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2025年08月11日18:12

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院長先生と子供達

僕が28歳くらいの頃に人生で初めて書いた小説です。

病院の暗い待合室で順番を待っていた僕の前に不思議な女の子と男の子がやって来た...。

興味のある方はどうぞ...。

それでは始まります...。





 町の小さな医院の待合室で僕は長椅子に腰を掛けて順番を待っていた。
この薄暗い待合室では人もまばらで古びた雰囲気がかなり漂っていた。
この町にある医院はここだけで遠くの大病院に行くのがおっくうだったり
行く足のないこの町の人達はここにくるしかなかった。
僕と同じ長椅子の少し離れたところでは中年の女性がうつむいて座っていた。
この女性もなにかしら暗い雰囲気をかもしだしていてこの待合室の雰囲気に
ぴったりと馴染んでいた。
僕の座っている右側の壁には薬物依存の恐怖を訴えたポスターが貼られていた。
物音一つしないこの待合室には壁に掛けられた時計のコッコッという音だけ
が静かに響いていた。
僕もあの女性同様少しうつむきながら順番を待っていた。
少しうとうととしていると前からキャンディーを舐めながら小さな女の子が
僕の方に向かってゆっくりと歩いてきた。
僕の前まで来ると立ち止まって静かに口を開いた。
「お兄ちゃんは風邪?」
「そうだよ。」
「ここの院長先生知ってる?」
「知ってるよ。ここはあの先生一人で診てるんだよ。ほかは皆看護婦さんだけで。」
「うん。」
「君は一人なの?お母さんか誰かいないの?」
「うん。」
しばらく女の子は黙ってしまった。
少ししてからその子はまた口を開いた。
今度は口調が少し激しくなっていた。
「私あの先生嫌い。いっつも不機嫌だし偉そうだし。それにあの先生の顔
見てると何だか怖くなってくるの。私のこともなんだか嫌いみたいだわ。」
「そう。先生も色々と大変なんじゃないかな。」
「何が大変なの?」
女の子は泣いていた。
チョコを頬張りながらこの子と同じくらいの年頃の男の子が僕の方に歩いて来た。
僕の前まで来て女の子の隣で立ち止まった。
そして少し口をとんがらせながら僕に向かって口を開いた。
まるで女の子を弁護するような口調だった。
「僕もあいつは嫌いだよ。僕のことをなんだかいつも睨んでたんだ。
何でだか知らないけどね。僕と母さんが部屋を出る時カルテを机に投げたよ。
母さんにもいつも偉そうだったよ。」
男の子の口は固くギュッと結ばれていた。その目は何だか焦点があっていなかった。
二人の言っていることが僕にはわからなかった。
でも子供というのはそういうものなのだろう。
二人は黙ってしまった。
三人の間に沈黙が流れた。
僕はまたうとうととしてしまい二人を前にしたまま眠ってしまった。
夢を見た。
僕は小さな子供に戻りこの二人の子達と三人で公園で仲良く遊んでいた。
皆大声でキャーキャーと笑いふざけ合いながらブランコに乗り滑り台を滑り
鉄棒にぶらさがり砂場で遊んだ。
僕はいつまでもこうしていたいと思った。
やがて二人は透明の階段を登り空の上に行ってしまった。
「行かないで!」僕は叫んで手を伸ばした。
そこで目が覚めた。
僕は泣いていた。
目の前の二人の姿も消えていた。



看護婦が僕の名を呼んだ。
僕は診察室に入り診察を受けた。
「風邪ですね。」
院長は言った。
僕は薬を受け取り医院を後にした。



夕食の時あの医院のことがふと話題にのぼった。
母の話だとあの医院では半年前同じ医療ミスで小さな女の子と男の子が
続けざまに死んでしまったのだということだ。


僕は夕食を終え二階の自分の部屋のベッドに横になった。
あの二人の子達がいつまでも仲良しでいて欲しいと思った。




おわり
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