【このコンサートについて】 後半生をスイスで過ごし畑仕事をしながら創作を展開した詩人へルマン・ヘッセ(1877-1962)が、年齢を重ねることをめぐって、またそれを四季の自然の変化に映し合わせるように、人生の折々の時期に書いた詩や散文。それらを縦糸に、40代後半にさしかかり東京から自然豊かな福岡県糸島に本拠を移したピアニスト河合拓始が構成演奏するコンサート。 不思議な簡素さで独特の晩年様式を示すサティの夜想曲集。植物の電位変化データを音に置き換え旋律を編み上げる藤枝守の植物文様曲集(第五集)。偶然性音楽(それもひとつの自然的音楽とも言える)に乗り出したころのケージのピアノ連作集Music for Piano 4-19。第二次大戦時に疎開先の長野で触れた自然を題材にした高田三郎の前奏曲集。ブラジルの作詞作曲家ヴェローゾが老齢と自然についての「老いた男」「色彩」。河合自身がヘッセにインスピレーションを受けての作曲「ヘッセに寄せて」。それらをヘッセの詩文の朗読を挟みつつ、循環する季節のように、四グループにわけてプログラム構成しています。 同じ創作年代、もしくは作(曲)家が同じ年齢の時期(たとえばケージ/藤枝/ヴェローゾがそれぞれ42歳ころ)という視点からも、プログラム相互に緩やかなネットワークを見つけることができるでしょう。 詩と音楽、クラシックと現代音楽、独仏米と日本・ブラジル、等々幅広い視野で、独自の芸術的観点から作り上げる、渾身のコンサートです。