水林章氏がみずから選び取った言語であるフランス語によって書いた最初の小説『他所から来た言語Une langue venue d’ailleurs』は、珠玉の文学作品です。一種の教養小説で、じつにさまざまな内容がもりこまれています。著者は、しらけきっているように思われた母語における痛みをともなう経験をへて、70年代に日本を離れ、フランスへと向かいました。水林氏がフランス語を使いながら垣間見たのは、「人生をもう一度生きなおす可能性であり、他者との関係の総体を構築しなおす」可能性だったのです。
水林章氏は上智大学外国語学部フランス語学科教授。小説『他所から来た言語Une langue venue d’ailleurs』でアカデミー・フランセーズのフランス語フランス文学顕揚賞(Prix du rayonnement de la langue et de la littérature françaises)および多くの文学賞を受賞しました。