朝鮮開国と日清戦争

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
（２０２３年８月１日号）
＊朝鮮開国と日清戦争
　渡辺惣樹・著「朝鮮開国と日清戦争」を読んだ。「朝鮮開国」とは聞き慣れない言葉だが、19世紀末まで朝鮮半島は中国の属国であり、朝鮮国王は中国皇帝に朝貢し臣下の礼を欠かさなかった。つまり朝鮮は世界的に孤立し、鎖国状態だったのである。
　その鎖国状態であった朝鮮を開国させ、中国の属国から独立国にさせたのは他ならぬ日本であり、それは19世紀末の日清戦争という日本と当時の中国（清国）との戦争により達成された。

　ここまでは従来の歴史書に記されているところだが、本書の特徴は、この背景に米国の日本への後押しがあった事実を綿密に検証している点だ。もはや１００年以上も前の事など、どうでもいいと思う方もいようが、実はこれは現在につながる重要な事実である。
　なぜ現在、朝鮮半島に米軍が駐留しているのか？なぜバイデン政権は日米韓の連携を強化しようとしているのか？これらは１００年以上も前から米国が地政学的理由で、日米韓の連携を模索してきていた歴史的事実を抜きには説明できないのである。

　日清戦争で日本は中国から台湾を割譲された。この台湾割譲も米国の承認なしにはあり得なかった。その台湾を今、中国は取り戻そうとしている。北朝鮮はミサイル実験を繰り返し、日米韓首脳は１８日に会談する。
　本書に記された歴史的事実は、決して過ぎ去った昔の出来事ではない。現在進行形の地政学的現実なのである。
https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2229.html

　軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹（かじとしき）
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