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五つ星の本のみを紹介しあう会コミュの夏目漱石『私の個人主義』

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夏目漱石自身による講演集

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(表紙裏より)
文豪漱石は、座談や講演の名手としても定評があった。身近の事柄を糸口に、深い識見や主張を盛り込み、やがて独創的な思想の高みへと導く。その語り口は機知と諧謔に富み、聴者を決してあきさせない。本書に収めた五つの講演も、そのような魅力に溢れたものばかりである。漱石の根本思想たる近代個人主義の考え方を論じた「私の個人主義」、先見に富む優れた文明批評「現代日本の開化」、他に「道楽と職業」「中身と形式」「文芸と道徳」を収録。
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漱石先生の講演、内容はとても高度なのに、語り口がやさしくとても理解しやすいのです。その上ユーモアに溢れていてとても面白い。
漱石作品を理解する上でも、現代日本の精神的な成り立ちを理解する上でも、興味深い内容ばかり。

中でも表題の「私の個人主義」は白眉で、ほとんど100年も前のものだというのに、この講演を現代そのまま行ったとしても全く何の違和感もないどころか、相当面白く為になるに違いないのです。

少々長くなりますが一部を抜粋してみます。

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それで私は常からこう考えています。第一にあなた方は自分の個性が発展出来るような場所に尻を落ち付けるべく、自分とぴたりと合った仕事を発見するまで邁進しなければ一生の不幸であると。しかし自分がそれだけの個性を尊重し得るように、社会から許されるならば、他人に対してもその個性を認めて、彼らの傾向を尊重するのが理の当然になって来るでしょう。それが必要でかつ正しい事としか私には見えません。自分は天性右を向いているから、彼奴が左を向いているのはけしからんというのは不都合じゃないかと思うのです。もっとも複雑な分子の寄って出来上がった善悪とか邪正とかいう問題になると、少々込み入った解剖の力を借りなければ何とも申されませんが、そうして問題の関係してこない場合もしくは関係しても面倒でない場合には、自分が人から自由を享有している限り、他にも同程度の自由を与えて、同等に取り扱わなければならんことと信ずるより他に仕方がないのです。

(中略 ↓注:国家主義を標榜したある会における漱石の個人主義批判に対して)

私はこういいました。──国家は大切かもしれないが、そう朝から晩まで国家国家と言ってあたかも国家に取り付かれたような真似は到底我々にできる話でない。常住坐臥国家のこと以外を考えてならないと言う人はあるかもしれないが、そう間断なく一つ事を考えている人は事実ありえない。豆腐屋が豆腐を売って歩くのは、決して国家のために売って歩くのではない。根本的の主意は自分の衣食の料を得るためである。しかし当人はどうあろうともその結果は社会に必要なものを供するという点において、間接に国家の利益になっているかもしれない。これと同じ事で、今日の昼に私は飯を三杯食べた、晩にはそれを四杯に増やしたというのも必ずしも国家のために増減したのではない、正直に言えば胃の具合で決めたのである。しかしこれらも間接のまた間接に言えば天下に影響しないとは限らない、否観方によっては世界の大勢に幾分か関係していないとも限らない。しかしながら肝心の当人はそんな事を考えて、国家のために飯を食わせられたり、国家のために顔を洗わせられたり、また国家のために便所に行かされたりしては大変である。国家主義を奨励するのはいくらしても差支えないが、事実できないことをあたかも国家のためにする如くに装うのは偽りである。
──私の答弁はざっとこんなものでありました。
(中略)
唯もう一つ御注意までに申し上げておきたいのは、国家的道徳というものは個人的道徳に比べると、ずっと段の低いもののように見えることです。元来国家と国とは辞令はいくら八釜しくっても、道義心はそんなにありゃしません。詐欺をやる、誤魔化しをやる、ペテンにかける、滅茶苦茶なものであります。だから国家を標準とする以上、国家を一団と見る以上よほど低級な道徳に甘んじて平易でいなければならないのに、個人主義の基礎から考えると、それが大変高くなってくるのですから考えなければなりません。だから国家の平穏なときには、道義心の高い個人主義にやはり重きを置くほうが、私にはどうしても当然のように思われます。
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コメント(2)

へーー すごい面白いですね
夏目漱石は好きな作家の一人ですが 熱狂的とまではいかないので 初めて知りました
彼の作品で 私のお気に入りは「夢、十夜」ですね
あの 不思議な夢の感じ 大好きです
東大寺南大門の あ・うん像のくだりなんか いいですねーー

ごめんなさい どっちに書くか迷って 間違ったほうを選んでしまったみたいで すみません。

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