トモダチ作戦に従事した米兵の被ばくを日本は黙殺した

【エィミ・ツジモト氏が明かした日米の闇「トモダチ作戦に従事した米兵の被ばくを日本は黙殺した」　日刊ゲンダイ】
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/329135 抜粋
･･作戦に従事した海軍の原子力空母ロナルド・レーガンの乗組員らは、東京電力福島第1原発事故の影響で被ばくし、数百人の米兵が健康被害を訴えている。著者は小泉純一郎元首相や城南信金の吉原毅名誉顧問らと「トモダチ作戦被害者支援基金」（通称・小泉基金）を設立、専門医療援助を実施した。

福島で事故を起こした米GE社製の原発数基に欠陥があると指摘した米国原子力委員会の関連資料を公表せずにおれなかったのが動機の一つです。この資料を東電は事故前から知っていましたよ。また、私自身が広島の被爆2世として、幼い頃からさまざまな病魔と闘い今日まで生きてきているので、若い兵士たちが作戦で被ばくし、特に重篤な病にかかり、死の恐怖と闘っている事実を見過ごすことはできませんでした。

■犠牲になるのは最下層
　明治新政府以降、日系人は新天地を求めて渡米しましたが、米国では「ジャップ」と呼ばれて虐げられてきました。差別や宗教を背景に多くの人が犠牲になりましたが、犠牲者はいつも最下層の人たち。被ばくした無名の米兵たちも多くが貧困層出身。公表されない悲惨な実態を社会に訴えるのは、ジャーナリストとしての矜持でもあります。

　東日本大震災で原発が水素爆発、放射性物質を含んだ放射性プルームは当時80％近くが海上に降り注ぎました。韓国に向かっていたレーガンは、日本支援のため東北に向かい、宮城や福島沖の放射性プルームの真下で被ばくしました。5500人以上が乗り込むレーガンはひとつの村であり、海水は不可欠です。海水を塩分蒸留してシャワーを浴び、乾燥した食品や野菜を調理して3食とします。当初、原発事故の情報を東電は米軍に知らせなかったため、作戦初日、彼らは防護服を着ずに救援活動を続け、外部・内部被ばくをしてしまったのです。私は、この初日を重点的に調査してきました。その後、レーガンの艦長が飲料としての使用禁止やシャワーを禁止しましたが、時すでに遅しです。

　彼らは帰国前に重篤な症状になりました。体調不良を起こし、ある兵士はやせ細り、女性たちはどんどん太り出しました。白血病になり女性器を摘出する人も出た。悪化したのは主に下級兵士です。これまでに私に伝えられた死亡者数は20人前後ですが、いまも相当数の兵士が死に向かっています。しかし、米海軍の調査報告は被ばくの事実は認めるが、健康被害に影響はないという内容でした。

　元兵士には「退役軍人医療機関」がありましたが、放射線被ばくに関する専門医はいないため、民間医療を受けるしかなかった。彼らにその経済的余裕はない。そこで東電を相手取り、医療費支払いを求める訴訟を起こしました。兵士たちは入隊時、いかなることがあっても軍を訴えてはならぬという誓約をしているからです。

　連邦最高裁までいきましたが、結果的に被ばくした米兵の健康被害が法廷で争われることはありませんでした。東電は日本で裁判を起こせと徹底的に争いました。米国の管轄だと「ディスカバリー」という情報開示制度から免れられないのです。しかも、第2次安倍政権はアミカス・キュリエ（法廷助言人）として東電の主張を支持する見解を提出し、原発被害に関する日本の裁判制度の存在を強調したのです。除隊を余儀なくされ、また、金もなく、健康状態も悪い原告らが日本で闘えるはずもない。結局、レーガン被ばくは日米で一切裁かれることなく闇に葬られ、今日に至っています。これが日米同盟における司法です。

　作戦初日に兵士たちがスマホで撮影した艦内の被ばく光景が数十秒の動画で送られてきました。動画には「核のホロコーストだ」と叫んでいる兵士の姿が映っていました。兵士の被ばくについて私は調査してはいましたが、動画に驚き、何をすべきか考えざるを得なくなりました。自衛隊は米軍と共同作戦をしたが、被ばくによる健康被害は出ていないというし、福島の人たちには日本政府がいる。しかし、米兵は米国政府にも置き去りにされたまま。私は以後、被ばくの実態については国を超え、人道的な視点で訴え続けることにしました。2016年に小泉（元）総理や吉原さんと話す機会があり、総理に例の動画を見せ、被ばくした米兵に至急会ってほしいと直談判したところ、その場で訪米を即決してくれました。総理が行けば米国のメディアも放ってはおかない。日本のメディアもです。
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■処理水の海洋放出は欺瞞
　──岸田政権は原発処理水の海洋放出を強行しました。
小泉　（放射線の影響で）汚れているよ。

　──エィミさんは。
　放射性物質に汚染された水を流すなんてとんでもない欺瞞です。私の曽祖母はアイルランド人ですが、アイルランドでは小児がんの発症率が高いんです。イングランドがセラフィールド原発の処理水をアイリッシュ海に流してきたからです。何万年も被害をもたらす核廃棄物の処理も日本はまだ。未来の世代に「負の遺産」を負わせ、道徳的責任から逃げようとしているのは我々大人だということを再認識してほしいです。