底に陥った人間を迫真の演技で体現。また、脚本を担当したドン・マッケラーも印象深い患者役で登場する。
 欲を申せば少々展開が稚拙に思えてしまい、細部の甘さが目立ち、物語の矛盾な点がばれてしまう。もっと人間の本性をえぐり、ドロドロとした世界を描ききっても良かったのではないだろうか。終焉があっさりし過ぎているのもどうかと感じるが。


『アキレスと亀』 ☆☆☆★★

 北野武監督の最新作。才能がなく売れない前衛画家と、彼の夢を信じ支え続けた理解ある妻の夫婦愛の物語。人生の厳しさをリアルと誇張を交えながら北野らしい独特のユーモアと残酷性をもって描き、この映画の終わりで夫婦が掴む本当の“幸福”にまた何とも言えない“笑い”が生まれる。
 売れない画家を北野自身が演じるが、彼の青年時代役には柳憂怜があたり、特に印象深く頗るいい味を出す。妻役を演じるのは樋口可南子。気高いイメージの彼女に前衛画家の妻を演じさせたのは面白く大成功。おかし味たっぷりな場面の連発でニヤリとさせられる。樋口の若かりし時代を演じるのは麻生久美子。最近映画出演作が多くなってきているが今回も好演。
 北野作品としてはいささか物足りない気分にさせられるが、芸術への皮肉を込めたメッセージ性など如何にも北野らしいタッチはやはり惹かれる。子供時代の場面作りはとても良かった。


『トロピック・サンダー 史上最低(サイテ〜)の作戦』 ☆☆☆★★

 ベトナム戦争で両手を失い、心に深い傷を負ったアメリカ人兵士ジョン・“フォーリーフ”・テイバック(ニック・ノルティ)が、最前線での自身の活躍を書き記した自伝小説『トロッピック・サンダー』が映画化されることになり、この戦争ドラマで返り咲きを目指す落ち目のアクション俳優タグ・スピードマン(ベン・スティラー)、下品なネタでお茶の間の人気を博す芸人風スターのジェフ・ポートノイ(ジャック・ブラック)、アカデミー賞主演男優賞5度受賞のオーバーアクション悲劇俳優のカーク・ラザラス(ロバート・ダウニー・Jr.)、アル・パチーノに憧れるラッパーのアルパ・チーノ(ブランドン・T・ジャクソン)、人数合わせなだけの新人俳優ケヴィン・サンダスキー(ジェイ・バルチェル)らヒト癖もフタ癖もある自己中心俳優がゾロリと集まり撮影は始まるが、無駄な爆破シーンの連続や出演者の我がままが祟りたった五日間で予算はオーヴァー、イギリス人監督のデミアン・コックバーン(スティーヴ・クーガン)はお手上げとなるが、大物プロデューサー(トム・クルーズ)の鬼気迫る脅しに追い詰められ、原作者テイバックのアドヴァイスもあって、東南アジアのジャングルでリアルな戦争大作を撮ろうと強硬手段に出るのだが、撮影に訪れた地は凶悪な麻薬犯罪組織が支配する危険地帯であり、まんまと撮影隊一行は組織に命を狙われる目に会うこととなり・・。
 ナンセンスな映画だ。ナンセンスなおバカギャグが満載で頗る呆れ返ってしまうのだが、しかし戦争大作に集まった五人の俳優の真剣勝負な姿に目が離せず、最後まで興味津津、全く飽きることなく観終えた。あらゆる映画のパロディが織り込まれているのだが、そんな事情を知らなくとも、過激でド派手な爆破シーンやムチャクチャな連続アクションは十分楽しめる要素だ。何より、ハリウッド映画というものが如何に内容を伴わなず、お金を掛けただけの大作か、ということへの痛烈な批判までも感じさせるのは作者の至難の業。原案・脚本・監督・主演まで手掛けたベン・スティラーの非凡の才が初めて際立った。
 賛否両論の作品であると思うが、ぼくは大いに気に入った。トム・クルーズの扱いも巧い。


『ハッピーフライト』 ☆☆☆★★

 航空業界の舞台裏を扱った大変興味深い一篇。監督には『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』とフレッシュでコミカルな青春ドラマが続いた矢口史靖があたる。
 ストーリーはいたって単純で、機長昇格への最終カリキュラムに挑む副操縦士の鈴木和博と、初の国際線フライトに臨むキャビンアテンダントの斉藤悦子を乗せたホノルル行きの旅客機の離着陸を見守るスタッフたちの熱血奮闘ぶりを、笑いたっぷり、急ピッチに描く群像劇。
 機内に乗り合わせた乗組員(パイロット、CA)と乗客、グランドスタッフ、整備士、管制塔、バードパトロール、ディスパッチャー、オペレーションセンター・・・それぞれの分野での活動をリアルに描き、同じチャーター便を管理するものの、それぞれ別ドラマとして同時進行させ全く展開に飽きさせることがない。
また、キャスティングも、田辺誠一、綾瀬はるか、時任三郎、寺島しのぶ、岸部一徳、吹石一恵、田畑智子、笹野高史らと実に華やか。
 ドラマとしての部分をもっと凝らせてみれば、より奥深い名作になったであろうが、まあそこそこ楽しんで観れる気軽な作品なので、ぼくは気に入った小品だ。


『櫻の園』 ☆☆☆★

 いまや名作の呼び声高い、名門女子高の演劇部を舞台にして多感な少女期の友情や衝突を淡く優しく描いたフレッシュな作品『櫻の園』(1990)を、18年経ったいま再び、18年前にもメガホンを取った中原俊監督が、前作とは違った手法でリメイク。ぼくの大好きな映画だったので大いに期待したのだが、はっきり、残念、失敗に終わった。
 キャスティングは、前回の中島ひろ子、つみきみほ、白島靖代らからガラリと変わり、福田沙紀、寺島咲、杏らが登場。中島らのほうが頗る平凡な女子高生で、いかにも演劇部員らしい雰囲気を醸し出しているのがかえって良かったし、中原の演出も少女趣味な感覚とスケッチタッチな展開が際立っていた。今回は演出がドラマティックになりすぎてしまい、なんだか通俗的でいただけない。福田沙紀は垢抜け過ぎてしまい、演劇部員とはとうてい感じられない。
 原作は吉田秋生による同名少女漫画の秀作。


『まぼろしの邪馬台国』 ☆☆☆★

 SFをやれば恋愛もやる。コメディをやればホラーもある。今年『20世紀少年』三部作がスタートした、わがご贔屓の職人監督・堤幸彦の最新作。今回は『明日の記憶』(2006)のような夫婦メロドラマ路線で、昭和30年代〜40年代を舞台に、実在した盲目の文学者・宮崎康平と、彼を支えた良妻賢母・和子の、出会いから邪馬台国を求める大自然の旅、そして康平の死までを描く感動ドラマ。
 『20世紀少年』の新鮮強烈ショックが始まったばかりなので、なんだか今回は中休み的印象だ。主役の夫婦を演じるのが竹中直人と吉永小百合というコンビなのがなんだかアンバランス。そこが魅力なのかもしれないが、終始どうも竹中の吉永への遠慮がちな芝居が気になった。吉永はいつにも増して吉永小百合を演じていた。
 中休み的映画なので息抜きのつもりで、夫婦円満家庭のお客様にご推薦いたします。


『レッドクリフ Part1』 ☆☆☆★

 アジア勢(中国・香港・日本・韓国)が100億円を投じて作り上げた羅貫中の『三国志演義』を題材とした大スペクタクル史劇がいよいよお目見え。監督は、ハリウッド進出で大成功した中国出身のジョン・ウー。『ミッション・インポッシブル2』などアクション作品には定評がある。
 物語に関してはあまりにも有名なのであえて追記することは何もないが、この映画は『三国志演義』の中の前半部分における大見せ場“赤壁の戦い”だけをピックアップして、愛と野望と男のロマンを、力いっぱい、高らかに謳いあげる。
 出演陣は、孫権軍の周瑜役にトニー・レオン、劉備軍の諸葛孔明役に金城武、周瑜の妻・小喬役に台湾の人気モデルでもあるリン・チーリン、若い皇帝を力ずくで操り帝国の統一を目論む曹操役にチャン・フォンイー、孫権役にチャン・チェン、孫権の妹・尚香役にヴィッキー・チャオ、劉備軍の若き将軍・趙運役にフー・ジュンら華やかな中堅アジア・スターがズラリと揃う。日本からは中村獅童が孫権軍の武官・甘興として謎の登場。
 大金を投じただけの中国らしいダイナミック観はあるが、原作の文学性や歴史ミステリー的な面白さなどは一切感じられず、また紐解くようなストーリー展開のサスペンス感も皆無で、大作だが内容は薄っぺらというハリウッド方式映画(=商業優先主義)になってしまっているのは誠に悲しい。“赤壁の戦い”に絞った映画的狙いは分かるが、史劇というよりアクション活劇といった方が良さそうな、陳腐で俗モノ的作品にとどまってしまっている。
 これは2部作ということで後編が来年に公開される予定だが、結末を知っている身としては、この程度のデキではもはや期待はできない。


『彼が二度愛したS』 ☆☆☆★

 ニューヨークで会計士の仕事を行うジョナサン・マコーリー(ユアン・マクレガー)は、特別な友達もなければ女性との縁もあまりなく、平凡で退屈な日々に嫌気がさしていたが、ある日、ハンサムで頼もしい存在の弁護士、ワイアット・ボーズ(ヒュー・ジャックマン)と出会い、高級なスーツを着こなし、夜はパーティー、休日には女の子らとテニスをしたりと派手なセレブ生活を送るワイアットに、たちまちジョナサンは感化され、突如一変した自分の生活に自信がみなぎってくる。そんな折、たまたま取り違えた携帯電話によってジョナサンは、セレブのみが会員登録できる秘密の官能クラブの存在を知り、たちまちセレブなレディーたちとの一夜限りの情事にのめり込んでゆくのだが、そこでジョナサンはイニシャルが“S”(ミシェル・ウィリアムズ)というミステリアスな女性と出会う。彼女のことは実は、以前地下鉄で見かけ、それ以来気になっていた女性で、偶然の再会に心が躍り、そしてジョナサンは、本当に彼女のことを好きになってしまう。しかし“S”との二度目の密会の夜、ホテルの部屋でジョナサンは何者かによって襲われ、“S”は連れ去られてしまう。警察に通報するもイニシャル以外何も知らない女性ゆえどうしようもなかったが、頼みの綱にワイアットの法律事務所に行き彼に相談しようとするが、そこにワイアットという人物は在籍しておらず、彼の自宅に行ってみると全く知らない女性が生活をしていた。ようやく事態のおかしさに気づいたジョナサンだったが、しかし時すでに遅く、巧妙に仕掛けられた罠に完全にハメられていた。
 ヒュー・ジャックマンが脚本の面白さに大絶賛し制作者として名乗りをあげ主演も兼ねた作品だが、これが初監督作となるマーセル・ランゲネッガーのキレが悪く生ぬるい演出以前に、ヒューが何故か惚れ込む“脚本”の段階で大失敗なのでは?と思うのは小生だけだろうか。明らかにワイアット・ボーズの存在は怪しすぎるし嘘をついているのも見てのとおりだし、謎の女“S”の正体も分かり切ってしまっている。秘密クラブもあまりエロティックなウレシイ雰囲気が味わえない割にやたらと前半部分で引っ張るので興ざめ。そこへ来てのマーセル演出の色の弱さは全くいただけない。キャスティングもなんだかパッとしない。ユアン・マクレガーの素朴な主人公はわざとらしいが、何よりミシェルにミステリアス美女のイメージは伴わない。ヒュー・ジャックマンはあまり好きになれない男優。シャーロット・ランプリングがウォール街の美女役で秘密出演するが、観終えてもなお彼女の扱いに疑問符が残る。


『石内尋常高等小学校 花は散れども』 ☆☆☆

 95歳!日本最高齢の映画監督・新藤兼人の最新作!新藤が生まれ育った広島での少年時代から、都会に出てシナリオライターとして芽が出るまでを描く自伝的作品。
 少年時代の前半部分(大正の終わり)は、厳格だが心優しくそれでいておかし味たっぷりな恩師・市川先生(柄本明)を中心として語られ、生徒たちの交流、林先生(川上麻衣子)との結婚など、広島の田舎臭さを頗る長閑といった雰囲気で描かれるが、30年後となる後半部分では、定年を迎えた市川先生のお祝いの会でかつての生徒たちが集まりはするものの、戦争によって愛する家族や夫を失った彼らは、心から笑いあえる状況ではない、いささか重苦しい状態になっている。そんな中、突然広島を去った義人(豊川悦司)と、義人を長年待っていたが待ちくたびれて別の男と結婚したみどり(大竹しのぶ)は、行き当たりばったりの挙句海岸で関係をもつ。
 新藤兼人作品としてはあまりに物足りない。この歳で新作発表という意気込みは称賛に値するが、映画のデキとしては凡作にとどまる。柄本明扮する市川先生も、映画の終わりでは言語障害となり呂律が回らない状態で発言するが、何を言っているのか理解するのに困惑させられる。柄本のこれ見よがしな口調にこちらは気分さえ悪くなる。本来演技派の役者陣が全員本領発揮できぬまま。新藤先生に「お疲れさま」の敬意のみ。



☆☆☆☆以上 ・・・ダンゼン優秀
☆☆☆★★★ ・・・上出来の部類
☆☆☆★★  ・・・佳作
☆☆☆★   ・・・見ても損はしない程度
☆☆☆    ・・・標準
☆☆★★★  ・・・標準以下だが見ておいてもよい
☆☆★★以下 ・・・篤志家だけどうぞ


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