mixiユーザー(id:512591)

2005年12月13日18:26

191 view

押し付けられた借金が貧困を生み出す

★借金が貧しい国々を押しつぶす

「カネ貸し援助」などによる借金の返済のために
「途上国」とよばれる国々は押しつぶされそうになっています。

利子に利子がつく複利の借金返済の支払い方法をとっているため
年々、債務は膨らみ続けています。

途上国はこの累積債務の返済のために

医療や教育、福祉の予算を削り

日用品(主食や油)や農業への補助金を廃止し


多くの公務員をクビにします。そのしわ寄せを一番に受けるのは貧しい人びと
とくに女性と子どもです。

 
世界ではもう20年ほど前から
貧困問題の原因の1つにこの累積債務があると認識し
最貧国の債務を帳消しにすることで貧困問題を解決していこう
という意見が強まっています。

20世紀末には、ジュビリー2000という
国際的な「債務帳消しキャンペーン」が起こり
その結果、さまざまな制約はあるものの
アフリカを中心とする貧しい国々の債務の約3分の1が帳消しにされることになりました。

それでも中途半端な債務削減では問題は解決せず
さらに徹底的な債務問題への取り組みが求められています。

豊かな国々の中でも
貧しい国々の債務の帳消しにとくに後ろ向きなのは日本です。

「帳消しは借り手のモラル・ハザード(借りても返さなくていいと図に乗る)
を助長する」「国民の大事なお金を安易に帳消しにできない」という理由です。
なるほど。でも、ほんとうにそうでしょうか?

まず、途上国はほんとうに返していないのでしょうか?

アフリカは1970年から2002年まで、累積で約5400億ドル借り

約5500億ドル返しました。

それなのにまだ約3000億ドルの債務を抱えています。

実態は、借りた以上の額を返済し

いまや、途上国が先進国を「援助」し続けている状態なのです。

途上国は毎年、約4000億ドルを債務返済として先進国に送り続けています。

一方、ユニセフと国連開発計画(UNDP)は
毎年約800億ドルを10年間使えれば
貧しい国の人びとのベーシック・ヒューマン・ニーズ(衣食住など人間らしい生活に必要なもの)を満たせるだろうと試算しています。



★貸す側に責任はないのか?

 「国民の大事なお金」なら
貸す国の人びとの役に立つかどうか
ほんとうに返済できるかどうか
慎重に審査して貸し付けていなければなりません。

それはきちんとチェックされているのでしょうか?

フィリピンには21年間(1965年から86年まで)、マルコス大統領という独裁者がいました。

戒厳令で反対派をいっせいに逮捕したり
議会を停止して国民の自由を制圧していました。

その一方ではマルコス一家と取り巻き連中が利権を独占し
海外から借金をしまくり、マルコスが大統領になる以前

10億ドルだった国の債務は、20年後には280億ドルに膨らんでいました。

その中には、最大の援助給与国であった
日本が給与した5000億円の円借款も含まれています。


マルコスが人民革命で追い出された時
海外に持ち逃げした資産は100億ドルにのぼるといわれています。

でも、これは決して「終わった話」ではありません。

マルコスは債務返済に優先的に予算を回すという大統領令を出していました。

その後の政権もこの方針を引き継いでいるため
毎年政府予算の30%以上が債務返済に回されているのです。

フィリピンは、その後も赤字財政を借金で埋め続け
現在の債務残高は600億ドルに達します。

そのため、社会サービスは後回し
2005年には教育費が全予算に占める割合は15%
医療保険費に至っては、わずか1.5%
しかありません。

まったく役には立たず
逆に国民を圧迫するために使われたこのような借金まで
国民は支払い続けなければならないのでしょうか?

じつは、このような債務は支払わなくてもいいという国際法があるのです。

これは「汚い債務(Odious Debt)」といわれるもので
20世紀の初め、ロシアのアレクサンダー・サックという法学者がいいはじめたものです。

「独裁政権が、国民の承認を得ずに
もっぱら自分たちの利権のためだけに作った
債務の返済を後継の民主政権は拒否できる」という考え方です。

最近では「債務帳消し運動」を進めるグループが
この「汚い債務」という言葉をもう少し広い意味で
「不当な債務(Illegitimate Debt)」とよび

国民の役に立たず、無駄に終わったプロジェクトのために発生した債務や
高利のために膨らんだ債務などもその中に含めています。

独裁者に貸し出した側の責任を
貧しい国の人びとに負わせるべきではない

との主張です。

それでも返済を求めたいなら、債権者は独裁者たちに請求すべきだと主張しています。

貧しい国が欧米諸国から借りている債務には
この「不当な債務」に当てはまるものがたくさんあります。

むしろ、「正当な債務」の方が少ないかもしれませ。

途上国が債務を抱えるようになったきっかけは
欧米の銀行や政府が
当時経済発展をしようとしていたアジア、アフリカ、中南米に
際限なくお金を貸し付けたことと、米ソ陣営にわかれた東西冷戦でした。

米ソ両陣営は自分たちの側に途上国を囲い込もうと
たとえ独裁体制であろうと援助をおこないました。

実際、1960年代から80年代にかけて

西側諸国はむしろ独裁体制の方に多く支援をおこない

逆に貧しい人びとのために政策を採ろうとした政府には
財政面でプレッシャーをかけたり、しばしば軍や反政府勢力をあおって
政権を転覆させたりしました。


援助された資金で武器が購入され

援助資金の一部はかすめ取られて
西側諸国の銀行にある南の国の政府高官の個人口座に不正蓄財されました。


この「不当な債務」を理由に債務の帳消しを要求していくことは可能でしょうか?

フィリピンでは、マルコスの後を継いだアキノ大統領が
マルコス政権時の不正蓄財を徹底的に調べました。

その中で日本のODAプロジェクトを受注した日本企業が
価格の15〜20%分をキックバック(わいろ)として
マルコスや取り巻き連中にばらまいたことが明らかになっています。

(企業名もはっきりしています)。

しかし、アキノ大統領はそのまま債務を返済し続ける道を選びました。

コトを荒立てて、日本や他の国から援助が来なくなることを恐れたからです。

他の多くの途上国も、独裁政権時代に作られた債務の帳消しを願い

ときどき「我々が抱える債務は不当なものだ」と口にしながらも
そこから先に踏み出すことができないでいます。

一方、2004年、意外な人物が「独裁者の債務の帳消し」を主張しました。

当時のジョン・スノー米国財務長官です。

米国は「フセイン独裁体制時にできた債務をイラクの民衆が背負うべきではない」と、
イラク債務の帳消しを他の債権国に要請したのです。

イラクの石油収入を、他国への債務返済に使われたくない
ということがほんとうの動機だとは思いますが。


最貧国の債務削減交渉には異常に長い時間をかけるG7を始めとする債権国も
この時はあっさりと80%の債務帳消しを承諾しました。

イラクに対してできることが、どうして他の貧しい国々にはできないのでしょうか?

2006年10月、ノルウェー政府は
世界で初めて「不当な債務」であることを理由に
1970年代に自国がエジプトなど5カ国に貸し付けた債務を帳消しにすると発表しました。

債務帳消し運動の目的は「かわいそうな国の債務を減らしてあげる」ことではありません。

貸し付けの実態を明らかにすることで、貸し手、借り手の責任が明らかになります。

これが、南が北からの貸し付けに一方的に依存し
北がすべてを決めていく構造を変えていく第一歩になるのではないでしょうか。
(大倉純子)



★国際債務の世界は無法地帯

2006年4月、高利を課したり、強引な取り立てをしたという理由で
「サラ金」のアイフルが営業停止になりました。

借りる人の返済能力以上の貸し付けや
脅迫まがいの取り立てが法に触れたのです。

もちろん一定以上の高金利は無効になります。

万一返せなくなっても、家財すべて没収ということにはなりません。
生活に必要なものは保護されるのです。

ましてや「目や腎臓を売って借金を返済しろ」と迫るような
暴力金融の経営者や社員は逮捕されます。

このように、国内では貸し手側も責任ある態度を取らなければならないと
義務づけられているのですが
世界には何が何でも、どれだけ多くの人が死んでも
返さなくてはいけない借金があります。

それが、貧しい国が豊かな国や国際金融機関(世界銀行や国際通貨基金など)
に対して抱える債務です。

途上国の債務問題は、西側諸国の銀行や豊かな国々が
いまだ専制的独裁的な体制が多かった途上国に
多くの「開発」資金を貸し付けたことにはじまります。


ところが、1970年代に、米国が急に金利を引き上げたこと
途上国の唯一の売り物である原料(一次産品=農作物や鉱物資源)の
輸出価格が劇的に下がったことから
途上国の苦しみがはじまりました。

利子で手持ちの借金は膨れるのに、輸出しても輸出しても収入は減る。

さらに借金をしなくてはならないのですが
今度は「信用のない借り手」ということで、高い利子を課せられるのです。

国際社会には、「破産」という制度がありません。

国が借金でどうにもならなくなっても法的な救済は何もないのです。

「不当な借金だから無効だ」と認めてくれたり
「この国はもうこれ以上支払いできないから、貸し手はここまでで我慢しなさい」

と中立の立場で仲裁してくれるところもありません。

そうするとどういう事が起こるでしょう?

力の強い者のいい分が通るのです。

そして、1980年代 まさに権力や立場を利用した先進国の搾取が
行われていきます


1982年、ついにメキシコが「もう借金を返せない」とする宣言(デフォルト宣言)を
しようとしました。

そのころの貸し手は民間銀行が中心でした。

メキシコに続いて他の国々も債務不履行宣言をしたらどうなるでしょう?

青くなった銀行は、国際通貨基金(IMF)という国際機関に泣きつきました。

IMFは、債務返済に行き詰った国々に
、「絶対に債務不履行などしないよう」圧力をかけました。

そして、その場をしのぐためのお金を貸す代わりに
IMFが決めた経済政策を実施するよういいました。


この時貸し出された資金はほとんどが公的資金
つまり私たちの税金などからの資金です。

債務国はそれで民間銀行に返しました。

だから実際は、税金で民間銀行を救済したのです。
貧しい国を救うのではなくて……このIMFが課した経済政策を「構造調整政策」とよびます。

歴史も文化も政治も経済規模も違う途上国に対し、なぜかおなじ内容の政策が押しつけられました。
商品作物(コーヒー、ココア、砂糖など)の輸出を中心とする経済にして
輸出しやすくするために通貨を切り下げる。

たとえば日本が通貨を切り下げると「円安」になり
輸入品は高くて買えなくなり
輸出品は安くなって売れるので貿易が黒字になる。
その資金で借金を返させる*。

政府の支出を減らすため、教育・医療や保健の予算を削減する。

食料や農業などへの補助金を撤廃し、公営企業を民間に売り払う。
その資金で借金を返済させる。

海外の投資をよび込んで経済を効率的にするために
海外企業からの資本流入を自由にさせ
その企業が本国への利益を運び出すことを自由にさせる。

と同時に金利を引き上げ、海外の投資家にとって魅力的な環境にする。

これらの政策の目的は、債務国に外貨(ドルや円など、海外の強いお金)を稼がせ
スムーズに債務返済をさせることでした。

その結果何が途上国で起こったでしょう?

パン・油の値段や交通費が高騰し、学校や病院が有料化されました。

小さな農家には補助金もなく、金を借りるにも利子は高く
都市のスラムに出るしかなくなりました。

食料自給国の多くが輸入国に転落し、貧しい人たちは食料さえ買えなくなりました。

木材や鉱物資源が乱開発され、森で暮らす人びとの生活が破壊されました。

公務員が大量に解雇され、失業が増大しました。

水道事業などが多国籍企業に買い取られ、料金が高騰する一方で
きれいな水が届かないというケースが続出しています。

一方、原料の種類は多くはないのに
そこに数十カ国もの国がおなじ品を輸出したため
価格が暴落してしまいました。

生産を少なくして価格を上げればよいのですが
借金返済のためにもっと生産して赤字を穴埋めしようとしたため
価格は下がり続けることになってしまいました。

構造調整政策で、借金を返済するのはますます難しくなったのです。

この分はけっきょく、貧しい人たちに負担させることで穴埋めされました。

1980年には世界で5億人(9人に1人)だった絶対的に貧しい状態の人びとは
今では12億人(5人に1人)に増えています。

その間、多くの国では平均寿命が延びましたが
債務国であるアフリカを中心とする18カ国では逆に下がり
中には現在平均寿命が40歳に届かない国も出てきました。

ユニセフの試算では3秒に1人、5歳以下の子どもが貧困のために死んでいます。

世界規模で、また、各国内でも貧富の差が拡大しています。

貧困は「債務による大量虐殺(ジェノサイド)」といわれます。

債務は地震や天災と違って目に見えませんが
あきらかに多くの人の命を奪っているのです。


このような問題を引き起こしながらも

援助や債務削除の条件として
この構造調整政策の実施が
途上国に20年以上義務づけられてきました。


それでも途上国はいまだに債務の重荷にあえいでいます。

一方、先進国は安い価格で原材料を輸入し
「開発援助」で途上国に作られた「自由貿易加工区」で
免税を受けながら、多国籍企業が途上国の人たちを酷使しています。

ここでは労働組合の設立さえ禁止されるのです。

さらに途上国の金融市場では
先進国の投資家がギャンブルのように投資し
経済を混乱させています。

一番不思議なことは構造調整政策で

もっとも生産的でない分野である軍事支出の削減が
つい最近まで要求されなかったことです。

これは武器の70%が米英仏から輸出されていることと関係があるのでしょうか?


国際経済社会での債務国の立場は非常に弱いのです。

IMFに逆らって国内重視の政策を採ったために国際的に孤立させられ
数ヶ月でその政策を諦めざるを得なかった国もあります。

1999年からは世界銀行・IMFが
「貧困削減計画の策定を債務削減の条件とする」と決めたのですが

実際の内容は「経済の自由化を中心とする構造調整のままだ」
と南のNGOから批判されています。


せっかく債務削減で浮いた資金も
世界銀行・IMFの指示通りにしか使えないことになっています。

問題は、先進国がどの債務をどんな条件でどれだけ帳消しするかを
一方的に決めていることです。


彼らにとって「債務問題の解決」とは
あくまで「どうすればできるだけ多く返済させ続けられるか」なのです。

「今ある貧困をなくすために、どれだけ債務の帳消しが必要なのか」
と考えるNGOとはまったく発想が逆です。

債務返済に消えていく資金を、貧しい人たちの手に取り戻すには
債務国の政府・市民だけの運動ではなく

貸し手である先進国側の市民の運動が不可欠です。

世界の大半を占める途上国の環境破壊や不況は
先進国にも大きな影響を及ぼします。

債務問題の解決は、世界規模で持続可能な生き方を進めることに繋がっていくのです。
(大倉純子)

2 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する