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2006年08月31日20:13

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【独話】 死にゆく人と何を話すか vol.3

ターミナルケアの病院で日常清掃のアルバイトをしていた時のお話。

ある日、50代の男性が入院して来ました。ターミナルケアの病院なので、この男性も末期がんです。
おとなしい方で、何事もなく毎日を過ごされていたのですが、一週間ほどして、事件を起こしました。

病室は2階だったのですが、廊下の窓から飛び降りようとしたのです。2階には事務室も、看護婦さんの控え室もありました。そこで飛び降りようとしても、なかなか出来るものではありません。
もちろんみんなに取り押さえられたのですが、普段からは想像出来ないほど大暴れしていました。

「死なせろ!」
「早く楽になりたいんだ!」
「お前らはまだ死なないじゃないか!お前らに慰められたくなんてないんだ!どうせすぐに俺は死ぬんだ!」

結局暴れ疲れて、男性は部屋に戻され、鎮静剤を注射されました。暴れて最後の体力を使い切ったのか、彼はほとんど目を覚ます事もなく、そのまま2日後に亡くなりました。

飛び降りようとした彼を取り押さえた時、看護士さんや、先生方は、彼になんと言ったのでしょう。もしそれが僕だったら、僕は一体なんと言ったでしょうか。

もうすぐ亡くなる事は誰もが知っているのです。もちろん本人も。「生きろ」、とはなかなか言えません。自殺をとどめる、その根拠が、どこに、あるのでしょうか。あとは苦しむだけ、痛み止めのモルヒネによって、ぼんやりとした日々を送り、そのまま意識も朦朧となって、亡くなるだけ、なのに。

最後の日々に意味なんてあるのでしょうか。生き続けなくてはならないのでしょうか。残されるもののエゴとはいえないでしょうか?

僕には分かりませんでした。今でも分かりません。では彼をそのまま死なせてやればよかったのか、といえば、それも違う気がします。

あなたはどう思いますか?死にゆく人が自殺しようとした時、あなたならなんと言いますか?

そして……、われわれもまた、ある意味死にゆく人なのです。ある意味最期の日々を過ごしているのです。あなたは自分になんと言いますか?
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