18971227 NO5055 施政一班•任免一束•雑件
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012_0030_0160 駐韓日本公使館記録 12巻 三. 本省往復報告 (16) 施政一班•任免一束•雑件
文書題目 (16) 施政一班•任免一束•雑件
文書番号 報告第三四号
発信日 明治三十年十二月二十七日 ( 1897年 12月 27日 )
発信者 京城 弁理公使 加藤増雄
受信者 外務大君 男爵 西徳二��
(16) 施政一班•任免一束•雑件
報告第三四号
施政一班
光武元年陰暦九月十七日、韓国皇上が帝位に就く日であるので国中の慶日として、毎年この日を継天紀元節と称しようとの議が、去る二日閔・宮内大臣より奏上に及び即時御採用となった。この時詔（みことのり）を下して
「前史を考えるに、暦政は根が深く天を慎み敬い時に順応する方法だ。今年を始めとする暦書に名称がなければならないのだが、議政・大学士・学部大臣・掌礼院 ・堂上（タンサン ＊宮殿に上がることが許された正三品以上の官僚）はあまねく考え議論を決定せよ」
とあり、よって群臣奏議の上「明時」と命名された。
一. 去る二十一日、陛下は特に詔書を下して、一昨年十月事変（＊乙未事変（ウルミサビョン 閔妃殺害事件）以来、昨年二月十一日韓帝の露国公使館への播遷に至るまで間に発布された詔勅は、総て取り消された。
任免一束
一. 去る六日、中枢院議官・李完用（イワニョン）は秘書院卿に任ぜられた。
一. かねて大葬結了までとの内約で就任したとの評判があった沈・議政は、果して本月初旬において辞表を捧呈したのだが、皇帝は
「先に衰病をしのぎ長く持ちこたえて馳頓修程し、まことに卿の一つの事に集中する忠愛、実心は国のための心から出たものだ」
との批旨を下して去る十日御裁可があり氏を宮内府特進官に転じ、同時に趙・外部に議政署理を命じられた。ちなみに記すと、議政（＊議政府は国政運営を協議し、王の裁可を仰いだうえで、行政実務を分掌する六曹へ指示した）欠員の時に参政（＊）よりその事務を兼攝（＊本務以外の仕事を兼ねつかさどること）するのは、議政府官制の定めるところで、議政、参政ともに欠員があるのでなければ、他より署理（＊代理）を置く事がないことは前例に照らし合わせても皆そうなっている。ところが今回はどういうわけであろうか、南廷哲が内部大臣として参政の職にいるにもかかわらず、趙・外部にその署理を命じられたのである。思うに破格の事として見るべきであろう。
一. 鄭・度支署理は趙・外部と共に露国派の一人として世に称せられ、彼が度支部となると、同部総顧問・アレキセイエフ氏とともに鋭意密策を練っていたのだが、去る十二日部内官吏更迭の事から思いがけなく両人の間に距離が生じ、アレキセイエフ・総顧問は
「鄭・署理が理由も無く財務に経験のある柳正秀のような人物を駆除するのは当を得たものではない。」
と言ってその行為を非難したため、鄭は同日辞表を呈したのだが、越えて十五日にはついにその署理を免ぜられ、閔種黙（ミンジョンムク）がその後任を受け継いだ。
一. 議政府贊政・金明圭は去る九日奉常司提調に兼任された。
一. 秘書院丞・金鴻陸は今回貴族院卿に任じ、勅任三等に敍せられた。
雑件
最近陛下は詔を下して、閔泳翊（ミンヨンイク））に嗣子を立てられた。その言に曰く
「外国に久しく留まること既に一年、今命を承って使として国外に出ている。しかし帰期は明らかではない。またその年は四十に近い。云々」
とあった。
一. 前議政は官職を退いて間もなく��里・青陽（チョンヤン ＊現・公州市の西）に帰臥する際に、宮内より親衛隊の兵丁三十名を派遣して道中を護衛させられたと伝えられている。沈相薫も最近��里忠清道堤川（チェチョン）に向って出発した。
一. 八月中、前露国代理公使・韋貝（カルル・ウェーベル）氏が帰国の際、韓廷と約したる絶影島に石炭敷地借用の件に関しては、その後九月中書記官・ケルベルグが出発して踏査したのだが、同用地内には日本人所有地があるだけでなく、各国居留地予定地があって直ちに用地区画編入の運びに至らず、今日まで延期されていたのだが、最近露国アジア艦隊司令長官・ドーバソツフ氏は仁川より入京し謁見の際、この問題を提奏したのだが、陛下は
「『外部』に命じて協議させよう」
と仰せ出されたとの事であるが、露国公使よりはなお本件について「外部」と協議しつつある。ちなみに記すと、露国の請求地坪は二万八千坪位であるが、各国居留地予定地及び日本人所有地はその内に一万坪内外あると言う。
一. 近年来義兵の魁首と称していた鄭漢鎔へさきに封事を授けてその罪を許されるよう願い出たところ、陛下は手厚い批旨を下して罪を許された。
一. 安駉寿、金益昇の諸氏が発起人となり当国に郵船会社を起そうとの計画がある。さし向きその船舶を本邦より借り入れる予定であるとの噂がある。
一. 今回農商工部は工匠・瓦匠・木匠・鍛冶職人及び電灯、硝子、陶器等の製造人を雇って一職工学校を建設しようとする計画がある。その教師を仏国より雇聘しようと、「外部」を経由して当国仏国公使に依頼したところ、仏国公使は直ちにこれを応諾し、その仮規則等を制定し、目下「外部」と協議中とのこと。これに要する総ての費用は一ヶ年六千元だと言う。
一. 朝鮮を韓国と改称して以来、まだ陛下から宗廟に告祭されていないので来春親しく御施行があると去る十九日仰せ出だされた。
一. 大葬参列のため入京していた海州、清州、公州、平壌などの各鎮衛及び地方隊を集め、去る九日慶運宮仁化門前において陛下が親しくその演習の御検閱があった。これが終わって各中隊長及び小隊長に各一級を昇敍せられ、且つ兵丁にはそれぞれの慰労があった。
一. 昨年十一月中「還御密計事件」に関係し暴露した当日、身を隠していた前義禁府都事・金洛栄は最近逮捕となり、今回審理の結果、笞一百、流十五年に処せられた。
一. 国母（＊閔妃）復讐の熱が再燃し、その上疏をあげる者は数人では止まらない。前主事・金錫九は金弘集、禹範善、李斗璜、鄭秉夏、兪吉濬、趙義淵、権�馗叩⇒�範来、金�幹陝�張博、金允植、李承五を詰責し、「生者を極刑に処し死者を追刑すべきだ」と言い、幼学・李文和は「三浦・前公使に対し求刑し、あわせて朴泳孝、兪吉濬以下を刑し、さらに李完用並びに韓圭卨を罰すべきだ」と言っている。陛下は前者に対しては
「当然処分があるべきだ。云々」と言い、
後者（＊三浦梧楼・在朝鮮特命公使、朴泳孝、兪吉濬、李完用、韓圭卨）については
「今またこれらについて述べることはまことに義憤によるものだとは言え、これらの人々を論列することは至っては問題が多く、実に日々朝令を奉行している大臣に弾劾を加えさせることはふさわしくない。」
との批示を下されたのだが、これに前後して金雲洛、沈宜升、蔡光黙、李健奭、金定済などが同趣旨の上奏をなし、ついに宮廷を動かすことになった。
右の結果、去る二十日趙・議政府署理は数回の陛下に会見しこれに対する聖断を仰いだのだが、陛下はついに次の詔を下し、金允植、李承五をしばらく済州島へ流罪する事と定められた。その文に曰く、
「乙未念の逆変は神と人々の憤りを痛切にした。彼らは代々国禄の栄光を我がものとし、すでに覆う事の難しい罪跡があり、懲討・截厳の世論がいよいよ高まり、今に至っては寛大に容赦することは刑罰に対する失策が大きくなるであろう。金允植 、李承五は共にしばらく先ず済州牧へ流し、終身島流しとする。」
金（＊金允植）氏の性行・主義は今更さまざまに説明する必要はない。なぜかと言うと、世間では皆なが金宏集内閔以来重職についていなかったとしても、開化を是認した点を取り上げれば十分だとしている。そして趙（趙義淵＝チョウイヨン）らの一派がこれを嫌忌する事既に長きにわたっている。
そこでこの詔勅をなお不満とし、何としても彼らを死罪に処そうとび目的で更に尽力する者たちがいて、この詔勅を無視して執念深くも同日閔・宮内の手より次の上奏をした。
「伏して詔勅が下されたことを見ると、罪人・金允植（キムユンシク）、李承五（イスンオ）のには流刑で終身定配の命が下されました。臣らは共に顧みてこれを驚き憂歎せざるを得ません。乙未の変乱（＊閔妃殺害）は天下万古にいまだ類例のなかったこと、すなわち逆徒たちの極悪非道による怨恨は天下万古にいまだ類例のなかったことであります。彼らは八月二十一日偽勅を頒布して署名し、また到底口にできないような言葉で各館に下ろしたのです。
この厳粛な御前で偽って上奏し、また巧妙に、我が兵が大闕を侵犯して、外兵は侵入してきたことはないとの言い張り、外人によくみられるものが金允植です。
逆魁にへつらい、告廟の文章を作成しその文辞が極めて道理を離れ、祖宗の霊をののしった者が李承五です。
この二人の逆賊の罪は全ての敵どもより更に明らかです。
今に至って天地の間で許しを得て神人の激憤が悔しい思いをしているのだが、我が皇上におかれては生を愛されて徳を施されると言われるが、三尺の法（＊法律）もその刑罰が重かった、あるいは軽かったと言う事はできません。臣たちはこの点に血が湧く義憤に覚えています。ここに敢えて痛切な声で仰ぎ見て訴え、身を伏せて願いあげ、皇上が命じておられることを撤回なさり、有司に回付し厳格に事実調査を加え速やかに国家の刑罰を正しくなさることを願いあげます。」
これに対し陛下におかれては次の批旨を下されこれを採納しなかった。
「金允植、李承五の両罪人にこの法を適用することは彼らの罪が該当すると言う事はできない。また刑政を斟酌するに必ず着手する必要がないからだ。卿らは当然にこの点に諒解することを願う。」
ところがこの批旨があったにもかかわらず、その翌日二十一日をもって二回目の上奏を宮内大臣より捧呈した。
「臣らの懇切な訴願は即ち挙国臣民の忠実な憤痛が激しい所から出て来たもので婦女子、子供、下人たちと言っても、いやしくも恒性（＊変わる事のない性質）をそなえる者すべてが目を見開き、こぶしを握り締め、人ごとに早く二人の逆賊を殺し、市場で二人の死体に投石する姿を見たいと思わないものはいないのだが、今批旨に許可されたということを伏奉してみるに、臣たちは抑鬱で恐れ多くいたずらに今日になって王法が崩れるかと心配されるのである。
ひそかに思うに天下万代の乱臣賊子を即時訓戒に処さないでは倫綱がこれによって崩壊することは恐ろしい事だ。
金允植は偽詔を頒布し、至尊にも誣逼し嘘偽りをよそおい外人（*他人）たちにへつらいました。李承五は逆魁と迎合してまず宗廟の告祭文を製述し、その語義は破倫される類例がありませんでした。
この二人の逆賊が犯すところは、特に諸逆たちがおこなった事よりさらに甚だしいところがありました。これらに速やかに刑律を適用しないならば、死を与えなければならない悪人たちが法網を避けることが更に多くなることでしょう。また将来何によって王法をしめしましょうか。関係が大きく決して少しの差異でも受け入れる事はおできにならず、身を伏せて願いあげますことは、皇上に置かれましてはご覧になってお調べになり臣たちのお願いに従い一刻も早く許可される御意思を下されることを願います。云々」
これに対し陛下は即時に
「すでに前批がある。私を煩わしてはいけない。」
との批旨を下された。しかしながらこれを顧慮する所なく、同日また同大臣は次の上奏をした。
「臣たちの訴願はすでに二度上奏しております。そして聖旨として允許を求めました。身体の義憤が鬱積していることはついに申し上げる方法が分かりません。允植、承五がこの上なく凶悪で、極悪な所業であっても、それでもまだ息をさせていることはここにどこに国法があると言えるでしょうか。国が国らしいことは法があることでよってです。万一法がなければ即ちその何によってお建てになりますか。
人倫の常道はその何によって広げますか。そして君臣と尊卑をその何によって分別するのでしょうか。したがって罪の証しが少なくても必ず事件は法に従うことは、服従するものがその人数が少なくてもその大きな法に従うようさせようとする考えからでてくることです。いわんやこれら二人の逆賊は万古以来いまだ存在しなかった大逆賊であります。これに法で罰することが出来なくなれば、それはまた萌芽無くなることです。国は何によって国らしくなるのでしょうか。また法はこの国の法であります。皇上におかれてはこの法を敬重しておられないところがあります。伏して願わくは速やかに批旨を下されることを願います」云々。
而陛下は同日
「公議が一層積み重ねられていることを理解している。しかし、軽を適とするか重を適とするかより、むしろ刑がないことを期待したい、云々」
との批旨を下された。
ところがそれにもかかわらず、趙・議政署理は二十二日、二十三日の二度、宰臣連名の上疏を、また弘文館の副学士・尹定求は二十三日学士連名の上疏をして、前同様の求刑を繰り返したのだが、陛下は前者二十二日の上疏に対し
「二人の罪人が犯した法罪がどうして審弁をまたないであろうか。この度の処分は斟酌すべきところがあってそのようになったのだ」云々
二十三日の上疏に対し
「すでに昨日批答したところがある。これに対して再び煩わしく繰り返すな」云々
また後者の上疏に対しては
「二人の罪人のことに対する輿論と忿憤怨はまことに当然だ。そして今この処分もまた斟酌し察するところがある。」云々。
の批旨を下して一切御採納はなかった。
しかし、これより先、金允植は広州盆院付近辺の自邸に、李承五は光凞門外の女婿の宅において養病中であったが、世論のかまびすしさを聞き自ら堪えることができず、いずれも去る二十二日入城し、高等裁判所に自らを投じた。
一.我が陸軍機動演習のため当国政府の命を帯び本邦に渡航した権・参将の一行は、去る十七日帰京。その翌十八日に入闕。皇帝へ復命をおえたが、その後病と称して出仕していない。聞くところではこの際地方官に転任するだろう、と。
一. 徐載弼（＊金玉均の同志。アメリカ籍をとりPhilip Jaisohnと名乗る）と趙秉式はこれまでもお互い相容れず、徐氏は時としてかれが主管している独立新聞において趙氏を批判した事さえあったが、この頃趙氏は「外部」を料理しやや気焔が揚がっているので、徐氏は何となく趙氏一派の怨みの的になっていたが、趙氏は去る十四日外部大臣の職権を用いて米国公使に向い「徐氏の中枢院顧問官を解雇する」旨を通知した。その通知文には、
「徐氏が米国政府の推薦したものではなく、韓国が自由に雇入れた者であるので、また韓国が自由に解雇する理由があるので、今回これを解雇した」
と言うところに会った。しかし米国公使はこれに対し照覆してこう伝えた。
「韓国の顧問となった米国人は従来一人も米国政府の推薦によるものはいない。推薦がないので聘用の効用の有無を判断することはできない。また徐氏は故閔后当時より奉仕してきていまだかつて過失があったことはない。過失のない者を雇聘期限内に解雇することはその理由を認めることはできない。しかしこのことが事件の発端となることは徐氏にとって甚だ好まないところであるので、その自己を損傷しない他の方法、即ち『期限間の俸銭を給与する場合は解雇を承認するだろう』と徐氏が申し出た趣旨をもって対応した」。
目下の風聞によると徐氏は「米国に帰還する場合は、その出発を待って残額八ヶ年分の全部を給与せよ』と内定しその金額は二万四千元だと言う。
これと同時に、趙・外部は農商工部に移牒して、徐氏か主管していた独立新聞に対してかつて農商工部より付与していた郵送認可の回収を請求した。また「外部」部内にはこの新聞の購贖を禁止したとかのことで、その影響はついに同新聞の販売に大損害を与えている。
以上具報に及びます。 敬具
明治三十年十二月二十七日
京城 弁理公使 加藤増雄
外務大君 男爵 西徳二�� 殿
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