杉本博司は70年代から美術活動を始め、初めはアメリカで、そして80年代には代表的な写真作品「ジオラマ」「劇場」「海景」で日本でも名前が知られるようになった。20世紀のうちに写真を芸術に高めた最も重要な貢献者のひとりである。現在、彼の活動は写真にとどまらず、彫刻、建築にまで及んでいる。その仕事ぶりは、昨年完成した「IZU PHOTO MUSEUM」の設計・造園から、ロックバンドU2のアルバム「NO LINE ON THE HORIZON」ジャケット写真提供まで幅広く、昨年の高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)受賞のニュースも記憶に新しい。 雑誌『BRUTUS』で杉本の特集を2度も組み、彼に親しい編集者・鈴木芳雄によると、美術家・杉本を読み解く鍵はその少年時代にあるという。雑誌『子供の科学』『鉄道模型趣味』などの熱心な読者で、工作少年、鉄道マニアだった少年スギモトから、世界的アーティストHiroshi Sugimotoへと続く一筋の道。