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開催終了第九回卓

詳細

2013年02月03日 02:21 更新

 イベントの編集は日付の再設定がないとできないようですので、日付がおかしなことになっています。ご理解ください。


 第九話『Mysterious Buyer 4 〜神威〜』 

・あらすじ

 孤児院の訪問に端を発した物語は、バロートの制圧という危機の入り口だった。
 冒険者達は己の無力を知り、試練を乗り越えて帰ってきた。

 訪れるのは戦いの時。
 囚われた人々を救う為、今、リヴルスはこれまでで最も困難な作戦に赴く。


《作戦会議:War or Rescue?》
 バロート市街の地図を前に、潜入作戦を詰めるライン首脳陣とリヴルス。
 突入に辺り幾つかのプラン変更があったことで、それを考慮した相談である。

 最大の変更点は1つ。
「初期段階で投入される潜入部隊はリヴルスのみとする」
 ということであった。

 バロートに土地勘があり、見合う力量をもった冒険者。

 これを満たす冒険者の数は多くなく。
 複数のチームを使う場合、リヴルスを一人ずつバラして再編成する必要があるのではないか、という見解が出たためだ。
 これが好手か悪手かを勘案した結果、一番土地勘のあるチームをばらして慣れない面々に組み込むよりも… というのがライン首脳陣の結論だった。

 また、コハクの英雄的行動により連れ出されてきたバロート自警団の一員“モーブ・エー”によって齎された最新の情報。

・街は完全に制圧されたわけではないようだ。その証拠に壁から出てきた紫の敵兵が活発な哨戒活動を行っていた。
・制圧された男手の多くは建設中の催事場のほうに連れて行かれたようだ。

ランディア「バロートで戦力になりそうなのは小隊(50−60人)規模。それも正規軍人ではなく、大半が予備役扱いの自警団です。包囲された状況の中で、どこまで抵抗を続けられるものか…」
ランディア「シリウス君に頼まれて、調べておいたのですが…」
 齎されるのは砦種に関する情報。過去の使用例に関して、史書から得られたものだという。

・非常に稀有な例ではあるが、ヴェルフィンの戦役においても使用されたケースがある。
・砦はどこにでも立つという性質のものではなく、種を使用する上で幾つかの条件がある模様。
・壁はどうやら時間が経過すると球型になるらしい(現在は開いている上空部分も塞がる)
・つまり、時間が経つにつれ上空からのアプローチという手段も失われ不利になる

ランディア「球になった後、どうなるのかまでは時間が無くて確認がとれなかったのですが… あまりいい想像は出来ないというのが私の見解です」
ランディア「今現在わかっている情報は以上です。調査は引き続き続けますが… リヴルスの皆さんには、明朝にはバロートに向かって出立してもらいます。必要なものがあれば早めに言ってください。可能な限り、手配はとりましょう」

 今回の主な任務は二つ。

・門の開放 or 城壁の排除
・敵の首魁を討つ

 どちらの作戦にも付随する内容として「民間人の安全を極力考慮して欲しい」というライン首脳陣の意向が付け加えられる。

 それを聞いたコハクが問う。
「この作戦は戦(いくさ)ですか? それとも救出ですか?」
 それはバロートが敵の手に落ちてから、何度と無く彼の口をついて出ていた言葉。
 
ランディア「その質問に答える前に。質問に質問を返すのは失礼であることは承知の上で。コハクさん、貴方に問います」
ランディア「貴方が戦というものに対して、犠牲が必要だと割り切る信条の持ち主ということは聞いています。それを踏まえた上で、今の質問がある解釈し貴方にお聞きします」
ランディア「上層部が“これは戦争です”と言ったら、貴方は犠牲を割り切れるということでしょうか?」

コハク「…そうですね。俺には出来ます」
コハク「出来る限り、命の火を消さないようにする。それが我々のやらねばならないことであるというのは解っています。けれども… 犠牲、それをもってしてもあそこを開放しなくてはならない… そんな場面が訪れた時」
コハク「人は、その時になって初めて手先が鈍ったりもするわけです。覚悟とはそういうものだと思ってます」
コハク「我々とて神でもなんでもない。必ずということはありませんし」

ランディア「言葉遊びをするつもりはありませんが… “作戦”というものに“戦”の文字が入っているのは何故ですか?」
ランディア「救出作戦、というのは“戦い”ではありませんか?」

ランディア「私情を差し挟むのは良くないと思っていますが… 二つの任務を提示するに辺り、門の開放を先にもってきたのは。そちらを優先して欲しいという意思があるからです」
ランディア「貴方がたが犠牲にならなければ助けられない、という状況で犠牲になれとは言いません。ただ… 敵の首魁を討つことと人の安全を天秤にかけるのであれば。人の安全を優先してください」
ランディア「戦かどうかといわれるのであれば… 戦いと戦(いくさ)の違いという意味で言うのであれば。規模がどれほどであれ、占拠されている集落を開放するというこれは“戦(いくさ)”でしょう。それを言葉で否定することは簡単ですが、貴方が納得するとは思えない」
ランディア「だから問うたのです。上が戦と割り切っているのかを、何故聞くのかと」

コハク「我々の矛先を鈍らせないためです。我々を駒として使うのであれば、それくらいのことは心に留め置いて欲しい」

 見かねたラズリィが仲裁に入る。
ラズリィ「ハクさん、おやめよ… 私はお前さんに人を犠牲にする戦いをさせるつもりはないし。ランディアさん、お前さんたちに駒として使われるつもりもないよ。…私達は協力しあうんだろう?」

 だが、コハクは退かない。
コハク「解りやすく言えば… 人質を盾にされた時、我々が剣を振り上げられるかどうかということなんだ」


ランディア「救出作戦かどうかというコハクさんの問いに答えるのであれば、これは救出作戦なのでしょう。だが、逆に聞かせていただきたい。これが犠牲を割り切った“戦(いくさ)”だと認めなかったのなら。我々は君達の安全を軽視しているということになるのでしょうか?」
ランディア「…ただ。もし、これを言わなければコハクさんがコハクさんに必要な判断を的確に出来ないというのであれば」
ランディア「何かを天秤に掛けなければいけない時に、判断が必要であるならば。それは貴方がたの判断でしてください。そして… 貴方がたがどんな判断をしたとしても、その責任は私と陛下で負いましょう。」

 最後にラズリィが仲間達に言う。
「ギルドマスターとして命令するけれど… 死んではいけないよ。皆を守るために死んではいけないよ。約束できるね?」

 仲間達が思い思いの形でその言葉に同意する中。
 シリウスは一人、答えを返さず会議室を後にする。


《衝突:Tear Drop》
 一行がそれぞれに潜入作戦の準備に散っていく中、シリウスはラズリィを呼び出す。

シリウス「ずっと迷ってた。今は危機的な状況だし、これを言い出すのが本当にいいのか凄く悩んだんだけど… ギルドから離れていいかな?」

 驚く様子を見せず、ラズリィはその言葉を受け止め。しかし、頷く事はせず、

ラズリィ「私がお前をそうさせてしまったかい?」

 静かに問い返す。

シリウス「…このまま黙ってついていくのが任務の成功の為にいいのかどうか、ずっと考えていた。でも、不信感をもったままついていったら、現地でどんなトラブルの種になるかわからないだろう?」

 静かな、静かなやりとり。

ラズリィ「…私はね… お前さんがいないギルドっていうのは考えられないんだよ。だから。私の意見だけを言うなら、お前さんにいなくなって欲しくはない」
ラズリィ「ただ、お前さんの意見を尊重したいと思う私もいる。だから、お前さんがどうしてもというなら…」
 
 口論や討論とは掛け離れた、理性的な。
 
シリウス「考えられないとまで言って貰って恐縮だけど。僕がいないほうが上手く回るんじゃないかな、このギルドは」
シリウス「ギルドだからね。仲間がした判断で多少の迷惑を被るのはさ。嫌じゃないんだ」
シリウス「そういうのはさ。集団である以上、受け入れるべきだと思ってる。けど… そうやって何の相談も受けずにやったことの結果で、周りを巻き込んでおいて。そのことに対して何の弁明もないって言うなら、何のための仲間かな? 僕はそれに疑問がある」
シリウス「こんな不信感を持った状態で、こんな大事なミッションは出来ないでしょう? 間違って、いますか?」
シリウス「…謝って欲しくてこんな話をしてるわけじゃない。そんな顔をさせるつもりでもなかった」
シリウス「コハクさんの行動がギルドマスターの承認を得ている以上、あれはギルドの判断だ。ギルドメンバーである僕は、それに文句を言うべきじゃない」
シリウス「でも、何の説明もないなら、そのことに対してどういう理解をしていいのかも解らない」

ラズリィ「不安だったんだよ。中で何が起きているのか解らないし、失われたらって思うと… 今すぐに乗り込むべきだって言うハクさんの言葉に抗えなかった」
シリウス「それは… ラズリィだけがもってる不安じゃない」
ラズリィ「そうだね。だからこそ、悪かったと思っている」

ラズリィ「…悪かったと思ってはいるよ。でも、あの時に戻れたとしても、私は同じ判断をするかもしれない。だから、お前さんが本当にどうしても私達と一緒にいられないというのであれば。もう、離れていくのを止められはしないよ。不信感があるんだって言うのであれば…」

 途切れる言葉。
 僅かな沈黙の後に−

 ラズリィは膝をつく。その下の地面を大粒の涙が濡らす。

 少しして。
 シリウスは自分のハンカチをラズリィに差し出す。

シリウス「なんで泣くかな…」
 自分でも解らず、首を横に振るラズリィ。
 それを見たシリウスは、長い長いため息をついた後。
シリウス「…解りました。もう暫く付き合いますから涙を拭いてください。女性や子供を泣かせるのは、人間以前に男として最低だと言うのがウチの家訓です」
 ラズリィはシリウスのズボンの裾をつまむ。
ラズリィ「すまないね。恩に着るよ…」


《三丁目の酒場で》
 夕食前。
 コハクの元に来客があった。
 訪れたのは… ライン王エレウォンド。
 国のトップは簡素な変装で神殿を訪れ、隻腕の神官を夜の繁華街に連れ出した。

 連れて行かれたのは到底綺麗とは言えない、場末の酒場。
 その一角の衝立の奥で、二人は席を確保した。
 出てくる酒は安酒も安酒。
 国王と一献、というには余りに似つかわしくない場所である。

エレウォンド「悪いな。どこで呑んでも後々面倒そうでな。顔の利くこんな店しか思いつかなかった」
コハク「そうでしょうなぁ。…共も連れずに如何なされました?」
エレウォンド「酒を飲みにきたと言っただろう? 付き合え」
 国王はエールの瓶を手に、自らの杓でコハクのグラスに酒を注ぐ。
エレウォンド「…コハク。お前には感謝をしている。先の会議の折、お前は民衆の目線から感じること−  つまり“民の心”をあの場でぶつけてくれた。それが私にはとてもありがたかった」
エレウォンド「だからこうしてお前に会いにきた。ラインを代表して礼を言う。…ありがとう」
 暫くして。
エレウォンド「…愚痴にも少し付き合え」
エレウォンド「彼ら(貴族)の言うことも間違ってはいないのだ。彼ら自身の個人的な利害はさておき、私がテロに屈することは、ライン王国が武力に対して膝をつくことに等しい。それは次の武力による脅迫を誘発しかねない。故に、人質の安全のためとはいえ安易に要求は呑めぬし、被害を拡大しないためにも即座に軍勢を派遣して武力鎮圧を図る姿勢を見せることこそが、次以降のテロの抑止に繋がるのは事実。だから、真意はどうあれ、タカ派の言い分は一面で正論なのだ。会議の現状には幻滅しただろうが、悪く思わないで欲しい」
エレウォンド「…お前達を会議に呼んだ理由は二つある。一つは、現地の情報を伝えてもらうこと。そしてもう一つは… コハク。お前のように怯まずに民の声を届けてくれるものが欲しかったのだ。あの状況を見て彼の地に縁が深いリフが黙っているとは思わなかったのでな。…まぁ、お前が声を上げてくれたのはうれしい誤算ではあったが」(苦笑)
エレウォンド「ああして、会議の雰囲気をぶち壊してもらうことでもう少しだけ時間を稼ぎたかったのだ。タカ派に押し切られるわけにはいかなかった」
 次々と心情を吐露していくライン王。
エレウォンド「“王様、この方たちに一時でも最前線に出ていただくことは叶いませんか?”だったか。…あれはかつての私なら言っていた言葉であり、今の私だからこそ言えぬ言葉でもある」
エレウォンド「王たる私が個人的な信念だけで、片方の意見に肩入れすることは政治の中立性を欠く…だからあの時、お前やシリウスが本当に眩しかったよ。」
コハク「俺はともかく彼はまだ若すぎます… だからこそ、無謀であって欲しいとは思いますし、それ以上に臆病であって欲しいとも思います」
コハク「かつて、俺も無謀だのやんちゃはしていましたが、彼は余りにも大人しすぎる」
 僅かに意味ありげな笑みを浮かべた後、エレウォンドは告げる。
エレウォンド「コハク。先ほども言ったとおり、私は有能な人間を一人でも多く欲している。ランディアは良くやってくれているが、流石に抱えているものが多すぎる」
エレウォンド「…お前、私に仕える気はないか?」
エレウォンド「今すぐにとは言わない。お前の旅が終わったら、是非このラインでお前の力を貸して欲しい」
エレウォンド「…作戦が終わった後に、もう一度上手い酒が呑めるといいのだがな」
コハク「過度な期待は私自身を殺してしまうので…」
 少し意地悪くエレウォンドが笑う。
エレウォンド「お前が一番嫌がりそうな言い方で言ってやる。…お前達がラインの最後の希望だ」
 王が去った後。
 コハク宛に残された小袋の中には、近衛騎士の紋章が刻まれた高位聖印がおさめられていた。


《バロート開放作戦》
 コハクのテレポートでバロートに潜入するリヴルス。
 ラズリィ、ユートラ、コハクのトリオとリフとシリウスのコンビに分かれて街の状況を探っていく。
 障害物の間を抜け、物見櫓を潰しながら街を巡る一行。
 PC達は外壁から現れた妖魔型の敵兵が、同じ壁から現れた人型の敵兵?と争っていたという情報を得る。
 未だ抵抗を続けていた自警団との連携を取り付けつつ探索を進めていく。


《考える亡者と戦士の誇り 〜Baroque Heat〜》
 やがてリフ達が辿り着いた共同墓地。
 そこで出会った一人の亡者兵士。
 幾つかの会話を重ねる中で、彼は自分がレジスタンス“バロックヒート”のミルドであると名乗る。
 ミルドとの会話から、街を徘徊する全身紫の人型兵士が当面の敵でないことを察するリフ。

ミルド「君が言うことが事実ならば、ここは私の記憶のあった時代からは随分と遠いところのようだ」
ミルド「我々はどうなったのか…」
ミルド「…君に一つ問いたい。ヴェルフィンは倒されたのだな?」
リフ「ああ、間違いない」
 それは確証など何も無い言葉。しかし、敢えてリフはそれを言い切る。

ミルド「我々は、民を護るために、民を救うためにこそ戦っていたのだ。人を傷つけることなどしたくない」
ミルド「だが、呼ぶ声がする。“従え”と」
ミルド「何者かが、我らの意思を… 頼む、この魔力を止めてくれ。我らの誇りを、最後の矜持を護ってくれ…!」 
リフ「その意思、受け継がせてもらう」

 …後の調査で判明したところによれば、バロックヒートというのはかつてこの地でヴェルフィン立ち向かった抵抗組織の名前の一つだったとのこと。


《いなくなったのは? 〜猫と少年と令嬢〜》
 一方、ラズリィ一行は教会に辿り着く。
 三人は隠されていた落とし戸を発見。
 そこに設けられていたセーフハウスに退避していた孤児院の人々と再会することに成功する。

 しかし、その中にあるはずのタローの姿が無い。
 ハナコの説明によれば、彼はハナコの飼い猫であるポチを探しに出て行ってしまったのだという。
 しかもラズリィが持たせていた転送石まで御丁寧にハナコ達の脱出用に置いてしまっていっていた。
 また、いなくなったタローを探しにフローライトまでも外に出て行ってしまったらしい。

ハナコ「私が泣いていたら、待ってろって言って出て行っちゃって…」
ハナコ「タロー君を探しにフローライトさんも出て行っちゃって…」
ハナコ「お父さんもお母さんもポチもいなくなって… これでタロー君までいなくなっちゃったら私…」

 タローの身を案じるハナコに、二人を必ず見つけることをラズリィは約束。
 子供たちが知っている幾つかの秘密の抜け道を教わった後、教会にいた人々を転送石で脱出させる。

 
《少年の意地と令嬢の伝言 〜Flourite〜》
 ハナコの情報を元に雑木林に戻った一行はポチを探す。
 大した時間も掛からずに、木の上から降りられなくなった猫を見つけることに成功。
 同時にタローとの再開も成功する。
 ラズリィにもみくちゃにされながらタローが告げる。
タロー「フローライトさんが捕まった」

 彼の話によれば、タローを逃がすためにフローライトが身代わりになったのだという。
タロー「俺、逃げるのやだって言ったんだ。だけど…」
 フローライトの救助を約束し、タローを脱出させようとするラズリィだが、タローは頑として首を縦に振らない。
ラズリィ「タロー君… そういってフローライトさんを危ない目に遭わせたんだろう?」
 コハクへの伝言を髪飾りと共に預かったタローは、その場にいないコハクにどうしても自分の口から伝言を伝えると強情を張る。
 ユートラの機転で伝心の人形を使用、タローはコハクとの接触に成功する。
 彼の手には細い金属で編まれた髪飾り。それはフローライトのもの。
タロー「難しいこと一杯言ってたんだけど、俺よくわかんなくて。…そうしたらフローライトさん、“生きていてくれてありがとう。嬉しかったです”って、そう伝えてくれって…」
コハク「…確かに承った」
 その後、転送石でタローとポチがラインへ向かったのを見送り、再度探索に赴くことになる。


《He is Namihei! 〜逆襲の邪教大神官〜》
 ふと、胸騒ぎを覚えたユートラは残りのエリアの探索を仲間に任せ、一人領主の館へ向かう。
 物陰から館の様子を伺う彼女の耳に聞こえてくる翼の音。
 館に舞い降りるその姿は、遺跡の地下で見たあの“翼の女騎士”だった。
 危機感を募らせつつ、彼女は仲間の下へ戻り状況を報告する。
 最後の決戦の地を領主の館だと心に定めるリヴルス。

 一方、歓楽街で酒を呑みクダを巻く一人の男がいた。
「軍師様はわかっちゃいねー。なんで俺がこんな下働きなんだ…」
 前回、地下遺跡で遭遇した邪教大神官である。名前はナミヘイ。
 不幸な彼は泥酔していたところをリヴルスに奇襲され、何も出来ずにたたき伏せられる(

 リフによる淑女的かつ物理的な尋問により、可及的速やかに引き出されていく情報。
 要約。
「俺はイケメンだ。顔を殴るな」
「バド(無様な負け犬)とレヒト(不細工なエルダナーン)は逃げた」(2発)
「我々を指揮しているのは軍師と呼ばれる方だ」
 必要な情報を引き出した後、ナミヘイをぐるぐる巻きにしてラインに転送。
 ナミヘイの身柄を預かったランディアから、砦種について追加の情報が入る。
 要約。
「種が発芽した段階で、種のエリア内にコアモンスターと呼ばれる核になっている生命体がいるはず。これを撃破することで、種の効果を無効にできるようである」
「天井が閉じきった場合、中にいる生命体はやはり無事ではいられない模様。天井が閉じた後、帰ってきた者はいないようだ」
「異色ではあるが食虫植物的な性質を持ち、発芽後は中にいる生命体を養分に変えてしまう力がある」
「種が発芽後、開花に至った場合、中からコアモンスターよりも更に強力なモンスターが出てくる事例もあった。開花後の結果は必ずしも一つではない模様」
 ランディアがいう。
「いずれにせよ貴方がたにお願いしなくてはいけないことは… 天井が閉じきる前に全てを終わらせていただくことです」


《Pride of Lords》
 暗い表情の人々が集められた新築の催事場。
 そのVIP席に座った男が人々に言う。
?「皆の者。この催事場の完成に尽力してくれたこと、本当に感謝する。本日は諸君らの尽力に報いる為に、催し物を用意させてもらった」
 それはレヒトの顔をしていたが… 妖しい雰囲気を纏った別の何かだった。レヒト?が点を指差す。
 バサッバサッバサッ、−ズシーン!
 羽音と共にやってきたのは長い鼻と翼をもつ異形の化け物。翼を持った象、エレファントロックである。
 パオーンと雄叫びをあげるそれを指差し、男が言う。
レヒト?「バロートの民よ、自由を望むならば私の自慢のペットと戦うがいい。倒せば君達は自由だ。それが君達の尽力に対する私の報酬だ」
 ざわざわざわっ。
 聴衆の間に広がる、動揺のざわめき。
 それが明らかに、とてつもない戦闘力を秘めているのは素人目にもわかる。とてもどうこうできる代物ではない。
レヒト?「なんだ? 自由を望むものは誰一人いないのか? 折角の計らいだと言うのに」
 少しして。
レヒト?「無様だな。この街には誰一人、勇気というものを持ち合わせたものはいないらしい。」
レヒト?「戦士として倒れて後なら食われても本望だとろうと機会を与えたが、どうやら無駄な好意だったようだ。ところで… 私のペットは空腹が苦手でね」

 そこまで言ったところで、催事場の中央に進み出る二つの影があった。
 影の一つが高らかに宣言する。

バド「聞け、バロートの民よ! 本物の領主レヒトはここにいる!」
レヒト「すまぬ、皆の者。短い間に私の無力ゆえに何度となく迷惑をかけた。…償いはこれからする」
 見下ろす濁と睨みつける清。
 同じ顔をもつ二人が、催事場の上と下でにらみ合う。
 
 時を同じくして。
 人々の救出プランを胸に、リヴルスは自警団と催事場に急いでいた。

 やがて。
 一同が催事場で見たものは、エレファントロックに苦戦するレヒトとバドの姿だった。
 手負いのバドと力の足りないレヒト。旗色は悪く、いつ蹴散らされてもおかしくない有様だ。

偽レヒト「勇ましく出てきた割には格好がつかないな? あれを見るといい。お前達が発奮する材料をやろう」
 顎で示すその先。
 高所での芸に使う高台に吊るされたロープ。その先にはぐるぐるに縛られたフローライトの姿。 
偽レヒト「逃げてもいいんだぞ? ただし、今宵のそいつの夕餉はあの女になる。お前達が食われればそうはならないかもしれないが」
偽レヒト「さぁ、どうする? レヒト様」
 ニヤニヤとサディスティックな笑みを浮かべる偽者。
 その表情にあるのは、ひたすらの愉悦。何かを踏みにじるのが楽しくて仕方ないといった風情だ。

 だが、その愉悦の表情が曇る。
 そこに響き渡るのは、淀んだ空気を吹き飛ばす可憐な歌声。
 声の主を探す人々の上を、影が一つ過ぎる。

コメント(7)

  • [1] mixiユーザー

    2013年02月03日 02:22

    《Climax-Phase:観衆なき催事場の決戦》
     催事場の空を翔け抜ける小さな翼。
     それは高台に向けて飛んでいき、持っていた斧を一閃。
     落下する令嬢を空中で抱きとめ、最初に催事場に降り立ったのはリフ。

     彼女は背中越しに言い放つ。
    「…足手まといはいらない。そして、貴方の仕事はこのお方を護る事だ」
    「この転送石の先に、貴方が護るべき人々が待っています」
     背に庇うのは傷ついたバドとレヒト。
     その言葉に込められたのは、強い強い意志。
     人々を残しての帰還を躊躇う二人にフローライトの避難を依頼し、その場から撤収させる。

     その隙に自警団が観客席の人々に転送席を配って回り、人々の退避を成功させた。
     
     やがてラズリィの歌が終わり。
     その場に残っていたのは偽レヒトとロックエレファント、そして集まってきたリヴルスのみ。
     戦いが始まる。

     ユートラの撹乱。
     コハクとシリウスの支援。
     ラズリィの補助。
     そして、リフの斬撃。

     猛り狂う異形の化物とそれを従える偽レヒトの猛威。
     対するのは試練を超えて強くなったリヴルスの力。

     制圧と開放、悪意と善意。
     二つの意思が支える力と力がぶつかり合う。
     それはバロートの命運を左右する決戦。

     やがて、仲間の力を集めたリフの一撃が偽レヒトの身体を両断する。   
     長い戦いの末に、それを制したのはリヴルスだった…
  • [5] mixiユーザー

    2013年02月03日 23:22

    《Ending1:白の槍と蒼き斧》
     催事場での戦いに勝利した一行は、領主の館に急行する。
     そこにいるだろう悪意ある者達と決着をつけるために。
     
     レヒトの館の地下迷宮下層。
     開け放たれた大扉の前には三つの影が。

    ?「貴様、こんな真似をしてただで済むとでも…!」
    パイセン「なんとか穏便に誤魔化せる言い訳を考えていたのですがねぇ。思いつかなかったので仕方ありません。死んでください」(にっこり)

     魔力の光が閃き、壁面を血が汚す。

    フィラム「目的のものはあったのか?」
    パイセン「はい、それはもうバッチリです」(ニコニコ)

     直前の惨劇などなかったかのように言葉を交わす二人。
     機嫌のよさそうなパイセンの手には一振りの“鍬”が。
     
    リフ「そこで何をしている!」
    パイセン「…おーやおや。まさか性懲りもなくやってくるとは」
     たどり着いた一行を前に呆れ顔のせむし男。
     だが、飛び込んできたPC達をフィラムが見咎める。

    フィラム「危険な目をしているな… 今度は逃がさんぞ」

     ゆらりと舞い上がった翼騎士が手にしていた白の槍を掲げると、その輝きが増していく。
     途端に圧倒的なプレッシャーが 一行を襲う。
     それは立っていることもままならない圧倒的な重圧。
     試練を超えて強くなったはずなのに−!

    フィラム「折角、拾った命をむざむざ捨てに来るとは… 愚かな事だ。己が無力を悔いて散れ」

     彼女はシリウスに向けて槍を振り上げる。

    −己が無力を悔いて散れ−

     指一本動かすこともままならぬ重圧の中で、フィラムの言葉がリフの脳裏に突き刺さる。
     それと同時に。

    −ある−

     何かが囁いた。

    −力なら、あるのに−

     それはか細い、しかし確かな反駁。左手が熱い。

    「シリウスを助ける。僕にはその力がある…!」

     リフが吼える。
     シリウスに向けて、フィラムが槍を繰り出す。
     リフの視界いっぱいに広がる閃光。
     それが一同の視力を奪う。

     ガキィィィン!
     金属と金属がぶつかり合う高音が響いた。
     次の瞬間。
     視界が回復した全員が見たものは、手にした“光り輝く青い斧”でフィラムの白の槍を受け止めているリフの姿。
     同時に一行を縛っていた重圧のようなものが霧散した。

    フィラム「それは…! 何故、貴様がそれを持っている…!?」
    リフ「……」

     しばしの拮抗状態。その後に。

    パイセン「退きましょう」
    フィラム「…何!?」
    パイセン「今戦うのも一つの手ですが、これは不測の事態です。そして貴女も私も不測の事態が嫌い。…違いますか?」
     
     これまで見せたことのない苦々しい表情でリフから距離をとるフィラム。

    フィラム「…二度も命を拾うとはな。お前達もまた、何らかの運命に導かれているのかもしれん。しかし、それは我等の背負うものに比べれば何の重みももっていない」
    フィラム「覚えておけ。お前達の道が我等の障害となるようなことがあれば、何があろうと全力で排除する。理解できたら二度と我々の前に姿を見せるな」
     パイセンがテレポートを使用し、その場から離脱を始める。
    リフ「待て!」
     追いすがるリフ。しかし間に合わない。
     二人が消える直前、一行を睥睨するパイセンの目は背筋が凍るほど冷たいものだった…
  • [6] mixiユーザー

    2013年02月03日 23:23

    《Ending2:バロート解放の英雄》 
     作戦の翌日。
     リフは真っ先にバドの元に赴き、平謝りをしていた。 
    リフ「緊急の事態だったとはいえ、先輩の貴方に無礼な口を利いてすみませんでした」
    バド「…足手まといだったんだろう? お前が言うとおり緊急事態だったんだし、四の五の言ってられるか?」
    バド「まぁ、年寄りの冷や水ってほど老いぼれたつもりもないんだけど。ないんだけどなー?」
     ニヤニヤしながら、わざとらしく言ってみせるバド。

    (やっぱり怒ってるじゃないか)
     脳裏で思いつつ、リフは苦笑する。この人はこういう人だ。

    バド「そのほうがいいな」
    リフ「?」
    バド「お前自覚ないだろ。あんまり笑わないから、何考えてるのか周りに伝わりにくいぞ。だから、今のほうが全然いい」
     

     ラズリィもまた、方々に土下座行脚をする日々が続いていた。
     タローの両親。ランディア。そして国王エレウォンド。
    エレウォンド「お前はもう少し、自分の知識を活かすやり方を覚えたほうがいい」
    エレウォンド「歌の素材を探しているのだったか? 調査を依頼に来るのは、シリウスよりお前のほうが似つかわしいのじゃないか、賢者」
    エレウォンド「お前自身が物語の主人公になる歌も多分あるだろう。お前の仲間はきっとそれを支えるだろう」
    エレウォンド「…もし、お前達の報告書の通り、この話にリフが深く関わっているとしたら…」
    エレウォンド「リフが運命に翻弄されている時に、力だけでは解決できない問題が必ず出てくる。色々見せ所だぞ、ギルドマスター?」
    エレウォンド「私は自分一人ではそれほど多くのことはできなかった。だが、多くの人々の支えを受けてヴェルフィンを追いやることに成功した。それは忘れないようにしている」

     ぽんぽん。
     エレウォンドは微笑んでラズリィの肩を叩く。

    エレウォンド「これにて謁見は終わりだ」
    ラズリィ「…肝に銘じておくよ」

     
     フローライトはバロートの孤児院にいた。
     子供達のケアの為に、向こう半年くらいはバロートに滞在することになりそうだ。
     孤児達に囲まれるフローライト。
     彼女の元に子供の一人が一枚の紙片を持ってくる。
     そこにはたった一文。
    「無事で何より」
     慌てて周囲に視線を走らせるが、彼女の目は捜し求める人物の姿を見つけることができなかった。

     フローライトは。
     しばしその手紙を見つめた後、とても大事そうに掻き抱く。
     その心中は窺い知れないが、表情は儚い笑顔。

     やがて、彼女はその紙片を大事にポケットにしまい。
     再び子供達に笑顔を向ける。


     バロートの被害は甚大だった。
     コハクの予想は正しく、やはり最初の交戦時に僅かながら死者も出ていた。
     幾つもの建築物が倒壊し、多くの人々が負傷した。
     しかし、仕掛けられた攻撃とその期間を考えれば、被害の規模は破格に低い。
     
     それは領主レヒトが孤児院地下に用意したシェルターや自警団の奮戦による成果でもあったが。
     何よりも潜入作戦を成功させたリヴルスの功績が大きかった。

     バロート制圧の事実自体が対外的に秘密という建前だった為、作戦は秘密裏に行われた部分も多かった。
     しかし、作戦成功後は助けられた人々の口を通してそれらの話が少しずつ伝わり。
     たいした時間をかけない内に、リヴルスというギルドは“バロート解放の英雄”として人々に知られるようになった−


            To be Continued “Mysterious Buyer 5”

  • [7] mixiユーザー

    2013年02月03日 23:24

    《登場NPC》

    ミルド:かつてのレジスタンス『バロックヒート』の戦士。故人。砦種の効果でアンデッドとして蘇生されてしまった。

    ポチ :ハナコの愛猫。ぶなー、とか鳴くぶさカワ系。

    ナミヘイ:第七回のボス。“軍師”に干されて腐っていたところをPCに強襲された。リフにひどい尋問を食らった挙句、ラインに投獄された被害者? 自称イケメン。孫にタラとかいるかもしれない。

    フェイクレヒト:レヒトの偽者再び。ただのバンパイアだった前回と違い、今回はバンパイアロード。レヒトが強くなった分だけ、コピーも強くなる皮肉w

    ?妖魔:被害者その2。“将軍”配下の魔物でバロートでの作戦遂行をナミヘイから引き継いだ立場だったが、役目を果たせぬままパイセンに潰された。
     

     ・キーワード

    『バロックヒート』
     ヴェルフィンによる圧制の時代に、バロート周辺に存在したレジスタンスの名称。

    『鍬』
     扉の奥にあったものの一つ。パイセンが持ち帰った。
     他にもいくつかの歴史的資料があった。このあたりは現在ラインから調査団が入って調査中。
     
    『白い槍』
     フィラムの槍。超絶的な能力を秘めているようで、その圧倒的なプレッシャーでPC達を拘束した。

    『青い斧』
     フィラムのプレッシャーを打ち破った謎の斧。リフの掌中に突然あらわれた。無表情を通していたフィラムを驚愕させる代物らしいが…?

    『バロート解放の英雄』
     この事件の解決は、リヴルスの知名度を格段に引き上げた。
mixiユーザー
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  • 2013年02月03日 (日) 実際の開催は2012/9/22に終了
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