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2023年11月01日16:29

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そして記録だけが残った

熱狂が終わり、そして、勝敗と得点の記録だけが残りました。

10月27日(サンドニ)
三位決定戦
イングランド(プールD1位)26
アルゼンチン(プールD2位)23

今年のシックスネーションズで4位に沈み、不調々々と言われ続けたイングランド。ちっとも弱くありませんでした。南アフリカとの準決勝では、残り2分のスクラムで反則を取られてPGを決められ、1点差の惜敗。

プール戦では、スタンドオフのジョージ・フォードのドロップゴール3連発でアルゼンチンを沈めたので、この試合でも同じ戦法かと思いきや、さにあらず。先発には正スタンドオフのオーウェン・ファレルを起用して、正攻法でアルゼンチンにぶつかりました。

前半13分までに13点の差をつけて、「このぶんならいつも通りの点差がつくぞ。もう寝ようかな」と思いましたが、後半はアルゼンチンが逆転。しかし、アルゼンチンの若きスタンドオフ、サンチャゴ・カレーラスが不用意なキックで、イングランドフッカーのセオ・ダンのチャージを食らい、そこから逆転トライ。

イングランドは前回の準優勝に続く3位で、母国の面目を保ち、アルゼンチンは4位となって、プール戦敗退となった前回の汚名を濯(すす)ぎました。


10月28日(サンドニ)
決勝戦
南アフリカ(プールB2位)12
ニュージーランド(プールA2位)11

トライが決まらない試合はつまらない、なんてどこの誰が言ったのでしょう。両チームで合計1トライでもこれほど緊張感に満ちて、これほど眠気を吹き飛ばす試合は初めてです。終了後のインタビューで南アフリカのオランダ系ボーア人ピータステフ・デュトイ曰はく

「僕らはドラマが好きなんだ」。

ドラマにしすぎなんだよ。

こっちはJsportsと日本テレビを同時録画しながら、Jsportsで見ていましたが、結果を信じられなくて(なにしろ私がスプリングボクスを応援していたのですから)、終了後に日本テレビの録画を見返して、それでも信じられなくて、午後にはNHKの放送も見て、三度見て三度歓喜に浸って、やっと寝ることができました。

先月30日の朝日新聞朝刊12面で清宮克幸が述べていました。ニュージーランドはゼネラリストで、南アフリカはスペシャリストの集団だったとのこと。たしかにその通りです。

オールブラックスは誰もが走るのが速く、パスが上手く、タックルが強く、キックも上手い、なんでもできるゼネラリストの集団。

南アフリカはキックのスペシャリスト(たとえばハンドレ・ポラード)、走りのスペシャリスト(たとえばチェスリン・コルビ)、ぶちかましとスクラムのスペシャリスト(たとえばオクス・ウンチェ)など、それぞれの分野のスペシャリストが、ひとつの目標に向かってそれぞれの能力を有機的に組み合わせたときに、決勝トーナメントの3試合すべてを1点差で勝ち抜くという離れ業をやってのけたのです。

表彰式での、南アフリカのラマポーザ大統領はうれしそうでした。イングランド系白人、オランダ系白人(ボーア人)、カラード、黒人といった様々な人種と言語が混在する国をまとめ上げるのに、「我が国のラグビーが世界一になった」ということほど国民心理に有効なことはありません。あとはもうちっとヨハネスブルグの犯罪を減らして、そのためには人種間の経済格差をなくせばいいだけです。

自国の代表にウェブ・エリス・カップを渡すべく、この日の予定を空けていたマクロン大統領の固まった作り笑顔は痛々しかったですが、それもまたラグビー。

そういえば16年前のフランス大会でも、フランスはオールブラックスを破って、浮かれて浮かれてイングランドに敗れ去り、サルコジ大統領は今回のマクロンと同じ笑顔で南アフリカに優勝カップを授与したのでした。

そして、勝敗と得点の記録だけが残りました。

日本代表のジェイミー・ジョセフ監督は、もう日本代表の監督はやらないそうです。「今度の監督は公募制にするから、あんたが引き続き監督をやりたいなら、他の応募者と同様に資料を作ってプレゼンしてくれ」と、日本ラグビーフットボ−ル協会が彼に通告したのが6月上旬。馬鹿です。

当然彼は「今私がそれどころじゃないのがわからないような国とは、この大会を最後に契約しない」と言ったとか。

当たり前です。最近、高い能力を持つ人に対する給与の支払い者側の、この手の無礼が続いています。

アルゼンチン代表を率いたマイケル・チェイカ監督。つい先日までオーストラリア代表監督でした。遣り手の経営者で自分の会社を大いに成長させている最中(さいちゅう)でしたが、ワラビーズが勝てないときに「チェイカは自社の経営には熱心だが、ラグビーの指導にはそうではない」というマスコミの主張に賛同したオーストラリア協会にあいそを尽かして辞めてしまい、そこに目をつけたのがアルゼンチンでした。

困ったオーストラリアは、イングランドの監督を辞めた名将エディ・ジョーンズに「あんたの母国を優勝させてくれよ」と頼みましたが、エディだって今年の1月にあずかったチームをそんなにすぐに強くはできません、優勝目標を自国開催の2027年に切り替えましたが、今回プール戦で敗退したことで、オーストラリアは彼を馘(くび)にしてしまいました。もうあの国の監督をやる人は、身内の誰か以外はいませんよ。身内の誰か(たとえば会長のフィル・ウォーとか)と一緒になって苦労するしかないと思います。

せっかくここまで日本を強くしてくれたジェイミー・ジョセフにこの仕打ちでは、日本も同じ気がします。

さて、ワールドカップが終わって、今後のラグビーは新しいスタートを切りました。

さしあたって大きな変化は、再来年からはじまる新しい大会です。ワールドカップが無い年は、北半球の1位がシックスネーションズで決まり、南半球の1位がザ・ラグビーチャンピオンシップで決まるだけでしたが、この10カ国にあと2カ国を加えて毎年の世界一を決めるリーグ戦をやるとのこと。「あと2カ国」の内訳は、日本とフィジーが有力だそうですが、そうなると現在の日本代表は、会社員選手が多いので、さすがに毎年会社に給料を払わせながら何ヶ月も社業を離れさせるわけにはいかないでしょう。代表に参加する選手分の給料は、日本協会が肩代わりするとかなんとか、方法を考えないといけないでしょうね。

それに、「ラグビー世界一」の国が毎年決まると、4年に一度だから盛り上がっていたワールドカップの価値も下がりそうです。

また。2027年オーストラリア開催のワールドカップから、参加国が増えて24カ国になるとのこと。これでもワールドカップサッカーの半分ですが、サッカーはいいのですよ。参加国のレベルが拮抗(きっこう)していますから。

ラグビーでこれをやるとどうなるでしょう。たとえば韓国代表がニュージーランドとやったら、300−0なんていうことになりかねません。日本の高校ラグビーの県別予選では、もうそういうことが起こっています。

試合数を増やして、スポンサー企業もそれなりに増えてこの7週間のような盛り上がりが8週間になればいいというものではありません。

今回のスポンサー企業広告の中で出色だったのは、アサヒビールでした。スタジアムの壁スクリーンに映される「Asahi Super TRY 辛口」の広告に思わず笑みを浮かべた皆様も多かったでしょう。なるほどフランスの法律では煙草と酒の商品名が入った広告は出せないわけですが、せかく前回のハイネケンを押しのけてスポンサーになったのに、広告も出せないのでは意味がない。「Asahi Super DRY」じゃなくて「Asahi Super TRY」なら、商品名ではなくて、しかもラグビーのトライを応援しているようでいいじゃないですか。「辛口」はまぁ、どうせ日本人にしかわからないからご愛敬。

前回の日本大会では会場でペコペコのプラスチックカップに入れて、ハイネケンを500ミリリットル1000円で売っていましたが、今回は同様のアサヒスーパードライが、8ユーロ。

日本大会では1冊1000円だった毎試合ごとの試合パンフレット冊子が、なんと15ユーロ。1万円で4冊も買えません。

駅のキヨスクで売っているおにぎりを日本人が見つけて「やれ、うれしや」と買おうとすると、なんとなんと4ユーロだったそうです。中身はほぼ酢漬け状態のたらこ。

オーストラリアの物価は、フランスほど高くはありませんが、4年後までにはもうちっと日本が経済成長していて、諸外国との物価の格差がなくなっているといいなぁ、と思ったワールドカップでした。
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