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2021年11月25日16:52

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中山七里「護られなかった者たちへ」

先週末の帰省で読む本を探していると、妻が中山七里「護られなかった者たちへ」を貸してくれました。
妻と息子は映画『護れなかった者たちへ』を先月観て印象深かったので原作を読み始めましたが、あまり読み進まないようで、先に週末に読むように言われました。

舞台は震災から5年後の宮城県、仙台で他殺死体が発見されます。拘束された餓死させる殺人に苫篠刑事は怨恨の線で捜査を進めますが、犯人の手がかりはつかめません。その後県内で同じ方法による第2の殺人事件が発生し、被害者の二人が県内の福祉保健事務所に過去に勤めていた共通点が見つかります。一方、8年前に放火事件で捕まった利根が模範囚として刑期より2年早く出所して、ある人物を探します。

400ページを超えるの物語は、善人の死、人格者の死、貧者の死、家族の死、恩讐の果ての5章に分かれています。それぞれの特徴的な死が大きく関係していて、最後にそれがなぜ起きたのか明らかになってきます。生活保護の実情など、とても丁寧に描写されていて、現状の課題が明らかになります。舞台が宮城県で登場人物の行動がよくわかり、登場人物では家族を震災で失った苫篠刑事の冷静ながら人に寄り添うことができる人柄が魅力的です。
ミステリー仕立てになっていて、途中である程度犯人が予想できるのですが、最後に予想外の展開となりミステリーとしても楽しむことができます。
池澤夏樹が事件が起きると、最初に記者がやってきて次にルポライター、最後に小説家がやってくるとようなことを言っていましたが、大震災がこういう形で小説になるのだなと感慨深いです。

帰省から仙台に帰ってきた日、地下鉄乗り換え駅の近くのシネマコンプレックスで『護られなかった者たちへ』がちょうど上映されていることを知り、観てみることにしました。公開されて時間が経っていますが、ご当地映画ということで結構入っていました。
物語はほぼ小説と同じですが、ミステリー仕立てにはしていません。登場人物のキャラクターを変更して、犯人にもある変更がありました。
震災の描写などに工夫があり、青少年科学館や仙台文学館などなじみのロケ地が登場して、親近感がわきます。ただし映画ならではのキャラクター設定になじめないところがあり、力点の違いにも違和感を感じ骨太の原作の方が私は好きです。


写真は中山七里「護られなかった者たちへ」
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