18970429 NO5062 大勲位奉呈の件
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012_0040_0070 駐韓日本公使館記録 12巻 四. 本省往来信 (7) 大勲位奉呈の件
文書題目 (7) 大勲位奉呈の件
文書番号 発第二九号
発信日 明治三十年四月二十九日 ( 1897年 04月 29日 )
発信者 加藤 弁理公使
受信者 外務大臣 伯爵 大隈重信
(7) 大勲位奉呈の件
発第二九号
本月二日付送第三一号貴信によって我が皇帝陛下より当国大君主陛下へ御贈進なさる大勲位菊花大綬章、ならびにこれに対する御親翰を御送付なさり、同十五日接到いたしましたので、同十七日捧呈に関する儀式打ち合わせのため、本官が外部大臣に面談熟議の末、同官より内奏を経る事に約束致して置きましたところ、同十九日午前十一時、同官より本使捧呈に関する総ての儀式は当方の申し出の通りに決定したのだが、ただこの際当惑しているのは御陪食の一事、「これまでも目下国喪中で、たとえ小宴とは言え、主上自らがこれに臨まれることは、国の風習からみて聊か憚られるところがあるので、何とか便法はないかととの御沙汰でありますので、本官の熟考を煩す」との事でありました。そこで本官は
「国喪中とはいえこれらの儀式は各国普通に行われる慣例ではあるが、当国の習慣から目下さしあたりは難しいとの事情であるので、やむを得ず御陪食の一事は国喪後に譲りたいと陛下より堅く御約束があるならば、強いてこの際において実施しないこともありうるだろう」
と答えて置きましたところ、
「そういうことであるならば、一応その趣旨をお聞きしておき、追って何分の儀を申し出ましょう」
との事で互いに同意し、同日午後に及んでこの件は本官が提案の通り決定致したとの通知があり、まず以上で一切の準備が結了致したので、別紙甲号の通り公式の申し出を致しましたところ、同乙号の通り、本月二十二日午後三時二十分謁見捧呈いたすよう回答がありました。そこで当日は本官の乗用として宮内府より四人轎（＊轎は籠）を差し回し、宮内外事課長・李玄柱氏がやってきて本官を迎え、宮内総巡一人、巡検四人並びに親衛兵十一人、少尉がこれを引率し、儀仗として来着しましたので、本官は日置、秋月・両書記官、国分・通訳官、小池・外交官補、並びに館付武官・新納海軍大佐、野村歩兵大尉(五十嵐中佐は病気のた参列しなかった)を伴い参内・謁見の上、親書・勲章を親しく捧呈を終了しました。当日の大君主陛下の勅語（＊おことば）、並びに本官の言上内容は次の通りであります。
本官 恭しく奏上いたします。我が大皇帝陛下は貴我両国に存在する交誼が、日をおって益々親密となっていることを御満足に思召され、特に郷友愛の聖意を表彰遊されるため、その最も貴重とされている大勳位菊花大綬章を大君主陛下に贈進されるに当り、使臣はその趣旨を奉じ、今ここに龍顏に咫尺して御親翰とともに恭しくこれを捧呈する光栄を荷っております。
大君主陛下は先ず御親翰を御披閱なさった後
大君主 朕が友愛する大日本皇帝陛下は、両国の交誼が日に日に益々親密を加えていることを喜び、その最も貴重されている大勲位菊花大綬章を贈せられ、朕は大喜��をもってこれを迎えｍ深く陛下の親厚の至意を謝する。
ここにおいて本使は佩用（体につけて用いること）方法を一々言上し、陛下は菊花章を左肋に、大綬を右肩より左脇へ擬装され、また「このまま佩用致したいが、このような服装(喪服を指示し)であっては少しく不便である」との御沙汰があった。
本使 今回、我が至尊なる皇帝陛下は、御親厚の徴證として菊花大綬章を贈進され、即ち陛下を大勲位（＊最高位である大勲位菊花章頸飾に次ぐ勲章）の班列に御加えなさったことは、使臣始ここに列する随員一同の大いに慶賀する所であります。これと同時に大君主陛下を拝することは、なお我が陛下を拝すると一に択ぶ所のないような感があり、使臣はこれより益々力を両国の交際に力を尽くし、身をかがめ微衷を尽したいと存じます。
大君主 卿の就任からまだ幾ばくもたっていないのだが、忠誠篤実にしてよくその職を尽しているので、かつて両国間に□はりし一種嫌悪のあった感情も、日に日に融解しつつある。思うに、これより両国の交渉はますます敦睦に及ぶことは朕が信じて疑わない所である。
御軫念（ごしんねん ＊天子が心を痛めている）の事に関しては、さらに次の御言葉があった。
「今日捧呈式を終わるに当り、当方の儀式に欠ける所があるのだが、差し当たり困難な事情は卿が知悉している所であるので、いずれ他日に譲りたい」云々。
当日は龍顏特に麗しく、随行員一同へも一々御言葉を賜わり、すこぶる御満足の態に伺われた。
以上の式を終わり、一同退出致しました。
以上具申に及びます。 敬具
明治三十年四月二十九日
加藤 弁理公使
外務大臣 伯爵 大隈重信 殿
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