mixiユーザー(id:1489902)

2008年04月29日23:57

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5万hit記念自作短編

せっかく書いたので、はずかしながらこっちに載せちゃうゾ☆
くだらないので、忙しい人は読まないでおk





「例えば、今日みたいに人が多いときに出かけるとさ、朝家を出てから、夕方家に帰るまでに、何人ぐらいに会うと思う?」

おもむろに隣の女性が話しかけてきた。隣の女性、つまり、私の彼女は、意味があるようで、特にないことを考えるのが趣味だ。
私たちは手を繋いでいる。恋人繋ぎは、しっかり重ねた手のひらから、お互いの考えが伝わるような気がして好きだ。ただし、今回の彼女の思考は、どうも彼女の体の中でぐるぐる回っているだけのようで、私の手を伝わってこない。

「さぁ、何人ぐらいでしょうね。」
「仮に5万人としておく。」

彼女は仮定の話が好きだ。意味があるようで、特にないこと。

「この5万人は、みな『袖振り合う』縁の中に含めるのかな?」
「さて、それは個々人の線引きでいいんじゃないですかね。」

あっさりと、自分が思うままに答えると、彼女は「そうか。」と納得した。
彼女が納得した一方で、私は5万人について考える。
街で見かける人々。顔も体も千差万別、でも皆、自分の人生に一生懸命で…。
5万人という大量の数字を思い浮かべていると、なんだか背筋が凍えた。
地球上には60億という人間がひしめいているというのに、たかだか5万人を想像しただけで怖ろしくなる。5万人の中に自分を置いたときの、自分の小ささが哀しくなる。

「5万人でも何万人でも良いけどさ、今日はお日様があったかいねぇ。」

彼女の脈絡の無さは芸術的だ。私が愛する彼女の一部。

「あったかいのは、君と歩いているからかもしれないね?」
「…もう、5月になるからでしょう。」

握りなおした彼女の手は、春の空気と共に、私の心を暖めた。
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