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2024年02月23日23:15

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゚Д゚) < 伝説の女優 サーヴィトリ (Mahanati)

伝説の女優 サーヴィトリ (Mahanati) 2018年 169分
主演 キールティ・スレーシュ & ドゥルカン・サルマーン & サマンタ・アッキネンニー他
監督/脚本 ナーグ・アシュウィン
"彼女の偉大さは、どんなに時が経とうとも…"
"…無理だ。君たちには決して分かるまい"

https://www.youtube.com/watch?v=Ba2wyc4fXN4

 1980年5月11日。
 バンガロール(現カルナータカ州都ベンガルール)にて、大女優サーヴィトリが昏睡状態で搬送された。世間の衝撃に反して、病院側は彼女の名声を知らぬままに…。

 それから1年が経つ1981年5月11日。
 見合い結婚を控えた吃音症気味の新聞記者マドゥラワニ(通称ワーニ)は、つまらない小さな記事だけで記者人生を終わらせたくないと焦る毎日だったが、編集長から命じられた次なる仕事は、1年間昏睡状態の元大女優の取材。
 自分にアプローチし続けるカメラマン ヴィジャイ・アントニーと共に、お定まりの記事になることを予想しながらも件の大女優が眠るサーヴィトリ邸へと向かうワーニだったが、そこにやって来て花束だけを置いていった見舞客を発見する。
「話を聞きに行こう。物語があるのはあっちだ」
 アントニーの提案でその男に話を聞きにいくと、泣きながら男は語り出す…「君たちには分かるまい…あの人がどんなに偉大な方であったのかを…」

 それから、ワーニとアントニーはサーヴィトリの過去を知る人々から数々の思い出話を聞かされ、最初の男から渡されたサーヴィトリの手紙に言及されている「シャンカライヤ」なる人物を探し出そうとする。しかし、思い出を語る取材先の人々は誰も「シャンカライヤ」なる人物を知らなかった…


挿入歌 Mooga Manasulu

https://www.youtube.com/watch?v=7weHJNesf2I


わーい(嬉しい顔) 原題は、テルグ語(南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語)で「偉大な女優」の意。
 1950〜80年代初頭まで、テルグ語映画界で活躍した伝説的な大女優サーヴィトリ(1934生〜1981病没)の生涯を描く一代記。

 同年に、タミル語(南インド タミル・ナードゥ州の公用語。スリランカとシンガポールの公用語の1つでもある)吹替版「Nadigaiyar Thilagam(女優の誉れ)」が、マラヤーラム語(南インド ケーララ州とラクシャディープ連邦直轄領の公用語)吹替版「Mahanadi(偉大なる女優)」がそれぞれ公開されている。
 インドの他、米国、オーストラリア、ニュージーランド、英国でも公開されているようで、日本では2020年のIMW(インディアン・ムービー・ウィーク) にて「伝説の女優 サーヴィトリ」の邦題で上映。2024年にタミル語版がCS放送されている。

 100年以上に及ぶ歴代インド映画の中で1番の人気作に選ばれた「Mayabazar(幻影饗宴劇 / 1957年公開作)」の主演女優でもあるサーヴィトリの生涯を、1981年時点(サーヴィトリの没年!)での新聞記者の取材を通して再構築していく映画であり、その再構築そのものが50〜80年代初頭までのテルグ語(+タミル語)映画界のノスタルジーに満ちた回顧録となり、再評価へとつながっていく流れを生み出す効果を促しているよう。

 なにはなくとも、サーヴィトリを始めとした当時のテルグ語映画界の大スターたちを実名で登場させ、その銀幕の華やかさと舞台裏の数々の苦労をそのまま物語に落とし込む映画舞台裏劇の度胸に乾杯。その栄枯盛衰を体現するサーヴィトリの生涯に、大きく関わるジェミニ・ガネーサンのスターっぷり、堕落っぷりを赤裸々に描いてしまうのも、この手の映画のパターンではあるけど「よーやったな」という感じ。タミル語映画史を語る上で無視できない大物スターでありながら、大女優サーヴィトリの転落の象徴でもあるジェミニ・ガネーサンの悪役的立ち位置(…と言っていいかどうかは微妙な点もあるけれど)を、マラヤーラム語映画界の大スター ドゥルカン・サルマーン嫌味なく(…ある?)よくも演じきったなって感じではあるけれど、ある程度意図が透けて見えるテルグ語映画デビュー作になっていますことよ(主演男優が、インドの別言語圏映画に出てくる時は、だいたい悪役出演ってパターン通りすぎてネ)。

 テルグ語映画界へのノスタルジーに満ち満ちた本作の監督を務めたのは、1986年アーンドラ・プラデーシュ州ハイデラバード(現テランガーナー州にある、両州の共同州都)に生まれたナーグ・アシュウィン(・レッディ)。
 医者の両親のもとに生まれ、妹も医者をやっているとか。
 カルナータカ州マニパルの研究所でマスコミュニケーション学士号を取得後、NYFA(ニューヨーク・フィルムアカデミー)の監督コースを受講。2013年の短編映画「Yaadon Ki Baraat」で監督デビューした後、2008年のテルグ語映画「Nenu Meeku Telusa(僕のこと知ってる?)」の助監督を務めて正式に映画界入り。その後セーカル・カンムラ監督の下で助監督や端役出演を続けていく中で、2015年の「Yevade Subramanyam(スブラマニアムとは誰?)」で監督デビューを果たし、賛否両論を巻き起こしながらもカルト的な人気を博して、ナンディ・アワード新人監督賞を獲得(この年に、本作の製作会社である映画会社ヴィジャヤンティ・ムービーズの代表取締役の娘で映画プロデューサーのプリヤンカ・ダットと結婚している)。
 それまでの様々な映画人との出会いを通して、過去のテルグ語映画界の偉人たちの話を聞き知ったことをきっかけに本作のアイディアを構想し、2本目の監督作として本作を制作。大ヒットを飛ばして多くの映画賞を獲得していく。
 コロナ禍による映画製作停滞の中で、2021年Netflx公開のオムニバス映画「Pitta Kathalu(短編)」の1編「xLife」の監督を務めつつ、同年にはアンディープ・K・V監督作「Jathi Ratnalu(国の宝石)」でプロデューサーデビュー。2024年公開予定のマルチスター映画「Kalki 2898 AD」の監督を務めている。

 実在の過去の映画人を演じる演者たちのプレッシャーも相当だったろうに、それを感じさせずに物語世界に没入させる演技の数々を魅せる役者&スタッフの映画技術もすさまじい。
 それを証明しようとするかのように、劇中数々の過去のテルグ語映画の再現シーンが登場し、ネット上では実際の元ネタ映画の該当シーンとの比較動画が続々とアップされているあたりに、その注目度、再現度の高さもうかがえる。もはや、そうした再現シーンを完璧に作り出そうとする行為、それを見た観客が当時の映画と比較しその思い出を語り出さずにはいられないだろう思い出補正演出と共に、テルグ語映画を見て育った人々の人生と結びついた映画体験の再構築を促す映画として機能しているかのよう。サーヴィトリ出演作を「Mayabazar」くらいしか見れてない外国人の私なんか、その映画体験量の膨大さだけで羨ましさうなぎ登りでありますよ。

 取材先の人々の思い出話という体で進むサーヴィトリの幼少期、少女期の強気な女の子像も素敵ながら、それをガッツリ魅力的に演じた子役サイ・テージャスウィニーとキールティ・スレーシュの存在感もスサマジい。
 土臭さを伝えるかのようなセピア色が強調される30〜40年代頃のテルグ語圏の農村風景もメルヘン的で美しいながら、しっかり人にまみれてスレた人間に成長していくサーヴィトリが可愛いんだから、恐れ入る。その後に芸能界入りしてからの、さらに衆目に晒され続ける事に臆せず自我を通していく大女優の図太さ、精神的な強さを証拠づけるかのような眼力が、どうやってカメラの前で実現させていったのか、それこそインド映画の魔法ってやつですわ。
 映画後半の、頂点からの零落の悲惨さはよくあるパターンとは言え、それに屈することなく前進し続けようとしたサーヴィトリの姿を、その当時の人々が認識していなかろうと、彼女の触れ合った人々が折々に大女優の姿を通して、その映画を通して彼女の強さを分け与えられていたと言う映画好きには心当たりがありまくる「映画を通した人生の至福」を見せつける段取りも効果的。
 映画冒頭にワーニたちに提示された、サーヴィトリにとっての重要な存在「シャンカライヤ」の謎も映画を締めくくるオチとして効果的に機能し、そうした1時代の声を様々に聞いてきたワーニとアントニーの人生をもまた善き方向へ変えていく美しさは、この映画を作っている人たち自身が感じる幸福感の表れでもあるのだろうか。そうあって欲しいな、と心底思えるほどにはそのテルグ語圏における映画の人生・生活への浸透度が羨ましい限りでございますわ。


挿入歌 Sada Nannu

https://www.youtube.com/watch?v=tavjaaE_tk0

挿入歌 Mahanati

https://www.youtube.com/watch?v=ijUiM775KRI

挿入歌 Aagipo Baalyama

https://www.youtube.com/watch?v=pq4uJiJTxIE

劇中の「Mayabazar」オマージュシーンの比較

https://www.youtube.com/watch?v=07iYAFYU_DE
*「Mayabazar」の挿入歌"Aha Naa Pellanta"シーンの比較映像。
 上段が本作映像で、下段が元ネタとなる「Mayabazar」(元々白黒映画ながら、引用されているのは2010年公開版のデジタル彩色版)の該当シーン。



受賞歴
2018 Indian Film Festival of Melbourne 同権映画(功労)賞
2019 Filmfare Awards South テルグ語映画作品賞・テルグ語映画監督賞・テルグ語映画主演女優賞(キールティ・スレーシュ)・テルグ語映画批評家選出男優賞(ドゥルカン・サルマーン)
2019 National Film Awards テルグ語映画注目作品賞・主演女優賞(キールティ・スレーシュ)・衣裳デザイン賞(インドラクシー・パッタナイク & ガウラング・シャー & アルチャナー・ラーオ)
2019 Norway Tamil Film Festival Awards 審査員特別賞(キールティ・スレーシュ)
2019 Radio City Cine Awards ヒロイン賞(キールティ・スレーシュ)
2019 Santosham Film Awards 助演男優賞(ラージェンドラ・プラサード)・子役パフォーマンス賞(ベイビー・サイ・テージャスウィニー)
2019 SIIMA(South Indian International Movie Awards) テルグ語映画作品賞・テルグ語映画主演女優賞(キールティ・スレーシュ)・テルグ語映画助演男優賞(ラージェンドラ・プラサード)
2019 TSR - TV9 Natinal Film Awards 主演女優賞(キールティ・スレーシュ)・個性的演技賞(ラージェンドラ・プラサード)・作品賞・子役賞(ベイビー・サイ・テージャスウィニー)・監督賞・男性歌手賞(アヌラーグ・クルカルニー / Mahanati)
2019 Zee Cine Awards Telugu 作品賞・監督賞・ 主演女優賞(キールティ・スレーシュ)・助演男優賞(ラージェンドラ・プラサード)・男性プレイバックシンガー賞(アヌラーグ・クルカルニー / Mahanati)・子役賞(ベイビー・サイ・テージャスウィニー)・メイクアップ賞(モーヴェンドラン)・衣裳デザイン賞(ガウラング・シャー)・スタイリスト賞(インドラクシー・パッタナイク)・スタッフ賞(スワプナ・ダット & プリヤンカ・ダット)




・女優サーヴィトリの代表作にして、インド映画100年の中で最人気作に選ばれた「Mayabazar (幻影饗宴劇)」はこちら
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1974044616&owner_id=3570727



・Mahanati を一言で斬る!
「劇中でサーヴィトリもやってたけど、鼻から象の頭に乗るのは正式な乗り方…なの?」
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