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2022年03月06日23:55

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殺生石は死んでいる

■九尾の狐伝説の「殺生石」が真っ二つに割れる 「不吉の前兆か」「むしろ力が弱まった」
(ねとらぼ - 2022年03月06日 14:57)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=128&from=diary&id=6875317

 ちょっと前のことだが、「金毛九尾の狐」の読みは「きんもう」か「こんもう」か、という話題がTwitterに上がったことがあった。正解は「どちらでもよい」。語呂がいいから私は「きんもう」と読むことが多い。「絶対にコンモウ!」って意見の方には申し訳ないが他意はないんだから絡んできたりしないでね。
 それはそれとして、世に妖怪も数あれど、「九尾の狐」ほどその存在感、そのスター性において、妖怪の頂点に位置すると言っても過言ではないキャラクターもそうはいないだろう。いつのまにか「ぬらりひょん」が妖怪の総大将ってことになってしまっているが、何の妖怪なのか正体不明なあんなのに比べたら、九尾の狐の履歴書は実に由緒正しい。仮の姿は殷を滅亡に追い込んだ紂王の愛妾・妲己、あるいは鳥羽上皇の寵姫・玉藻の前、日中双方の王朝を傾けさせた、まさしく傾城の美女妖怪である。
 どうせ「総大将」に仰ぐなら、しわくちゃの爺さんより絶世の美女の方がいいよね。

 妖怪マンガの金字塔、『ゲゲゲの鬼太郎』にももちろん九尾の狐は登場する。
 ただし、妲己or玉藻の前本人ではなく、その弟である支那妖怪チーという設定だ。エピソードタイトルは『妖怪反物』。姉の復讐のために来日して、日本妖怪たちを不思議な丸薬で次々と反物にしていくという筋立てである。
 この物語冒頭の「妖怪反物」の設定は、水木しげるが宮沢賢治の童話『山男の四月』の初期形から取ってきたもので、元ネタの方でも主人公の山男は謎の支那人「陳」に騙されて、反物にされてしまう(改稿版では丸薬になる)。妖怪の名前が「チー(中国語で「7」の意)」なのは「陳」をもじったもののようだ。

 宮沢賢治の原作の方は、実はいわゆる「夢落ち」なので、このままマンガにしてもいつもの鬼太郎の妖怪退治ものにはならない。そこで水木サンは、同じ支那妖怪繋がりということで、チーの正体を九尾の狐として、日中妖怪大戦争を展開させたのだろう。
 鬼太郎の長編作品には傑作が多いが、少年マガジン連載版の殆ど掉尾を飾るこの一編は、鬼太郎全編の中でも部類の面白さに満ちている。意外に次ぐ意外、二転三転する展開ももちろんだが、ラスボス感溢れる「九尾の狐」のネームバリューに負うところも多分にあると思われる。

 鬼太郎たちに退治された後、チーもまた「殺生石」と化し、姉の「殺生石」の隣に鎮座したという落ちが付く。
 観光客は、いつの間にか殺生石が増えているので驚いたとか。もちろん本物の殺生石は一つしかないから、マンガを信じて那須に行った人は(まあいないと思うけど)、殺生石が一つしかなくて拍子抜けすることになる。なんとも水木サンらしいとぼけた落ちである。

 伝説によれば、玉藻の前を倒したのは、陰陽師安倍泰親(安倍晴明の裔)、三浦介義明、千葉介常胤、上総介広常の四人ということになっている(岡本綺堂『玉藻前』では、千葉介常胤を除く三人)。
 ちょうど、現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の主要人物とその関係者たちだ。それぞれの配役は、義明は既に物故した設定で、その次男義澄を佐藤B作、常胤を岡本信人、広常を佐藤浩市が演じている。
 何だかみんな、ついこないだ九尾の狐を倒したイメージなんてまるで感じられないね(佐藤浩市だけ、昔「魔界衆」を倒してる過去があるが)。
 曲亭馬琴『南総里見八犬伝』で「化け猫」を退治する犬坂毛野は、この千葉介常胤の子孫という設定。馬琴は当然、常胤の九尾の狐退治のエピソードを知っていたのだろう(玉藻の前伝説が完成したのは江戸期で、八犬伝最凶の悪役「玉梓」には明らかに「玉藻の前」のイメージが重ねられている)。
 岡本信人さんの子孫が、八犬士中随一の美形、犬坂毛野を生んだのかと思って見てみると、なかなか味わい深い。

 割れた殺生石は、そのうち修復されて元の形に戻されると思う。自然に割れたもので、イタズラではなかったらしいことにホッとしている。
 記事にもあるけど、呪いはとっくに消えてるから、心配しないでよろしい。有毒ガスも出てないよ。世の中が不穏だと、こんなことでも陰謀論が流行りかねないので、そんなものに乗せられないようにするのが肝要だと思う。
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