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2023年05月07日20:12

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Sinfonia Dramatique 第13回演奏会

深層心理的、幻想的音楽世界。極上の音楽体験。

☆Sinfonia Dramatique 第13回演奏会
■日時:2023年5月6日(土)13:00開場/13:30開演未定
■場所:ティアラこうとう大ホール(江東区)
■曲目
♪シャブリエ/田園組曲
♪サティ/組み立てられた3つの小品
♪フォーレ/ドリー組曲(アンリ・ラボ―管弦楽編曲版)
♪ビゼー/子供の遊び
♪ドビュッシー/
子供の領分(カプレ管弦楽編曲版)
月の光(カプレ管弦楽編曲版)
小組曲(ビュッセル管弦楽編曲版)
■指揮:佐藤 雄一
http://sinfoniadramatique.web.fc2.com/

極上の音楽体験という書き方が、大げさだと感じる人がいるかもしれない。
そもそも、私は些細な演奏ミスなど気にしないタイプなのだ。
私は音楽の細部から全体に渡る《表現》を何よりも重視している。
些細な演奏ミスが気になり、表現は気にしないタイプの人とは意見が異なって当然である。
そういう人は、プロオケの演奏を聴きに行かれることをお勧めしたい。

私はプロオケの演奏を聴かないわけではない。
ずっと以前、サントリーホールのS席で、フィラデルフィア管弦楽団の演奏を聴いたことがある。
曲目は違うが、その時の演奏より今回の演奏の方が美しかった。

フィラデルフィア管弦楽団の演奏より、劇響の演奏の方が美しかったのである。
美しさの感じ方は人によって異なるが、私には変えようもない事実である。

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会場は馴染みのティアラこうとう大ホール。
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今回は前の方の中央で聴いてみた。
実に素晴らしい音響だった。

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プログラムの前半はほぼ初めて聴く曲。
後半は何らかの形で聴いたことがある曲だった。

♪シャブリエ/田園組曲
シャブリエといえば狂詩曲「スペイン」。
その華やかで賑やかな印象しかなかった。
この組曲は全く異なる、より繊細で内面的な音楽だった。

「田園組曲」というタイトルで、1.牧歌2.村の踊り3.森の中で、4.スケルツォ・ヴァルスという4曲から成っていた。
タイトルから想像されるような、単純に描写的、民族的音楽では全くなかった。
表面に見えるものの、奥に目を凝らし、耳を澄ます世界だった。

精妙を極めるオーケストレーションは驚くほどで、絶えず変化に富み、微妙な陰影と輝きが単純に割り切れない情感を醸し出していた。
絶対的に優れた音楽であり、シャブリエに対する印象も変わってしまった。

オケの音は、繊細で澄んだ音色と、絶妙な音量バランスを兼ね備え、驚異的な水準の演奏となっていた。
これが演奏会の最初の組曲で、演奏会全体がこれ以上のクォリティで支えられていたのだから、驚きだった。
劇響の演奏会も今回で13回目。
回を重ねるごとに良くなっていく印象だったが、想像を超えたレベルに到達していた。


♪サティ/組み立てられた3つの小品
サティと言えば「ジムノペディ」や「グノシエンヌ」などのピアノ曲の印象が強い。
オリジナルのオーケストラ曲は初めて聴いた。
「バラード」というバレエ音楽があるが、あまりにも演奏されないから、評価が低いのだと思っていた。
ところがこの「組み立てられた3つの小品」は、実に面白く、興味深い作品だった。

1.パンタグリュエルの幼年時代(夢)2.桃源郷の行進曲(歩き方)3.ガルガンチュワの遊び(ポルカ調)の3曲から成る。
全部通しても「田園組曲」の4分の1の長さしかない。
その短さの中に、凝縮された表現があり、ウェーベルン的アフォリズムの世界の先駆とすら思われた。
オーケストレーションに独創性があり、おおいに魅力が感じられた。
佐藤氏ほどの指揮者だからこそ、魅力を引き出す演奏ができたのであろう。


♪フォーレ/ドリー組曲(アンリ・ラボ―管弦楽編曲版)
フォーレが不倫相手に産ませた女の子のために書いたという組曲。
そうした知識抜きでも、この曲の陰影に富んだ表情は伝わってきた。
1.「子守歌」は、ずっと以前FMのクラシック番組のテーマ曲に使われていた曲だった。
従って聴いたことはあったが、過去の記憶よりはるかにデリケートな音楽だった。
2.「ミ-ア-ウ」については記憶が薄れてしまった。演奏が良くなかったわけではない。
3.「ドリーの庭」では、一見幸せな情景を描いているようで、その幸せの儚さをも表現しているようだった。
4.「キティー・ヴァルス」についても、楽しい音楽だったが記憶が薄れた。
5.「優しさ」も、幸せな情景に暗い影が差している感じが、実に深層心理的だった。
この曲では、中間部にオーボエとホルンのデュオがあり、それはだれか作中人物二人の人間関係を思わせた。
この部分が、劇響団長のオーボエと、中央区響の団長のホルンによる、団長コラボだった。
6.「スペインの踊り」の華やかな音色の素晴らしさは、殆ど聴いたことが無いほど美しく素晴らしかった。
黄金やダイヤモンドの、一番濁りのない輝きを音に移したようだった。


♪ビゼー/子供の遊び
佐藤氏が、カルメンやアルルの女よりも最高傑作だとおっしゃる曲。
1.行進曲2.子守歌3.即興曲4.二重奏5.ギャロップという5曲から成る。
同曲は、ハイティンク指揮のCDを持っている。
オケの合奏力で言えば、コンセルトヘボウの方が上手いに決まっている。
だが、オーケストレーションの細部にまで想像力が働いている鳴らし方とか、上辺の楽しさに留まらない解釈の深さは、(どんな曲を聴いても)佐藤氏の方が上なのだ。
この演奏では、特に2曲目や5曲目で、曲の持つ翳りの部分がよく表現されていたと思う。


♪ドビュッシー/子供の領分(カプレ管弦楽編曲版)
1.グラドゥス・アド・パルナッスム博士
2.象の子守歌
3.人形へのセレナード
4.雪が踊っている
5.小さな羊飼い
6.ゴリウォーグのケークウォーク
この曲集の演奏は、この演奏会における一つの頂点だったと思う。
編曲物とはいえ、カプレによるオーケストレーションは創造性に富み、演奏も全く容易ではなかっただろう。
それに、原曲自体、一曲一曲が決して分かり易い曲とは言えないと感じる。
私は、ギーゼキングによる古い録音で予習したが、少しもすんなり理解できなかった。
佐藤氏と劇響は、一曲一曲を細部まで実に丁寧に仕上げていた。
ギーゼキングのピアノ演奏よりも、曲の内容や楽しさが伝わってきた。
低音から高音まで駆使した、美しく変化に富んだオーケストレーションは、至福の耳へのご馳走であった。

♪ドビュッシー/月の光(カプレ管弦楽編曲版)
オケがよく歌っていたという点では、この曲の演奏が一番だったと思う。
実にロマンチックな演奏だった。
ただ、ポピュラー寄りの演奏となって、佐藤氏の本当の繊細さからはやや離れた表現だったのは否めない。

♪ドビュッシー/小組曲(ビュッセル管弦楽編曲版)
1.小舟にて2.行列3.メヌエット4.バレエ
同曲は、2012年12月15日に茨城大学管弦楽団第38回定期演奏会で聴いて以来となる。
学生オケの渾身の演奏は、フランス音楽らしい音色を見事に表現していた。
今回の劇響による演奏も非常に素晴らしくて、かつての感動が蘇った。
さらに、学生オケにはなかなかできないレベルの深さも聴かせてくれた。

3曲目のメヌエットは、佐藤氏が事前に特に「やばい」曲として挙げていた。
普通に聞いたら、何もやばくない曲である。
しかし、佐藤氏の解釈力、想像力、研ぎ澄まされた耳の力は、通常は感知できないレベルのものまで曲から聴き取ってしまうようなのだ。
メヌエットにおける、劇響の音色表現は、プロオケの演奏でも聴けないし、CDの再生でも不可能なものだった。
「佐藤氏が本気で指導するとこうなる」という(常に本気には違いないだろうが、特に思い入れの深い曲が佐藤氏にはあるのだ)まさに典型で、世界中でここでしか聴けない破格の演奏芸術がそこにはあった。

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小曲を集めた演奏会だったが、13:30開演で、終演は16:00を回っていた。
選曲も、演奏も素晴らしく、大変贅沢な演奏会であったと言える。
劇響は、2人のコンミスをはじめ、上手くなったのか、上手い人が揃ったのか、更に一回り表現力が増したように思う。
音色の美しさや、表現力に関しては、都内の最も上手いオーケストラに肩を並べるレベルとなったのではなかろうか。
幻想的な音楽世界に酔った2時間半超えの演奏会だった。

そして、佐藤氏は、今回取り上げた小品たちから、音色的な美しさのみならず、その背後にあるものまで感じさせてくれた。
私はフランス音楽の特徴を感覚的に捉えていて、心理的な陰影にはあまり気付いていなかった。
佐藤氏は、作品の背後まで透視するかのように、深層心理的な、隠喩的な世界として作品を演奏し、フランス音楽の一層深い楽しみ方を教えてくれたのである。
耳にも心にも深く響く、まさに、極上の音楽体験だった。

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今回感じた劇響の表現力の高揚からすると、9月のマーラーの演奏会も素晴らしいものになると大いに期待できそうだ。

だが、その前にまず2023年6月4日(日)に、スターツおおたかの森ホールで、流山フィルハーモニー交響楽団第61回定期演奏会がある。
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佐藤氏の「プラハ」は初めてである。
重々しい序奏があったり、主題が独特だったりと、ややこしい「プラハ」を、佐藤氏と流山フィルはどう演奏するであろうか。
また、「ライン」は佐藤氏が大得意とするシューマンの交響曲であり、「ライン」が好きな人にも嫌いな人にも目から鱗、耳から鼓膜の体験となることだろう。
http://nagareyamaphil.g2.xrea.com/concert_yotei/concert_yotei.html

さらに、7月1日(土)にはレスプリ・バロックの第2回演奏会。
コンマスがコンミスに変わったようで、新生レスプリ・バロックに期待できそうだ。
ソプラノ独唱を加えたカンタータも演奏される。
実に意欲的なプログラムだ。
https://www.jizai.org/esprit/

そして、8月13日(日)には慶應義塾大学医学部管弦楽団第47回定期演奏会がある。
シューマンを核としたロマン派プログラム。
昨年、コロナからの復活を果たした医管だが、今年はどんな状況だろうか。
まだまだ時間はある。学生の皆さんの頑張りに期待したい。
https://www.keio-ikan.com/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
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