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。」「コミュの6  神 の 国

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神 の 国
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 土曜の営業が終わって、港区のバイト先の交差点から自宅の杉並までタクシーと電車を乗りついで、駅からも歩いて15分もかかる我が家にヒゲ後輩と彼女がやってきた。
店は夕方から翌朝の5時までが営業時間なのでもう朝の7時ぐらいになっていたと思う。
 彼女とはあの『魔法の杖』という本によればぼくの夢をかなえてくれるその準備をしてくれているらしい牡羊座の女だった。
 
 でも、そのころはそんなことはもうどうでもよくなっていた。ヒゲはもう一人、常連の女の子もつれてきていた。

 家は一軒家で二人でシェアして住んでいるが、同居人は一年の半分以上、どこかに旅行に行ってるので、一人暮らしみたいなもんだった。
 いつも部屋はわりにかたづいていると思う。まず部屋に入ると目につくのがとてつもなくでかい大型の冷蔵庫みたいなスピーカーだった。普通に市販で売っているものではなかった。同居人の持ち物だったが、ぼくようにあてがわれた8畳ほどの部屋に、それが置いてあった。そのスピーカーの間に32インチのテレビがあって、その前に3人がけのソファーがあってちょっとしたホームシアターチックな部屋だった。
 朝方にきた3人は、そのソファに座り、コンビニで買ってきたコーヒーを飲んだりしながらくつろいでいた。大きなスピーカーからはジャマイカンレゲエが流れていた。そしたらなんか会話の流れで『死んだらどうなると思う?』という話題になった。
 アンニュイなときの流れに身をまかせていると、ぼくらはつい、この話題をしてしまう、ごくあたりまえの、どこにでもある話題だった。そしてその答えはだいたいがありきたりだった。

「死んだら、なにもないと思う」とヒゲ。

「私もそう思う、死んだら『無』でしょ」と常連の女の子。

 ぼくは、この話題を幾度となくしたけど、ぼくのまわりには偶然か、この答えしか誰も持っていなかった。
 むろん、ぼくも同じ答えだった。死んだら『無』だった。子供の時は天国を信じていたけど、いつのまにか、もっぱら『無』と答えるようになっていた。でも、『無』の意味はわからなかった。『無』に意味などない、だから『無』なんだよ、とか言われても、ぜんぜん納得などできなかった。『無』ってなんなんだよ。って、いつも心の片隅に解けない問題としてあった。
 その時だった、
「みんな、なんにも知らないんだね〜」と牡羊座の娘が言ったのだった。
ぼくは、牡羊座の娘を見た。
ラビットファーの上着をまだ脱いでおらず部屋の真ん中にちょこんと座って、やたらとニコニコ笑っている。そしてまるで幼稚園の先生が幼稚園児に教えるみたいに話しだしたのだった。

「死んだらね、魂がひゅ〜うって昇っていって、しばらく、下の様子を見ていて、またしばらくしたら、さらにその上にひゅ〜うって、昇っていくんだよ」

と言った。ぼくはその娘が話す姿を見ていた。『ひゅ〜う』っていうところはまるでフワフワと魂があがっていくような手ぶりがはいった。
まるで、あたりまえのようにそんなことを話す彼女をみて、ぼくはとても新鮮な気持ちになっていた。こんなこと信じてる子もいるんだと。
そしてちょっと聞いてみたくなった。
「さらにその上ってなに?」
彼女は笑った顔をさらにほころばして
「え〜、ホントになんも知らないんだね〜」と子供をさとすように言うのだった。



    「神様の国」。




ぼくは鼻でフフフと笑った。

 いいじゃない。
 いまどきめずらしい、とてもいい思想じゃない。
 
 素敵じゃない。
 死んだら神様の国に行けるなんて。
 
 死んだおばちゃんたちも、高校の時バイクで死んだ友だちも、みんなそこにいて、ぼくをむかえてくれるんだ。どんなことがあっても最後は結局ハッピーエンドなるんだ、いいなあ、と思って、是非そうあってほしいねとぼくは答えた。
人のいいヒゲ後輩は、「きっとそうやって信じてる人が、そこにいけるんだよ」なんて言った。
 じゃ、おれら『無』じゃん。と、つっこみを入れた。でもヒゲがそう思うぐらい、彼女の天国論は彼女自身にとって揺るぎがないもののように思われた。


 ぼくの死んだら『無』論にはべつに答えがあるわけではなかった。

深く考えた時期もあったかもしれないけど、そんなものは忘れてしまったし、そのときもぜんぜん答えなんか出してない。

彼女はムフフって笑ってた。こんなにも楽しそうに『死』の話しをする人も初めてだった。子供がディズニーランドに行ったときの話をするように『死』の話をするのだった。
 そして、ふと常連の女の子のほうを見ると、なぜか、すごい怒った顔になっていた。
 天国にいけないのが悔しい、とかそんなことで怒ってる様子ではなかった。なんだか苛ついている。
 ぼくは気になって時々、その怒った顔をチラチラと見た。
 女の世界にも色々あるらしい、と思った。

4人で話していると、いつの間にか話しがそれていって、僕の話しに反応するのは彼女だけになっていた。いつのまにか二人だけで彼女とばかり話すようになっていた。
 しばらくして常連の女の子は帰り、ヒゲも寝はじめていた。彼女には同居人の空いているベッドをすすめた。ぼくは適当にソファーで寝ようと思った。その日の日曜は仕事もなく、丸一日休みだった。でも、彼女の話しは終わることがないように思った。ヒゲが完全に寝た後もずっと話し続けているのだった。まるでなにかのたががはずれたように。ぼくは眠かったのでぼーっとした頭で聞いて適当にあいづちをうっていた。彼女の近況、プロフィール、パーソナリティ、ets,etc・・。
 そんななかで彼女がこんな質問をしてきたのを覚えている。

「ねぇ、ねぇ、いつからエロスを感じた?」

「?」

ぼくはいつだろう?と思い出してみた。
いつHなことを考えたり、いつERECTしたりしはじめたかを。
かなり小さなときだった、幼稚園とかそんなもんじゃなかった、もっと昔のころのように思った。
ぼくは、む〜、と思い出そうとしていた。
それを彼女は見守るように、ずっと待っているようだった。
 でも、やっぱりどうしても思い出せなかった。思い出せるのは真っ昼間の日差しの強いベランダの景色だけだった。実家のベランダだった。近くに母親がいた。
 でも、やっぱり、わかんないから適当に「多分、物心がついたあたりじゃないかな」と答えた。
すると彼女が、まるで待っていましたといわんばかりに「だから、それがエロスを感じたときなんだよね」と言った。
「へ?」と思った。
「だからさ、『物心』ていう言葉は、控えめな感じをもった、でも実は恥ずかしい言葉なんだよ、
ほら、モノゴコロ。って なんかすごい日本的じゃない?」
 ぼくはすごく先回りされた感じがして、少々面を食らってたが、でもなんとなくわかるなと思った。
モノゴコロ。・・・・・。『 物 心 』
言われてみれば、なんとなく、その響きの中に、はずかしみの『響き』があるような気がする。
そしてそのはずかしみを隠しているかのようなニュアンスに聞こえるような気がした。
「物心ついた」みたいな表現ってする。それのベールを脱がせば実は、エロづいたってことか?
エロな事を考えた時が記憶のはじまり。エロを意識しはじめたときが知性のはじまり。う〜ん、詩的だ。
 それにしても、はずかしみを隠すなんて、なんだか差別的な感じもするな、と思った。でもおもしろいな日本語、とそのとき思ったのだった。日本語をそういうふうに音としてあまり意識して感じたことがなかったので、新鮮だった。

 彼女はプーだった。でも住んでいる場所は白金だった。話しを聞いていると、どうやら家がお金持ちのようだった。
 彼女は夢についても話してくれた、英語圏で永住権をとることと、そしてなんでも、



『私は伝説を作るために生まれてきたんだ』



と、そんなことを言っていた。








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