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開催終了1月のお題【初夢】の投稿

詳細

2006年12月27日 20:02 更新

前回のお題の【クリスマス】も初めてのお題としては投稿してくれた人がいて大変助かりました。ありがとうございます!
また、読んでいただいて感想をくれた方、こちらもありがとうございます!

さて、1月のお題ですがみんなの広場でも言ったように、お正月にちなんで【初夢】とういことでいきます。

一応の文字数制限は5000文字で(多少はオーバーしても問題ないです)おねがいします。

では、みなさんの【初夢】ストーリーをお待ちしております。

コメント(5)

  • [1] mixiユーザー

    2006年12月30日 00:48

    タイトル「僕たちの持てる総て」


     徐々に夢が成長していくわけでもあるまいし。いくら最初の夢だからって、これは手を抜きすぎだろ。
     僕を中心に、真っ白な世界が広がっている。
     遠くまで際限なく広がる空の下、定規をあてがったみたいに凹凸のない、ただ白いだけの大地が広がっている。そして其の中心に何故か境目だけはっきりとわかる地平線が見える。
     想像力を放棄したとしか思えない、この真っ白なだけの世界に、僕は突っ立っていた。
     そうして、興味深そうにきょろきょろとあたりを見渡しているこの夢の持ち主と対峙している。
     僕と、彼と、それから彼方にある地平線
     それがこの世界の総て。
     僕たちの夢の総てだ。

     『僕たちの持てる総て』

    「救えねえな、真っ白なだけじゃねえか」
     興味深く周囲を見渡していただけの彼が、皮肉気に呟いた。
     冴えない20代の青年、格好だけ悲嘆ぶって、どうしたら人生が変わるのか、そんなことばかり考えるとはなしに考えているような、ありきたりの青年が、僕の前に立っている。
     表情や振る舞いこそ違えど、それは僕も同じだった。
     夢の中で、僕は僕と同じ姿をした彼と対峙しているのだ。
     いや、正確には違う。彼が僕と同じ格好をしているのではない。僕が、彼と同じ格好をしているんだ。
     体の内側から、心が、はっきりと告げている。
     (元は彼だ)と。
     だから僕はさしずめ案内人だろうか? この殺風景なだけの世界のナビゲーター、もし彼が僕は誰だと聞いたらそう答えるだろうし、事実、僕はそう答えた。
    「ナビゲーターだって? あんたが?」
    「そうだよ、こんな殺風景なところなんだ。いくら寝ているだけの間の事だと言っても、話し相手の一人もいないとさびしくて死んじゃうだろ?」
    「は! 救えねえ」
     呆れた、と彼は手を頭の後ろに組む。
    「で、そのナビゲーターさんは俺に一体何をしてくれるんってんだい? どっか楽しいところでも連れてってくれるのか?」
     こんなところで? と彼は鼻で笑った。
     言われて、僕はあたりを見渡してみる。
     確かに、案内するようなところなんて何もない、何一つない。
     思わず肩をすくめる。
    「話し相手くらいならなれるさ」
    「地味な夢だな、まったく」
    「夢にドラマチックさを求められても困る。第一この風景は君自身の責任だろ?」
    「まあ、半分くらいはそうか」
     中途半端に、曖昧に認めてから彼は地面を指差した。
    「なあ、ここってのは寝っ転がっても平気なのかい?」
    「見たまんまだよ、塵ひとつ落ちてない」
     そうかい、と彼は頷くとまるで草原にでも寝転がるかのように、体を倒した。
    「お、いいじゃねえか。寝転がってみると少し固い布団みたいな感じだな」
    「ぐーたらだな、夢の中で寝るなよ」
    「おつだろ? お前もやってみろよ」
     気持ちよさそうに横たわる彼を見て、僕は嘆息した。
     ただ真っ白なだけの世界に目を向ける。
    「何もないんだな、君には」
     僕の言葉に彼は不快そうに眉をひそめる。
    「何もないのはお前だろ、ナビゲーター君」
    「お前が原因だ、僕は君を基にしてここに居るんだから」
     言ってやると、彼はやってられねえとでも言いたげな顔をする。
    「心底、救えねえなあ」
     ひとりごちて、彼は目を閉じた。
    「夢の中で寝るなよ」
     僕が声をかけると、めんどくさそうに彼は目を開いた。
    「なんだよ、寂しいのか? ナビゲーター」
    「役目をまっとう出来ないじゃないか」
    「役目ってなんだよ、言ってみ? 聞いてやるから」
     そんなの決まってる。
    「話し相手さ」
     それしかできないからね。
    「……救えねえ」
     興味なさそうに彼は僕を見る。
    「俺はな、起きたくないんだよ。幸いここは布団みたいに気持ちがいい。何もないから余計なことにも煩わされない」
     だから、話しかけてくれるなよ、と彼が言う。
    「起きたくねぇなあ」と。
    「そんなことを言っても、夢はいつか醒めるもんだよ」
     そう言うと彼は、そうかい、と薄く笑う。
    「起きるから楽しいこともあるかもしれないじゃないか」
    「ねえよ。知ってんだろ? 楽しいことなんてあるわけねえ」
     ひどく醒めた口調でそう話す彼を見ていられず、僕は目をそらした。
    「これまではそうかも知れないけど、これからは違うかもしれないと思わないか?」
    (これまでも楽しいことなんてなかったんだ、これからだってあるわけない)
     心の中に声が響く。チクリ、と何かが心に刺さっているのがわかった。きっと、これは彼の声だ。
    「お前さ、そんな表情で言ったって、説得力ねえよ」
     思いのほか真剣に僕の顔を覗き込んで、彼は言った。
     僕の顔は、すなわち彼の顔だ。
     僕の言葉は、もうひとつの彼の言葉だ。
     だから。
    「それでも、楽しいことはあるかもしれない、明日から変われるかもしれないって、夢の中くらいはそうやって楽観してもいいじゃないか」
    「はは、いっちょまえに言いやがる。まあ、お前に慰められる俺もどうかしてると思うけどな」
     明日は変われる、そんな風に確信が持てたらどんなにいいか。
     新しく始まった今年はきっといい年になる、世界がそう笑いかけてくれたらどれだけ救われるか。
    「でも、変わらねえよ。御神籤で大吉を引いたって、良い一年なんてやって来やしない。気休めさ。」
    「気休めで良いんだよ。そういうもんだろ」
     僕がそう答えると、彼はよく言うぜと呆れて見せた。
    「慰められて、説教されちまった」
     救えねえ、と彼はつまらなそうに呟く。
    「お前さ、夢と現実と、どっちに居たいと思う?」
    「答える資格がないよ」
     僕は夢の案内人なんだから。
    「権利はあるだろ」
     自分の意思があるんだから、と彼は僕を指差す。
    「どう違うんだよ?」
     彼はうーんと伸びをする。それからゆっくりと口を開いた。
    「権利は自分で得るもんで、資格は人に与えられるもんだ。たぶんな」
     僕は突っ立ったまま、寝転ぶ彼を見下ろしていた。
    「ずいぶんと曖昧だ」
     僕の言葉に彼は軽く口の端をあげる。
    「テキトウだからな」
     起きたくねえなあ、と再度呟いて、彼はごろんと横になった。
    「どんな夢だって、いつかは起きることになるんだよ」
     彼は横になったまま声だけを返す。
    「わかってるよ、そんなこと。釈迦に説法だ。悪夢だって醒める、いい夢だって褪める。そんなもんだろ」
    「なあ、この夢は悪夢かな?」
     さあな、と彼は一度僕を見て「悪夢なんじゃねーの」と笑った。
     そうして話しているうちに、世界が光を放ち始めた。
     朝が来たのだと、僕にはわかった。
    「僕はきみの役には立てなかったな。時間切れみたいだ。」
    「俺はお前の役に立ったな、お前、笑えないくらい救えねえよ」
     何を言っているのかわからない。
     ただ彼は寝転がったまま、光を放つ部屋をまぶしそうに見つめていた。
    「救えないかもしれないけど、もう朝だよ。一日が始まる。だから、いってらっしゃい、だよ」
     こんな夢、忘れてしまっていても構わない、だから起きてまた一日をはじめてくれ。
     弱音も愚痴も、八つ当たりも、またいつか、ここで僕が聞くから。
     僕がそう言うと、彼はようやく立ち上がって、光の中で僕を哀れみの目で見つめていた。

     
     かわいそうだなお前は。
     いってらっしゃい、は俺の台詞だよ。
     ここが誰の作った夢か、まだわかってないんだろ?
     一年の始まりだって言うのに、他人事みたいに哀れんでるんだろう?
     この夢の主役はお前なのにな。
     空っぽなのは、お前なのにな。
     哀れなのは、お前なのにな。

     
    「そっか」
     僕か。
     思わず笑ってしまう。
     そんなわけない、と激昂することすら出来ずに。
     何が……気休めでいいだ。
     何が……夢の案内人だ。
     本当に、救えない。
     救えない奴だな、僕は。
     思わず「起きたくねえなあ」と、そう良いかけると彼は「時間切れ」だ、と笑う。
    「この夢でお前が俺に何を言ったと思ってるんだ。いまさらどの口が言うんだ? 起きたくねえなんて」
    「確か、権利くらいはあるんだろ?」
     ばーか、と彼はつまらなそうに言う。
    「資格がねーよ」

     光が、世界にあふれていく。
     世界を寸断していた地平線が消えて、僕も、彼も光の中に溶けていく。
     その光の中に、声音だけは優しく、淡々と、彼の声が響く。

     
    「またここに来たら、弱音くらいなら聞いてやるよ。愚痴も、ま、たまになら聞いてやらないこともない。八つ当たりは……気分しだいだな」

     そうして、一日が始まる。
     一年が始まる。


      「頑張んな。
         それから、おはようさん。」
  • [3] mixiユーザー

    2007年01月08日 07:39

    今度はがんばりました!
    ぜひあったかい系の目で読んでやってください。



    タイトル「交換屋」


    「いやな夢」
    鈴木鈴子は夢の内容を思い返して頭を抱え込んだ。
    布団から起き上がって最初の発声がこれ、というのも正月早々嫌なものである。これが普通の日に見た夢なら鈴子も気にしないでいたかもしれないが、今日が一月二日の朝なのだから、残念ながら初夢ということになってしまう。おばあちゃん子のせいで信心深い鈴子には、それが堪らなく不吉で嫌なことだ。
    元からあまり夢を見ない体質らしく、数年ぶりに見ることのできた初夢は嬉しかったが内容に問題があった。
    鈴子の見た夢はこうだ。ある場所で火災に巻き込まれて逃げ遅れた。避難しているうちにどうしてか突如現れた人食い虎に襲われて追いかけられ、そのうちに仲間から孤立し、屋根に登って逃げ延びたと思ったら今度は黒装束の忍者に誘拐された。忍者から辛くも逃げて森に迷い込むとまた虎に追いかけられた。そうしてやっとの思いで鈴子は両親が経営している呉服屋・鈴の屋まで戻ってきた。だが水害に逢って店舗は半壊。可愛がっていた猫のミケはとうに死んでいた。呆然としている間もなく、両親の元には借金の取りたて屋がドスを光らせてやってくる。借金のカタに鈴子は虎使いに売り飛ばされ、その虎使いが軽業師で、休んだ芸人の代役をする羽目になり、鈴子は綱渡り中に落下してしまった。落下した先は虎の檻の中で、もう虎に食われて死んでしまうと思ったところ……ようやく鈴子は目を覚ますことができた。
    最悪の初夢だった。
    とにかく追いかけられる夢が鈴子は大嫌いなのだ。夢がトラウマとなり、また人食い虎の悪夢を見てしまいそうで恐ろしい。猫は好きだが猫科の猛獣は確実に大嫌いになった。
    とりあえず正月の晴れ着に着替えた鈴子は、朝食でもある雑煮をなんとか食べると外出した。家に篭っているとまた眠ってしまい、またまた虎に追いかけられそうで怖かったからだ。


    ぷらぷらと振袖姿の鈴子が歩いていると、近所に住んでいる田中を見かけた。
    「田中先輩。あけましておめでとうございます」
    田中は鈴子の家と同じく、江戸時代から続いている老舗の和菓子屋の息子だ。似たような立場のせいか、昔からウマの合う友達でもある。年は鈴子より二つ上。学生時代からずっと田中先輩と通してきたので、すっかりあだ名が先輩になってしまっている。
    「鈴子じゃねぇか。あけましておめでとう」
    田中も和服姿だ。手には大事そうに風呂敷包みを抱えている。
    「お出かけですか?」
    「ああ交換屋へな、手土産持参が条件らしいから」
    「……交換屋?」
    鈴子は歩き始めた田中の隣で首を傾げた。
    「知らないのか。最近出来た店でよ、ちょっと奥まった場所にあるからまだ有名じゃねぇが、話によればどんな物とでも交換してくれるらしい」
    「火鉢と鍋とかですか?」
    「リサイクル屋じゃねぇんだ。物々交換なんて小さいことに使ったら勿体無いぜ。金で買えないような物でも、形がないものでも交換可能ってんだからよ。例えば夢とか幸福とかだな」
    「現実的じゃないものでも大丈夫なんですか?」
    「そうらしい。ある男が自分の一年分の幸福と、ある女からの愛情を交換したって話を聞いたな」
    「まあ」
    「交換に成功したらしく、その男は女と離縁したらしいぜ」
    何か自分にも身に覚えがあるのか、田中が目を細めて唇を引き結んだ。一見辛そうな表情から転じて、鈴子に笑いかけてきた。
    「お前も何か交換してもらいてぇもんがありそうだな」
    「あはは……正月早々夢見が悪くって」
    「そりゃいけないな。一年の計は元旦にありって言うだろ? 俺は厄払いの意味も込めて、交換してもらうつもりだ。――どうだお前も行ってみるか?」
    「私も?」
    「交換してもらいたいものがあるんなら、店主を紹介してやるぜ」



    その店は竹やぶの中を進んだ先にあった。人通りのある場所からは離れているので、確かに閑古鳥が鳴きまくっている。門構えは引き戸になっていて、脇には小さく『なんでも交換いたします』と書かれていた。砂利を敷いた飛び石を進むと、すぐ目前に引き戸が見えてきた。戸を開けながら「ごめん」と田中が言うと奥から返事がした。
    「いらっしゃいませ」
    店主は老人だった。充分に背中が曲がった老人は作務衣を着て前掛けをしている。まるでおでん屋の主人が年老いたような風貌だ。手に皺が多く苦労が伺えたが、鋭い目つきが気に障る。
    「交換を頼みたい」
    田中が言うと店主は鈴子に視線を送った。
    「そちらのお嬢さんは?」
    「わ、私は――」
    なんとか言い訳をしようとした鈴子の言葉を田中が遮った。
    「俺の許婚だ。あと数年したら女房になる女だから構わないだろ?」
    鈴子はハッとして田中を見上げた。もちろんそんな約束はしたことがない。だが田中の無言の圧迫が否定するなと言っている。鈴子は田中に合わせることにした。
    「その通りです」
    鈴子も店主に頷くと、店主は納得したのか座敷に上がるように二人に言った。
    通された室内は和室だったが、床に赤い絨毯が敷かれていた。金の装飾がしてある時計や江戸指物の金魚鉢が置かれている室内は、まるでご禁制の品で財をなした江戸の商人みたいだった。
    店主は置かれたテーブルとイスに二人を座らせた。田中が持参した手土産を差し出すと、主人はそこでようやく微笑んだ。
    「何と交換いたしましょう」
    鈴子は田中を見た。すると田中は鈴子に頷くことで先を促してきた。
    「私は初夢を交換したいのです」
    「初夢と何を交換いたしましょうかお嬢さん。形のない物は同じく形のない同士で交換が可能ですが、なるべく似た内容のものと交換なさってください。同じくらい重要なものでないとしっくりと嵌らないのです」
    「…………」
    鈴子は考えた。
    似たものと言われると困ってしまう。自分の見た別の日の夢と交換するのは、悪夢を見なかったことにはならないので無意味だ。それに鈴子はあまり夢を見ない。
    では田中の話にあった、今後起こる幸福と交換をしようかと思ったが、もしその幸福が一生のうちの一番の幸福だったらと思うと交換する勇気が出なかった。何か捨ててもいいような内容のものがあれば良いのだが、なかなか上手いものが浮かんでこなかった。
    すっかり悩んでしまった鈴子に隣の田中が耳打ちしてきた。
    『決められないのか?』
    『悪夢と交換できるものなんて、なかなかなくって』
    『だったら、俺の初夢と交換しろよ』
    『何で。いいんですか?』
    『いいってことよ。俺は鈴子のことを昔からの友達だと思ってる。お前が困ってるんなら手助けしてやりてぇからな。それに俺は打たれ強いから、悪夢くらいどうってことない。俺の初夢には富士が出てきたから、どうせ貰うなら俺の夢にしとけ』
    『先輩……ありがとう』
    鈴子は田中の友情にすっかり感激してしまった。
    『その代わり、俺のことを今日から親友だと思ってくれよな』
    照れたような言い方をする田中に鈴子は微笑んだ。
    『元から先輩は、私の一番の親友ですよ』
    鈴子は田中にもう一度微笑むと、主人に向き直った。
    「私の初夢とこの人の初夢を交換してください」
    「わかりました。それでは……明日には結果が出ていると思います。楽しみになさっていてください」
    店主が欠けた前歯を見せながら笑った。
    次に田中の順番になったが、自分の話は長く恥ずかしい内容なので遠慮してほしいと言われ、鈴子は先に店を後にすることにした。
    鈴子はあの悪夢から解放されるのだと思うと、嬉しくてたまらなかった。正月早々あんな悪夢を交換してもらえて、しかも縁起の良い田中の初夢を貰えるなんて最高だ。ここ数年まともな初夢を見ることができなかった鈴子は、田中が神様のように思えた。気軽に自分の初夢と交換してくれるなんて、そうそう言えないだろう。田中はなんといい人なのだろうか。
    鈴子は田中への友情を強くかみ締めながら家路を急いだ。



    一年後の正月。
    鈴子は布団から起きて溜息をついた。それを隣で寝ていた夫が「正月早々どうした」と言って気遣うように声を掛けてくる。
    「今年は初夢が見られなかったんですよ。去年の初夢が良すぎたのかもしれませんね」
    鈴子は元からあまり夢を見ない体質らしく、一昨年までは初夢を見ることができなかった。そんな鈴子だが、去年の正月だけは珍しく縁起の良い初夢を見たのだ。普段からなかなか夢が見られない鈴子だったが、そのせいで初夢は特別なものだと信じてしまったのだ。だから今年もと思っていたのだが、期待しすぎて逆に夢が見れなかったのかもしれない。
    「お前は信心深い女だな」
    「おばあちゃん子だったからですよ。良い初夢を見ればその年はご利益があると祖母が言ってました。それに去年見た初夢のお陰で貴方と結婚できたんですから、ご利益はありますよ」
    「富士の夢が見れたんだよな?」
    「そうですよ。貴方は、初夢が見れましたか?」
    「俺は……また虎に追いかけられる夢を見ちまった」
    「前にも言ってたあの? それ何度も繰り返し見てますよね?」
    「そうなんだ。正月早々参ったよ」
    「まぁ可哀相に。さあ起きて、おせちでも頂きましょう。きっと気分が変わりますよ」
    そう言った鈴子は優しげな目で夫を見つめた。
    田中は妻である鈴子を見つめながら、それでも満足気に笑った。



    一年前の交換屋で、田中は長年困っていた問題を一気に解決した。
    田中はずっと自分に纏わりついていた松子という女をどうにかしてしまいたかった。自分を好きだと言ってくるばかりでなく、しつこく付きまといをするような困った女だったからだ。
    その時にたまたま交換屋の存在を知った田中は、これも何かの縁だと思い策を練った。
    鈴子と初夢の交換をした後で、田中は主人にこんな交換を申し出た。
    『松子という女からの愛情と、鈴子からの友情を交換してほしい』
    幼い頃から鈴子が好きだった田中は、松子からの不要の愛と鈴子の友情を交換してしまうことにした。
    形が似ていなければ交換できないというのは、人の心のバランスも均等でなければならなかった。田中は鈴子に強い友情を植えつけることで、それをまんまと成功させたのである。
    そうして長年の想いが叶った田中は念願の鈴子と結婚した。
    鈴子はどういう仕組みか、交換屋のことを忘れていた。きっと田中への愛を疑うような要因だったから、すっかり消えてしまったのだろう。
    ただどうしても田中は虎の夢に悩まされ続けた。元は別人が見た夢を鈴子に押し付けてしまった罰なのだろうか。田中は二年前に松子が見た初夢が、巡り巡って自分に来てしまったことに身震いした。追いかけてくる虎が松子そのものに思えて仕方ない。虎の悪夢を見てしまうのは、田中の罪の残骸なのかもしれない。
    今は田中鈴子と姓を改めた妻がいれば、それで幸せだと思うことにした。
    交換屋は今もひっそりと営まれているらしい。


    終
    ------------------
    変なお話で失礼しました。江戸っぽくしたかったけど、途中で描写することに疲れてやめちゃいました。
    キャラの名前が適当に命名したっぽく見えますが、まったくその通りでございます。
  • [4] mixiユーザー

    2007年01月08日 19:50

    タイトル「寝覚めの感得」



     山のような書類を徹夜で片付け、眠りについたのが大晦日の夜だった。

     元旦の日の出は見逃さないつもりである。
     古い書に、年始め月始めを祝う心に本心が現れる、とあることが思い出され、それは清々しい気持ちになれる一年に一度の大事な決め事のような気がした。

     眼を覚まして布団を出てテレビをつけた。時刻はまだ初日より早い。
     キャスターがこんなことを言う。
     「大晦日の朝となりました」
     年は明けていない様子に見えた。

     妙な話だ。確かに30日にかけて徹夜で職場に詰めていたのだ。カーテンを開くと薄ら明るい。
     疑いなく朝なのである。

     と、ここで眼が覚めた。

     夢か、と呟きテレビをつける。
     しかし……テレビは大晦日であることを、まるで投げつけるように私に告げていた。

     疑問を抱いたというより、余程それが夢ではなかったろうかと思い、私は懸命に頬をつねった。
     まさかあの山のような仕事が夢だったというのだろうか? そんな筈はないのである。確かに私は仕事をしていたのだから。

     ある夜、姉は19時に寝た。
     翌日20時に起き出して時計を見て、
     「あーなんか、すっごいたっぷり寝た気がするんだけど。でも一時間しか寝てないんだよねー」
     と姉は言った。

     あんたは25時間も寝ていたのだよ、と説明すると、
     「一日損したー」
     とぼやいた。無論ぼやくしかあるまい。ところで私の場合「一日逆戻りした」とぼやくべきだろうか? 適当なセリフが思いつかない。

     だがカレンダーを見てビックリした。12月が31日まであるのだ。

     「あれ、一日多いぞ!」
     慌ててスーツで飛び出した。会社までは徒歩20分である。
     と、ここで眼が覚めた。

     これが私の初夢である。
     私は今日が元日なのか大晦日なのか、俄かに分からなくなって、鏡の中に今日の自分ではなく昨日の自分を見つけてしまったような、それでいて、昨日へ至る思考プロセスが一年を隔ててしまっている現実に胸を打たれているような奇妙な抱懐をして、こうして会社へ出向いてしまったという顛末である。

    <了>
  • [5] mixiユーザー

    2007年01月27日 22:27

    タイトル【ピース -欠片-】


    いつものオトコの子が目の前にいる。私はこの子とこの堤防の上を歩くのが大好き。
    ここは辺りにたてものがないから私達の町がちっちゃくなって上からながめられる。2人でそれを見るのが好き。
    今はまだ朝早いのかな、自分から遠くのほうが白くなってよく見えない。
    見えるものは砂と小石の道とそのはしっこに緑の草がいっぱい。そしていつものオトコの子。
    「ねぇ、今日は何してあそぶ?」
    オトコの子がうれしそうな声で聞いてきた。
    「う〜ん、何しようか?」
    いままでは何してあそんでたかな?一生けんめい考えたけど、何も出てこない。
    「それじゃぁ、僕の特別なもの見せてあげるよ。まだ誰にも見せてないんだ。」
    誰にも見せてないって・・・
    「私が一番目ってこと?」
    胸がドクドクといい始める。耳や首と顔の付け根なんかが熱くなる。見たい。すっごく見たい。
    この子の特別なものを1番目に見れるなんてすごくうれしい。

    オトコの子は私の手をとって堤防の上の道を歩き始める。その手がすごく冷たくて、さわった時すごくひやっとした感じが手に伝わってきた。今日は天気が悪いから手も冷めちゃったのかな。早くお日様でないかな。
    そのまま歩いていると、さっきから見えてた白い空気が動いているのに気づいた。大人の人がすってるたばこのけむりがうすくなったみたいな感じ。そんなものがゆっくりふわふわと動いてる。私はそれが気になって手をのばす。
    「さわっちゃだめ!」
    いきなりオトコの子が大きな声で伸ばした手をつかんだ。すごく力いっぱい。ホントにさわっちゃいけないんだ。
    私が手をひっこめるとオトコの子はニコリとわらってまた手をとって歩き始めた。オトコの子に手を引かれながらよこの白い空気を見るといっしゅん何かがうつった。よく見えなかったけど、テレビみたいに何かがうつった。
    「ねぇ、何か見えたよ?」
    オトコの子は手をとって歩いたまま。ひょっとしておこったのかな・・・。

    「あれはカケラなんだ。あの中に何かのカケラが入ってるんだ。」
    しばらくすると小さいけどよく聞こえる声でそういってくれた。私にはなんであんなところにカケラが浮かんでいるのか分からない。それも白い空気に包まれて。だったら大人の人がすうたばこの中にはカケラがいっぱい入ってるのかな。だって白い空気がもっとこいもん。
    「あれはね、カケラだからくっつこうとするんだ。何にでも。パズルはくっつけてつくるでしょ?でも、パズルのえがらがちがうのをくっつけたら、ぜったいさいごまで作れなくなる。」
    そうだ。1つのパズルのカケラからは1つのパズルしか作れない。1つでもカケラがちがうと作れなくなる。別のものになっちゃう。
    「だからぜったいさわっちゃだめだよ。」
    オトコの子はその時だけふりかえって私に言い聞かせるようにそう言ってくれた。私もぜったいさわらないことにした。この子の言うことは信じた方がいいから。

    私がうなずくとオトコの子はまたニコリとわらってすすみ始めた。
    するといつのまにか私たちは堤防ではなく森の中を歩いている。あれっ?さっきまで堤防を歩いていたのに。
    さっきの白い空気もない。砂と石の道じゃない。はっぱや草木の道だ。空気だって森の中に来たときのあのすーとした空気だ。でも、まぁいいか。オトコの子がいるし。
    そう思ってオトコの子についていくと次はいつのまにか海を歩いている。砂浜と海のしょっぱいにおいと少し強い風。やっぱり海だ。それにさっきからずっと歩いてる。ちょっと怖い。
    「ねぇ、いきなりちがうところ歩いてるよ?それにすっごく歩いてるよ。」
    オトコの子は手を取ったまままた話してくれた。
    「ふつうには行けないんだ。ちょっとぐるぐるしないといけないところにあるから。でも、もうすぐだよ。」
    ”もうすぐだよ”が怖さをふきとばしてくれた。うれしかった。

    そのまましばらくすると今度はさっき来た森の中に入っていく。あれっさっき来たのに。迷っちゃった?
    そんな風に思っていて辺りを見たらさっき通った同じ道なのに何かちがう。何がちがうんだろう。よくわからない。でも、違う。
    私がキョロキョロと辺りを見てるとオトコの子が歩くのをやめた。
    「ついたよ。この中にあるんだ。」
    オトコの子の前には一かいだての白いカベと赤い屋根にえんとつがついた家があった。そのえんとつからはさっきみた白い空気が出たり入ったりしてる。ここからあのカケラが出てるの?

    そうやって家をじっと見てるといきなり森の木が一本、ドンッと音を立てて消えた。何が起こったのかわからずオトコの子に目をやる。
    「やっぱりばれちゃったかな・・・。」
    オトコの子はかなしそうな顔をしている。
    ねぇ、ばれちゃったって何がばれちゃったの?なんでやっぱりなの?分からないことだらけだよ。
    するとまた別の木がさっきの音を立てながら消える。
    ドンッ、ドンドンッ、ドンッ・・・やだ、怖い。
    「ねぇ、ここから離れよ?このままいたら・・・」
    しかしオトコの子は何も言わずにただ首をよこにふる。なんで、どうして、だってこのままじゃ・・・。
    するとオトコの子はポケットから金色のカギを出し私の手を取ってにぎらせた。
    「大丈夫、キミは大丈夫だから。」
    何で大丈夫なのか全然わからない、けどすごく安心する。ほっとする。なんでだろう?
    「このカギは?」
    オトコの子はさっきの家を指差す。
    「あの家のカギ。持ってないとぜったいに入れない。キミに持っててほしいんだ。」
    オトコの子がそう言うと、私のからだはフゥッとうきあがり始めた。
    あ、あれ、どんどんオトコの子とはなれていく。やだ、やだ、やだ。
    「ねぇ・・・ねぇ!また会えるよね?会えるよね?」
    オトコの子はニコリと笑ったままこっちを見上げてる。どうして何も言ってくれないの?
    あっという間に周りの木はなくなってしまって森は家とオトコの子だけになってしまった。
    そして私もどんどんはなれていく。
    ズダアァァン!
    さっきまでよりもっと大きい音がした。
    ついに森までが消えてしまい残ったのはまっくらな中に家とオトコの子だけになった。
    この先はどうなっちゃんだろう?ひょっとしてオトコの子も消されちゃうの?そんなのやだよ。ぜったいやだよ。
    するとあの白い空気が家をおおい始めた。どんどん白い空気がふえる。いろんな方向から家をめがけてやってくる。
    白い空気は黒くなっていって、少しずつまっくらとまじっていく。オトコの子のまわりもあの空気がまじっていってどんどん見えなくなっていく。
    オトコの子はまだニコリとわらってこっちを見てる。
    「私、私ぜったい来るから。会いに来るから。」
    するとさっきまでうきあがってたからだが、ものすごい速さで後ろにひっぱられていく。あのオトコの子もちっちゃくなって見えなくなっていった・・・。


    「よーし。これで終了だな。明けましておめでとうってやつだ」
    マスターの声が響く。1年分のキャッシュ削除作業が終わったのだ。まだ整理できない。さっきまでのあれは・・・?
    「どうした?どこか調子でも悪いのか?」
    立体映像に映る私の表情が優れてないみたいだ。それもそのはず、いままであんなものは見たことが無かった。
    あれが人間が見るという”夢”なのだろうか。プログラムされたはずの私が何であんなものを見たのだろうか?なぜあの少年を知っていたのだろうか。いろんな疑問がよぎる。
    しかしいくら検索しても私の情報の中に答えは見つからない。
    「新年明けましておめでとうございますマスター。あの・・・先ほどスリープしている間おかしなものを見たのです。」
    さすがに”夢”とは言えない。私はそんなもの見るように作られてはいないし。
    「おかしなもの、か・・・1年分のキャッシュの影響かもな。」
    キャッシュ?ネット上のデータを一時的に置いておくその領域がいったいどうして。
    「ネット上には様々なデータがある。お前はそれを直接取り込みそれらの知識を取り込むようにプログラムされているからな。ひょっとしたらそれがお前の視覚領域に影響を与えたのかもしれない。」
    なるほど。もし、マスターの言うことが本当ならさっき見たものは色んなキャッシュが集まってできたってこと?じゃあ、あの少年も・・・。
    「おい、お前その手の中の物どうしたんだ?」
    マスターに言われて手を広げると手の中には金色の鍵があった。そうあの鍵だ。少年が最後にくれたあの金色のカギ。
    これがあるといういことは夢でも幻でもないあの少年はいるんだ。いまもあの家といっしょに。私がこの鍵で開けに来るのを待ってる。この広いネットのどこかに隠れて待ってる。
    もう顔も思い出せない。何処にいるかも分からない。でも約束したから。

    絶対に会いに行くって。
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  • 2007年01月31日 (水)
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  • 2007年01月31日 (水) 締切
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