□ SAICOBAB 曰く、「SAICOBABA(サイコババ)は最古の婆さんのバンドで満月に演奏され、SAICOBAB(サイコバブ)は最古の赤ちゃんのバンドで新月に演奏される」。SAICOBABAは、ボアダムス / OOIOOのYOSHIMIと日本屈指のシタール奏者、ヨシダダイキチの二人を軸に、初期には現ASA-CHANG&巡礼のU-zhaan、以降もATR、YO2RO、山北健一らをライブ・メンバーに迎えてきた不定形プロジェクト。民族音楽や現代音楽、アンビエントを通過した地点の音色を響かせ、01年1月1日に行われた“eep”でのライブ盤『live eep』を始め、これまでに5枚のアルバムを発表。一方、YOSHIMIとヨシダダイキチのデュオで、SAICOBABAよりもさらに実験的な指向性を持つのがSAICOBABだ。同名義では「奇跡の演奏」と絶賛された、01年11月に青山CAYで行われた“OVA”でのライブを収録した『Live in OVA at Aoyama cay』をリリース。08年からはこのデュオに、ソニック・ユースにも参加してきた実験音楽家、ジム・オルークが合流している。完全インプロヴィゼーションとは思えない、しかし即興だからこそ到達できる絶妙なタイミングと間で繰り広げられるピュアな音楽は、生命のスープのなかをゆらゆらと漂う安心感と、原生林に囲まれた大地で踊り語らう楽しさに満ちている。
□ Jim O'Rourke 1969年生、シカゴ出身。ギタリスト / プロデューサー / コンポーザー / エンジニア。若くして即興演奏の大家=デレク・ベイリーのカンパニーに招待され、ヘンリー・カイザーとのデュオ作を発表するなど、フリー・インプロヴィゼーション〜ノイズ・エクスペリメンタルの領域で頭角を表す。その一方で、ヴァン・ダイク・パークスやジャック・ニッチェなど「アメリカーナ」の系譜に連なる音楽への憧憬をソロ・アルバム『バッド・タイミング』『ユリイカ』で露わにしたり、ミニマル・ミュージックや現代音楽からの影響を伺わせる作品を制作したりと、乱脈といってもいいほど多彩な活動を展開。プロデューサーとして過去に関わったのは、ジョン・フェイフィ、ファウスト、サム・プレコップ、くるり、サンガツ、ステレオラブ、ハイラマズなど。リミキサーとしても、トータス、さかな、パステルズ、マイス・パレードなどを手がけている。サイド・プロジェクトには、デヴィッド・グラブスとのガスター・デル・ソル(既に解散)や、ウィルコのジェフ・トゥイーディー、グレン・コッチェとのルース・ファー、サーストン・ムーア、マッツ・グスタフソンとのディスカホリック・アノニマス・トリオなど多数あり、そのどれもが異なる相貌を見せる。また近年は、ソニック・ユースのメンバーとしても活躍したり、映画『スクール・オブ・ロック』の音楽コンサルタントを務めたりも。日本の音楽への造詣は深く、対談歴もある戸川純や、メルツバウ、はちみつぱいなどを敬愛してやまない。昨今は日本の60〜70年代のカウンター・カルチャーに強い興味と関心を示し、若松孝二や足立正生、大島渚などの映画に大きな刺激を受けている。