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開催終了4月のお題【桜】の投稿

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2007年04月02日 04:56 更新

4月のテーマは”桜”です!

桜って言葉だけで、なにかありそうな感じがしてしまいますね。

みなさんの投稿お待ちしております!

コメント(5)

  • [5] mixiユーザー

    2007年05月07日 15:54

    ちょっと遅くなっちゃった。あー期限切れてるしぃ。
    でも負けない!
    桜むずかしかったですー。
    へこみ易いので、暖かい系の目で見てあげてください!

    ----------------------------------------------


    『ソメイヨシノ』


    公園に近づいてくると満開の桜が見えてきた。
    私と友人の吉野貴美香はそれに元気づけられたように進む足を速めた。
    「お花見、今日にして正解だったね」
    「うん。昨日の風が心配だったんだよねー。良かった、良かった」
    「樹里、ずっと天気のこと気にしてたもんね」
    意味もなく私達は笑いあった。晴れた空は青くて、暖かい風もそんな笑顔を後押ししてくれているようだった。
    うきうきした気分のまま公園に入ると、残念なことに宴会の陣地取りロープが桜の足元を占拠していた。カラフルなビニールシートとガムテープで区画された地面は駐車場みたいだ。
    「すごいね」
    ピンと張られたロープを引いてみたが、簡単には外せないように桜の幹に固定されている。
    「児童公園に来てまで宴会したいもんかなぁ。大人ってわかんない」
    貴美香の言う通りだ。
    毎年この公園で花見をしているけれど、年を追うごとに人が増えてきている。児童公園は子供のものだと思えばすごく腹がたつ。
    「もう今までみたいな花見はできなくなっちゃうかもね。来年は他の公園を探してみようかな」
    この公園に来た大人も、あぶれてよそから流れてきたのだろうか。それなら少しかわいそうかな。
    でも私達はずっとこの場所が気に入っていて、小さい頃から毎年特等席にしているのだ。こういうのを先住権とか言うんだったかな。
    普段は親に子供扱いされたり、しっかりしなさいと大人扱いされたりする。そんなどっち付かずの私達には、児童公園での花見がよく似合っていると思うんだけど。
    溜息なんてしていると、貴美香が制服の袖を引っ張ってきた。
    「あれに登ろうよ」
    「えっ?」
    引っ張られるままに私はジャングルジムの前まで来た。
    「そういえば随分登ってないなぁ」
    さっさと先に頂上に着いた貴美香が私を見下ろした。
    「わー、高いよ。ねぇ見て、ここから見る桜って最高!」
    誘われて私も上に登る。
    「ホントだ。ここからだと随分カンジが変わるね」
    足場が少々不安定なことを除けば、確かに高い場所もまんざらではなかった。身勝手な大人の占有率が高くなった地上よりずっといい。気分が一気に浮上してくる。
    ふわりと風が吹いた。
    「ちょっと貴美香。スカート押さえないと捲れちゃうよ」
    今も風で煽られる貴美香のスカートを、私はとっさにピッと押さえてあげた。
    「あはは。私と樹里のほかに誰もいないんだし、別にいいよ。風気持ちいい」
    貴美香は捲れそうになるスカートを無視してジャングルジムの頂上で横になった。吹いてきた風で今度はセーラー服の上着がお腹の真ん中まで捲れてしまう。
    「もう。言わんこっちゃない」
    私は貴美香の制服をむんずとつかむと、上着の裾をスカートの中にぐいって入れてやった。
    「やだ、だっさーい」
    「お腹見える! みっともないからこんなところで寝ちゃダメだって」
    私はつい叱るような口調になってしまった。
    「はいはい。分かりましたよ、お母様」
    貴美香は私に軽く嫌味を言う。
    ムッとして私も返す。
    「同い年の子供を産んだ覚えはありません」
    私の言葉を気にとめず、貴美香は面倒臭そうに起き上がるとクスクス笑った。
    そして貴美香は首をぐるりと回す運動をした。すると隣からコリコリと凝ったような音が聞こえてきた。
    「もしかして疲れてる?」
    「もうお婆だよー。肩こりしちゃって」
    「徹夜でもしたの? 最近またラジオとか聞いてるんだっけ?」
    「ううん。そうじゃないんだけど、ちょっと疲れてるっていうか、なんとなく羽根を伸ばしたい気分っていうか……」
    「ふぅん」
    貴美香が羽根を伸ばしたいと言う気持ちは、私にもよく分かる。今は中学二年の春で、進路や部活での引継ぎやら、細かな用事が増えるからだ。
    あと数ヶ月で三年生だなんて信じられない。二年生の一年間はとても短く感じたから、まだ学年の続きがあるような気がしてしまうのだ。単なる錯覚だろうけど、バカなこともやったし充実していたと思う。きっと三年になって受験勉強をしなければならなくなったら、二年のうちに遊んでおいて良かったと思うだろう。
    どんなことにも順番は来る。そろそろ落ち着きとかいうものを、親の期待通りに身に着けなくちゃならなくなる。私立の女子中学はお金がかかるとママがこぼしていたし、これも娘としての義務かもしれない。高校に進学したらどうなることやら、今から不安だ。
    そういえば貴美香は進路を決めたのだろうか。
    私は大学まで進むつもりだから、高校はS女校にするつもりだ。このことはまだ貴美香に言っていない。彼女が進路の話をしてこないから、こちらからも言いにくかったのだ。
    貴美香はいつも、問題があれば必ず私に相談をしてくる。しかし進路の話だけはなかった。三年になってから決める人もいるから、貴美香もそっちの考えなんだろうか。進路が決まらないと、夏休みの最終日みたいに土壇場で泣きつかれなければいいけど。
    「ねぇ貴美香」
    「なに?……うわっ」
    その時また風が吹き抜けた。
    だが今度ばかりは私も手を出さない。案の定、貴美香のスカートは全く押さえないせいで無残なものだ。しかし当の貴美香はちっとも気にならないようで、風で煽られる制服を面白そうに楽しんでいる。貴美香は小学生みたいだ。
    風と一緒にひらひらと花びらが貴美香と私の上に降ってくる。貴美香の長い髪にも花びらがついている。風のせいで髪がネックレスに絡んで、またみっともないカンジだ。
    「貴美香、髪ぐちゃぐちゃ。それに花びらだらけ」
    私は貴美香の髪に手を伸ばして、とりあえずネックレスから直してあげた。
    貴美香の長いストレートの黒髪は、腰の長さまである。手で触れるとさらさらと音がしそうな髪は、触っていても気持ちがいい。天然の私にはできない髪型で、ちょっとうらやましくなる。
    髪をゆらすと間からハラハラと滴のように花びらが落ちていく。髪に残るピンク色は鮮やかでとても綺麗だ。
    美人は髪まで美しいなんて、神様はちょっと意地悪じゃないだろうか。
    「ソメイヨシノ」
    唐突に貴美香が言った。
    「なに?」
    「桜の名前、私と同じ吉野なの。ソメイヨシノ知ってた?」
    「ふぅん。そういう名前だったんだ」
    貴美香の髪から花びらが取りきれない。私はちょっとイラついてきた。
    「もう取りきれないからパス」
    私は貴美香の髪から手を離した。
    「ソメイヨシノ、覚えておいて」
    「いいけど」
    桜にも種類くらいあるだろうけど、毎年見ている桜がどの種類かなんて考えたこともない。
    しげしげと眺めてこれがソメイヨシノと噛み締めてみるが、ソメイヨシノ以外の種類を知らないから、他の桜を見ても全部にソメイヨシノと言ってしまいそうだ。
    「桜色って可愛いよね。私も桜大好き」
    そういう貴美香はポケットから携帯を出して写真を撮りだした。その手がついで、とばかりに私にもレンズを向けてくる。反射的にニッコリ。
    パシャリ。
    「花びらの色は可愛いかもしれないけど、私は桜の木って不気味だと思う。前に何かで、桜の木の下には死体が埋まってるって聞いたことあるし」
    「やだ何それ、気味悪い」
    「埋まっている死体が養分になって、綺麗なピンクになるんだって」
    「えーっ、本当? 桜のピンクって春の色ってイメージだったのに」
    「いやいや。春ならだんぜん黄色でしょ」
    我が家は毎年、菜の花のおひたしが食卓に上るのだ。
    「とにかく私は春って言えば桜なの。だって春先にこんなにインパクトのあるピンクを見せられるんだよ、誰だって浮かれた気分になっちゃうし、それに春ってやっぱり……恋の季節じゃない?」
    「恋の季節? そうかなぁ、恋といったら夏じゃない?」
    「それは樹里が音楽に毒されてるからだよ」
    貴美香はうんうんと頷いて一人で納得している。
    私も負けずに対抗する。
    「なるほどねー。春は貴美香みたいな浮かれた変態も出ることだし。よし、春は恋の季節でもいいよ」
    「あー、なにそれ。ひどーい」
    「あははは」
    「桜は恋の色なのに、すっごくロマンチックなのに〜」
    ブツブツ言いながら、貴美香は桜を見上げてまた写真を撮りだした。その色白の横顔は桜と同じ色の頬をしている。
    ふいに貴美香は誰か好きな人ができたんじゃないかと思った。
    「恋の色か……桜を恋に例えるなんて勇気あるなぁ。散ったらお終いじゃない」
    私の言葉で気づいた貴美香は、やばいという顔をした。
    「散ってもまた来年咲くもん。だからお店で売ってる切花より永遠ってカンジするんだけど……だめ?」
    「ポジティブで結構だね。アタックして枝まで枯らさないようにね」
    にまにまと笑ってみせると、貴美香が慌てたようにこっちを見た。
    「あ、あ、アタックなんてしないもん」
    そう言う照れた顔はすっかり桜色に染まっている。
    「あーあ。女は恋に生きるものなのね」
    「何でそういうこと言うかなぁ」
    「貴美香は来年のお花見は、私じゃなくて男の子と来るんだろうなぁと思って」
    笑いながらそう言うと沈黙がおりた。
    しばらくの間の後で、貴美香が抑揚のない声でぽつりと呟いた。
    「それはないよ」
    私は気にせず貴美香の脇を肘で突いた。
    「ねぇねぇ誰が好きな人いるんでしょう? 教えてよ」
    「教えない」
    「教えてよー」
    「しつこいよ」
    私は肘を突く腕を止めた。貴美香はちっとも笑っていなかったからだ。
    「……どうしたの?」
    また風が吹いて貴美香の髪が私の頬を叩いた。
    顔に掛かった一房を手で掴むと、私は唐突に嫌な予感がした。
    急に黙ってしまった貴美香は、何を考えているのかちっとも分からない。伏せた顔に髪が掛かって、表情もよく読み取れない。
    「貴美香ってさ、何か私に言いたいことがあるんじゃない?」
    「…………」
    「言ってくれなきゃ分かんないよ。超能力者じゃないんだから」
    「……樹里だって、このごろ私に相談とかしなくなったよ」
    顔を伏せたまま貴美香は言った。
    「そうかな。二年はクラスが別だったからじゃない? そうだ、三年こそ同じクラスだといいよね」
    微笑みかけるけど、貴美香はこっちを見てくれない。
    「ごめん。私……一緒のクラスにはなれないんだ」
    「えっ?」
    驚いている私を置いて、貴美香はジャングルジムから飛び降りた。
    私に背を向けたまま、桜の木を見ている。
    「転校するの」
    貴美香はハッキリした声で言った。
    私は貴美香の言葉の意味が分からなかった。
    頭の中で漢字変換して、ようやく言葉の意味が浸透してくる。
    「なにそれ。嘘でしょ?」
    私もジャングルジムを降りて、貴美香の側に近寄った。肩をつかんで顔を見ると、貴美香は目に涙をいっぱい浮かべていた。
    「引っ越すの。だからここの桜は今年が見納めなんだ。ごめん、どうしても言い出せなくてギリギリになっちゃった」
    「うそ、冗談キツイよ……」
    混乱した私は貴美香の制服をギュッと引っ張った。
    「冗談ならよかったよ。でももう決まったことなんだって」
    「貴美香、本当に、本当に、引越しちゃうの?」
    「ごめんね樹里」
    私は貴美香に抱きついた。離したくなくて背中に回した手で、ぎゅっと抱きしめた。
    それから何度も貴美香に冗談じゃないかと問い詰めたが、その度に貴美香は丁寧に否定した。
    「いつ引っ越すの?」
    泣きながら鼻を啜って、私はようやく聞いた。
    「分からない。でも、もうすぐ」
    淡々とした貴美香の口調が憎らしい。
    「貴美香……行かないでよ」
    「ごめんね。どこに行っても友達だからね」
    「貴美香」
    「樹里」
    みっともなく私は泣きまくった。
    呆れたりしないで、貴美香は私が落ち着くまで頭を撫でたり背中を擦ったりしてくれた。
    それでも事実は変えられなくて、私は認めたくない気持ちのまま家に帰った。



    それが貴美香に会った最後の日だ。



    翌日の晩は小雨が降っていた。
    嫌な予感がして貴美香の家を訪ねたら、すでに家の中は空っぽだった。
    後で大人達から聞いた話をまとめると、貴美香の家は夜逃げしたらしい。家財道具も何もかも持ち出されているので、計画的な夜逃げだったようだ。
    玄関の扉には鍵すら掛っていなかったので、二階に上がって貴美香の部屋まで入ってみた。
    そこにも何も残っていない。当たり前だけど貴美香もいなかった。
    そうして、ようやく貴美香がいなくなったんだと私は悟ることができた。
    心の中に空白ができるって、よくお話の中に出てくるけど、それがどういうことか私にも分かった気がする。私にとって明日から地球が四角になりますと宣言されるより、貴美香がいないことのほうが受け入れられない。
    幼稚園の頃から当たり前のように一緒にいたのに、もう跡形もない。ゴミすらない部屋の中は貴美香の物が何一つ残っていない。想い出の品も何もかも、彼女は私に残していってはくれなかったのだ。
    まるで元からそんな人間はいなかったと、否定されたみたいだ。
    しばらくぼんやりしていたが、私はハッとして携帯電話を取り出した。電話なら連絡がとれると思った。
    でも携帯からは、通話ができないという冷たいアナウンスが繰り返されるだけだった。
    貴美香は私に、自分が存在したことすら忘れてもらいたかったんだろうか。
    私は貴美香に拒絶されたんだ。
    今までずっと一緒だったのに酷い。
    「…………」
    涙を流すのは悔しいけど、どうしても止められなかった。



    ずっと空き家にいても仕方ないので、私はあの公園に行ってみることにした。
    夜の公園はなんだか肌寒かった。昨日までは満開だった桜も、今日の雨ですっかり花が散ってしまっている。もう宴会のロープもなくなっていて、桜も寂しそうだ。
    私は桜の木に触れた。
    「ソメイヨシノか……」
    貴美香はこの桜の種類を教えてくれた。自分と同じ吉野だと言って、覚えておいてくれと言っていた。
    あの時は聞き流していたが、もう忘れることなんて出来ないだろう。一生のうちにこんなに印象に残ることなんて、めったにないだろうから。
    ふと見ると、桜の木の足元に土を掘り起こしたような跡があった。
    雨のせいで湿った土が緩く盛り上がっている。確か昨日はここにそんなものはなかった。
    私はふと貴美香がここに何かを埋めたんじゃないかと思った。
    迷うことなく素手で柔らかい土を掘り返す。貴美香が何か残したのかもしれないと思うと、どうしても確かめずにはいられなかった。違うかもしれないとは少しも疑わなかった。
    しばらく地面を掘り起こしていると、手にビニールのようなものが触れた。
    ためらわずに引っ張ると、そのビニールの中にはピストルみたいな物が入っていた。
    (なにこれ……?)
    一瞬おもちゃかと思った。でもずっしりと重い。黒光りしている金属は直感で本物だと思った。
    ふと土の中を見ると、そこにキラキラと光るものがあることに気づいた。もしやと思って引っ張り上げてみると、それは貴美香がいつもしていたネックレスだった。
    やっぱり貴美香だ。
    泥がついていたが、私はネックレスを制服のポケットに押し込んだ。
    周りに誰もいないかどうか、私はさっと見渡した。こんな時間の児童公園になんて、もちろん誰もいない。
    ピストルがどうしてここにあるのか、その理由は私には想像もできない。でも、これをもし貴美香が埋めたのだとしたら、きっと貴美香は今も苦しんでいるだろう。
    昨日までだってそうだ。いつから悩んでいたんだろう。どんな苦労をしてきたのだろう。
    それをこのピストルが全て物語っている。
    誰にも相談できなくて悩んでいたに違いない。あの日も貴美香は何かを悩んでいるように見えた。それはきっとこれのことだったのだ。
    あの花見の日に、私は確かに言った。桜の木の下には死体が埋まっていると。
    貴美香は私の言葉でピストルをあの場所に埋めようと思ったのに違いない。
    相談できなくて、私が言った何気ない一言がきっかけで、あの場所にピストルを隠すことにしたのだろう。
    私はしばらく考えて、ピストルを元通りにしておくことにした。
    そしてビニールごとピストルを土の中に埋める。人に気づかれないように、丹念に土を掛けて何度も繰り返し押さえつけた。
    私は誰にも見つからないうちに、その場から走り去った。



    貴美香の秘密を見てしまった。
    きっと私の知らない誰かからの預かり物なのだろう。そして貴美香はその人のことを好きに違いない。
    あの桜色をした頬が誰のためのものなのか私は知らない。知りたくもなかった。



    この日から私は、公園のソメイヨシノという名の桜を見守っている。
    そこに桜と同じ苗字をした人が現れることを信じて、ただ待ち続けている。
    私の手の中には貴美香のネックレスが残されている。
    このネックレスは私と貴美香を繋ぐ鍵だ。二人だけの秘密。
    貴美香はこれを取りに来るだろうか。
    いつになるかは分からない。でも私は貴美香とまた会えるような予感がしている。
    桜は春。桜色は恋の色。
    公園のソメイヨシノを見つめながら、桜色に染まった貴美香の頬を思い出していた。
    私はずっと貴美香を待っている。

    end
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  • 2007年04月30日 (月)
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  • 2007年04月30日 (月) 締切
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