このクリーチャー・プロジェクトは、狂った側面を持ってはいるが、ヒップ・ホップをその音楽としているのは決して偶然ではない。ゲットーに端を発するヒップ・ホップは、政治的メッセージを表現する格好の形式だからだ。こうしてパペットマスターズは、『Midi Mighty Moe』で、「You haven’t given them the attention they deserve(君たちは、物にふさわしい心づかいをしてこなかった)」と物に対する意識の向上を訴えかける。蛙のフロッガは、「30分もコーヒー・カップを見つめていれば、君の精神はカップと溶け合ってしまう。変容が起こるんだ。君はカップになるんだ!この術はパペットにしかできないというわけではない」と請け合う。
「Yeah, bring em on」とミスター・マロークは、観客に自分の人形をコンサートに持ってくるよう呼びかける。政治勢力として行動できる人形コミュニティをつくるのが目的なのだ。コンサートに人形に来てほしいか、それとも人間に来てほしいか、との質問を受けたミスター・マロークは、「Ahhh, you humans...(ああ、あなたがた人間ですよ)」とだけ答えた。彼とその同志にとって、われわれ人間は「クリーチャー」宇宙の添え物にすぎないのである。人間の行動はあまりに予測可能なのだ。「君たち人間にとっては、あれかこれしかない。いつも二者択一だ。だが、その中間にすごくたくさんのことがあるんだ」。これを強調するため、彼は突然、「You better listen to what we’ve got to say, without delay, you better listen, don’t wanna missin’ the word to spread, like that!(俺たちのいうことに耳を傾けたほうがいい。今すぐ聞いたほうがいい。ここからひろがるメッセージを聞き逃すな)」とラップしはじめた。