粉塵公害が社会問題となっているバンコク。とあるゲイ男性が掃除機を買ったはいいが、何故か夜になるとその掃除機が昨日吸い込んだゴミを吐き出していた。そこで修理を依頼したところ、修理にきたクローンと名乗る男が、掃除機に憑依した幽霊の逸話を語りだす…
家族営業の工場では空気清浄機の製造ラインが稼働していた。が、工員トックが酷い咳の果てに死んでしまったことから彼の霊が居着いてしまい、工場は閉鎖を余儀なくされる。頭を抱える工場長スマーンには、もう一つ悩みがあった。息子マーチの嫁ナットが、掃除機に取り憑いて現世に戻ってきたのだ。掃除機とラブラブになる息子を止めるため、スマーンはあらゆる手を使ってナットを追い出そうとするが……
「ユースフルゴースト」
以下、ハッピー・ネタバレ・デイ。



しょーもないラブコメを想像して観たら…大いに裏切られた。それがいい方に裏切られたのか文字通り残念な裏切られ方だったのかイマイチ確証がないんだが、まあ観て損はなかったかなと。
てっきり掃除機だから役立つ=ユースフルというタイトルなのかと思ったらそうではなく、「便利で使い勝手がいい」という意味だった。似て非なるもので、便利という言葉には搾取のニュアンスがある。この映画は、実は経営者と労働者、権力者と市民という搾取する側・される側の関係についての話だったのだ。搾取構造の犠牲者だった労働者が幽霊となり、ヒロインの掃除機幽霊が義母に認められようとその労働者幽霊を排除、さらにはある夢の実現のため大臣に媚びを売り、権力者たちを悩ませる幽霊たちを駆逐する道を選んでしまうという展開。幽霊の駆除とは、その幽霊を愛する者の記憶を抹消すること。これが2010年の暴動事件の悲劇の記憶を消していくという流れになり、パーソナルな幽霊譚が一気に社会批判ドラマに転調するので、面食らってしまった。光州事件を扱う韓国映画に通じる転調具合である。これを「面白い」ととるか「期待はずれ」ととるかで評価が割れるとこだろうな。実は性差別の話でもあり(ゲイはつらいよ・女はつらいよ話でもあり)、腹いっぱいになる映画であった。まずまず。俺が配給会社で本編観ないで買い付けたら「愛は幽霊を救う⁈ 〜嫁が転生したら掃除機だった件〜」という邦題にしちゃうところだったが、そうしなくて大正解。
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