6月15日日経朝刊「Opinion」で「政治と科学、対立の不毛」というテーマで、日本学術会議」のことが「未解決のままだ」と説明されました。その中から一部引用します。
（引用開始）
機を逸してしまったのか。2年半にわたる日本学術会議を巡る政治と科学（学術）の対立は、リスクに次々と見舞われる現代社会の政策決定に専門知をどう生かすか、そしてアカデミーの役割とは何か、を考えるいいチャンスだった。にもかかわらず本質的な議論が一切なされないまま、岸田文雄政権の政治判断でいったん物別れになった。2020年秋、唐突だった菅義偉首相（当時）による会員候補6人の任命拒否。拒んだ理由は今なお説明されていない。政治の対応は言語道断だが、それでも光明と言えるのは学術会議の存在が社会に知られたことだろう。
（中略）
２００８年にまとめた「代理出産禁止」の報告書や１２年の「核のゴミ」の暫定保管を求めた提言など、学術会議が主語となる記事が新聞をにぎわせたことは数えるほどしかない。欧州主要国の「アカデミー」は主に�…鷂世篏�言��研究の推進��助成金の付与�じ仮瓦裡患’修鮖�つ。学術会議も設立当初は担っていたがその後、度重なる政治との軋轢や行政改革の流れでこうした機能がはぎ取られていった。残った提言・助言でも、各省庁が支配する審議会や有識者会議に比べ存在感は小さい。
（中略）
思えば、２０世紀に「政治と科学」は２つの世界大戦を契機として急接近した。軍事力の拡大に、技術の進化は欠かせない。それを支える科学にも多額の資金が投じられた。持ちつ持たれつの関係と言えよう。結果、核兵器という魔物を生み出した。そして２１世紀に入り、データ技術やバイオテクノロジー、ナノテクなど科学や技術を原動力にした経済競争が激しくなってきた。どこの国も研究開発力を強化する。国家の科学への期待が高まる裏返しに、介入や干渉も強まっていった。「科学技術立国」を掲げた日本も例外ではなかった。
（以上引用終わり）
現実社会は「ニーズ」と「シーズ」で動いています。「学者」と「政治」がお互いに
「政治のニーズ」と「学者のシーズ」を理解してこそ、優れた研究が生まれるのではないかと思います。その点、昨今の日本では「学者は国民生活とかけ離れたスーパーカミオカンデの研究」でノーベル賞をもらい、政治は「コロナへの対応」や「核のゴミ」、「SDGｓ」などの対応で「学者」から見放され、「専門家会議」や「委員会」に委嘱して「エビデンス」を求めて解決を図ろうとしても、答えが出ずに右往左往するばかりです。
学者は専門領域から外に出て、「専門知識の現実解」のためにもう一段領域拡大を目指し、反対に「政治」は多くの学者に知見を吸い上げ、下駄を預けることなく「自己責任」において政治決断する覚悟を持つべきではないかと思います。例えば「核のゴミ」についてはノルウェーにある保管施設は地下４００mにある保管庫に保管されているといいます。それを日本ではどこに置くかが問題で、その答えが出ないために「原発推進」の答えが出せません。然しながら「原発」を放棄すれば、日本の「エネルギーコスト」は原発利用国に比べて圧倒的に高くなります。だから「軍艦島（長崎県の高島炭鉱後）ならば地下４００mを超えて地下に掘り下げられて放置されており、これを「どうすれば核のゴミ保管庫にできるか」という形で命題を学者に出すのは政治の役目ではないかと思います。釧路炭鉱跡も発破のほとんどは海底にあると言われています。
コロナについても「政治がまずどんな学者がどこにいて何を研究しているのか」を官僚がから把握していて、「コロナの全体像」を共有して、その解決の方向性を明確にして、「予防」と「治療」のチームに分けて、「目先の対応」と「長期的な対策」ごとに学者を振り分けて組織し、そのあとは学者に任せて進捗管理していく責任が政治側にあり、そのプランに従って学者が成果を出すというような計画を提示すべきで、「何でもいいから学者が最適解を急いでもってこい」というのでは、学者一人一人のの責任が重すぎます。「緊急事態宣言を発出するかどうか」というような局面においては、「患者の流行の拡大状況」や「受け入れベッド数」、「ワクチンの入荷状況」、「発出時の職場や学校への影響」、「都道県知事の受け入れ態勢」など総合的なシミュレーションができるのは「政治」であって、それを冷静に組み立てる「仕組みづくり」をせず「学者に丸投げ」しても、個別の学者は答を準備はできません。
お互いが相手の立場を尊敬して理解に努めることによって、真剣な議論が出来る。相手の立場を理解できなければ、事はうまく運びません。ましてひとかどの専門学者に対して、今の課題を一時中断して「政治の要求課題を優先せよ」というには、それなりの「経済的配慮」も欠かせません。何時までも「不毛な関係」を続けるのは、お互いに何も得られません。ブリンケン国務長官でさえ、立場を異にする中国に訪問し、ビルゲイツさんでさえ習近平に会いに行くというのに、日本の政治家は学者も使えないことは恥ずかしくないのかとさえ思います。
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