mixiで趣味の話をしよう

mixiコミュニティには270万を超える趣味コミュニティがあるよ
ログインもしくは登録をして同じ趣味の人と出会おう♪

開催終了Shin Yong-il展 The Silent Soul〜沈黙の魂〜

詳細

2011年04月01日 19:31 更新

 企画展
〜沈黙の魂〜
The Silent Soul

オープン:13時〜18時30分(水・木休館) 無料
13.00--18.30 (closed Wed. & Thr.) admission free
Artist: Shin Yong-il
会場:夢創館 Mssohkan


後援:在神戸大韓民国領事館
Consulate-General of the Republic of Korea in Kobe

■■企画展「The Silent Soul 〜沈黙の魂〜」によせて■■

様々な作品の中で、気になる数枚のタブローに出逢った。

まず色彩に惹かれた。油彩には無い、しかし日本画の顔料でもないマチエール・・・。
重ね塗られた色彩や土の下に秘められた文字が見え隠れする。その文字はキャンバスから薄いレリーフのように凸面になっている。
絵の構図はまるで土の中から発掘された経典のようだ。
重ね塗られた何層ものマチエールは盛られたり、掻き落とされている。
文字は画筆によるものではない。小さな穴を開けた袋から絵具を絞り出して描かれたものだ。
彼のキャンバスはそうして埋め尽くされていた。


企画展開催に向け、準備に奔走していた頃、在神戸韓国総領事より、神戸韓国総会教育院の院長・呉氏を紹介いただく幸運を得た。院長は仰った。「清州の作家ならではの作品だ」と。韓国・清州の街について皆無だった私は、その意味がわからなかった。清州という街について知りたい。ちょうど良い。もうすぐ作家のアトリエ訪問のため、韓国へ向かう予定だった。事前に街について、少しだけ調べてみた。すると、いとも簡単に金属活版印刷技術を用いて印刷した世界最古の本があったとされる街であることがわかった。街には古印刷博物館もある。呉院長の言葉が脳内に甦る。

極寒の韓国を覚悟していたが、幸運にも出国数日前に日本は小春日和。お隣の韓国も同じだったようで、軽装で出発。関空から直行便でチョンジュ(清洲)に着いてすぐにアトリエ訪問。翌朝は、「清州古印刷博物館」を訪問。学芸員の案内に従って歩みを進めた。古い記憶にある「ドイツのグーテンブルグ、1455年頃、活版印刷術発明。ルネサンスの三大発明」を修正するのに暇が要った。頑固にこびり付いていた記憶だが、眼前の資料展示品が容赦なく修正を促す。

韓国は1200年代(高麗時代)に金属活字を完成し工房を備え、14世紀後半では寺院で印刷された経典が使用されていた。中国では明代1490年。日本は元禄時代16世紀末に金属活字が導入されている。「直指」は現存する金属活字本として最古のもので、1377年清州興徳寺で印刷されたそうだ(2001年ユネスコ世界文化遺産に登録)。院長の「清洲の作家ならでは…」の謎が解けた。同時に博物館内の、技法紹介の展示室で、マネキン人形がピンセットのようなもので活字を拾い出している組版描写をみた時、急に、私の祖父は国定教科書を刷る活版印刷会社をしていた、という家族史を思い出した。祖父達も同じような作業で組版をしていたのだろうか。

滞在中、天気予報も外れるほど好天に恵まれた。帰国前夜、私宅の茶室にあった掛け軸「掬水月在手、弄花満香衣」を書き記して欲しいと頼まれた。禅語の、無くとも在る・在るとも無いというたとえであることを説明し、漢文を手渡した。氏は云う、「作品の字は直指を一字一字書いている。作業中、まるで精神が清涼で無になってゆくのを覚える」と。当時の最新印刷術で刷られた禅の哲学書「直指」を、現代に生きる彼が完全手作業で内容を書き、自然土や色彩で層を重ね、はぎ取り、また重ね塗り、作品を仕上げる。古代の彼らが見たらなんと思うだろう。
作家自身はクリスチャンなのに何故禅の教えが書かれた「直指」なのかと尋ねた。が、内容的に通訳アルバイト学生にはオーバーワークだったようで、今いち理解できない。まぁいい。一神・多神教の信者でも無神論者でも何でもいい。今を生きている作家、シン・ヨンイルが制作した作品に魅力を感じた。だから企画展をするだけだ。

そういえば本展初日一週間後の4月8日は灌仏会※(花祭)だ。
幼少の頃の私が経験した花祭は、花一杯の御堂で水盤に釈尊の像を安置し、
五種の香水(又は甘茶)を小さな柄杓で像の頭上から注ぐ儀式で釈尊の降誕をお祝いする日であった。
神戸の桜名所であり、文教地区でもある王子公園がもっとも賑わう春。
その春のエネルギーに呼応するような空間づくりを実現したい。

夢創館(2011年3月)
※灌仏会は中国から伝搬された。我が国では、606年に“元興寺”(奈良の元・飛鳥寺)で最初に行われたとされている。
「掬水月在手、弄花満香衣」…両手ですくった水の中に天の月が映り込んだ。花と戯れていたら花の香りが衣服にうつった。月も花も実際に手の内に存在しないが、水面に映ったその姿、衣服にうつったその香りはたしかにそのものであることから、無くとも在る、在るとも無いを指す。



「直指」とは  〜博物館図録より抜粋〜
白雲和尚抄録仏祖直指心体要節(はくうんわしょうしょうろくぶっそちょくししんたいようせつ)。
通称・直指心体要節、あるいは直指。
「直接おさめる・正しいこころ・直接示す・正しく示す」等の意味に使われる。
「直指人心性成仏」から由来しており、座禅を組み、人の心を正しく見るとき、その心の本性が、すなわちお釈迦様の心を悟っていくという意味。
お釈迦様と徳の高い僧のお言葉をまとめ、上・下巻に編集された本である。


シン・ヨンイル(申龍一:Shin Yong-il)
1956年生まれ。ソウル芸術大学卒業。エコルド・ボジャールハンス(フランス)。
■主な個展(抜粋)
2010年 不二画廊(大阪)
2009年 クロスベイギャラリー(シドニー)
2008年 トポハウス(ソウル)
2001年 ブルックスギャラリー(清州)
1993年 西画ギャラリー(ソウル)

■主なグループ及び招待展:
シオル会定期展(ソウルアートセンター)
東京Salon Blane展(東京都美術館)
アジア東京美術祭(東京都美術館)
Art-Sacra(パリ)、Joan Pire国際ドローイング展(スペイン)
New York World Space展(N.Y.)
忠北アートフェア(清州)
アートマルシェ2010(神戸)

■受賞
2003年 KBS自然環境美術祭 大賞
2002年 KBS自然環境美術祭 優秀賞

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!
  • 2011年04月03日 (日) 〜23日
  • 兵庫県 ギャラリー夢創館
  • 2011年04月03日 (日) 締切
  • イベントに参加する
  • 気になる!
参加者
1人