私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、検査の結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。
川口がパソコンに向かっている。相談者の金子氏から報告を受けている。
金子
「なんとか、〇●屋に採用されました。まだ、どこの支店へ配属されるか、わからないですけど、お世話になりました。こらから研修を受けます」
川口
「ああ、良かった。ところで、研修はどのくらいの日数、受けるんですか」
金子
「過去に経験があるので、一カ月で終わるそうです」
川口
「よかったですね。どんなところが採用の決め手になったんですか」
金子
「詳しくはわかりませんけど。扱っている商品をどうやったら、お客さんに注文してもらえるかを口頭で話したことがよかったのかな」
川口
「金子さんの思いが通じましたね。ところで、ディスレクシアであることは聞かれましたか」
金子
「履歴書に書いてあるんで、聞かれました。ただ、以前に、ディスレクシアでも関係なく、勤務できたことを強調しました。現場仕事では、端末入力なんで、別に読み書きは必要ないそうです。注文さえ、間違えなければ、問題ないと言われました。読み書きが必要な仕事は事情を話し、誰かに助けてもらえ、と指摘されました」
川口
「それで、金子さんは納得したんですか。」
金子
「問題が出てきたとき、又川口さんに相談しますよ。俺、又、働きます」
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