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2022年08月19日10:59

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【映画叙景】“お仕事映画”についてのパート2

前の『ハケンアニメ!』の“お仕事映画”についての感想は非常に表層的な部分のみ書いただけで、まだまだ言い足りないので別枠として続きを書き足させて頂きます。

“仕事”についての感覚って、それこそ人それぞれで百人いれば百通りの回答が返ってくると思います。
その人の能力・環境・哲学等々で、全く違う意識でそれぞれが働いているのだと思います。
今日明日の食い扶持を稼ぐためから、普通に生きて行くため、家族のため、もっとお金を稼ぎたい、もっと出世したい。
クリエイターなど何かの特殊技能を有する人なら、その能力を磨きたい、発揮したい、有名になりたい、それで人のためになりたいなどなど、様々な理由で働き、仕事そのものも大好きな人から大嫌いな人までいます。
そして“仕事”について何かを語るなら、その事を大前提として語らなければ意味がないし、物語にするのならそれらが背景として見えなければ意味がないと思っています。

社会には様々な職種があり、それぞれが自分に適応したところに自然と流れて行き、そこで何とか落ち着ければそで良いのですが、今回の『ハケンアニメ!』の舞台となるテレビ局などは、その多種多様な“仕事”に対する意識の人達が集まる集合体の様な“仕事場”になる訳で、全員一丸となって仕事をやり遂げるなど、正直大嘘であり絵空事でしかないと思っています。
例えば本作の主人公であるクリエイターが、どうしても会社の指示とは違うクリエイターとしての意志を通したいといという、仕事に対する姿勢は理解できますが、その仕事をする周りの人間全てが同じ意識である訳がなく、其処は映画でも少し表現されていましたが、その意思を通すためにスタッフを徹夜作業させる過程を美談として描かれたりすると、違和感が生じるってことです。

普通に考えて、そのスッタフ構成も、アルバイトやパートもいれば、派遣社員や下請け会社の社員もいれば正規雇用の社員もいる。
会社の利益を優先する者もいれば、仕事のクオリティ優先する者もいる。
中にはシングルマザーで明日子供を保育園に連れて行かなければならない人もいば、既に一か月休みなく働き詰めの限界ギリギリの人もいるかも知れない。
明日は恋人とデートがある、田舎から両親が訪ねて来る、年に1回の習い事の発表会があり行けないと他のメンバーに迷惑がかかる、大事な友人との約束がある、競馬の大レースがある等々、昭和の経済成長時代だと当然の如く仕事最優先であり、どんな理由でも一蹴されたが今は令和である。
スタッフの時給も待遇も扱いも役職も様々、仕事に対するモチベーションもバラバラで全くベクトルの違う人々の集合体であろう。
そうした職場の中でのたった1人の熱意を全員に感染させることに現実味は感じらないし無理がある。
でも、昭和という時代はある種の圧力によりそれが通る時代だった。
しかし、バブル崩壊から平成となり低成長期に入ってからはそのようなことはやり難くなり、やるにはもっと陰湿で暴力的な方法となり、その頃から“ブラック企業”などという言葉が流行り出しましたよね。
で、令和の今にそうした物語を見せられると、上記した様々な?が湧き出てくるという事です。

上記した事柄を無視したストーリー展開で、昭和時代の“プジェクトX”様な“お仕事映画”の流れのままであると、観客は凄くセンシティブに反応すると思うし、事実私がそのように感じてしまっている。
私は仕事に関する物語の場合、これは映画(フィクション・漫画)だからではどうしても済ませられない経験をして来たという事でこういう考えに至っています。

まあ、漫画の場合でも例えば流行りの「ワンピース」や「キングダム」の名台詞「俺は海賊王になる」「俺は天下の大将軍になる」って同じコンセプトでストーリーライン(各章毎の強敵と仲間の登場)であってもファンタジーや時代劇なら許せても、これが、同じようなストーリー展開であっても現代劇で「俺は経済界の大物になる」って物語は流石に流行らないでしょ(爆)
昭和なら映画でもテレビドラマでも立身出世の物語は沢山ありましたけどね。漫画でも「課長島耕作」ってのが一時期流行りましたが、その後の(読んでませんが)社長や会長になった物語は流行ったのでしょうかね?少なくとも、私は読む気は湧きませんでした。

あと、『ハケンアニメ!』の裏テーマとして垣間見えた“リア充”についてどう捉えるか?、というのも現代社会の重要なテーマだと思うのですが、本作の場合、もっとこのテーマを深掘りした方が面白いし良かった様に個人的には思います。
「経済的満足感」か「仕事(ライフワーク)の充実感」か「夢を実現させる能力と才能の保持」か「自然体で自由に生きる」ことか、私はそちらのテーマの方が好きですね。
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