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会社法判例百選コミュの21〜25

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21(24)従業員持ち株制度における退職時の株式譲渡に関する合意の効力
最判h7.4.25
条文:127、民90
■ 閉鎖会社の従業員持株制度で会社が当事者となって締結する株式譲渡制限契約は適法か
⇒公序良俗に反しない限り有効
■ 閉鎖会社の従業員持株制度において取得価格と同額で売却すべき旨を定める合意は有効か
⇒公序良俗に反する契約内容ではないので、有効
事案 (一)被上告会社は、その定款によって株式の譲渡制限を規定している株式会社であるところ、昭和四三年ころ、従業員に被上告会社の株式を取得させることにより、従業員の財産形成とともに、会社との一体感を強めてその発展に寄与させることを目的として、いわゆる従業員持株制度を導入した、
(二)上告人らは、いずれも被上告会社の従業員であったが、昭和四三年ころから昭和五四年七月三日にかけて、右制度の趣旨、内容を了解した上で被上告会社の株式を額面額で取得し、その際、被上告会社との間で、退職に際しては、同制度に基づいて取得した株式を額面額で取締役会の指定する者に譲渡する旨の合意(以下「本件合意」という。)をした、
(三)昭和六一年五月三日、被上告会社の全従業員約四〇名中営業担当の二三名の従業員のうち、上告人らを含む一二名が退職したが、被上告会社は、右の一斉退職等に伴う混乱等のため、取締役会において、上告人らの有する株式の譲受人を直ちには指定せず、昭和六三年七月一一日に譲受人としてHを指定し、同人は、買受けの意思を明らかにした上、同月二〇日から二二日にかけてその代金額を供託した、
(四)被上告会社は、昭和四三年度以降、当初はおおむね一五ないし三〇パーセント、昭和五六年度から昭和六〇年度は八パーセントの割合による株式配当を行っていた(昭和六一年度は株式配当をしていないが、これは右の一斉退職等に伴って営業上壊滅的な打撃を受けたためである。)
50円じゃなくて、もっと高く売りたい、という主張。
第一審  請求棄却
第二審  控訴棄却
最高裁  上告棄却。原告敗訴。
【理由】
 右事実関係及び原審の説示するところに照らせば、本件合意は、商法二〇四条一項(会社127)に違反するものではなく、公序良俗にも反しないから有効であり、被上告会社の取締役会が、本件合意に基づく譲受人としてHを指定し、同人が買受けの意思を明らかにしたことにより、上告人らは被上告会社の株式を喪失したとして、株券の発行を求める上告人らの請求を棄却すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができる。
* 本件合意のように、キャピタルゲインの取得を否定するものは無効であるとするのが学説の大勢であるが、解説によると、合意の内容がもともと配当のみを目的とするものであったならば、不当とは言えないのではないだろうか?とのこと。
* 本件の契約の問題点
? 譲渡の相手方が、取締役会の指定する者に特定される。⇒これ自体は、会社法でも劣後的に扱われており、特に重視すべき利益ではないが、本件のように、長期間放置されていたのにもかかわらず、その後に行使されるような場合は、特定権が消滅したものと考えるべき。
? 退職という将来における一定の事由の発生により、株式の売り渡しを強制される⇒会社127に反しない。投下資本回収の機会が得られたものとみるべき。株主の利益となる。
? 将来における譲渡の対価があらかじめ固定されている。⇒譲渡価格の算定方法をあらかじめ決定しておくこと自体は合理的。ただ、それが合理的な算定方法でなければ有効とならない。



22 事故株券の売買
大阪高判h12.7.31
争点
?右東証申合が一般顧客を拘束し、これに基づき、Xが流通株券との交換又は買戻しの義務を負うか:義務を負う。
?Yが右買戻しに支出した費用は、自己に過失なく委任事務を処理するためにYが受けた損害にあたるか:あたる。
事案  証券会社であるYは、Xの委託により株式を売買したが、Xから引渡しを受けた株券は盗難届が出されている事故株券であることが判明した。
ところで、Yが会員である東京証券取引所における取引に関する「事故株券及び権利の引渡未済の処理に関する申合」(昭和二四年一二月一〇日実施)では、株式売買において事故株券であることが判明したときは、渡方会員は流通株券との交換又は株券の買戻しが義務付けられているので、Yは、Xに対し、右株券について流通株券との交換又は買戻しを請求したが、Xはこれに応じなかった。
そこで、Yは、右株券を買い戻し、Xに対し、買戻金額からXに支払うべき金員を差し引いた金員を請求したところ、XはYに対し、右買戻しによる立替金支払債務等が存在しないことの確認及びYに預託した株券等の返還を求めた。
第一審  買戻し代金相当額から寄託金額を差し引いた金額を超える部分を認容した。
【理由】
右東証申合が非会員である一般顧客を拘束するとの商慣習が成立しているとは認められないが、売却時点においてYが盗難株券であることをチェックできなかったことに過失はないと認められるから、買戻しに要した費用は自己に過失なく受けた損害であると認められ、YはXに対し、民法六五〇条三項に基づく損害賠償請求権を有する
第二審  控訴棄却
【争点?】
 証券取引所の会員である証券会社は、商法上の問屋であり、顧客から有価証券の売買の委託を受けた場合、自己の名において顧客の計算で売買をすることになる(商法五五一条)。
したがって、第三者に対し売主又は買主として権利を有し義務を負うのは、証券会社であり(同法五五二条一項)、委託者である顧客は、第三者とは直接の関係に立たないが、商法は、売買が委託者の計算でなされることを考慮して、問屋と委託者との間において代理に関する規定を準用している(同条二項)から、証券会社と顧客との関係では、売買の効果は、顧客に帰属するものと解される。
 ところで、東証申合は、顧客を拘束するものではないが、証券取引所の会員間の申合であり、会員間では商慣習となっているものと解されるから、東証申合に基づき、事故株券である本件株券の処理がなされることになる。
そこで、東証申合によれば、渡方会員である第一審被告は、受方会員から本件株券を買い戻すべき義務を負うことになり、その履行として、本件株券を買い戻したものである。そして、本件株券は、証券取引所の開設する市場において取引されるのであるから、右市場において商慣習となっている申合に従って処理されるべきは当然であるところ、第一審被告は、委任契約に基づき、本件株券を売買したものの、東証申合に基づき、本件株券を買い戻さざるを得なくなったものであるから、右買戻しは、委任事務の処理の一環と認められる。
そうすると、第一審被告は、自己の名をもって第一審原告のために本件株券を買い戻したというべきであるから、前記代理の規定に基づき、本件株券の所有権は、第一審被告と第一審原告との間では、第一審原告に帰属するというべきである。
【争点?】
 受任者が、委託者に対し、民法六五〇条三項に基づく損害賠償請求をするための要件事実は、委任契約の存在、受任者が委託事務を処理するに当たって損害が生じたこと、受任者が委任事務を処理するに当たって過失がなかったことであり、委任者の過失や委任者が損害の発生を予見したか否かは要件ではないと解される。
 これを本件についてみるに、第一審被告は、第一審原告から本件株券の売買の委託を受け、これを売却したにもかかわらず、本件株券が盗難株券であったため、買戻義務を負担してその代金を支払い、しかも、前述したとおり、本件株券の所有権が第一審原告に帰属するのであるから、委任事務を処理するために損害を被ったものというべきである。そして、第一審被告が損害を受けたことにつき過失がないことは、前述したとおりである(原判決一九頁四行目から六行目まで)から,第一審原告は、第一審被告に対し、民法六五〇条三項に基づき、損害賠償義務を負うことになる。
 第一審原告は、本件株券が一般民事法上では何ら瑕疵のない有効な流通株券であるから、一般民事法によれば、何ら責任を追及される理由はないと主張するが、前述したとおり、民法六五〇条三項に基づく損害賠償義務は、無過失責任である。
また、仮に、本件株券が一般民事法上では瑕疵がないとしても、前述したとおり、本件株券は、証券取引所の開設する市場において取引されるのであるから、右市場における申合に従って取引されるは当然であるところ、前述したとおり、東証申合では、渡方会員である第一審被告が盗難株券である本件株券を売買した場合、事故株券であるとして買戻義務を負担することになり、これにより第一審被告が損害を被った以上、第一審原告は、その損害を賠償すべき義務があるというべきである。 
Y(被告)に過失なければよい。




23(20)略式質の物上代位の効力 殖産住宅相互事件
東京高判s56.3.30
条文:151?、185
1 略式質権者が物上代位権を行使する際に、目的物を差し押さえることを要するか。:必要
2 利益配当請求権に略式質の物上代位が及ぶのか:略式質の効果は利益配当請求権には及ばない。
事案  新株の無償交付、利益配当先わからず、供託した。
第一審  原告の請求一部認容
第二審  被告の控訴・原告の附帯控訴棄却
【無償交付による新株等交付請求権の物上代位の対抗要件】
 従つて、右の準備金の資本組入による新株の発行の場合における新株等交付請求権についても、親株の質権者がその請求権につき質権を主張するための会社及び第三者に対する対抗要件は、その他の場合における新株等交付請求権についてと同様に、その請求権自体についての差押えを要せず、親株券の占有のみで足りると解するのが相当である。
そして、以上のような見解を採つたとしても、更に次の5で述べるような見解を併せて採用するならば、右見解のために会社の事務処理の便宜が損なわれることはありえないというべきであるし、また、商法第二〇八条により物上代位の目的とされている親株主又は旧株主の各種の権利はいずれも基本権たる親株又は旧株自体の変形物たる権利であつて、親株又は旧株につき質権が設定されている場合には、それが略式質にすぎないときでも、その質権の効力がこれに及び、その被担保債権の優先弁済に充てられることが当初から予定されている権利であることを考えれば、右見解のために会社以外の第三者が不当、不測の損害を受けることもありえないものというべきである。
5 しかし、以上のような見解を採つたとしても、商法第二九三条の三所定の準備金の資本組入による新株の発行の場合における新株等交付請求権については、現行法上、親株主がその権利を行使する要件としては、会社に対し親株券を呈示ないし提出することは必要とされておらず、むしろ、株主名簿上の記載を基準として新株(新株券)又は金員が交付されることになつている以上、親株の質権者が右新株等交付請求権について質権を実行する以前に、新株等が株主名簿上の株主に交付され、その株主の一般財産に混入してしまえば、右新株等交付請求権も消滅するに至ることは認めざるをえないから、そのような場合には、親株券を継続して占有している親株の質権者であつても、もはや右新株等交付請求権について質権を実行することは不可能になるといわなければならない。そこで、そのような事態が発生するのを防止するためには、新株等が株主名簿上の株主に交付され、その株主の一般財産に混入する以前に、右新株等交付請求権について差押えをなし、その権利を保全する必要があるというべきである。
しかしながら、この差押えは、あくまでも右のような事態が発生するのを防止するための手段であるにすぎず、右新株等交付請求権について質権を主張するための会社及び第三者に対する対抗要件としての性格を有するものではないというべきであるから、その差押えは必ずしも他の債権者による差押えに先立つてなすことを要せず、また、その差押えのためには債務名義も要しないと解すべきである。
【略式質の物上代位と利益配当請求権】⇒会社法でかわった。
商法第二〇七条及び第二〇九条の規定を総合して見れば、株式の略式質権とは、有価証券たる株券に表章されている権利自体を目的とする質権であり、その権利自体の有する交換価値のみから被担保債権の優先弁済を受けることを内容とする質権であるところ、有価証券たる株券に表章されている権利は、広義の株主の権利のうち基本権たる株式自体にほかならないから、略式質権とは、広義の株主の権利のうち基本権たる株式自体を目的とする質権であり、そのような株式自体の有する交換価値のみから被担保債権の優先弁済を受けることを内容とする質権であるというべきである。
そして、そうであるからこそまた、商法第二〇八条は、有価証券たる株券に表章されている基本権たる株式自体の消滅、変容、移転等に伴つて発生する権利であり、いわば基本権たる株式自体の変形物たる権利についても略式質権の物上代位的効力が及ぶことを明らかにしたものというべきである。
しかし、その反面、広義の株主の権利に属する権利であつても、有価証券たる株券に表章されていない権利、すなわち、基本権たる株式自体及びその変形物たる権利を除くその余の支分権的権利については、略式質権の物上代位的効力は及ばず、商法第二〇九条所定の登録質権を設定して、はじめて質権の効力を及ぼしうるものと解すべきである(もつとも、登録質権を設定しても、議決権等の非財産権的権利には質権の効力は及ばない。)。
* 本判決は、利益配当請求権に及ばない理由を、登録質との違いに求めた。
* 無償交付は利益配当のかわりにされることがある。
* 学説はこの判例に批判的
* 物上代位について、第三者保護説をとると、差押を要することとなりそう。




24 違法な自己株式取得による会社の損害
大阪地判h15.3.5
取得価格―時価=損害
■ 甲事件の主な争点
? 本件自己株式の取得が消却目的でされたものか(平成13年法律第79号による改正前の商法210条1号参照)
? 本件自己株式取得による損害額はいくらであるか
■ 乙事件の主な争点は
? 本件新株発行について,平成13年法律第79号による改正前の商法280条ノ2第2項に定める株主総会決議がされたか
? 本件新株発行についての株主総会決議の手続上の瑕疵と損害との間の因果関係
? 本件新株発行について善管注意義務違反が認められるか
事案  甲事件は,Aが平成10年4月1日に自己の株式5万8000株(以下「本件自己株式」という。)を取得したことについて,同社の株主である原告が,同社の代表取締役兼取締役又は取締役であった甲事件被告らに対し,同日当時施行されていた商法(以下「平成10年施行商法」という。)210条に違反しており,同社にその取得代金相当額の損害を被らせたと主張して,商法266条1項5号に基づき,同損害及びこれに対する同被告らに訴状が送達された日の後である平成12年11月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,同社に賠償するよう求めた株主代表訴訟である。
 また,乙事件は,Aが平成12年8月9日にA株式会社役員持株会(以下「役員持株会」という。)及びA株式会社従業員持株会(以下「従業員持株会」という。)に対して特に有利な発行価額をもって新株発行をした(以下「本件新株発行」という。)ことについて,同社の株主である原告が,代表取締役兼取締役又は取締役である乙事件被告らに対し,主位的に,同年3月25日当時施行されていた商法(以下「平成12年施行商法」という。)280条ノ2第2項又は第3項に違反している旨,予備的に,取締役としての善管注意義務(商法254条3項,民法644条)に違反している旨各主張した上,その結果同社に公正な発行価額と払込金額の差額に相当する損害を被らせたと主張して,商法266条1項5号に基づき,同損害及びこれに対する同被告らに「請求の趣旨の拡張の申立及び請求の原因の追加の申立」と題する書面が送達された日の翌日である平成13年1月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,同社に賠償するよう求めた株主代表訴訟である。
第一審  一部認容。控訴。
【甲事件】
 本判決は,?本件自己株式の取得に関する株主総会議事録,取締役会議事録等には,本件自己株式の取得が消却目的であると記載されていないこと,?大日本除蟲菊は,本件自己株式の取得後4年半以上これを消却していないこと(平成13年法律第79号による改正前の商法211条参照),?大日本除蟲菊は,本件自己株式を貸借対照表の資産の部に計上していたこと,?大日本除蟲菊は,本件自己株式に対して配当を実施したほか,新株を割り当てたことなどから,大日本除蟲菊が消却目的で本件自己株式を取得したものとは認められない旨判示した。
 そして,本判決は,損害額について,本件自己株式の取得価額から取得時点における本件自己株式の時価を減算した額であると解するのが相当であるとした上で,本件自己株式の取得時点における時価を,鑑定の結果に従って8億3520万円(1株当たり1万4400円)と認定し,取得価額との差額2億6274万円が損害額であると認定した。
【乙事件】
大日本除蟲菊はいわゆる譲渡制限会社であるから,第三者割当ての新株発行を行うには株主総会の特別決議を経ることを要したものであり(平成13年法律第79号による改正前の商法280条ノ5ノ2第1項),現に本件でも特別決議が行われた。
本判決は,前記主な争点?について,当該株主総会に至る経緯等の事実関係を認定し,議決権のある株式総数の約68.56パーセントを保有する株主らが,新株の被割当者,割当株式数及び発行価額を認識した上で当該新株発行の議案に賛成していることから,実質的には,株主以外の第三者に対する新株の有利発行が決議されたものと評価することができるとした。そして,上記事実関係に照らせば,本件新株発行についての株主総会決議の手続上の瑕疵の有無に関わりなく,特別決議が成立し,本件新株発行が実行されたものと推認されるとして,上記手続上の瑕疵と損害との間の因果関係を否定し(主な争点?),原告の主位的主張を斥けた。
さらに,前記主な争点?については,商法が第三者に対する新株の有利発行について株主総会の特別決議を必要とした趣旨は,特別決議を必要とする限度まで既存の株主の経済的利益を保護するところにあるから,「適法な特別決議を経た場合には,株主以外の第三者に対する新株の発行価額が公正な発行価額を下回る価額であり,既存の株主が保有していた持分価値の一部が新たな株主に移転することになるとしても,当該新株発行を行った取締役が善管注意義務違反の責を負うことはないものと解するのが相当である。」として,原告の予備的主張(乙事件の争点?)も斥けた。
* 本件のように取得した自己株式を口頭弁論終結時においても保有しているという事案に関する裁判例は公刊物上見当たらない。この場合,原告主張のように,取得価額全額が損害となる見解も存する。しかし,本判決は,自己株式は,会計上は資産性を否定されるとしても,経済的には資産としての価値を有するという理解に立って,自己株式の時価を損害額から控除することを認めたものと思われる。
* 本件の控訴審判決(大阪高判平16.4.27)は,おおむね本判決を維持したが,甲事件について,本件自己株式の取得時点の時価を1株当たり1万5700円と認定した結果,認容額を1億8734万円と変更した。




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25(35)100%子会社による親会社株式取得と親会社取締役の責任
最判h5.9.9 三井鉱山株主代表訴訟事件
■ 百%子会社が親会社の株式を取得することが自己株式の取得に当たるか
⇒昭和五六年商法改正前は、子会社による親会社の株式取得を禁止する明文の規定がなかった。しかし、実質的には、百%子会社が親会社の株式を取得することは、親会社自身による自己株式取得にあたる。
■ 親会社取締役が商法二六六条一項により親会社に賠償すべき損害額はいくらか
⇒差損金分。本件では約35億円。
事案   三井鉱山は、昭和五〇年に、業績建て直しのため、関連会社であるセメント会社の吸収合併を計画し、合併覚書調印直前に至ったところ、三井鉱山株式の約二六%を有する大株主が合併に反対の意向を示唆して、同人の有する三井鉱山株式の高値買取要求を行った。合併には、株主総会での過半数の出席、三分の二の賛成が必要であり(商四〇八条、三四三条)、議決が危ぶまれた。同年一二月三日に三井鉱山の常務会が開催され、出席した上告人ら六名は、百%子会社である三井三池開発に右大株主の要求価格で三井鉱山株式を買い取らせ、その後に時価で三井グループ各社に転売することを決定した。上告人ら六名のうち、五名は代表取締役で常務会メンバーであり、残り一名は常務会メンバーではなかったが取締役総務部長で本件の担当者であった。三井鉱山の指示を受けた三井三池開発は、同年一二月二五日に右大株主から三井鉱山株式を代金八二億一五〇〇万円で買い受け、昭和五一年一月から三月にかけて三井グループ各社に代金合計四六億六三四〇万円で転売し、差損金三五億五一六〇万円の損失を被った。
 原告は、上告人ら六名を含む取締役一八名を被告として、百%子会社による親会社株式の取得は違法な自己株式の取得に当たり、これにより三井鉱山に売買差損三五億円余の損害が生じたと主張し、内金一億円を三井鉱山に支払うことを求めた。
 なお、原告は、本件株式買取から二年以上経過した昭和五三年三月に三井鉱山株式一〇〇〇株を取得し、同年一一月八日に本件株主代表訴訟を提起した。取締役の法令違反行為当時に株主であることは、現行法上は株主代表訴訟提起のための要件ではない。
第一審  原告の請求認容
本件株式買取に関与した上告人ら六名に対して三井鉱山に損害賠償として一億円を支払うことを命じ、関与した事実の証明のないその余の被告らに対する請求を棄却した。
第二審  被告らの控訴棄却
最高裁  被告らの上告棄却。
【原告の原告適格】
被上告人の本件訴訟の提起が権利の濫用に当たるものではない
【子会社による親会社の株式取得】
甲株式会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙株式会社の株式を取得することは、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二一〇条に定める除外事由のある場合又はそれが無償によるものであるなど特段の事情のある場合を除き、同条により許されないものと解すべきである。
けだし、このような甲株式会社による乙株式会社の株式の取得は、乙株式会社が自社の株式を取得する場合と同様の弊害を生じるおそれがある上、このような株式の取得を禁止しないと、同条の規制が右の関係にある甲株式会社を利用することにより潜脱されるおそれがあるからである。
【子会社の損害額】
2 以上の事実関係によれば、三池開発の資産は、本件株式の買入価格八二億一五〇〇万円と売渡価格四六億六三四〇万円との差額に相当する三五億五一六〇万円減少しているのであるから、他に特段の主張立証のない本件においては、三池開発の全株式を有する三井鉱山は同額に相当する資産の減少を来しこれと同額の損害を受けたものというべきである。また、三井鉱山の受けた右損害と三池開発が本件株式を取得したこととの間に相当因果関係があることも明らかである。したがって、本件株式の取得により三井鉱山が三五億五一六〇万円の損害を受けたとする原審の判断は、結論において是認することができる。
【親会社の損害はいくらか】
右事実関係の下においては、上告人らの主張する利益は本件株式の取得との間に相当因果関係がないから三井鉱山の損害から控除すべきでないとした原審の判断は、正当として是認することができる。
* A社の株主からD社に対してなされた



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