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大映「妖怪百物語」3部作コミュの3つの「妖怪大戦争」(1)

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さてここいらで「妖怪大戦争」についてまとめてみます。
長くなるので分割です。レビューの方にしようかと思いましたが、やたら長いので、こちらで分割掲載することにしました。
なお、(2)の大映映画版「妖怪百物語」の稿は以前この掲示板に書き込んだものと重複しますのでご容赦ください。

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(1)鬼太郎版「妖怪大戦争」
さてまずはゲゲゲの鬼太郎版「妖怪大戦争」である。鬼太郎といってもこの「妖怪大戦争」はまだまだ「墓場の鬼太郎」の匂いのする作品で、TV化される前の怪しい雰囲気が漂っている。物語の構成は少年漫画らしくVSものになっている。VSものでいうなれば墓場の鬼太郎はすでにいくつかのパターンを確立していたものの、集団対決というのはこのシリーズ初となった。集団対決というのはオールスターキャストの様相を呈するのだが、鬼太郎も例外ではない。そしてこのシリーズで選ばれた妖怪たちは後々「鬼太郎ファミリー」と呼ばれ、以降の作品に何度もレギュラー扱いで登場することとなる。日本側のメンバーというのは鬼太郎、目玉親父にお約束のネズミ男、児泣き爺に砂かけ婆、一反木綿に塗り壁といった妖怪たちである。対する西洋モンスターはドラキュラ、魔女、フランケンシュタイン(の怪物)、狼男、そしてバックベアードである。

このバックベアードというモンスターがこの物語の肝である。当時の読者ははっきり言ってこの妖怪は知らなかったはずだ。まさに未知のボス妖怪だったわけで、それだけでも驚異だったのにこいつはべらぼうに強かったのである。何しろ鬼太郎でさえ、丸坊主になり、ちゃんちゃんこも下駄も無効にされ、文字通り丸裸の状態で、あまつさえ操られてしまうのである。考えてもみればドラキュラや狼男などのメジャーモンスターを束ねるぐらいだからそれぐらい強くないと困るのだが、このバックベアードは遺憾なくその能力を見せつけたわけで、誰もが納得する強さだったと思う。

このバックベアードのあり方は大映版「妖怪大戦争」のダイモンに通じる。バックベアードが眼力による錯乱、催眠を武器としたどちらかというと知略派に対し、ダイモンはひたすら残忍で、己の能力を駆使する武闘派といった違いはあるにせよ、この「見知らぬ驚異」としての存在感は群を抜いている。これもこの2作品の成功の大きな一因である。

また、この物語が後の鬼太郎シリーズと一線を画すのが、妖怪たちの死であろう。後に復活するので、まさに「お化けは死なない」と開き直りもできようというものだが、この物語の中で鬼太郎、目玉親父、ネズミ男以外の日本妖怪はすべて死んでしまうのである。しかもあっさりと。3つの「妖怪大戦争」を通じて、妖怪が死ぬのはこの話と角川版「妖怪大戦争」である。ここらあたりが水木しげるの作家性といったものだろう。

ではなぜ、鬼太郎を筆頭とする日本の妖怪たちが西洋妖怪に立ち向かっていったのだろうか。単に島の住民を助けるためだけだろうか。目玉親父ははじめ「西洋妖怪は残酷だからやめておけ」と鬼太郎に忠告する。鬼太郎はそれでも島の人々が困っているからと助けにいくことを決意するのだが、その裏にはやはりテリトリーの問題が含まれているのであろう。

しかし、そういったテリトリー争いを単純に国防と重ね合わせるのもまた想像力不足というところだろう。妖怪たちに国防意識はなく、彼らが戦うのは自分たちの住処が脅かされるという一点につきる。だからこそ彼らは文明に牙をむくのである。

本来妖怪は脅かすだけの存在が多い。これは元々妖怪が未知なる自然現象に対してのアイデンティティに基づく存在であったためである。日本妖怪は大半がそこに出自を求めそして残りは娯楽のために創造されたもの、つまりは人間の想像力によるものが多い。想像力の働かない状況で妖怪など発生しないのである。

そんな妖怪たちが戦う状況というものはそもそもどういう状況なのだろう。人を驚かすだけの妖怪たちが外敵と戦うためにはそれなりの能力を必要とする。そこで様々な能力が付加されていくのだが、その過程において妖怪そのものが変質していく可能性も出てくる。この3作の「妖怪大戦争」とはまさしく変質してしまった妖怪たちの物語ということになる。

ただ、それは妖怪というものを否定するものではない。そもそも妖怪は変質するのだ。時代に合わせ、人に合わせ妖怪は変質し、常態というものをとらない。それを固定化してしまうのが画であった。現代ではその第一人者はいうまでもなく水木しげるということになる。

そうして変質して固定化された妖怪たちだからこそ戦えるのである。外敵に対峙できるだけの能力と説得力を勝ち得るのである。「妖怪大戦争」とはそうした妖怪たちの物語なのである。したがって鬼太郎シリーズの王道としての鬼太郎版「妖怪大戦争」であり、妖怪3部作と本来は一括りにしてはいけないのが大映版「妖怪百物語」である。

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