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鏡子さんが「あの世とこの世の境」に連れていってくれるという。
そこは磨崖仏の上方、熊野権現社の裏だった──やっぱり、ここだったか。
僕は正直に言った──ここには来たことがあると。
「なあんだ」
鏡子さんは露骨にがっかりしていたが、こればかりはしかたがない。
「あの世に連れていこうと思ってたのに」
そこは自然の岩に守られた空間。
しかし、ミニチュアの鳥居や千代紙の人形が置かれていて、特別な場所だとわかるようになっていた。
一年中、一日中、陽が差すことがないと思われる暗さは、もはや不気味というべきだろう。
国東になら、いくつかあるのだろう。
昼も夜もない、時間の流れがない闇、永遠だけがある場所。
僕はまた来てしまったのだ。
しかも、今度は鏡子さんがいる。
もうだめかもしれない──
そのとき、飛行機の轟音が届いた。
見上げると、絶対的な青空を現代的な巨大な機械が横切っていた。
「ここ、空路にあたってるみたいね」
鏡子さんの魔法が解けたのが、わかった。
時間の流れが正常になった。
僕と鏡子さんを、千代紙の人形が見ていた。
──国東には、こんな場所があちこちにある。
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