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会社法判例百選コミュの81-85

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81(99)計算書類の虚偽記載と取締役の対第三者責任 東邦産業事件
山陽特殊製鋼倒産(戦後最大の倒産事件)によるあおり倒産に関する事件
名古屋高判s58.7.1
参考条文:429??ロ(会社のディスクロージャー責任)
■ 計算書類に虚偽の記載をした取締役は、会社と直接には取引していない手形割引業者に対しても429??ロの責任を負うか。「第三者」にあたるか。
⇒負わない。会社法では過失責任となった。
事案  会社四季報を見て、A社の振り出した手形を取得したが、その後A社は倒産した。Xは手形金を回収するために、A社の取締役Yらに対して計算書類を偽造して、支払い見込みのない手形を振り出したことを理由に損害賠償請求(会社429)を求めた。
 なお、計算書類は株主総会の決議を経ており、それに基づいて会社四季報の記事も作成されていた。
第一審  請求棄却
第二審 控訴棄却。確定
【理由】
四 ところで、控訴人が第一次的に帰責の根拠としている昭和五六年法律第七四号による改正前の商法二六六条の三第一項後段の規定の趣旨とするところは、その挙示する各書類の記載に虚偽がある場合において、これを信頼して会社と直接の取引関係に入った者あるいは会社と直接の取引関係はなくとも当該会社の株式又は社債を公開の流通市場において取得した者(その大多数を占める一般投資家としては前記各書類を信頼する以外に投資活動に伴う危険から自己を防衛する手段を有しない。)等を保護することにあり、これを確実なものにするため取締役に対し個人責任として故意・過失の存在を要しない極めて重い責任を負担させていると解されるのであり、従って会社以外の者との間の取引において生じた必要から会社の資力、業績等を判定する資料として右各書類を閲読したに止まる第三者一般について右規定による保護を及ぼすことは、時として右規定による責任を無過失責任とした本来の趣旨を超えて取締役に過大の犠牲を強いることになり、相当でないといわなければならない。このことは、同条二項により計算書類の承認決議に賛成したことのみを理由に責任を問われる取締役の場合において特に顕著である。
【あてはめ】
 本件についてみるに、控訴人は手形割引業者として同業者である株式会社三協との間に本件手形の割引契約を締結し、対価を支払って本件手形を取得するに当り、東邦産業の業績を調査して本件手形に経済的価値を判定するため会社四季報を閲読したにすぎないものであることは前認定から明らかであるところ、右によれば控訴人は会社と直接取引関係に入った者でないことはもちろん、有価証券を取得した者とはいっても公開市場における株式、社債の取得者とは著しく趣を異にするというべきであるから、その被ったとする損害は前記規定による保護の範囲外にあると解するのが相当である。
もともと、旧商法266の3?後段は、無過失責任を前提としていたが、会社法429??ロでは無過失責任ではなくなった。そのため、本件のような訴えが現在なされた場合にどのような判断がなされるか不明である。裁判所は、会社四季報の記事に頼ることなく、他にも調査すべきだったという考えが根底にあるようである。しかし、学説の多くは、情報提供者の責任は相手が直接の取引者かどうかで変わるものではなく、本件のような直接の取引関係のない者であっても、「会社四季報」という定評のある文書を信頼して取引に入った者は第三者に含めて考えるべきであるとする。



82(111)弁護士である監査役の訴訟代理の可否 神戸サンセンタープラザ事件?
最判s61.2.18 監査役独立の原則との関係
参考条文:335?
■ 会社の監査役を兼ねる顧問弁護士は当該会社の訴訟を代表することができるか。「使用人」(335?)にあたるのか
⇒あたらない。ただし、最高裁での判断はなされていない。
■ 監査役に選任される者は、兼任の禁止される従前の地位を監査役選任決議の前に辞任することを要するか。

事案  顧問弁護士である者が株主総会で監査役に選任された。
これに対して、株主Xが当該株主総会の監査役選任決議の無効を主張した。
第一審  原告の請求一部認容
第二審  原告の控訴棄却
最高裁  原告の上告棄却。
【理由】
監査役が会社又は子会社の取締役又は支配人その他の使用人を兼ねることを得ないとする商法二七六条の規定は、弁護士の資格を有する監査役が特定の訴訟事件につき会社から委任を受けてその訴訟代理人となることまでを禁止するものではないと解するのが相当である。また、監査役は株主総会において選任され、監査役と会社との関係が委任に関する規定に従うものであり(商法二八〇条一項、二五四条一項、三項)、かつ、監査役は会社、取締役間の訴訟について会社を代表することとされており(同法二七五条ノ四)、監査役が会社ひいては全株主の利益のためにその職務権限を行使すべきものであることは所論のとおりであるけれども、そのことから直ちに、一株主が会社に対して提起した特定の訴訟につき弁護士の資格を有する監査役が会社から委任を受けてその訴訟代理人となることが双方代理にあたるものとはいえない。
* 最判h1.9.19参照
株式会社の監査役は会社又は子会社の取締役又は支配人その他の使用人を兼ねることができないものとされているが(商法二七六条)、監査役に選任される者が兼任の禁止される従前の地位を辞任することは、株主総会の監査役選任決議の効力発生要件ではないと解するのが相当である。
けだし、商法二七六条は監査役の欠格事由を定めたものではないと解すべきであるのみならず、監査役選任の効力は、株主総会における選任決議のみで生ずるものではなく、被選任者が就任を承諾することによって発生するものというべきであって、会社又は子会社の取締役又は支配人その他の使用人の地位にある者を監査役に選任する場合においても、その選任の効力が発生する時点までに取締役等の地位を辞任していれば、右兼任禁止規定に触れることにはならないからである。そして、監査役に選任された者が就任を承諾したときは、監査役との兼任が禁止される従前の地位を辞任したものと解すべきであるが、仮に監査役就任を承諾した者が事実上従前の地位を辞さなかったとしても、そのことは、監査役の任務懈怠による責任(商法二七七条、二八〇条一項、二六六条ノ三第一項)の原因となりうるのは格別、総会の選任決議の効力に影響を及ぼすものではないというべきである。




83 公正な会計慣行と取締役等の責任 当時は明確な会計基準がなかった
大阪高判h16.5.25
参考条文:431
■ 回収不能金があることについて、これを貸し倒れ引当金として計上(償却)しなかったこと
⇒償却義務はなく、違法とはいえない。
■ オプション取引による損失を貸借対照表に計上しなかったこと
⇒債券先物取引の会計処理基準を類推適用したことは、違法とまではいえない。
事案  一 本件は、甲事件・乙事件ともに、平成九年八月四日から平成一〇年三月二日までの間に株式会社日本債券信用銀行(以下「日債銀」という。)の株式を購入した控訴人らが、日債銀の平成八年四月一日から平成九年三月三一日までの期間(平成九年三月期、第六四期)を対象とする有価証券報告書(以下「六四期報告書」という。)には、〔1〕日債銀の原判決添付別紙関連会社目録記載の二〇社(以下「関連二〇社」という。)に対する貸付金の貸倒引当金が少なくとも1464億円過少計上され、〔2〕日債銀が保有していた八銘柄の上場株式(以下「本件株式」という。)についてのオプション取引(以下「本件オプション取引」という。)に関して、資産が約706億円過大計上され、株式評価損約706億円が計上されていない、という虚偽記載があると主張して、六四期報告書中財務諸表の記載が虚偽でない旨の監査証明をしたセンチュリー監査法人に対しては、日債銀の六四期報告書提出時の取締役であった被控訴人東郷重興、被控訴人窪田弘及び被控訴人岩城忠男に対しては、控訴人らの各購入額に相当する損害賠償及び各訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事件である。
なお、センチュリー監査法人の地位は、同法人が平成一二年四月三日に合併したことによって設立された被控訴人新日本監査法人が承継した。
要するに、虚偽記載を信用して株式を購入したが、虚偽であることを知っていれば購入しなかったのであり、購入金額相当の損害が生じたとして、取締役・経理担当社員・監査法人に損害賠償請求をしたもの。
第一審  原告の請求棄却
第二審  原告の控訴棄却
【貸し倒れ引当金の計上しなかったこと】
一 原告らは、平成九年三月三一日の時点で、関連二〇社に対する貸付金は、日債銀が償却(引当金を計上)したもののほか、少なくとも合計一四六四億円について、基本通達九―六―四による償却の要件を備えているから、これを償却(引当金の計上。債権償却特別勘定への繰入れの趣旨と解される。)することが義務であった旨主張する。
二 しかし、《証拠略》によっても、平成九年三月三一日の時点で、日債銀の関連二〇社に対する貸付金のうち、日債銀が償却した部分のほかに、少なくとも一四六四億円について、基本通達による償却の要件を備えていたことを認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
三 もっとも、原告らは、基本通達九―六―四による償却の要件を備えている債権については、基本通達九―六―四の定める金額によって償却(引当金を計上)することが義務であり、その金額の貸倒引当金を計上しないこと(債権償却特別勘定に繰り入れないこと)が、有価証券報告書に虚偽の記載をすることになる旨主張している。
 その趣旨は、基本通達自体によって、債権償却勘定への繰入れが義務付けられるというものではなく、基本通達の要件を満たす債権については、その定める金額の全額について償却をすることが、公正な会計慣行に合致する会計基準であるから、これによる義務があるというものと解される。
 商法二八五条ノ四第二項は、金銭債権の評価については「取り立ツルコト能ハザル見込額」を控除することを要するとし、企業会計原則も売掛金等の債権の貸借対照表価額は、債権金額又は取得価額から正常な貸倒見込額を控除したものとするとしているところ、これらの見込額は公正な会計慣行(一般に公正妥当と認められる企業会計の基準)によって判断されることになる。そして、その公正な会計慣行に合致する会計基準は、一般的に複数存在することもあり得るのであって、原告の主張する会計基準が、唯一絶対のものであることを認めるに足りる証拠はなく、基本通達九―六―四の要件を満たす債権については、全額を償却することが義務であるとまではいえない。
【オプション取引】
(三)ア 平成九年三月当時、保有株式の評価基準として低価法を採用している銀行において、ヘッジ目的でオプション取引を行ったときに、ヘッジ対象となる株式の評価をどうするかについて、明確な会計基準は存在していなかった。
 一方、債券先物取引の場合にはヘッジ取引の会計処理については、・・・低価法を適用するに当たっては、適用する時価を先物契約の変動額により修正し、修正した価額を時価として評価額を算定すべきなどとされている。
 債券先物取引の会計処理基準を、ヘッジ目的という点で共通し、平成九年三月当時、明確な会計基準が存在していないヘッジ目的のオプション取引において、類推適用することが公正な会計慣行に合致しないものとは言い難い。・・・
(三)ア 平成九年三月当時、保有株式の評価基準として低価法を採用している銀行において、ヘッジ目的でオプション取引を行ったときに、ヘッジ対象となる株式の評価をどうするかについて、明確な会計基準は存在していなかった。
 一方、債券先物取引の場合にはヘッジ取引の会計処理については、上記二(二)及び(三)のとおり、低価法を適用するに当たっては、適用する時価を先物契約の変動額により修正し、修正した価額を時価として評価額を算定すべきなどとされている。
 債券先物取引の会計処理基準を、ヘッジ目的という点で共通し、平成九年三月当時、明確な会計基準が存在していないヘッジ目的のオプション取引において、類推適用することが公正な会計慣行に合致しないものとは言い難い。
 そして、通常の先物取引においては、利益が出ても損失が出ても契約を履行する義務を有するのに対し、買建のオプション取引においては、購入者はオプションを行使する権利を有するのみであり、相場の状況が購入者に有利であれば権利を行使し、不利であれば権利を放棄することができるから、債券先物取引の会計処理基準を類推適用する際、「先物契約の変動額」を「オプション行使価額と時価」との差額と読み替えることが一概に不合理であるとはいえない。すなわち、債券先物取引の会計処理基準を類推適用すること、その際、保有株式の時価をオプションの行使価額によって修正した上で算定することが不合理であるとはいえない。
イ なお、原告らは、支払オプション料を資産計上した上で,本件オプション取引により本件株式の時価を簿価相当額に修正することを認めることは、支払オプション料相当額ないし時価と簿価との差額を二重計上することになるとも主張する。
 しかし、日債銀は、本件オプション取引によって、本件株式の時価が3101億円以上に上がった場合にオプション料を放棄しても利益が生じ、他方、本件株式の時価が1160億円以下に下がった場合にはオプションを行使し、又はオプションを譲渡することで利益を得ることが可能になるという地位を取得したといえるのであるから、前記処理を以て直ちに二重計上と評価することはできない。 
* 公正な会計慣行について、当時はなかったとされたが、現在はある。「金融商品に係る会計基準」
* やってはいけないことだからこそ、プットオプションがかかっていたのではないか?だから、やっていけないことだということはわかっていたのではないだろうか、とのこと(by中尾)
プットオプションとは、ある(金融)商品を将来の一定の期日までに、あらかじめ決められた特定の価格(権利行使価格)で売る権利を売買するオプション取引のこと。その逆を「コールオプション」という。
デリバティブとは、株式や債券、通貨(為替レート)、商品などの原資産の価格を基準として取引価値が決定される金融商品の総称。
ヘッジファンドとは、株、債券、為替、商品、不動産、デリバティブなど市場性のある金融商品などの相場動向を他社に先駆けて察知して大量の資金を投下し、予測した相場動向が訪れればその先の相場動向を読んで再投資する投機筋のファンドのこと。
ハイリターンを短期間で稼ぐためにITシステムや政治ネットワークを駆使してリスクを最小化することに腐心しているといわれる。
その豊富な資金量と短期的な投資行動から、相場形成に非常に大きな影響力を与えている。当初は、相場下落リスクを空売りなどの手法でヘッジ(危険回避)することを狙いとしたため、「ヘッジ」ファンドと呼ばれている。



84 帳簿閲覧請求の対象となる会計帳簿・資料の意義 どんな文書が含まれているのか。
横浜地裁h3.4.19
参考条文:閲覧請求権433、取締役の違法行為差止請求権360、440
■ 「会計ノ帳簿及書類」(会433では「会計帳簿又はこれに関する資料))に該当するもの
⇒総勘定元帳、現金出納帳、手形小切手元帳、売上明細補助簿、会計用伝票
事案  XはYの発行済株式総数の1/10以上の株式を有する株主であるが、昭和六三年七月と八月、Yに対し、それぞれ理由を付した書面をもって、本判決添付別紙目録(一)の1ないし12の帳簿、書類(以下「本件文書」という)の閲覧請求をしたが、右閲覧請求が商法二九三条の七第一号に該当することなどの理由によりこれを拒絶したため、本訴において、本件文書の閲覧、謄写を請求した
 これに対し、Yは、本件文書中、法人税確定申告書、契約書、当座預金照会表、手形帳・小切手帳控え、普通預金通帳などは、商法二九三条の六に規定する閲覧謄写請求権の対象となる「会計ノ帳簿及書類」に当たらないと反論するとともに、Xの閲覧謄写請求は、代表取締役を失脚させ、Yの信用を失墜させることを狙いとするもので、会社の業務の運営及び株主共同の利益を害するためにするものであるから、商法二九三条の七第一号に該当し、許されない、などと主張した。
第一審  一部認容、一部棄却(確定)。右帳簿、書類の閲覧謄写を求める限度で本件請求を認容した。
【理由】
商法二九三条の六(会社433)にいう「会計ノ帳簿」とは、商法三二条及び企業会計原則に基づけば、通常会計学上の仕訳帳、元帳及び補助簿を意味し、「会計ノ書類」とは、会計帳簿作成に当たり直接の資料となった書類、その他会計帳簿を実質的に補充する書類を意味するものと解するのが相当である
 本件文書について具体的に検討したうえ、その性質上、商法二九三条の六所定の「会計ノ帳簿及書類」に該当するものは、総勘定元帳、現金出納帳、手形小切手元帳、売上明細補助簿、会計用伝票であるとして、かつ、Xの閲覧謄写請求が会社の業務運営及び株主共同の利益を害する目的に当たるものとは認められない
本判決は、商法二九三条の六にいう「会計ノ帳簿」とは、商法三二条及び企業会計原則に基づけば、通常会計学上の仕訳帳、元帳及び補助簿を意味し、「会計ノ書類」とは、会計帳簿作成に当たり直接の資料となった書類、その他会計帳簿を実質的に補充する書類を意味するものと解するのが相当であるとの判断を示した。
 そして、本判決は、本件文書について具体的に検討したうえ、その性質上、商法二九三条の六所定の「会計ノ帳簿及書類」に該当するものは、総勘定元帳、現金出納帳、手形小切手元帳、売上明細補助簿、会計用伝票であるとして、かつ、Xの閲覧謄写請求が会社の業務運営及び株主共同の利益を害する目的に当たるものとは認められないとし、右帳簿、書類の閲覧謄写を求める限度で本件請求を認容した。




85 帳簿閲覧請求の要件
最判h16.7.1
参考条文:433
■ 帳簿閲覧請求するにあたって、請求の理由(会社433?)はどの程度具体的に記載しなければならないか。
⇒閲覧謄写請求の理由は具体的に記載されなければならないが、理由として記載された事由について、請求の理由を基礎付ける事実が客観的に存在することについての立証を要しない。
事案  1 本件は,株主及び有限会社の社員が,会社に対し,会計帳簿等の閲覧謄写を求めた事件である。
 2 事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) Y1は,有限会社であり,Y2〜Y6は,定款で株式の譲渡につき制限を設けた株式会社である。Yらは,いずれも,化粧品を主力商品とする企業グループに属している。
 (2) Xの亡夫Aは,Y1の持分を総出資口数の38.4%,Y2〜Y6の株式を発行済株式総数の4.6〜45%有していたが,死亡し,これらの株式及び持分(以下「本件株式等」という。)は,Xを含むAの法定相続人4名による遺産の準共有の状態となった。Xの準共有持分は,4分の3である。Xは,Yらに対し,本件株式等について株主又は社員の権利を行使すべき者にXを選定した旨の通知をした。
 (3) Xは,Yらに対し,本件会計帳簿等の閲覧謄写を請求し,その理由として,次のとおり書面に記載した。
 ア 理由?(本件貸付けに係る調査の必要)
 Yらの企業グループに属するB社は,Y1から99億5000万円,Y2から317億7200万円,Y3から71億2000万円,Y4から7億円の各無担保融資(以下,これらを「本件貸付け」と総称する。)を受けていた。しかるに,B社は,平成13年9月17日,Y2の代表取締役であるCに対し,無担保で72億4775万円を融資したため,その財務状況が悪化し,本件貸付けの回収が不可能となるおそれが生じた。Y1〜Y4のした本件貸付けは,違法,不当なものであり,Xは,適正な監視監督を行うために,Y1〜Y4につき,本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要がある。
 イ 理由?(本件株式等の時価算定の必要)
 Xは,遺産分割協議及び相続税支払のための売却に備え,相続により取得した本件株式等の時価を適正に算定するために,本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要がある。
 ウ 理由?(本件美術品取得の調査の必要)
 平成12年度の決算期時点において,Y1は簿価154億9229万5942円相当の,Y2は簿価47億8117万7467円相当の美術品(以下,これらを「本件美術品」と総称する。)を所有し,いずれも,Yらの企業グループに属するD財団法人に寄託している。Y1及びY2がこのような多額の美術品を非営利目的で取得することは会社財産を著しく減少させ,会社ひいては株主,社員に回復できない損害を被らせるおそれが高いから,本件美術品の内容・数量,購入された時期・金額,購入の相手方等を調査するため,Y1及びY2につき,本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要がある。
 エ 理由?(本件株式譲渡に係る調査の必要)
 Y1は,平成12年12月11日,Cに対し,Y1の有するB社の株式73万5000株を代金合計73万5000円で売却した。本件株式譲渡は,不当な安値でされたものであり,本件株式譲渡に係る会計処理の内容及びB社株の取得価格等を調査するため,Y1につき,本件会計帳簿等の閲覧謄写をする必要がある。
第一審  原告の請求棄却
第二審  原告の控訴棄却
【理由】
(1)株主等が会計帳簿等の閲覧謄写を請求する場合には,当該会計帳簿等の閲覧謄写を求める理由を具体的に示すことが必要であり,かつ,その理由を基礎付ける事実が客観的に存在していることが必要であるとした上,本件においては,Xが違法と主張する会社の行為について,違法であることを基礎付ける事実が客観的に存在するとは認められない,(2)本件株式等の時価算定目的でする本件会計帳簿等の閲覧謄写請求は,株主等の地位を離れた純粋に個人的な目的でされたものである,(3)よって,理由?〜?をもってする本件会計帳簿等の閲覧謄写請求は,商法293条ノ7第1号前段(会社433???)の拒絶事由に該当し許されない
最高裁  破棄差戻
【理由】
(1)商法及び有限会社法は,株主又は社員が会社に対し会計帳簿等の閲覧謄写を請求するための要件として,株式会社については総株主の議決権の100分の3以上,有限会社については総社員の議決権の10分の1以上を有することのほか,理由を付した書面をもって請求をすることを要求している(商法293条ノ6第1項,第2項,有限会社法44条ノ2第1項,46条本文)。そして,上記の請求の理由は,具体的に記載されなければならないが,上記の請求をするための要件として,その記載された請求の理由を基礎付ける事実が客観的に存在することについての立証を要すると解すべき法的根拠はない。・・・
理由(2)について、株式の譲渡につき定款で制限を設けている株式会社又は有限会社において,その有する株式又は持分を他に譲渡しようとする株主又は社員が,上記の手続に適切に対処するため,上記株式等の適正な価格を算定する目的でした会計帳簿等の閲覧謄写請求は,特段の事情が存しない限り,株主等の権利の確保又は行使に関して調査をするために行われたものであって,第1号所定の拒絶事由に該当しないものと解するのが相当である。 
* 本件で認められたのは閉鎖会社であったことが影響しているだろうとのこと(by中尾)
* 会計帳簿等の閲覧謄写請求権は,共益権と考えるべきものと思われるが,共益権も株主の経済的利益の追求のために認められた権利であり,株主自らの経済的利益の追求のために行使することが許されるものであるから,会計帳簿等の閲覧謄写請求権が共益権であることをもって,直ちに,これを共益権行使目的のものでなければ許されないとすることはできない

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