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2022年01月26日06:54

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デビューの頃。

1月25日(火)。
フォト


その仕事のクランクアップが近くなったある日、先輩が今日はカチンコを叩けと言ってくれた。
その日のスケジュールの最後の最後のカットだった。
先輩が「今日これから〇〇(自分のこと)ちゃんがカチンコデビューしますのでよろしくお願いします」とスタッフキャスト全員に届く声で伝えてくれた。

「よーい」監督の声がかかる。緊張の一瞬だ。カメラの前にシーンカットテークナンバーを書いたカチンコを差し出す。
「ハイ!」撮影部の助手さんがスイッチを入れる。フィルムがジィッと立ち上がる音が微かに聞こえる。
録音部さんがテープを回す、その時豆球が点灯する。
それを見てからカチンコを叩いてカメラ前から素早く引き抜く。
そのように先輩に教わった筈なのに、何回も見て来た筈なのに、その日自分は録音部さんの光が点灯する前にカチンコを叩いてしまった。
思わず「あっ〜!」の大声が出た。
セット全体の緊張が崩れる。笑い声が広がる。
ダメだ!NG。
仕切り直してもう一度。
監督の声がかかる、撮影部さんがスイッチを入れる、録音部さんの豆球が光る。よしこのタイミングだ。今度は上手く叩けた。
すると演者の一人が笑い出した。するとそこにいた演者さんたち全員が笑い出した。
「ダメだ〜、さっきのテークの叫び声を思い出すと可笑しい」
ダメだ!NG!
結局その日そのカットは深夜遅くテーク二桁になったところでやっとOKになった。
その演者さんたちの中には森昌子もいた。

ボクのほろ苦いカチンコデビュー秘話を我が主術師Yさんに身体全体ほぐして貰いながら喋る。
Yさんはコロコロ笑う。
今日も身も心もほぐれた時間だった。
軽い足取りで帰って来た。

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