mixiユーザー(id:30621259)

2022年05月29日10:15

61 view

写真の著作権保護期間について語る

パロディ・モンタージュ写真事件で、パロディストのマッド・アマノ氏と裁判で争って最終的に勝訴した写真家の白川義員氏が今年4月5日に亡くなりましたが、それに因んで、今回は写真の著作権保護期間について語りたいと思います。

1899年に制定された旧著作権法では、写真の著作権の保護期間は、第23条第1項で発行(公表)後10年と定められていました。それは、制定当時、写真用フィルムや印画紙は保存性がデジタル写真が主流となった現在と比べても悪く、他の著作物と比較しても作品が消失しやすいという背景があったといわれています。なお、発行されなかった場合は、同条第2項で原板製作(創作)後10年となっていました。

その後、1967年7月27日に発行後12年(未発行の場合は、製作後12年間)に暫定延長され、1969年12月8日に発行後13年(同じく製作後13年)に再度暫定延長されました。

1970年に制定され、翌1971年1月1日に施行された現行著作権法では、第55条で公表後50年(創作後50年以内に公表されなかった場合は、創作後50年)に延長されました。さらに、WIPO著作権条約対応に伴う1996年3月25日施行の改正法で同条が削除され、原則著作者である写真家の死後50年(写真が無名・周知でない変名および団体名義で公表された場合は、公表後50年のまま据え置き。第51条、第52条、第53条の規定が写真の著作物にも適用)に延長され、TPP11締結に伴う2018年12月30日施行の改正法で原則死後70年(同じく公表後70年。結果的に公表名義が実名・周知の変名でない場合も延長)に再延長されました。

保護期間の計算は、他の著作物と同様に、死亡、公表(発行)、創作(製作)の翌年の1月1日からとなります(旧著作権法第23条第2項、現行著作権法第57条)。

つまり、写真が1956年までに発行された場合は1966年12月31日に、1957年に発行された場合は1970年12月31日にそれぞれ著作権が消滅済みで、1958年以降に発行された場合は原則として死後70年が経過した年の12月31日に著作権が消滅することになります。但し、連合国の著作者が創作した写真で、戦時加算が適用される場合は、この限りでありません。

このように、かつては写真は短い期間しか著作権の保護期間が与えられていませんでしたが、その時代に活躍していた写真家にとっては、他の著作物より保護期間が冷遇されていたために、財産面で損をしていた一面もあったのではないかと私は思いました。

ここで冒頭に登場した白川氏が撮影した写真の著作権はいつまで保護されるかを見ていきますが、前述の通り、死亡したのが2022年(今年)4月5日なので、今後法改正がない限り、そこを起算点として、70年経過後の2092年12月31日までが保護期間となります。要は、パブリックドメインとなって自由に使えるのは2093年1月1日以降となる訳です。

以上、写真の著作権保護期間についてお話ししました。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する