なんとなく、なんとかな気分に沈む。
落ち込むような事は何も無い筈でも、数千分の1に過ぎない私を覚えていた彼のことを、
(なんで此処にいるん?、零落れるにも早すぎない?、しかも何?、なんで怒ってるん?)
と矢継ぎ早に疑問ばかりが脳裏を駆け巡り、キレるポイントも怒るツボも皆目見当がつかない別世界の住人の放った
「笑わせやがる」
としたただ一言に、途方も無くがっかりした気持ちが、何年しても今もって拭えないでいる。
確かに平気でつまんない事を言う人だった、確かに良いとこのお坊ちゃんだった。
でも、病的にそうまで性格が悪いとは思わなかった。
住む世界が違って、生きる世界が違って、生れ落ちた環境も激しく違って、だから私には今もって彼が何を不快に思ったのかが分からないでいる。
アーティストは耳が良い、だから聴き分けられてしまった。
もう、あの当時の私じゃないんだってこと、もう、私は若くはないんだってこと、月に住むみたいな人にはきっと分かんないよね、
(そっか、私は、忘れて貰えていなかった事が、とてもとても淋しかったんだ)
と後から気が付いた。
喘息発作の大きいのが起きた。以来、私の声はすっかり変わってしまい、体調が良くないと喘息前の声は出せなくなった。
体調が良い時にしか出せなくなった高音、それだって、長くは続かない。
もう、あんなに元気には、はしゃげない。
だから、みんなに私を、忘れて欲しかった。
人知れず姿を消して息絶える猫の様に、私は晩年を過ごしたい。
その割には、生来のプロレス好き格闘技好きが功を奏して努力の甲斐もあり、私は誤解されまくる程に喘息持ちであるとは、傍目には判らない。
でも、まぁ、途方もなく他人をがっかりさせる彼は、その個性が災いして仕事が減った様子でもあったので、自分自身の事についてそれほど悲しい気持ちになる事はない。
しかし、おっとっと、雲丹と海星の率が高い気がする…。
なんでトゲトゲ多めだよー?。
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